この記事は清水勇二著『代数の基礎』 1 (初版1刷)に対する正誤表です.一読者である私(ことり)が作成したものですので,ミスがあるかもしれません.
l.-nとは,下からn行目であることを意味します. 「(注意)」として誤りではないが注意が必要な箇所について記述しました.
誤:$A/≡$
正:$\mathbb{Z}/≡$
l.11も同様.
誤:$(A, \preceq_M)$
正:$(M, \preceq_M)$
誤:$x \succeq a$
正:$x \succ a$
l.-11も同様.
誤:例1.1.2, 4)
正:例1.1.2, 5)
「$\mathrm{Im}\, L \subset \mathrm{Aut}(G)$」とあるが誤り.$a \in G$に対して$L_a$は群準同型とは限らない.したがって次の行の2つの$G \to \mathrm{Aut}(G)$はill-defined.
問1.1.24, 3)の「$L_a, R_b \in \mathrm{Aut}(G)$」も誤り.
「完全代表系」と「$\{y_1, \dots, y_s\}$」の間に「,」を挿入するのがいいと思います.
また,「$\{y_1, \dots, y_s\}$を$H$が定める$G$の...」とありますが,「$\{y_1, \dots, y_s\}$を$K$が定める$H$の...」とするのが正しいです.
同様に,l.-5の「$R$は$H$が定める$G$の...」も「$R$は$K$が定める$G$の...」とするのが正しいです.
誤:$0 \leq k \langle n$
正:$0 \leq k < n$
誤:$T(g_1)T(g_2)$
正:$T(g_2)T(g_1)$
「$\{i_1i_2 \dots i_r\}$」などは,コンマを挿入して「$\{i_1, i_2, \dots, i_r\}$」などとする.
p.44, l.-6も同様.
誤:$\sigma = $
正:$\tau = $
誤:$6, 3, 8, 6, 1$
正:$6, 8, 3, 6, 1$
(注意)「$H < N(P)$」とあるが,これは「$H$は$N(P)$の部分群である」という意味に解釈するとよい.
誤:第1同型定理
正:第2同型定理
軌道$\Sigma$は,$P \in \Sigma$となるものをとる必要がある.次の行で「$\{P\}$は明らかに$P$軌道である.」とあるため.
(注意)ここでとる$P$($P \in \Pi$かつ$P \notin \Sigma$を満たすもの)は,これまでの$P$とは別物であるから,混乱を避けるために$P''$など別の記号を割り当てる方が良い.
誤:不変は
正:不変な
まず,「$j < i + k$」を「$j \leq i + k$」に変更する.
また,$D^k(U_n(\mathbb{R})) = \dots$という等式は成立するとは限らない.「$j < i + k$」を「$j \leq i + k$」に変更した右辺を$H_k$とおく.$D^k(U_n(\mathbb{R})) \subset H_k$は成立するが,逆の包含は成立しない.反例は次の通り:
$n = 4$の場合を考える.
計算により,$H_1$は可換群であることがわかる.また,$D^1(U_4(\mathbb{R})) \subset H_1$なので,$D^1(U_4(\mathbb{R}))$は可換群.よって$D^2(U_4(\mathbb{R})) = \{I\}$.ところが$H_2 \neq \{I\}$であり,$D^2(U_4(\mathbb{R})) \neq H_2$がわかる.
「$D^n(U_n(\mathbb{R})) = \{I\}$」は誤りではないが,「$D^{n-1}(U_n(\mathbb{R})) = \{I\}$」としても成立する.
上の項目の記号で$H_{n-1} = \{I\}$となるため.
誤:$(14)(24)$
正:$(14)(23)$
誤:$H_{i+1,j-1}/H_{i,j-1}$
正:$K_{i+1,j-1}/K_{i,j-1}$
位数$2n$の二面体群を$D_{2n}$と表記していますが,l.-10以降の表記に合わせて$D_n$と表記した方がいいと思います.
p.201, l.2やp.210, l.-7,p.217などでも$D_n$という表記を用いています.
「$H \mapsto H/K = \overline{H}$」とありますが,$H/K$は正確には$R'$の部分集合ではないので,$H/K$ではなく$\eta(H)$にした方が良い.
(証明中ではそうなっている.)
誤:$\eta^{-1}(H)$
正:$\eta^{-1}(H')$
(同じ行の冒頭「$H'$が...」と合わせる.)
「$ss' + (sx' + s'x + xx')$」の中の$s'x$を$xs'$に変更する.
($R$は可換環とは仮定されていないため.)
誤:「した$S + I$は」
正:「したがって$S + I$は」
誤:「$P(u) \neq 0$となる$P(x)$が」
正:「$P(u) = 0$となる$P(x) \neq 0$が」
$a_n$の定義がない.$a_n$は$f(x)$の最高次係数とする.
(書かなくてもわかるかもしれませんが.)
(注意)「その次数は$0$より大きい」とあるが,$I = F[x]$の場合は次数が$0$のこともある.
したがって$I = F[x]$と$I \neq F[x]$とで場合分けするのがより正確.
ただし前者の場合は$I = (1)$なので,主イデアルであることはすぐわかる.
(注意)ここでの$I$は同じページのl.9で定義されたもの.
誤:定理2.2.19
正:定理2.2.18
「for $a/b \neq 0$($\iff a \neq 0$)」とありますが,$a/b \neq 0$の場合でも$a \notin S$の場合は$b/a$を考えることができません.
また,非整域などでは$a/b \neq 0$と$a \neq 0$とは同値ではありません.
反例:$R = \mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$, $S = \{1, 2, 4, 5\}$のとき,$R_S$において$3/1 = 0$.
「$as^{-1} = bt^{-1}$」とありますが,両辺は$R_S$の元なので,これまで通り「$a/s = b/t$」という表記の方が良いように思います.
以降の$R_S$の元についても同様です.
誤:$s \in S$
正:$s \in R$
誤:例2.3.8, 2)参照
正:問2.2.21, 1)参照
$e_t, f_t, g_t, k_t, h_t$の添字を全て$r$に変更する.
誤:$d = d_r = (d_{r-1}, a_r)$
正:$d = d_{r-1} = (d_{r-2}, a_r)$
(例えば,$d_2 = (d_1, a_3)$などのように,$d_i = (d_{i-1}, a_{i+1})$となっている.)
誤:命題2.3.14
正:問2.3.14, 3)
このままでは成立しない.反例は$a = p$.
誤:補題2.3.34
正:補題2.3.36
p.118, l.6も同様.
$I = R$の場合を準素イデアルの定義から除外するのが良いと思います.
例えば$I = R$は命題2.3.45を満たしません.
誤:$a$も単数
正:$a + J$も単数
(とした方がより正確です.)
(注意)本の証明は正しいが,次のようにしても良い:
一般に「$A$ならば$B$」は「$A$でない,または$B$」と同値であることに注意する.
準素イデアルの定義2.3.43における条件「$ab \in I$ かつ $a \notin I$ のとき $b \in \sqrt{I}$」は,以下と同値:
\begin{aligned}
&(ab \in I \text{かつ} a \notin I )\text{のとき} b \in \sqrt{I}\\
\iff &ab \in I \text{のとき} (a \notin I \text{ならば} b \in \sqrt{I})\\
\iff& ab \in I \text{のとき} (a \in I \text{または} b \in \sqrt{I})\\
\iff& ab \in I \text{のとき} (b \in \sqrt{I} \text{または} a \in I)\\
\iff&ab \in I \text{のとき} (b \notin \sqrt{I} \text{ならば} a \in I)\\
\iff&(ab \in I \text{かつ} b \notin \sqrt{I}) \text{のとき} a \in I
\end{aligned}
$p = \sqrt{I}$に注意すると,$a$と$b$を入れ替えることで命題を得る.
誤:$d + eb^N R$
正:$d + eb^N$
誤:命題2.3.44
正:命題2.3.47
証明を成り立たせるためには,ここの$m_\alpha$は$m_\alpha \neq 0$となるように取る必要がある.
誤:$\dots + \displaystyle\sum a_i x_i = 0$
正:$\dots + \displaystyle\sum b_i x_i = 0$
(注意)$I' = R$を導くためには$I' \neq I$を仮定する必要がある.
誤:$M_{\alpha}\subsetneq M'$
正:$M_{\alpha}\not\subset M'$
誤:$m \notin L_1$
正:$m \in L_1$
誤:$N$も昇鎖律を満たす
正:$M/N$も昇鎖律を満たす
「$N$の昇鎖」と「$(N + L_1)/N$」の間に「,」を挿入した方が読みやすいと思います.
誤:系3.1.30
正:注意3.1.30
誤:$\displaystyle\sum_{i=2}^m b_jf_j$
正:$\displaystyle\sum_{j=2}^m b_jf_j$
($\displaystyle\sum$の添字を$j$にする.l.13, 15, 16も同様.)
誤:$\mathbf{a}_j + b\mathbf{a}_i$
正:$\mathbf{a}_i + b\mathbf{a}_j$
その下の$\hat{j}$も$\hat{i}$に変更する.
(l.-7の$\text{I})$と整合的になるようにする.)
誤:$s = 0$
正:$r = 0$
誤:$A_1T_{1k}(1)$
正:$T_{1k}(1)A_1$
誤:$\mathrm{sgn}$
正:$\mathrm{sgn}\, \sigma$
(注意)「$E$の階数は$1$」とあるが,加群に対する階数は定義されていない(?).$R$が主イデアル整域で$R$加群$E$がある$r \in \mathbb{Z}_{\geq 0}$に対して$E \cong E_{\mathrm{tor}} \oplus R^r$を満たすとき,$r$を$E$の階数という.
誤:$(y_i \in M_i)$
正:$(y_i \in M[p_i])$
誤:$\mathrm{Ann}(x_i) = (p_i^{e_i})$
正:$\mathrm{Ann}(y_i) = (p_i^{e_i})$
(注意)「第2同型定理から」とありますが,第1同型定理によって導かれると思います.
一般に環$R$と$R$加群$M$とその部分$R$加群$N, N'$があり$N \subset N'$となっているとき,$N'/N$は$M/N$の部分$R$加群.
$\pi : M \to M/N$を自然な射影とするとき,$\pi^{-1}(N'/N) = N'$なので,第1同型定理1.1.46, 1)により,
\begin{array}{rccc} &M/N'&\longrightarrow&(M/N)/(N'/N)\\ &x + N'&\longmapsto&(x + N) + (N'/N) \end{array}
が$R$加群の同型になる.(つまり約分のようなことができる:$M/N' \cong (M/N)/(N'/N)$).
$k < e$のとき$M = p^kR$, $N' = p^{k+1}R$, $N = p^eR$とおくと,上のことから$\mathrm{gr}_k (R/p^eR) = (p^kR/p^eR)/(p^{k+1}R/p^eR) \cong p^kR/p^{k+1}R$が得られる.また,全射$f : R \to p^kR$, $a \mapsto p^k a$と部分加群$p^{k+1}R \subset p^kR$に再び第1同型定理1.1.46, 1)を適用することで,$R/(p) = R/pR \cong p^kR/p^{k+1}R$が得らる.
誤:$(j > s)$
正:$(j > r')$
「素数べき$p^e$の位数を持つ巡回加群」とありますが,$R = \mathbb{Z}$とは限らない一般の主イデアル整域$R$についての議論であるため,位数が$p^e$というのは意味をなさないと思います.例えば$R = \mathbb{C}[x]$の場合に$p = x$は$R$の素元ですが,「位数$x^2$の巡回加群」という書き方はできないと思います.
「$R/(p^e)$という形の巡回加群」とするといいと思います.
$T$の表現行列は,転置をとったものが正しいです.p.157の$T$の表現行列$A$と整合的になるようにする必要があります.同伴行列も転置すると良いと思います.p.161の$J_n(\alpha)$も転置をとったものが正しいです.
転置をとるとジョルダン細胞が下三角行列になってしまいますが,基底の順番を逆順にすれば上三角行列にすることができます.(例えば永井先生の『代数学入門』 2 などではそうなっています.)
誤:$\zeta(a, n)$
正:$\zeta(a \otimes n)$
$R$は可換環とするのが良いと思います.一般に$R$が非可換環の場合,$m, n \in \mathbb{N}$について,$m \neq n$でも左(右)$R$加群としての同型$R^m \cong R^n$が成り立つことがあるため,自由$R$加群の階数は可換環の場合と同じようには定義できないからです.系3.1.27では$R$の可換を仮定しています.
誤:$1_N f = f$
正:$1_T f = f$
(ここでは,p.127, l.12の2番目の式をチェックしている.)
誤:$M \otimes_R N$
正:$M \otimes_S N$
誤:$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}_{[\phi]}$
正:$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}_{[\mathbb{Z}]}$
(p.171, l.-6の係数制限の表記$N_{[R]}$に合わせる.)
いくつか修正が必要です.
誤:$\text{Hom}_S (R, N)$
正:$\text{Hom}_S (S, R)$
$\text{Hom}_S (R, N)$は一般には定義されません.$R$が$S$加群にならないためです.
例えば$\phi$が包含$\mathbb{Z} \to \mathbb{Q}$の場合,$\mathbb{Z}$を$\mathbb{Q}$上線型空間とみなすことはできません.
$\text{Hom}_S (S, R)$に変更すると良く,左$R$加群として$\text{Hom}_S (S, R) \cong N_{[R]}$となります.
(これに伴って他の部分も変更する必要があります.)
誤:$R$の右$R$加群の構造に由来する
正:$S$の右$R$加群の構造に由来する
誤:$(rh)(r') = h(r'r)\quad(r, r' \in R, h \in Hom_S(R, N))$
正:$\;(rh)(s) = h(s\phi(r))\quad(r \in R, s \in S, h \in Hom_S(S, N))$
誤:$h(r) := \phi(r)n$
正:$h(s) := sn$
$\psi$はwell-definedですが,$M, M'$が有限生成自由加群の直和因子であっても$\psi$が同型になるとは限りません.
反例は次の通り:
$R = \mathbb{Z}[x]/(x^2)$, $M = M' = R$, $N = N' = \mathbb{Z}$.
ただし$f(x) \in R$と$n \in \mathbb{Z}$に対して$f(x)n := f(0)n$により$\mathbb{Z}$を$R$加群とみなす.
このとき$\psi$の始域は$R$で,終域は$\mathbb{Z}$となるため,同型でない.
構造定数の等式が間違っている.反例は例3.3.4の1)で$\lambda = \mu = 1, \;\nu = 0, \;\rho = 1, \;\pi = 0$.
両辺に$\displaystyle\sum_\rho$を付けると任意の$\lambda, \mu, \nu, \pi$について成立する等式になる.
「その他の$a_{\lambda\mu}^\rho = 0$」とあるが,$a_{01}^1$と$a_{10}^1$は$1$になる.
誤:考えてと
正:考えると
「$\mathrm{char}\, R \neq 2$のとき, $I_a = \dots$」とあるが,「$R$で$2$が単元のとき」では?
例えば$R = \mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$($\mathrm{char}\, R = 6 \neq 2$)でも$I_a$はこの右辺のようになるだろうか?
$R$で$2$が単元でない場合でも,$\Lambda(M)$の階数は$2^n$になるだろうか?$x_i \wedge x_i \neq 0$などとはならないのか?
誤:$y_i = \displaystyle\sum_{j=1}^n a_{ij}x_j$
正:$x_i = \displaystyle\sum_{j=1}^n a_{ij}y_j$
(ここで$y_k = 1$, $y_i = 0$($i \neq k$)として得られる式が$w_k = \displaystyle\sum a_{ik}v_i$の式と整合的になるようにする.p.186, l.6の項目も同様.)
$a_{(I, J), (I', J')} = $の右辺.添字と$\Pi$の位置が間違っています.正しくは次の通り:
$(\displaystyle\prod_{s=1}^p a^{i_s i'_s})(\displaystyle\prod_{t=1}^q a_{j_t j'_t})$
(一般に$(\displaystyle\prod_s x_s)(\displaystyle\prod_t y_t) = \displaystyle\prod_s \displaystyle\prod_t (x_s y_t)$は成立するとは限りません.)
誤:$y_{(I', J')} = \displaystyle\sum a_{(I', J'), (I, J)} x_{(I, J)}$
正:$x_{(I, J)} = \displaystyle\sum a_{(I, J), (I', J')} y_{(I', J')}$
誤:$w \otimes l$
正:$l \otimes w$
(l.-10の$M^* \otimes N$の元として考えていると思うので,この順番が良いと思います.)
誤:$V \subset C(V, Q)_0$
正:$V \subset C(V, Q)_1$
(注意)あまり自信がないのですが,おそらくこうだと思うことを書いておきます.
まず,クリフォード代数$C(V, Q)$を$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$で次数付けられた次数$k$代数とみなしたとき,これは一般にはp.181の意味で次数可換では「ない」です.($\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$次数代数としての次数可換は,$\mathbb{Z}_{\geq 0}$次数代数の次数可換と同様に定義されます.p.181, l.-2.)もし次数可換なら,$a \in V$に対して$a^2 = -a^2$となりますが,($\mathrm{char}\, k \neq 2$のとき)これは$a^2 = 0 \in C(V, Q)$を意味します.ところが$a^2 = Q(a) \in C(V, Q)$は一般には$0$になりません.よって$C(V, Q)$は一般には次数可換ではないです.
それにも関わらず,命題の同型右辺のテンソル積における積は,p.181, l.-4のように定義するのが良いと思います.命題の同型が積を保つために,このように定める必要があります.
誤:$Q(\phi_i(u_i))$
正:$\phi_i(Q_i(u_i))$
(ここで示すべきは$I_{Q_i} \subset \ker \phi_i$,すなわち$u_i \otimes u_i - Q_i(u_i) \in \ker \phi_i$なので,$\phi_i(Q_i(u_i)) = \dots = \phi_i(u_i \otimes u_i)$という形にするのが良いと思いました.左辺で$Q$ではなく$Q_i$を使うことと,合成の順番に注意してください.)
誤:$u_1^2 = a$
正:$u_1^2 = c$
誤:$\mathrm{End}_{\mathrm{End}_R(M)}(M^{\oplus n})$
正:$\mathrm{End}_{\mathrm{End}_R(M^{\oplus n})}(M^{\oplus n})$
l.13も同様.
(注意)細かいことですが,p.189の定理の主張に合わせて$a''$ではなく$f''$を使うのが良いと思います.
(注意)$\rho$の単射は,$R$が単純環であることから両側イデアル$\ker \rho \subset R$が$\ker \rho = 0$となることによる,としても良いです.これは,体から出る環準同型が単射になるのと同様です.
誤:最小元
正:極小元
(一般に左アルティン環の左イデアルからなる非空集合は包含関係に関する極小元を持ちますが,最小元を持つとは限らないです.例えば$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$のイデアルからなる集合$S := \{(1), (2), (3)\}$において,$(2)$および$(3)$はそれぞれ$S$の極小元ですが,$S$は最小元を持ちません.)
(l.-3の「最小性」も「極小性」に直す.)
誤:最小元
正:極小元
(注意)「$M / N_i$は既約加群であるから,『$M$は』完全可約加群の部分加群である.」と補って読むと良い.
(注意)「$R^e = R \otimes R^{\mathrm{op}}$」は「$R^e = R \otimes_\mathbb{Z} R^{\mathrm{op}}$」などと解釈すると良いと思います.
「($R_i$は)$R$の部分環となる」とありますが,一般には成立しません.
反例:単射環準同型$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \to \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$は存在しない.
(この本における環準同型は単位元$1$を保つことを要請するが,$a \mapsto (a, 0)$は$1$を$(1, 1)$に移さないため環準同型ではない.)
誤:単純環への直積の単射
正:単純環の直積への単射
(注意)次のようにして,左アルティン環$R$上の左既約加群$M$に対して$R / \mathrm{Ann}_R(M)$は単純環であることがわかる:
$R' := \mathrm{End}_R(M)$は可除環.$M$は$R'$上の有限次元線形空間.
(有限次元なのは命題3.5.6の証明と同様にしてわかる.)
$\rho : R \to \mathrm{End}_{R'}(M)$, $a \mapsto (m \mapsto am)$は定理3.5.3により全射環準同型.
$\ker \rho = \mathrm{Ann}_R(M)$なので,$R / \mathrm{Ann}_R(M) \cong \mathrm{End}_{R'}(M)$は単純環.
「$R / \mathrm{Ann}_R(M_\alpha) \cong M_\alpha$」とありますが,成立しません.
反例は次の通りです:
$R := M_2(\mathbb{C})$, $M = M_\alpha := \mathbb{C}^2$とする.
$M$は$R$上既約であり,$\mathrm{Ann}_R(M) = 0$より,$R / \mathrm{Ann}_R(M) = R$だが,これは$R$加群として$M$と同型ではない.
例えば次のように修正すれば良いと思います:
$S := \bigsqcup_\alpha (M_\alpha - \{0\})$(集合としての非交和)とおく.
$0 = \mathrm{rad}\, R = \bigcap_{x \in S} \mathrm{Ann}_R(x)$なので,$R$加群の単射$R \to \prod_{x \in S} R / \mathrm{Ann}_R(x)$がある.
今,$x \in M_\alpha - \{0\}$とすると$R / \mathrm{Ann}_R(x) \cong M_\alpha$は$R$上既約なので,補題3.5.19により$R$は有限個の既約加群の直和.
(注意)細かいことですが,「$j \neq j'$のとき」で始まる文中では次の「どちらか片方」の処理をした方がより良いと思います.
$n_{j'}' < i \leq n_j$などとなっているときは$I_{j'}^{(i)}$は定義されないからです:
誤:$R / \mathrm{rad}\, N$
正:$R / \mathrm{rad}\, R$
略解に合わせて,$R$は可除環であり$\mathbb{C}$上有限次元であると仮定した方が良いと思います.可除環であるという仮定は外せなくて,例えば行列環$M_2(\mathbb{C})$は$\mathbb{C}$と同型でないです.また,「可算な基底を持つ」という条件では,次元が可算無限の場合を含んでしまうと思います.
誤:$st = \varepsilon ts$
正:$\varepsilon st = ts$
(注意)この章では適宜,「$G$は有限群」「表現は有限次元」「$\mathrm{char}\, k \not\mid |G|$」を仮定すると良いと思います. これらの仮定は必ずしも明記されません.
誤:$g \cdot hG$
正:$g \cdot hH$
l.-6とl.-3の$c$が整合的でないです.
誤:$C(a^m)$
正:$C(a^l)$
(l.-3も同様.)
指標$\psi, \chi$の終域は$\mathbb{C}^*$よりも$\mathbb{C}$の方が適切だと思います.
誤:$V$
正:$V_\nu$
l.-3も「$V$の基底を固定し$\rho(g)$の」を「$V_\nu$の基底を固定し$\rho^{(\nu)}(g)$の」に変更する.
$C(a^m)$の後ろの$(1 \leq l \leq *)$を$(1 \leq m \leq *)$に直す(2箇所).
$n$が偶数のときの$\sigma_l$の後ろの$(1 \leq m \leq n/2 - 1)$を$(1 \leq l \leq n/2 - 1)$に直す.
$k$代数の準同型$\chi_\rho : k[G] \to \mathrm{End}_k(V)$を考えているが,$\rho$が$n (\geq 2)$次元の表現の場合は$\chi_\rho(1 \cdot 1) = \chi_\rho(1) = n$, $\chi_\rho(1)\chi_\rho(1) = n^2$となり,$\chi_\rho(1 \cdot 1) \neq \chi_\rho(1)\chi_\rho(1)$で積が保たれない.$k$代数の準同型ではなく,$k$線形写像とする.
また,写像の終域も指標$\chi_\rho : G \to k$とその拡張$\chi_\rho : k[G] \to k$とするのが正しい.
「$\rho(c) = \zeta(c)1_V$」とありますが,$\rho$が既約表現でない場合はこのようにはならないと思います.
命題4.2.17についても,既約表現という仮定が必要だと思います.
誤:$(g \in C_k)$
正:$(g \in C_l)$
誤:$\dfrac{1}{\deg \rho_i} \chi_\rho(c_j)1_V$
正:$\dfrac{1}{\deg \rho_i} \chi_{\rho_i}(c_j)1_V$
($\rho$の添字$i$が欠けている)
$\chi_{jk}$を$\chi_{ik}$に直す.(3箇所.)
誤:重複度を$m_i$は
正:重複度$m_i$は
誤:$(\chi, \chi)$
正:$(\chi_\rho, \chi_\rho)$
(l.-6も同様.)
(注意)$\mathrm{Rep}(G) \otimes \mathbb{C}$は$\mathrm{Rep}(G) \otimes_\mathbb{Z} \mathbb{C}$と解釈すると良いです.
誤:$(h_i \in H)$
正:$(h_i \in k[H])$
「$\displaystyle\sum s_i \otimes (\sigma(\dots)u_{***})$」の$\sigma()$の中身を$\mu_{\pi(g)^{-1}i}(g)$に変える.
($i$が欠けている.)
(注意)命題4.3.4の証明中で$k \cdot s_i \otimes U$という表記がありますが,$s_i \otimes U$自体が部分$k$ベクトル空間なので,$k \cdot$は不要です.
(注意)$V$は$G$の表現とするとき,$k[G]$加群としての同型
\begin{array}{rccc} &\mathrm{Hom}_k(V, k)&\cong&\mathrm{Hom}_{k[G]}(V, k[G])\\ &\phi&\longmapsto&\left( v \mapsto \displaystyle\sum_{g\in G} \phi(g^{-1}v)g \right) \end{array}
があることに注意する.
逆写像は,$\Phi \mapsto \left( v \mapsto \text{($\Phi(v)$の$e$の係数)} \right)$で与えられる.
ただし$e$は$G$の単位元.
誤:$(v \notin H - \langle u \rangle)$
正:$(v \in H - \langle u \rangle)$
この系の主張は数学的に間違ってはいませんが,定義5.1.13から明らかに成り立つものになっています.「$f(x)$が分離多項式であること」を「$f(x)$の全ての根は単根であること」に書き換えると良いと思います.
この本の定義では,多項式が重根を持たないことと分離多項式であることとは同値でないことに注意する必要があります.
誤:代数数
正:代数的数
誤:$\mathbb{F}^*_{q^m} = \mathbb{F}_q(\zeta)$
正:$\mathbb{F}_{q^m} = \mathbb{F}_q(\zeta)$
「$E$同型$\tilde{\phi}_i$」とありますが,$i \geq 2$に対してこれは$E$同型にはなりません.
反例:$F = \mathbb{Q}, E = \mathbb{Q}(\sqrt{2}), f = g = x^2 - 2, r_1 = \sqrt{2}, r_2 = -\sqrt{2}$.$r_1$を$r_2$に移す写像は明らかに$E$の元を保ちません.
次のような議論にすれば良いと思います:
$f$の$E$における根を$\alpha_1, \dots, \alpha_m$とする.$E = F(\alpha_1, \dots, \alpha_m)$.
任意の$F$準同型$\phi : E \to K$は,$f$の根を$f$の根に移すことが示せるので$\phi(E) \subset E$.
今,$\phi = \tilde{\phi}_i$は$F$準同型$E = E(r_1) \to E(r_i) \subset K$なので,$\phi(E) \subset E$.
よって特に$r_i = \phi(r_1) \in E$.
誤:任意の$F$同型
正:任意の$F$準同型
(注意)定理5.1.58の証明の補足.まず次の主張3)'を考える:
3)' $u \in E$が$F$上分離的であるための必要十分条件は,$[F(u) : F] = [F(u) : F]_s$が成り立つことである.
p.256, l.-14の「さらに,」で始まる1文は,次のように書き換えると良いと思います:
$u$が$F$上分離的であるのは$q = 1$の場合だから,3)'が成立することが分かる.
(単純拡大の場合に3)が成り立つことは,この時点ではまだ言えません.$u \in E$が$F$上分離的であるとき,$F(u)$の$u$以外の元も$F$上分離的であることはまだ示されていないからです.)
誤:$\sigma'(u) = \overline{\sigma}(u_i)$
正:$\sigma'(u) = \overline{\sigma}(u_i)^{1/q}$
($\overline{\sigma}(u_i)$自体ではなく,その$q$乗根が$\overline{\sigma}(f(x))$の根であることに注意する必要があります.)
誤:$[E_s : E]$
正:$[E_s : F]$
またここは,次のように議論するのが簡単でいいと思います:
$[E : F] \geq [F(w) : F] \geq [F(w) : F]_s \geq n = [E : F]_s = [E : F]$より$[E : F] = [F(w) : F]$となるので,$F(w) = E$が得られる.(証明終了)
(p.260, l.1には「$F(w) \supset E_s$」とありますが,仮定より$E_s = E$なので,ここで証明が完了しています.それ以降の議論は不要です.なお$a \in F^*$である必要はなく,$a \in F$として良いです.)
3)にもある通り,1)で$E/F$がガロワ拡大であるためには,$\mathrm{char}\, F \neq 2$という仮定が必要です.
実際,$F = \mathbb{F}_2(t^2) \subset E = \mathbb{F}_2(t)$($a = t^2 \in F - F^2$)とすると,$E/F$はガロワ拡大ではありません.
誤:$(u \in E)$
正:$(u \in N)$
(2箇所)
(注意)1)は「ある有限部分群$G \subset \mathrm{Aut}_F(E)$が存在して$F = E^G$」という意味.
$E^{H_3} = $の右辺の$\omega$を$\omega^2$にする.次のページの図も同様.
誤:$\mathrm{Gal}(E/F)$
正:$\mathrm{Gal}(K/F)$
l.-10も同様.
いくつか修正が必要です.
「($n\mid d$に注意.)」とありますが,成立するとは限りません.反例は次の通りです:
$F = \mathbb{F}_{3^5}(X, X^{1/3}, X^{1/9}, \dots, Y, Y^{1/3}, Y^{1/9}, \dots, Z, Z^{1/3}, Z^{1/9}, \dots)$
は完全体であり,
$f(x) := (x^2 - X)(x^2 - Y)(x^7 - Z) \in F[x]$
は分離多項式.$d = \deg f = 11$で,$F$は$1$の原始$11$乗根を持ち,仮定を満たす.
$f(x)$は$F$上で根号により可解だが,$n_1 = 2, n_2 = 2, n_3 = 7,\cdots$などとなり,$n$は$14$の倍数であり,$d = 11$の約数にはならない.
しかし,$n\mid d$という条件や,$F$が$1$の原始$d$乗根を含むという仮定は,[必要性]を示すパートでは不要で,次の項目のようにすることで問題なく議論を行えます.
$p = \mathrm{char}\, F$とおく.$p \mid n$の場合は,$1$の原始$n$乗根は$F$の代数閉包に存在しないが,次のようにすれば$p \not \mid n$とできる:
$E/F$の根号塔を
$F = E_0 \subset \dots \subset E_l = E$
とする.$d_i^{n_i} = a_{i-1} \in E_{i-1}$で$E_i = E_{i-1}(d_i)$とする.
$n_i = p^s t$($s, t \in \mathbb{N},\; p \not \mid t$)とおく.
今$F_{i-1}(d_i^{p^s})$は完全体$F$の有限次拡大体なので完全体.よって$d_i \in F_{i-1}(d_i^{p^s})$となり,$F_i = F_{i-1}(d_i) = F_{i-1}(d_i^{p^s})$.
$d_i' = d_i^{p^s}, n_i' = t$とおくと,$F_i = F_{i-1}(d_i'),\;{d'}_i^{{n'}_i}=d_i^{n_i}\in F_{i-1}$であり,$p \not \mid n_i'$となる. このとき$p\not\mid n$となる.
条件を満たす$d_i$は存在するとは限りません. 反例は次の通りです:
$F = \mathbb{F}_8,\;f(x) = (x^5 + x^2 + 1)(x^2 + x + 1),\;d = \deg f = 7$.
$F$は$1$の原始$7$乗根$\zeta$を含み,また$f(x)$のガロワ群は巡回群なので可解であり,仮定を満たす.
このとき$f(x)$の最小分解体$E$に対して$[E : F]$は$2$の倍数なので,$|G| = |H|$も$2$の倍数.
$[F_{i+1} : F_i] = |H_i / H_{i+1}| = p_i = 2$となる$i$が存在するが,$F_{i+1} = F_i(d_i),\;d_i^2 \in F_i$となる$d_i$は存在しない.
(今$F_i$は標数$2$の完全体なので,$F_i$の元は全て平方元であり,$F_i$に$F_i$の元の平方根を加えたものは$F_i$自身になり,$F_i$の$2$次拡大体にならない.)
このような問題を解決するには,p.274, l.-6とp.275, l.-10の「原始$d$乗根」を「原始$d!$乗根」に変更するといいと思います.すると,p.272,l.-4の$\eta$により$G = G_f \subset S_d$とみなせるため,$|G|$や$|H|$は$d!$の約数になり,$p_i$は$d!$の素因数となります.この結果,$F_i$は$1$の原始$p_i$乗根を含み,例5.2.18, 3)を用いることができます.
(なお,$F$の標数が$p > 0$の場合,「$F$が$1$の原始$d!$乗根を含む」という条件は,「$d < p$」という条件に緩められます.$d < p$なら,$F$の代数閉包は$1$の原始$d!$乗根$\zeta$を含み,$F(\zeta), E(\zeta)$を考えることで証明を完成させられます. )
「$s_i = \psi(t_i)$が分かる」とありますが,これは$\psi$の定義により最初から分かっていることです.
誤:$D(f) = \pm \sqrt{D(f)} = \pm (y_1 - y_2)$
正:$y_1 - y_2 = \pm \sqrt{D(f)}$
(などとするのが良いと思います.少なくとも1つ目の$=$は不成立です.)
誤:$\sigma(z_2) = \omega z_3, \sigma(z_3) = \omega^2 z_2$
正:$\sigma(z_2) = \omega^2 z_2, \sigma(z_3) = \omega z_3$
誤:$u \in E$
正:$u \in K$
左辺の合成の順番が逆.$\mathrm{Tr}_{E/F}(\mathrm{Tr}_{K/E}(u))$とするのが正しい.l.-1とp.281, l.11も同様.
(注意)「$\eta_i = \eta_j$とすると,」よりあとの$\eta_i, \eta_j$は$\zeta_i, \zeta_j$にそれぞれ書き換えた方がより正確.
いくつか直すべき点があります.
列ベクトル${}^t(a_1, \dots, a_n)$が方程式$B \mathbf{x} = 0$の解になるために,行列$B$の$(i, j)$成分は$\eta_i(u_j)$であるべきです.($i$と$j$が逆になっている.)
l.5で$b_{ij} = \eta_i(u_j)$と定義し,これに合わせて他の前後の箇所も修正するのが良いと思います.また,$\eta_*()$の中身が$a_*$になっているところがあるので,これも$u_*$に直す必要があります.($a$を$u$に.)
$B \mathbf{x}=0$の解${}^t(a_1, \dots, a_n)$に対して,$\displaystyle\sum_i c_i (\displaystyle\sum_j a_j \eta_j(u_i)) = 0$は成立するとは限らないです.l.9の$\displaystyle\sum_i a_i \eta_j(u_i)$とl.11の$\displaystyle\sum_j a_j \eta_j(u_i)$とは,添字の付き方が違うことに注意する必要があります.(前者は$a$と$u$の添字$i$が一致.後者は$a$と$\eta$の添字$j$が一致.)
次のようにすれば良いと思います:
$\det B = 0$のとき,$B$の転置行列$C := {}^t B$の行列式も$0$.
方程式$C \mathbf{x}= 0$が非自明な解$\mathbf{x}= {}^t(a_1, \dots, a_n)$($a_j \in E$)を持ち,$\displaystyle\sum_j a_j \eta_j(u_i) = 0$となる.
あとは本の議論の通り.
誤:$F$上一次独立
正:$E$上一次独立
誤:$F$を有限体
正:$F$を無限体
「$\neq 0$」を削除.
($c = 0$となる場合があるため.例えば$f \equiv 0$の場合は$c = 0$になる.$c = 0$でも議論に支障はない.)
(注意)$N / (F^*)^m$の$N$は$N(E^*)$のこと.
誤:$S$の任意の有限部分集合$\{u_1, \dots, u_n\}$に対して
正:$S$のある有限部分集合$\{u_1, \dots, u_n\}$が存在して
(本の定義では例えば$\mathbb{Q}(x, \sqrt{2}) / \mathbb{Q}$に対する$S = \{x, \sqrt{2}\}$が代数的従属の条件を満たさず,$S$は代数的独立になってしまいます.$\{u_1\} := \{x\}$に対する代入写像が単射になるからです.)
誤:$E / F(T')$は
正:$E / F'(T')$は
誤:$P(x) = (\delta_{ij} x - b_{ij})$
正:$P(x) = \det (\delta_{ij} x - b_{ij})$
(注意)この議論は$D$が一意分解環としても成立します.したがって一意分解環は整閉です.
(注意)「実際,」以降の議論により$|P_d| < |M|$となる$d$は有限個しかないので,$|P_d| = |M|$となる$d \in \mathbb{Z}_{\geq 0}$が存在する.
この$d$を以降の議論で用いることで,l.-3で$\displaystyle\sum a_J x_1^{P_J(d)}$を考えたときに$J \neq J'$ならば$x_1$の指数について$P_J(d) \neq P_{J'}(d)$となり,項が互いに打ち消すことなく,$\deg_{x_1} g < \deg_{x_1} \displaystyle\sum a_J x_1^{P_J(d)}$となる.
なおこの$d$は単に$d = 1 + \deg f$としても良い.そのとき$J = (j_1, \dots, j_m) \in M$に対して$p_J(d)$は$d$進法で$j_m \dots j_2 j_1$と表記される$m$桁(以下)の自然数になり,明らかに$J \neq J'$なら$p_J(d) \neq p_{J'}(d)$となる.
誤:$|P_d| \leq |M|$となる$d$
正:$|P_d| = |M|$となる$d$
誤:$\displaystyle\sum a_J x^J$
正:$\displaystyle\sum a_J x_1^{P_J(d)}$
($x$ではなく$x_1$なのと,指数が$J$ではなく$P_J(d)$.)
誤:$D$は$F[u_1, \dots, u_m] = D'[u_1]$上整
正:$D = D'[u_1]$は$D'$上整
(などとするのが良いと思います.)
誤:$m \leq n$
正:$m \geq n$
「$A \neq I$のとき,$(A - I)\mathbf{x} = \mathbf{0}$は非自明な解$\mathbf{x}$を持つので」とあるが,誤り.実際$A = 2I$の場合,$(A - I)\mathbf{x} = \mathbf{0}$は$\mathbf{x} = \mathbf{0}$以外の解を持たない.
$A \neq I$の場合に$\mathbf{0}$が単位元でないことをいうには,次のようにすると良い:
$\mathbf{0}$は単位元と仮定して$A = I$を示す.$A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$とする.
$\mathbf{x} := \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$について,$\mathbf{x} = p(\mathbf{x}, \mathbf{0}) = A\mathbf{x} = \begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix}$.ゆえ$a = 1, c = 0$.
また,$\mathbf{y} := \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$について,$\mathbf{y} = p(\mathbf{y}, \mathbf{0}) = A\mathbf{y}= \begin{pmatrix} b \\ d \end{pmatrix}$.ゆえ$b = 0, d = 1$.したがって$A$は単位行列.$A = I$.
誤:推移律
正:結合律
(注意)最後の「で$gh \notin H$ゆえ...も成り立つ」は(誤りではないが)不要.$g \notin H$に対して$gH = Hg$はすでに示されているため.
誤:$A^n = 0$
正:$A^n = I$
「この場合も$G$はアーベル群」とあるが,誤り.反例は3次対称群$S_3$.
正確には$p$が誘導する群準同型$U(R) \to U(R/I)$の核が$U_1$となる.
誤:$a_1 + I_1 = a_1 b_2 + I$
正:$a_1 + I_1 = a_1 b_2 + I_1$
(最後の$I$に添字をつける.)
(なお全射は定理2.1.30によっても得られる.)
誤:$a_i(1 \leq m \leq n)$
正:$a_i(0 \leq i \leq n)$
誤:$p \mid a_0$かつ$p \not\mid a_0$
正:$p \mid a_0$かつ$p^2 \not\mid a_0$
誤:$R \langle ab \rangle$
正:$R_{\langle ab \rangle}$
2つ目の「$\sum b_{ik} a_{kj}$」を「$\sum a_{ik} b_{kj}$」に変更する.
誤:$\ker \eta = (x^2, y^2)$
正:$\ker \eta = (x^2 - 1, y^2 - 1)$
次の行も「$\mathbb{R}[x, y] / (x^2, y^2)$」を「$\mathbb{R}[x, y] / (x^2 - 1, y^2 - 1)$」に変更する.
(例えば$\eta(x^2) = (1, 0)^2 = (0, 0) = 1 \in \mathbb{R}[G]$なので$x^2 \notin \ker \eta$です.)
この昇鎖に現れるイデアルは全て$F[\mathbb{Q}]$に等しいため,証明として不適切.実際$F[\mathbb{Q}]$において$x^{(1/2)^n}$は単元.
(なお,問2.3.30, 4)では$\mathbb{Q}$の代わりに$\mathbb{Q}_{\geq 0}$を用いているため,こちらの証明は正しい.)
$\delta(r) =$で始まる式が誤り.正しくは次の通り:
$s, t \in \mathbb{Q}$に対しても$\delta(s + t\sqrt{2}) := |s^2 - 2t^2|$とおく.$\delta$は乗法的.
\begin{aligned}
\delta(r) &= \delta(b(\varepsilon + \eta\sqrt{2})) \\
&= \delta(b)\delta(\varepsilon + \eta\sqrt{2}) \\
&= \delta(b)|\varepsilon^2 - 2\eta^2| \\
&\leq \delta(b)(|\varepsilon^2| + 2|\eta^2|) \\
&\leq \delta(b)(1/4 + 2/4) \\
&< \delta(b)
\end{aligned}
誤:$(F[x]/F[x]f(x))[x]$
正:$(F[x]/F[x]f(x))[t]$
(とした方が分かりやすいと思います.)
(注意)本の議論は正しいですが,次のように考えても良いです:
一般に$R$をUFDとするとき,$R$の既約元は多項式環$R[t]$においても既約元.$R = F[x]$, $D = F[t]$とおく.例2.3.11, 2)と系2.3.29より,$R, D$はUFD.仮定より$f(x)$は$R$の既約元なので上のことから$R[t]$における既約元でもある.
今$R[t] = F[x][t] = D[x]$である.よって$f(x)$は$D[x]$における既約元.
あとは本と同じで,$D$の分数体は$F(t)$であるから,補題2.3.36により$f(x)$は$F(t)[x]$における既約元である.
「十分に大きな$n$」とあるが,$n$はすでに使われているので別の文字を用いて「十分大きな$m$に関して$x_m \notin \dots$」などとする.
(注意)$N_k \subsetneq N_{k+1}$となるためには次のように$m_1, m_2, \dots$をとると良い:
$N \subset M$は有限生成でない部分加群とする.
有限生成でないので$N \neq 0$.$0 \neq m_1 \in N$をとる.$N$は有限生成でないので$m_2 \in N - \langle m_1 \rangle$がとれる.$\langle m_1 \rangle \subsetneq \langle m_1, m_2 \rangle$である.
$m_1, \dots, m_i$を$\langle m_1 \rangle \subsetneq \langle m_1, m_2 \rangle \subsetneq \dots \subsetneq \langle m_1, m_2, \dots, m_i \rangle \subset N$を満たすように取れたとして,$N$は有限生成でないから,$m_{i+1} \in N - \langle m_1, m_2, \dots, m_i \rangle$がとれる.
このとき$\langle m_1, m_2, \dots, m_i \rangle \subsetneq \langle m_1, m_2, \dots, m_i, m_{i+1} \rangle$となる.このように帰納的に$m_1, m_2, \dots$を取れば良い.
いくつか誤りがあります.
誤:$V_n = \displaystyle\bigoplus_{i \in \mathbb{N}} k e_i$
正:$V_n = \displaystyle\bigoplus_{1 \leq i \leq n} k e_i$
あとで$a_m e_1 \neq 0$となるために,$m$は$v \in V_m$となる最小の$m$とする必要があります.
誤:$w = \sum_{i=1}^m a_i e_i$
正:$v = \sum_{i=1}^m a_i e_i$
「$T^{m-2}v_1 = a_m e_2$」とありますが,書くとしたら「$T^{m-2}v_1 = a_m e_2 + a_{m-1}e_1$」ですし,実はここは$v_1$を考える必要はなく,$v$に$x^{m-2}$を作用させて$T^{m-2}v = a_m e_2 + a_{m-1}e_1$と$e_1 \in W$と$a_m \neq 0$から$e_2 \in W$とすれば良いように思います.
「$v \in V_n$」とありますが,書くとしたら「$v \in V_m$」ですし,これは$v$の取り方から,議論せずとも最初からわかっていることです.ここには「$V_m \subset W$」と書くのが良いと思います.
(注意)補足.$W$が$V_n$の形の部分加群の和となることは次のようにしてわかる:
$0 \neq v \in W$ごとに$v \in V_{m}$を満たす最小の$m$をとり$m_v$とする.
本のここまでの議論より$V_{m_v} \subset W$がわかる.また,$m_v$の取り方から,もちろん$\{v\} \subset V_{m_v}$.ゆえに$\bigcup_{v \in W - \{0\}} V_{m_v} \subset W \subset \bigcup_{v \in W - \{0\}} V_{m_v}$となり,$W = \bigcup_{v \in W - \{0\}} V_{m_v}$を得る.$\{m_v \mid v \in W - \{0\}\}$が最大元$M$を持てば,$W = V_M$であるし,最大元を持たなければ$W = V$となる.
下から2個目の行列(有理標準形)が間違っています.
$xI_4 - A \sim \mathrm{diag}(1, 1, d_1, d_2)$(ただし$d_1 = x - 1$, $d_2 = (x - 1)(x + 1)^2 = x^3 + x^2 - x - 1$)となっているため,
p.161のように$d_1, d_2$の同伴行列を斜めに並べたものが正しい有理標準形です.
誤:$y' \in M_1 \otimes 1_N$
正:$y' \in M_1 \otimes N$
誤:$\mathbb{R} \cdot 1$
正:$F \cdot 1$
略解が問題と呼応していません.
1), 2)が逆なのと,「1)により...示せた.」の部分は不要です.
また,3)も問と略解が噛み合っていない気がします.
(p.196, 問3.5.26, 1)の項目もご覧ください.)
「$\Delta$は$\mathbb{C}$上有限次元だから$\mathbb{C}$が代数閉体であることから$\mathbb{C}$であり」とありますが,$\Delta$が非可換体の場合はこれは自明ではないと思います.
他の不必要な議論も削ぎ落として,問3.5.26の略解全体を次のように書き換えれば良いと思います:
$R$は$\mathbb{C}$代数なので,$\mathbb{C} \subset Z(R)$.$a \in R$を任意に取る.$\mathbb{C}[a]$は$\mathbb{C} \subset Z(R)$により可換環.また,可除環$R$の部分環なので整域.$\mathbb{C}[a] \subset R$は$\mathbb{C}$上有限次元なので,$a$は$\mathbb{C}$上代数的.$\mathbb{C}$は代数閉体なので,$a \in \mathbb{C}$.ゆえ$R \subset \mathbb{C}$.$R = \mathbb{C}$.
問と略解が噛み合っていません.
誤:$(13)v_1 = \omega v_1$
正:$(13)v_2 = \omega v_1$
誤:$(13)(e_1 - e_2) = e_1 - e_3$
正:$(13)(e_1 - e_2) = -(e_2 - e_3)$
$R_5, R_6$の定義がない.
「...$= 1$から」のあとの式が違います.($d$は出てこないので.)
誤:$\mathrm{lcm}\{k_1(x), \dots, k_n(x)\}$
正:$\mathrm{lcm}\{k_1(x), \dots, k_{n-1}(x)\}$
(注意)$h(x) \in E[x]$はモニック$p(t) = t^n + \dots \in F[x][t]$によって$p(h(x)) = 0$となるとき,$h(x)$の係数が$F$上代数的であることを導く議論は次のようにすると良い:
まず,モニック$f, g \in E[x]$について$fg \in F[x]$ならば,$E$の代数閉包における$fg$の根は$F$上代数的であり,$f, g$の係数は$fg$の根の対称式なので,$f, g$の係数は$F$上代数的.
$p(h(x)) = 0$より,$q(t) \in E[x][t]$が存在して$p(t) = (t - h(x))q(x)$.$N = \deg h(x) + 1$とおくと,$F[x] \ni p(x^N) = (x^N - h(x))q(x^N)$なので,先のことから$x^N - h(x)$の係数は$F$上代数的.
誤:$t^2 - ut + v$
正:$t^2 - ut + v^n$
「$\tilde{\tau}(\zeta) = \zeta^{-1}$」とありますが,不成立です.
$\tilde{\tau} \in \mathrm{Gal}(E/F)$は$\zeta \in F$を動かさないからです.($\tilde{\tau}(\zeta) = \zeta$.)
末尾に$\}$を書き加える.
誤:$-(3p^3 + 27q^2)$
正:$-(4p^3 + 27q^2)$