Yoshidaでは半ノルムに対する一様有界性原理から開写像定理を証明し, その系として有界逆写像定理や閉グラフ定理を証明していますが結構複雑です. 本稿では, 証明の経路を変えることで議論を明快にすることを目標とします. 具体的には一様有界性原理$\implies$有界逆写像定理$\implies$閉グラフ定理, 開写像定理の順に証明します. (そのさい, 定理の主張をIzumiのものに改めましたが, Yoshidaの形式に直すのは容易と思われます.)
このとき, 一様有界性原理を適用する半ノルムの形がより簡単な形で書けるようになることもメリットと考えます.
論理の誤りや誤植等ありましたらご指摘ください.
ノルム空間$X$の単位球面を$S_X,$ 単位開球を$B_X$で表す.
$X$を$\K$上のベクトル空間とする. $p\colon X\to[0,\infty)$が
(1) $\forall \al\in\K, \forall x\in X,$ $p(\alpha x)=\abs{\alpha}p(x)$
(2) $\forall x,y\in X,$ $p(x+y)\leq p(x)+p(y)$
をみたすとき, $X$上の半ノルムであるという.
ここだけの記号として, 半ノルム$p$に対し$\displaystyle \norm{p}=\sup_{\xi\in S_X}p(\xi)$と書くことにする.
線形作用素$T\in\lin{X,Y}$に対し, $p_T(x)=\norm{Tx}$は半ノルムで,
$T\in\bdd{X,Y}$のとき$\norm{p_T}=\norm{T}$.
$X$をベクトル空間とする. $X$上の半ノルム$p,q$と$\al\geq 0$に対し
(1) $(p+q)(x):=p(x)+q(x)$
(2) $(p\lor q)(x):= \max\{p(x),q(x)\}$
(3) $\displaystyle(p\land q)(x):= \inf_{x'\in X}(p(x-x')+q(x'))$
(4) $(\al p)(x)=\al p(x)$
は半ノルムであり,
$p\land q\leq \min\{p,q\}\leq p,q \leq p\lor q\leq p+q$が成立する.
省略
バナッハ空間$X$上の連続な半ノルムの族$(p_\lam)_{\lam\in\Lam}$について,
$\forall x\in X,\:\displaystyle\sup_{\lam\in\Lam}p_\lam(x)<\infty\implies\sup_{\lam\in\Lam}\norm{p_\lam}<\infty$
任意の$r>0,\:x\in X$に対し,
$\displaystyle r\norm{p}\leq\sup_{\xi\in S_X}p(x+r\xi)$
任意の$r>0,\:x,\xi\in X$に対し,
$\displaystyle rp(\xi)\leq\frac12p(x+r\xi)+\frac12p(x-r\xi)\leq\max\{p(x+r\xi),p(x-r\xi)\}$
なので, $\xi\in S_X$で上限をとればよい.
Yoshida, Socalによる.
$\displaystyle\sup_{\lambda\in\Lambda}\norm{p_\lambda}=\infty$を仮定して矛盾を導く.
仮定より, $(p_\lam)_{\lam\in\Lam}$の部分列$(p_n)_{n\in\N}$で$\norm{p_n}\geq4^n$なるものがとれる.
この$p_n$に対し, $\norm{x_n-x_{n-1}}=3^{-n}$および$p_n(x_n)\geq \frac233^{-n}\norm{p_n}$なる$X$の列で$x_0=0$であるもの$(x_n)_{n\in\N}$がとれる.
(実際, $x_{n-1}$まで与えられたとき, 補題より
$\displaystyle 3^{-n}\norm{p_n}\leq\sup_{\xi\in S_X}p_n(x_{n-1}+3^{-n}\xi)$
なので, $x_n\in x_{n-1}+3^{-n}S_X$であって, $\displaystyle 3^{-n}\norm{p_n}\leq p_n(x_n)$なるものがある.)
このとき$(x_n)_{n\in\N}$は$\norm{x_n-x_{n-1}}=3^{-n}$よりコーシー列で, $X$はバナッハなので$\displaystyle x_\infty=\lim_{n\to\infty}x_n$が存在する.
$\displaystyle \norm{x_\infty-x_n}=\norm{\sum_{k=n+1}^\infty x_k}\leq \sum_{k=n+1}^\infty3^{-k}=\frac{1}{2}3^{-n}$ なので,
\begin{align} p_n(x_\infty-x_n)&=\norm{x_\infty-x_n}p\left(\frac{x_\infty-x_n}{\norm{x_\infty-x_n}}\right)\\
&\leq\frac{1}{2}3^{-n}\norm{p} \end{align}
よって, \begin{align}p_n(x_\infty)&\geq p(x_n)-p(x_\infty-x_n)\\&\geq\frac{1}{6}3^{-n}\norm{p_n}\geq\frac{1}{6}\left(\frac{4}{3}\right)^n\to \infty
\end{align}
これは$\forall x\in X,\:\displaystyle\sup_{\lam\in\Lam}p_\lam(x)<\infty$に反する.
$X$をバナッハ空間, $Y$をノルム空間とする.
有界作用素の族$(T_\lam)_{\lam\in\Lam}\in \bdd{X,Y}^\Lam$について,
$\forall x\in X,\:\displaystyle\sup_{\lam\in\Lam}\norm{T_\lam(x)}<\infty\implies\sup_{\lam\in\Lam}\norm{T_\lam}<\infty$
省略
$X,Y$をバナッハ空間, $T\in\bdd{X,Y},$ $T$は全単射とする. このとき$T^{-1}$は有界.
Yoshidaを大いに参考にした.
$q_n(y)=n\norm{y}$とおくとこれは半ノルムで, よって$p_n:=p_{T^{-1}}\land q_n$も半ノルム. $p_n\leq p_{T^{-1}},q_n$なので, $p_n(y)\leq q_n(y)=n\norm{y}$より$p_n$は連続で, $p_n(y)\leq p_{T^{-1}}(y)=\norm{T^{-1}y}$より各$y$で $\displaystyle\sup_{n\in\N}p_n(y)\leq\norm{T^{-1}y}$ は有限.
よって, 一様有界性原理により $\displaystyle M:=\sup_{n\in\N}\norm{p_n}<\infty$ を得る.
$\displaystyle y\in\frac{1}{2M}B_Y$ とすると, $p_n(y)\leq M\norm{y}<\frac{M}{2M}=\frac{1}{2}<1$ なので,
$(y'_n)_{n\in\N}\in Y^\N$で, $\norm{T^{-1}(y-y'_n)}+n\norm{y'_n}<1$ なるものがとれる.
このとき, $T^{-1}(y-y'_n)\in B_X,$ $y'_n\to 0$ となるので, $\displaystyle y=\lim_{n\to\infty}y-y'_n\in\overline{TB_X}.$
従って $\displaystyle\frac{1}{2M}B_Y\subset \overline{TB_X}$ である.
$y\in Y$とする. $y$に対し$\norm{x_n-x_{n-1}}< 6M\norm{y}\cdot2^{-n}$および$\norm{y-Tx_n}<3\norm{y}\cdot 2^{-n-1}$なる$X$の列で$x_0=0$であるもの$(x_n)_{n\in\N}$がとれる.
(実際, $n=0$のとき明らかで, $x_{n-1}$まで与えられたとき,
$y-Tx_{n-1}\in3\norm{y}\cdot2^{-n}B_Y\subset\overline{T(6M\norm{y}\cdot2^{-n}B_X)}$ より
$x'_n\in 6M\norm{y}\cdot2^{-n}B_X$であって $\norm{y-Tx_{n-1}-Tx'_n}<3\norm{y}\cdot2^{-n-1}$ なるものがあるので, $x_n=x_{n-1}+x'_n$とおけばよい. )
このとき$Tx_n\to y$であり, また, $(x_n)_{n\in\N}$は$\norm{x_n-x_{n-1}}<6M\norm{y}\cdot2^{-n}$よりコーシー列で$X$はバナッハなので$\displaystyle x_\infty=\lim_{n\to\infty}x_n$が存在する.
いま$T$は連続なので$Tx_\infty=y$であり, 全単射なので$x_\infty=T^{-1}y$.
\begin{align}\norm{T^{-1}y}=\norm{x_\infty}&=\norm{\sum_{k=1}^\infty x_k-x_{k-1}}\leq\sum_{k=1}^\infty \norm{x_k-x_{k-1}}\\
&\leq\sum_{k=1}^\infty 6M\norm{y}\cdot2^{-k}=6M\norm{y}\end{align}
よって$T^{-1}$は有界である.
以下バナッハ空間の基本的な構成について既知とします.
$X,Y$をバナッハ空間, $T\colon X\to Y$を定義域が$X$全体の閉作用素とする.
このとき$T$は有界である.
$T$のグラフ$\Gam_T$はバナッハ空間$X\oplus Y$の閉部分空間なのでバナッハ.
射影$\pr_X\colon X\oplus Y\to X$の制限$\pr_X\vert_{\Gam_T}\colon \Gam_T\to X$は, 線型かつ連続な全単射.
有界逆写像定理より$\pr_X\vert_{\Gam_T}^{-1}$は有界で, $T=\pr_Y\vert_{\Gam_T}^{}\circ\pr_X\vert_{\Gam_T}^{-1}$は有界となる.
$X,Y$をバナッハ空間, $T\in\bdd{X,Y}$を全射とする.
このとき$T$は開写像である.
$Q\colon X\to X/\ker{T}$を商写像とする.
$T$が全射なので, 準同型定理より, 連続全単射$\bar{T}\colon {X/\ker{T}} \to Y$が存在して, $\bar{T}\circ Q=T$.
有界逆写像定理より, $\bar{T}^{-1}$は有界. よって$\bar{T}$は同相なので開写像.
また, $Q\colon X\to X/\ker{T}$も開写像なので, $T=\bar{T}\circ Q$も開写像となる.
今回はバナッハ空間においての証明でしたが, 今後はこの証明がより一般の位相線形空間に適用できるか検討したいです.