ここでは東大数理の修士課程の院試の2011B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
立方体$X=[0,1]^3$の頂点を
$$
A=(0,0,0)
$$
$$
B_1=(1,0,0)
$$
$$
B_2=(0,1,0)
$$
$$
B_3=(0,0,1)
$$
$$
C_1=(1,1,0)
$$
$$
C_2=(0,1,1)
$$
$$
C_3=(1,0,1)
$$
$$
D=(1,1,1)
$$
とおき、$3$組の面どうしを以下の対応
$$
AB_1C_1B_2\leftrightarrow DC_1B_2C_2
$$
$$
AB_2C_2B_3\leftrightarrow DC_2B_3C_3
$$
$$
AB_3C_3B_1\leftrightarrow DC_3B_1C_1
$$
によって同一視して得られる剰余位相空間を$Y$とおく。整係数ホモロジー群$H_i(Y;\mathbb{Z})$を計算しなさい。
以下の証明に於いて、$X$の部分集合$X'$に対して、$X'/\sim$は$X\to Y$による$X'$の像を表す。また位相空間$T,T'$に対し$T\simeq T'$と書いた時は$T$と$T'$が同相であることを指す。$X$の内部を$I$とし、$J=X\backslash I$する。このときここで$J$をわずかに厚み付けた図形を$J'$とおく。このとき
$$
Y=I\cup (J'/\sim)
$$
$$
I\simeq D^3
$$
$$
I\cap (J'/\sim)\simeq S^2
$$
である。ここで$J'$を自然に胞体分割してその複体を計算すると、複体
$$
0\to \mathbb{Z}^3\xrightarrow{
\begin{pmatrix}
2&2&2\\
1&-1&0\\
0&1&-1\\
-1&0&1\\
\end{pmatrix}
}\mathbb{Z}^4\xrightarrow{
\begin{pmatrix}
0&1&1&1\\
0&-1&-1&-1
\end{pmatrix}
}\mathbb{Z}^2\to 0
$$
が得られる。ここから$J/\sim$の整係数ホモロジー群は
$$
H_i(J/\sim;\mathbb{Z})=\begin{cases}
\mathbb{Z}&(i=0)\\
\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}&(i=1)\\
0&(i\geq2)
\end{cases}
$$
であることが分かる。以上の議論とマイヤー・ビートリス完全列により、
$$
\begin{array}{ccccc}
&&&\cdots&\to&0\\
\to&0&\to &0&\to&H_3(X;\mathbb{Z})&\\
\to&\mathbb{Z}&\to&0&\to& H_2(X;\mathbb{Z})\\
\to&0&\to&\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}&\to& H_1(X;\mathbb{Z})\\
\to&\mathbb{Z}&\to&\mathbb{Z}^2&\to& \mathbb{Z}&\to&0\\
\end{array}
$$
が分かる。ここから
$$
H_i(Y;\mathbb{Z})={\color{red}\begin{cases}
\mathbb{Z}&(i=0)\\
\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}&(i=1)\\
\mathbb{Z}&(i=3)\\
0&(\textsf{otherwise})
\end{cases}}
$$
が従う。