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ここでは東大数理の修士課程の院試の2008B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2008B01
標数$0$の体$K$と自然数$n$について、$m_n(K)$を群$\mathrm{GL}_n(K)$の位数有限の元の位数の最大値とする。但し最大値が存在しなければ$m_n(K)=\infty$とする。次の問いに回答しなさい。
- 自然数$n$を固定する。$m_n(K)<\infty$であるためには、
$$
\sup\{m_1(L)|[L:K]\leq n\}<\infty
$$
が成り立つことが必要充分であることを示しなさい。 - 任意の自然数$n$について$m_n(\mathbb{Q})<\infty$であることを示しなさい。
- $m_4(\mathbb{Q})$を計算しなさい。
- まず$K$の標数が$0$であることから$\mathrm{GL}_n(K)$の位数有限の元は、代数閉包$\overline{K}$に於いて対角化可能である。
$m_n(K)<\infty$であるとする。更に$[L:K]\leq n$なる体$L$と、$L$の元$\alpha$で位数有限であるようなものをとる。このとき$[K(\alpha):K]\leq n$であるから、$\alpha$の最小多項式$f$は$\deg f\leq n$を満たしている。よって$\mathrm{GL}_n(K)$の元$g$で、その特性多項式が$f$と一次式の積の形に書けるようなものが存在する。$\alpha$の位数は$g$の位数に等しく、これは$\leq m_n(K)$である。
次に$M:=\sup\{m_1(L)|[L:K]\leq n\}<\infty$とする。ここで$\mathrm{GL}_n(K)$の位数有限の元$g$を取ったとき、その対角化の対角成分$\alpha$の位数は$\leq m_1(K(\alpha))$である。よって$g$の位数は$\leq M^n$である。よって$m_n(K)<\infty$であることが従う。 - 自然数$m$に対し、$1$の原始$m$乗根の最小多項式は
$$
\varphi(m):=m\prod_{p|m}\left(1-\frac{1}{p}\right)
$$
である。但し$p$は$n$を割り切る素数を走る。ここで自然数$n$及び$[L:K]\leq n$なる体を任意にとる。このとき$1$の原始$m$乗根が$L$に含まれるためには
$$
m\geq n\prod_{p}\left(1-\frac{1}{p}\right)
$$
になる必要があるが、そのためには任意の$p|n$に対して、$s$を$p$が$n$を割り切る回数としたとき、
$$
m\geq p^{s-1}(p-1)
$$
を満たす必要がある。以上から$n$は$m+1$より大きい素因数を持てず、各素数が$n$を割り切る回数は$1+\log_2 m$以下にならなければならない。以上からある$M$が存在して、任意の$M< m$について$1$の原始$m$乗根は$K$の$n$次拡大に含まれないこと、つまり
$$
\sup\{m_1(L)|[L:\mathbb{Q}]\geq n\}<\infty
$$
であることが分かり、(1)から任意の$n$に対して$m_n(\mathbb{Q})<\infty$であることが従う。 - まず$g$を位数$m=m_4(\mathbb{Q})$であるような元とする。このとき$g$の特性多項式は$4$次式なので、(2)に於ける議論から
$$
\varphi(m)\leq 4
$$
でなければならない。ここで$m\geq 13$であると仮定すると、$m$は$5$以上の素数で割り切れるか、$24$で割り切れるか、$18$で割りきれるかのいずれかである。二つ目と三つ目の時は$\varphi(m)\geq 6$であり、一つ目の場合も$m\neq 5$であることを考慮すると$\varphi(m)>4$になることがわかる。以上から$m\leq 12$である。一方$X^4-X^2+1$を特性多項式に持つ$\mathrm{GL}_4(\mathbb{Q})$の元を考えると、$X^4-X^2+1$は$X^{12}-1$を割り切る一方、任意の$k\leq 11$に対して$X^k-1$を割り切らない。よって$m_4(\mathbb{Q})={\color{red}12}$である。