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漸化式を微分方程式で解いてみよう

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はじめに

漸化式と微分方程式の間に関連性があることは差分と微分、和分と積分の類似性を見れば一目瞭然です. しかしこの記事では漸化式を差分や和分の考えで記述するのではなく、本当に微分方程式そのものを使って解きます.

以下, 登場する関数はある程度性質のいい条件 (滑らかなど) を課しています.

定数係数漸化式

まず, 次の漸化式を考えてみましょう.

数列 {an} が次の漸化式を満たしている.
a0=0,a1=1,an+2=an+1+an(n=0,1,)
このとき, ann を用いて表せ.

これを微分方程式を用いて解いてみましょう. まず
an=dndxnf(x)=f(n)(x)
となる実数値関数 f(x) が存在するとする. このとき
f(n+2)(x)f(n+1)(x)f(n)(x)=0
となるので, もし
f(2)(x)f(1)(x)f(x)=0
が成立していれば, 一般項が求められる. これは x2x1 の根 α,β を用いて
f(x)=C1eαx+C2eβx
と表せる. ただし C1,C2 は定数.
このとき
an=f(n)(x)=C1αneαx+C2βneβx
となるので a0=0, a1=1 となるように x,C1,C2 を決めてやれば, 一般項が求められます.

ライプニッツ則を使おう

まず, 次の漸化式を考えてみましょう.

数列 {an} が次の漸化式を満たしている.
a0=c,an+1=k=0n(nk)akank(n=0,1,)
このとき, ann,c を用いて表せ.

推測から an=cn+1n! となることがわかりますが, ここでは微分方程式を用いて求めてみましょう.
an=dndxnf(x)=f(n)(x)
とすると, ライプニッツ則から
f(n+1)(x)=dndxn{f(x)}2
が従う. よって
f(x)=f(x)2
としてこれを解くと
f(x)=1x+a
となる. ただし a は定数. よって
an=f(n)(x)=n!(1x+a)n+1
が従うので an=cn+1n! を得る.

数列 {an} が次の漸化式を満たしている.
a0=1,an+1=k=0n(nk)ak(n=0,1,)
このとき, ann を用いて表せ.

先ほどと同じように
an=dndxnf(x)=f(n)(x)
としても
exdndxn{exf(x)}=dn+1dxn+1f(x)
となり, 先ほどと同じようにいきません. 左辺の ex が邪魔なので, 次のように an を設定します.
an=dndxnf(x)|x=0=f(n)(0)
こうすると
dndxn{exf(x)}|x=0=dn+1dxn+1f(x)|x=0
となるので
exf(x)=f(x)
であればよい. よってこれを解くと
f(x)=Ceex
となる. ただし C は定数. a1=1 より
f(x)=eex1=1ek=0ekxk!=1ek=0n=0(kx)nn!k!
となるので
an=1ek=0knk!
となる. が取れていないので求められているかというと微妙ですが.
詳しくは ベル数 を参照ください.

漸化式と微分方程式の類似性

このほかにも微分方程式と漸化式の類似性があります.
例えば非線形2階微分方程式
y+f(x)y+g(x)y=0
は一つの特殊解がわかれば一般解が求められることが知られていますが,
同じことが非線形隣接3項間漸化式
xn+2=f(n)xn+1+g(n)xn
についても成立します. これについて解説していきます.
この漸化式を満たす特殊解 αn がわかっているものとします. また任意の正の整数 n に対して αn0 とします. このとき
xn+2αn+2αn+1xn+1=(f(n)αn+2αn+1)(xn+1αn+1αnxn)
となるので
xn+1αn+1αnxn=(x2α2α1x1)k=1n1(f(k)αk+2αk+1)
が従います. よって
xn+1αn+1xnαn=(x2α2α1x1)1αn+1k=1n1(f(k)αk+2αk+1)
となるので
xn=αn{x1α1+(x2α2α1x1)k=1n11αk+1l=1k1(f(l)αl+2αl+1)}
と一般項が得られました.

投稿日:116
更新日:116
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