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de Rham の定理への道2:(復習)位相空間の開基と生成された位相を整理

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教科書:John M. Lee, Introduction to Smooth Manifolds(second edition)

このページの内容

次の記事の内容には開基が登場するので、事前に復習しておく。
(というより位相多様体の定義の第二可算公理はまんま開基を使っている)

開基と生成される位相

開基 p600

$X$を位相空間、$\mathcal B \subset \mathcal O(X)$とする。このとき次の1, 2は同値である。

  1. 任意の開集合$U$$\mathcal B$に属する開集合の和集合で表せる。
  2. 任意の点$x$とその開近傍$U$に対して、ある$B \in \mathcal B$があって$x \in B \subset U$を満たす。

(1), (2)を満たす$\mathcal B$$X$の開基という。

(イメージ)
(1) 開基さえ分かれば開集合はすべて表現できる。
(2) 任意の点の開近傍も開基だけで表現できる。

要するに、開基が分ければ開集合は全部分かるから、開集合は開基さえ考えれば十分、ということ。
ちなみに(1), (2)の同値性はやればすぐに示せます。

開基の性質

$\mathcal B$を位相空間$X$の開基とする。このとき、次の1, 2が成り立つ。

  1. $X=\bigcup _{B \in \mathcal B}B$
  2. 任意の$B_1, B_2 \in \mathcal B, x \in B_1 \cap B_2$に対して、ある$B_3 \in \mathcal B$が存在して$x \in B_3 \subset B_1 \cap B_2 $を満たす。
ざっくりな証明
  1. 開基の定義内の1において、$U=X$として考えればOK。
  2. $B_1 \cap B_2$は開集合なので、開基の定義内の2の性質から$B_3$の存在が分かる。

(イメージ)
$B_1 \cap B_2$は開基(に属する開集合)とは限らないが、もっと小さくとれば開基が必ず取れる、ということ

命題1自体というより次の命題2の方が大切。

与えられた部分集合が開基となるような位相の生成

$X$を集合、$\mathcal B \subset 2^X$が次の(1), (2)を満たすとする。

  1. $X=\bigcup _{B \in \mathcal B}B$
  2. 任意の$B_1, B_2 \in \mathcal B, x \in B_1 \cap B_2$に対して、ある$B_3 \in \mathcal B$が存在して$x \in B_3 \subset B_1 \cap B_2 $を満たす。

このとき、$\mathcal O = \{ \cup _{B\in\mathcal B'}B | \mathcal B' \subset \mathcal B\}$$X$の位相であり、$\mathcal B$$X$の開基である。

$\mathcal O$が位相であることを示す。

  1. $X \in \mathcal O$は(1)より分かる。$\phi \in \mathcal O$は明らか。
  2. 任意個の$\mathcal O$の元の和集合が$\mathcal O$に属するのは、$\mathcal O$の定義より明らか。
  3. $U_1, U_2 \in \mathcal O$に対して$U_1 \cap U_2 \in \mathcal O$を示す。

任意の$x\in U_1 \cap U_2$に対して、$\mathcal O$の定義より、

  • $x\in B_1 \subset U_1$を満たす$B_1 \in \mathcal B$
  • $x\in B_2 \subset U_2$を満たす$B_2 \in \mathcal B$

が存在する。$x\in B_1 \cap B_2$なので(2)を使うと、ある$B_3 \mathcal \in B$が存在して$x\in B_3 \subset B_1 \cap B_2 \subset U_1 \cap U_2$を満たす。
ここまでを整理すると「任意の$x\in U_1 \cap U_2$に対して、ある$B_x \in \mathcal B$が存在して$x\in B_x \subset U_1 \cap U_2$を満たす」ことが分かった。
このことから$\bigcup _{x\in U_1 \cap U_2} B_x = U_1\cap U_2$が成り立つ。よって$U_1\cap U_2 \in \mathcal O$である。

$\mathcal O$の定義より、$\mathcal B$は明らかに開基である。

「任意の$x\in U_1 \cap U_2$に対して、ある$B_x \in \mathcal B$が存在して$x\in B_x \subset U_1 \cap U_2$を満たす」
$\Longrightarrow \bigcup _{x\in U_1 \cap U_2} B_x = U_1\cap U_2$
がポイント(ここで(2)を使う)。
他は当たり前(というより当たり前となるように仮定を準備している)。

命題2は次の記事で活用する。
ちなみに位相多様体の定義にもある「第二可算公理」は「開基(の元が)がたかだか可算個」であることをいう。要するに開集合としてはたかだか可算個を考えれば十分ということ。

投稿日:1026
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投稿者

地方国立大数学科の修士卒。社会人になってからも定期的に数学したくなる。いつか論文を書いて投稿するのが夢。専門で勉強していたのは多様体とその一般化。博士や研究者の方を尊敬してやまない。 今はデータ関係の仕事(分析、可視化など)をしています。

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