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東大数理院試過去問解答例(2022B06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2022B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2022B06

$p_i$($i=0,1,2,3$)を円周$S^1$上の相異なる四点とする。ここで$T^2=S^1\times S^1$の開部分集合$U_i$($i=0,1,2,3$)を
$$ U_i:=\left\{\begin{array}{cc} \{(p,q)\in T^2|q\neq p_0\}&(i=0)\\ \{(p,q)\in T^2|p\neq p_i\}&(i=1,2,3) \end{array}\right. $$
と定める。ここで$T^2$上の$1$次形式のうち、$U_i$上完全形式であるようなもの全体を$P_i$とおく。

  1. $\alpha_1\in P_1$及び$\alpha_2\in P_2$に関して$\alpha_1\wedge\alpha_2$$T^2$上の完全形式であることを示せ。
  2. $P_0\cap P_1$の元は$T^2$上完全であることを示せ。
  3. $P_1\cap P_2\cap P_3$の元で、$T^2$上完全でないものの例を挙げなさい。

但し$S^1$及び$T^2$のdeRhamコホモロジーの性質を用いる際は、主張を明確に述べた上で用いること。

  1. まず$U_1$上で$\alpha=df$$U_2$上で$\beta=dg$と表されたとする。$S^1$上の$1$の分割$s+t=1$で、$s$(resp. $t$)は$p_1$(resp. $p_2$)の近傍で$0$$p_2$(resp. $p_1$)の近傍で$1$であるようなものを取る。ここで$s,t$$p_i$の近傍での微分は$0$になっている。ここで
    $$ \omega=sfdg-tgdf+fgds $$
    とおく。このとき$s,t$の取り方から、$sf,tg,fgds$$T^2$全体で定義された微分形式であり、更に
    $$ \begin{split} d\omega&=d(sf)\wedge dg-d(tg)\wedge df+d(fg)\wedge ds\\ &=sdf\wedge dg+fds\wedge dg-tdg\wedge df-gdt\wedge df+fdg\wedge ds+gdf\wedge ds\\ &=df\wedge dg\\ &=\alpha\wedge\beta \end{split} $$
    であるから$\alpha\wedge \beta$は完全形式である。
  2. $\alpha$$U_0$及び$U_1$上で$df$及び$dg$と表されていたとする。このとき$f-g$$U_0\cap U_1$の閉形式を定めているが、$U_0\cap U_1$の連結性により、$f-g$は定数になる。よって$\alpha$$T^2$の完全形式である。
  3. まず数直線$\mathbb{R}$上の関数$g$
    $$ g_1(x):=\left\{\begin{array}{cc} 0&x\in\left[-\infty,\frac{1}{3}\right)\\ 1&x\in\left(\frac{2}{3},\infty\right] \end{array}\right. $$
    を満たすような$C^\infty$級関数とする。ここで関数$g_1:[0,1]\to\mathbb{R}$$g_1:=g|_{[0,1]}$とおき、関数$g_2:[\frac{1}{6},\frac{7}{6}]\to \mathbb{R}$$g_2(x):=g|_{[\frac{1}{6},\frac{7}{6}]}$とおき、関数$g_3:[\frac{1}{12},\frac{13}{12}]\to \mathbb{R}$$g_3(x):=g|_{[\frac{1}{12},\frac{13}{12}]}$とお
    とする。ここで$S^1=\mathbb{R}/\mathbb{Z}$から定まる座標の下、$p_1=0$,$p_2=\frac{1}{6}$及び$p_3=\frac{1}{12}$とする。このとき$T^2=\mathbb{R}^2/\mathbb{Z}^2$から誘導される座標の下、$U_1$上の関数
    $$ f_1(x,y)=g_1(x) $$
    $U_2$上の関数
    $$ f_2(x,y)=g_2(x) $$
    $U_3$上の関数
    $$ f_3(x,y)=g_3(x) $$
    を考えると、$\omega:=df_1=df_2=df_3$$P_1\cap P_2\cap P_3$の元になっている。一方$1$-形式$dx$$T^2$上の曲線$y=0$に沿って$x=0$から$x=1$まで積分すると
    $$ \int_{T^2}\omega=[f(x)]_0^1=1 $$
    であるから、特に$\omega$$T^2$上の完全$1$-形式ではない。
投稿日:2023125
更新日:2023127

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佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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