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大学数学基礎解説
文献あり

斎藤 集合と位相の演習問題C5.4.11

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最近第2版が出ましたね

あまり大きく内容変わってるわけではないようですが、定評のある斎藤「集合と位相」の第2版が出ました。おめでとうございます。まあ今回の話題はそれ(新規部分)とはまったく関係ないわけですが。せっかくなので備忘録として残しておきます。

演習問題がクソむずい

というわけで、久しぶりにがっつり復習しています。何年振りだろうってレベルで。
で改めて思ったんですが、なんか他の「集合と位相」入門本に比べてもやけに演習問題が充実しているというか、しかもクソ難しくないですか!?
いわくA問題は基本らしいですが、実際本当に簡単なものもあれば、既にA詐欺と言わんばかりに普通に難しいものもあったりしてまちまちです。後ろに略解が付いているのですが、すっと読んでわかるものもあれば全然さっぱりわからないものもあります。解答すら洗練されています。
あくまで偉大なる斎藤毅大先生基準での基本であると、クソ雑魚数学徒は日々思い知らされています。打ちのめされています。ありがとうございます。

C問題がやばい

ここでタイトルの問題に入りましょう。

C 5.4.11
$S$ を位相空間とし, $A$ を部分集合, $\overline{A}$ をその閉包とする. $c \in S$ とし, $\overline{A} \setminus A = \{c\}$ とする. $X = S \setminus \{c\}$$S$ の部分空間とし, $A \subset X$ を 1点につぶして得られる空間を $Y$ とする. $q: X \to Y$ を商写像とし, $b \in Y$$q(A) = \{b\}$ で定める.
$Z = S \setminus A$$S$ の部分空間とする. 積写像 $q \times 1_Z : X \times Z \to Y \times Z$$p$ で表わし, $p$ による像位相を $\mathcal{O}_1$ とする. $D = \{(x, z) \in X \times Z \mid x = z\} \subset X \times Z$ の像 $E = p(D) \subset Y \times Z$ の, 積位相 $\mathcal{O}_2$ に関する閉包を $\overline{E} \subset Y \times Z$ とする.
1.$S = \overline{X \setminus A}$ とする. $(b, c) \in \overline{E}$ を示せ.
2.対角集合 $\Delta_S \subset S \times S$ は閉集合であるとする. $E$ は像位相 $\mathcal{O}_1$ に関して閉集合であることを示せ.
3.$S = [0, 1]$ とし, $A = \{ \frac{1}{n} \mid n \in \mathbf{N}, n \neq 0 \}$ とする. $E \subsetneq \overline{E}$$\mathcal{O}_1 \supsetneq \mathcal{O}_2$ を示せ.

ごちゃごちゃやっていますが、要するに「商写像の積は商写像となるとは限らない」という例を挙げてくれています。
難易度はCなのでもちろんむずいです。略解もまあ読んでもわからない。困った。
なのでもうちょっと解きほぐした解答案を示してみます(正しさは保証しないので、参考は自己責任でお願いします)。

解答案

1.$(b, c)$$\mathcal{O}_2$ における任意の開近傍を $W$ とする。積位相の定義より、ある $Y$ の開集合 $V_Y \ni b$ と、$Z$ の開集合 $V_Z \ni c$ が存在して、$V_Y \times V_Z \subset W$ となる。
$V_Y$ は商空間 $Y$ の開集合であり、$b \in V_Y$ なので、その逆像 $U_X := q^{-1}(V_Y)$$A$ を含む $X$ の開集合である。
$X$$S$ の部分空間なので、$S$ の開集合 $O_S$ が存在して $U_X = O_S \cap X$ と書ける。$A \subset X$ より $A \subset O_S$ である。
一方、$V_Z$$Z$ の開集合であり、$c \in V_Z$ なので、$S$ の開集合 $O'_S$ が存在して $V_Z = O'_S \cap Z$ と書ける。$c \in Z$ より $c \in O'_S$ である。
ここで、$O := O_S \cap O'_S$ とおくと、$O$$S$ の開集合である。
$c \in \overline{A}$ かつ $c \in O'_S$ より、$O'_S$$A$ と交わる。また $A \subset O_S$ であるから、$O$$A$ と交わる。特に $O \neq \emptyset$ である。
仮定より $X \setminus A$$S$ で稠密($S = \overline{X \setminus A}$)なので、空でない開集合 $O$$X \setminus A$ の点を含む。
$$\exists u \in O \cap (X \setminus A)$$
この $u$ について:
$u \in X \setminus A$ なので、$q(u)$$b$ ではなく $u$ 自身に対応する点である。また $u \in Z = S \setminus A$ でもある。
よって $p(u, u) = (q(u), u) \in E$ である。
$u \in O \subset O_S$ かつ $u \in X$ より、$u \in U_X$。よって $q(u) \in V_Y$
$u \in O \subset O'_S$ かつ $u \in Z$ より、$u \in V_Z$
したがって、$(q(u), u) \in V_Y \times V_Z \subset W$ となり、任意の開近傍 $W$$E$ と交わる。
ゆえに $(b, c) \in \overline{E}$ である。 $\square$

2.商写像の定義より、$E$$\mathcal{O}_1$ で閉集合であることは、逆像 $p^{-1}(E)$$X \times Z$ で閉集合であることと同値である。
逆像 $p^{-1}(E)$ を求める。
$E = p(D) = \{ (q(u), u) \mid u \in X \cap Z = S \setminus \overline{A} \}$ である。
$(x, z) \in X \times Z$$p(x, z) \in E$ となる条件を考える。
$$(q(x), z) = (q(u), u) \quad (\exists u \in S \setminus \overline{A})$$
これより $z = u$ が必要。$u \notin A$ なので $q(u) = u$。特に$q(u) \neq b$。(※ $u \in X \setminus A$ に対し、$q(u) \in Y$ は 1 点集合 $\{u\}$ であるが、これを $u$ と同一視する。)
よって $q(x) = q(u) \neq b$ となるため、$x \notin A$ であり、$q(x) = x$ となる。
したがって $x = u = z$、すなわち $x = z$ が導かれる。
逆に $x=z$ (かつ $(x, z) \in X \times Z$)であれば、$x \in X \cap Z = S \setminus \overline{A}$ なので $(x, x) \in D$ であり、その像は $E$ に入る。
以上より、
$$p^{-1}(E) = \{ (x, z) \in X \times Z \mid x = z \} = D$$
である。
ここで $D = \Delta_S \cap (X \times Z)$ であり、仮定より $\Delta_S$$S \times S$ の閉集合であるから、その部分空間への制限である $D$$X \times Z$ の閉集合である。
よって、$E$$\mathcal{O}_1$ において閉集合である。 $\square$

3.$\overline{A} = A \cup \{0\}$ なので $c = 0$ である。
$X = (0, 1]$$Z = [0, 1] \setminus A$ となる。
また $S \setminus \overline{A}$$(0, 1)$ から各 $1/n$ を除いた集合であり、$S=[0, 1]$ において稠密である。さらに $S$ はハウスドルフ空間なので $\Delta_S$ は閉集合である。
$E \subsetneq \overline{E}$ について
問1の結果より、$(b, 0) \in \overline{E}$ である。
一方で、$E$ の点は $(q(u), u)$ (ただし $u \in S \setminus \overline{A}$)という形をしている。
第2成分に注目すると、$u \in S \setminus \overline{A}$ なので $u \neq 0$ である($0 \in \overline{A}$ のため)。
よって第2成分が $0$ である点 $(b, 0)$$E$ に含まれない。
したがって $E \subsetneq \overline{E}$ である。
$\mathcal{O}_1 \supsetneq \mathcal{O}_2$ について
問2の結果より、$E$$\mathcal{O}_1$ において閉集合である。
もし $\mathcal{O}_1 = \mathcal{O}_2$ ならば、$E$$\mathcal{O}_2$ においても閉集合でなければならない。
しかし、①で示したように $E$$\mathcal{O}_2$ における自身の閉包 $\overline{E}$ と一致しないため、$\mathcal{O}_2$ では閉集合ではない。
一般に商写像の積写像 $p$ は連続なので $\mathcal{O}_2 \subset \mathcal{O}_1$ は常に成り立つ。
したがって、$\mathcal{O}_1 \neq \mathcal{O}_2$ すなわち $\mathcal{O}_1 \supsetneq \mathcal{O}_2$ である。 $\square$

何となくのイメージ

$(b, 0)$ を原点っぽく思います。積位相で考えると、(開球のイメージで考えて)原点に近いところにいくらでも開近傍が取れるので、$(b, 0) \in \overline{E}$ となります。
一方、商位相はより細かい位相になります。$\Delta_S$ が閉集合であるという性質を引き継ぐので、余計な点である $(b, 0)$ を含むことができなくなります。

問3の状況 問3の状況

参考文献

[1]
斎藤 毅, 集合と位相
投稿日:6日前
更新日:6日前
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投稿者

趣味でカジュアルに数学をしている社会人です。そんなに数学ができるわけではありませんが、楽しもうと思います。

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