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SO(3)の有限部分群

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$$\newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{act}[0]{\curvearrowright} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{End}[0]{\mathrm{End}} \newcommand{inpro}[1]{\mathopen{\langle}#1\mathclose{\rangle}} \newcommand{mapsfromup}[0]{\genfrac{}{}{0}{}{\xymatrix@=3pt{{} \\ {}\ar@/^15pt/[u]}}{}} \newcommand{mapstodown}[0]{\genfrac{}{}{0}{}{\xymatrix@=3pt{{} \ar@/^15pt/[d] \\ {}}}{}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{norm}[1]{\left\lVert#1\right\rVert} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{set}[2]{\{\, #1 \mid #2\,\}} \newcommand{setmid}[0]{\mathrel{}\middle|\mathrel{}} \newcommand{SO}[0]{\mathrm{SO}(3)} \newcommand{span}[0]{\mathrm{span}} \newcommand{Stab}[0]{\mathrm{Stab}} \newcommand{tr}[0]{\mathrm{tr}} \newcommand{ve}[0]{\varepsilon} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

$\SO$の有限部分群の分類

$\SO$の有限部分群を分類します。
正多面体が5種類(双対を同一視すると3種類)あり、これらの向きを保つ等長変換群が$\SO$の有限部分群としてまずある。正多面体でなくても、正多角形の柱を考えることで二面体群が$\SO$に入り、更にその部分群として巡回群がある。

実はこれらが$\SO$の有限部分群を尽くしていることを示す。

固定点

$G\subset\SO$を有限部分群とする。通常の回転により$G\act S^2$という向きを保つ等長作用が入る。ここでもし、この作用が自由なら$X:=S^2/G$には多様体構造が入り、向きと計量が$S^2$から誘導される。しかしそんなことは起こりえない。実際、被覆写像はEuler数を次数倍するから、向き付き可能閉曲面の分類からあり得ないことが分かる。故に、固定点と向き合う必要がある。

$$\tilde{F}:=\set{p\in S^2}{\exists g\neq e\in G\ \ gp=p}$$
は有限集合である。また、$p\in \tilde{F}$に対しその固定部分群$\Stab(p):=\set{g\in G}{gp=g}$は巡回群である。

$G\subset\SO$に注意。単位行列でない$\SO$の元は固有値1を重複度1で持つから、$S^2$での固定点は丁度2個である。故に$\tilde{F}$の濃度は高々$2(\abs{G}-1)$で抑えられる。
$p\in S^2$を固定する$\SO$の元は$S^1$をなし、$\Stab(p)$はその有限部分群なので巡回群である。

$\pi:S^2\to X:=S^2/G$ において、$F:=\pi(\tilde{F})$$\abs{F}\leq3$である。

Burnsideの補題から従います。実際、$\tilde{F}$には$G$作用が入り、$F=\tilde{F}/G$であることから
$$\abs{F}=\frac1{\abs{G}}\sum_{g\in G}\tilde{F}^g=\frac1{\abs{G}}\qty(\sum_{g\neq e}2 +\abs{\tilde{F}})$$
であり、$\abs{\tilde{F}}\leq2(\abs{G}-1)$から$\abs{F}<4$となり整数性から従う。

実際にはもっと強いことが分かる。$F=\{x_1,\dots,x_r\}$とし、$p_i\in\pi^{-1}(x_i)$に対して$n_i:=\abs{\Stab(p_i)}$と置く、これは$p_i$の取り方に依らない。軌道・固定化群定理から$\abs{\tilde{F}}=\abs{G}\qty(\frac1{n_1}+\dots+\frac1{n_r})$より
$$\sum_{i=1}^r\qty(1-\frac1{n_i})=2-\frac2{\abs{G}}$$
となる。ここで$n_i\geq2$に注意。まず、$r\leq1$$2-\frac2{\abs{G}}<1$を導くから、$G$は自明である。次に、$r=2$$\frac1{n_1}+\frac1{n_2}=\frac2{\abs{G}}$となるが、$n_1,n_2$$\abs{G}$の約数だから、あり得るのは$n_1=n_2=\abs{G}$だけである。この場合は$G$は巡回群である。故に$r=3$だけが非自明なものを含む。以下$r=3$とする。

$$\sum_{i=1}^3\qty(1-\frac1{n_i})<2,\ \ n_1,n_2,n_3\in\N_{\geq2}$$
の解は$(n_1,n_2,n_3)=(2,2,n),(2,3,3),(2,3,4),(2,3,5)$及びそれらの並べ替えだけ。そのとき、$\abs{G}$はそれぞれ$2n,12,24,60$となる。勿論これが二面体群と正多面体群になるのだが。

できる。

一般に群作用が自由でなかったら、その商は少し厄介になる。$G\act S^2$は自由な部分$S^2\setminus \tilde{F}$において、$\pi:S^2\setminus\tilde{F}\to X\setminus F$という被覆写像を誘導する。特に、$X\setminus F$には誘導される向きと計量が入る。$p\in\tilde{F}$の近傍では$\Stab(p)$は巡回群として回転で作用するから、分かりやすい。特に、$\pi(p)\in X$は局所的にユークリッドであり、$X$は向き付け可能閉曲面となる。しかし$X$には普通の意味での(Riemann)計量が誘導されない。例えば$\R^2$に回転で巡回群が作用するとき、その商は位相的には$\R^2$だが、特異点ではとんがっている(角度が$\frac{2\pi}{\text{巡回群}}$になる)。これと同じことが起きる。

$X$は位相的には球面と同相。

向き付け可能閉曲面の分類から、Euler数が2であることを示せばいいです。実は補題3のあたりで実質的にEuler数を見ていることに軽く触れておきます。特に、以下の議論で上手くいくことはたまたまではないです。
$\chi(X)=\chi(X\setminus F)+\abs{F},\ \chi(S^2)=\chi(S^2\setminus\tilde{F})+\abs{\tilde{F}}$はEuler数の定義(三角形分割して点や辺や面を数える)から分かります(抜いた点でコンパクトではないが、例えば$S^1$をそこに張り付けてもEuler数は変わらないから問題ない)。次に、$\pi$は自由な部分で被覆写像だから$\chi(S^2\setminus\tilde{F})=\abs{G}\chi(X\setminus F)$となる。補題2の証明中より
$$\abs{F}=2-\frac1{\abs{G}}\qty(2-\abs{\tilde{F}})=2-\chi(X\setminus F)$$
より分かる。

記号を思い出す。$F=\{x_1,x_2,x_3\}$であり、$\pi^{-1}(x_i)$での$\Stab\cong\Z/n_i\Z$であった。つまり、$X$とは位相的な球面にて三点だけ角度が$\frac{2\pi}{n_i}$になっているような図形である。そして$n_1,n_2,n_3$はある程度決まっていた。

$$G=< a_1,a_2,a_3\mid a_1^{n_1}=a_2^{n_2}=a_3^{n_3}=abc=e>$$

$G$$\pi:S^2\setminus\tilde{F}\to X\setminus F$のデッキ変換群であり、特に$G$$\pi_1(X\setminus F)$の商である。ここで球面から三点抜いた空間の基本群は、抜いた各点$x_1,x_2,x_3$の周りを一周するループ$a_1,a_2,a_3$により
$\pi_1(X\setminus F)=< a_1,a_2,a_3\mid a_1a_2a_3=e>$
となる(自由群$F_2$である)。さて、$a_1,a_2,a_3$を商により$G$に落としたものを同じ記号で書く。これらが$G$を生成するわけだが、この$S^2$への作用は$\tilde{F}$の点周りでの巡回群作用である。特に、$a_i^{n_i}=e$となる。これで主張の右辺から左辺への全射が作れた。
今、$\abs{G}$$2n$$12,24,60$のいずれか($n_1,n_2,n_3$に対応して)だが、主張の右辺の群は丁度これらを位数に持つことが分かり、故に上の全射は同型である。また、それが二面体群、正多面体群になることも計算すると分かる。

これで証明になっているが、計算せずに分かりたい。もっと幾何的に見たい。

もう少し続く

今、$X$はコンパクト距離空間である。特異点のせいでRiemann多様体とまでは言えないが、そこがマイルドなので似たようなもんである。
特に、任意の二点間に最短曲線が存在(Ascoli-Arzelàの定理をほぼ弧長パラメータの曲線に対し使う)する。$\pi:S^2\to X$で持ち上げても最短であり、$S^2$の大円の一部になる。
$x_1,x_2,x_3\in X$のそれぞれを結ぶ最短曲線で三角形を作る。この三辺は端点以外で交わらない。実際、もし交わっていたら$S^2$に持ち上げたときに大円二つが対蹠点で交わる図ができるが、それは大円の半分以上を使っていることになるから反対側を使った方がより短くなるので無理。
この三角形を$\Delta$、その外側を$\Delta'$とする。そのまま$S^2$に持ち上げたらどっちも測地三角形で、三辺の長さは同じ。故に角度も同じであり、$\Delta$$\Delta'$は合同(向きは逆で、貝殻みたいに合わせたら$X\approx S^2$になる)。足して$\frac{2\pi}{n_i}$になるから、それぞれの角度は$\frac{\pi}{n_i}$となった。
角度が決まってる測地三角形$\Delta$はこれで一意に決まり、その鏡映$\Delta'$と辺で合わせてできる$X$も一意に決まる。一意とは、距離まで込みで一意ということである。

$X=\Delta\cup\Delta'$に対して$\pi^{-1}(\Delta),\pi^{-1}(\Delta')\subset S^2$は上の測地三角形でのタイリングを与え、それは二面体(正多角形の柱)や正多面体を重心細分したものである。

$G\act S^2$はほとんどの点では自由だから$\pi^{-1}(\mathrm{Int}\Delta)$の連結成分の個数は$\abs{G}$であり、タイリングを保つように$S^2$に作用している。故に、タイリングの絵を書けばちゃんと正多面体群や二面体群になっていることが分かる。重心細分とは、元の多面体の点に加えて、辺や面の重心を新たに点に加える操作だが、その点を回る変換とは元の多面体の点や辺や面を中心に回す変換である。多面体の等長変換群がそのようなもので尽きていることは容易に分かる。

「分類」について

上での議論は$G$の同型類しか分類していないように見えるが、実際には$G\subset \SO$の入り方まで込みで分類している。つまり、入り方が$\SO$の共役作用を除いて一意である。実際、$X$の距離構造が一意に復元できたことからこれが従う。

投稿日:1011
更新日:1011
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SOFT ANALYSIS

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