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ここでは科学大数学系の修士課程の院試の2025午後03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2025午後03
群$G$は位数$p^3$の非可換群とする。以下の問いに答えなさい。
- $G$の中心$Z(G)$の群構造を巡回群の積として表しなさい。
- $G$の交換子群$[G:G]$及びアーベル化$G/[G:G]$の群構造を巡回群の積として表なさい。
- $G$に於ける共役類の個数を計算しなさい。
- $G$の$n$次元複素既約表現の同型類の個数$M_n$を計算しなさい。
- まず非自明な$p$群が自明な中心を持たないこと、そして非可換群をその中心で割ったものは巡回群にならないことから$|Z(G)|=p$であることがわかる。よって$Z(G)\simeq{\color{red}\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}}$である。
- まず(1)より$G/Z(G)$は位数$p^2$の群であり、特にアーベル群である。よって$G$の非可換性と併せて、(1)から$[G:G]=Z(G)\simeq {\color{red}\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}}$を得る。このことと$G/Z(G)$が位数$p^2$の非巡回群であることから、$G/[G:G]\simeq{\color{red}(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^2}$もわかる。
- まず$x\in G\backslash Z(G)$に対して$[G:G_x]=p$である。よって類等式と併せて類等式は${\color{red}p^2+p-1}$個ある。
- 初めに$G$の$1$次元指標は群準同型$G/[G:G]\to\mathbb{C}^\times$に対応しているから、$M_1=p^2$である。$G$の複素既約表現は$G$の共役類の個数に対応しているから、(3)より次元$\geq2$の既約表現は$p-1$個ある。それぞれの次元を$s_1,\cdots,s_{p-1}$とおくと、任意の$i$について$s_{i}|p^3$を満たしていて、かつ等式
$$
p^2+\sum_{i=1}^{p-1}s_i^2=p^3
$$
が満たされている。よって任意の$i$に対して$s_i=p$である。以上をまとめると
$$
{\color{red}M_n=\begin{cases}
p^2&(n=1)\\
p-1&(n=p)\\
0&(\textsf{if else})
\end{cases}}
$$
である。
位数$p^3$の非可換群の構造は一意に定まりません。