0

東大数理院試過去問解答例(2020B05)

187
0

ここでは東大数理の修士課程の院試の2020B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2020B05

αを実定数とする。R2上のベクトル場Xα
Xα=xx+αyy
で定義する。またS1={(x,y)R2|x2+y2=1}とする。ここで実線型空間
Vα:={f:R2R|f は C 級かつ Xαf=0}
Wα:={f:R2{(0,0)}R|f は C 級かつ Xαf=0}
Z:={f:S1R|g は C 級}
を考える。

  1. α>0とする。線型同型WαZを一つ構成しなさい。
  2. α>0とする。このときVαの元は定数関数のみであることを示しなさい。
  3. α<0とする。このときVαは有限次元でないことを示しなさい。
  1. F:ZVαを定義する。関数a1:(π2,π2)(,)a1(θ)=sinθcosαθで定める。この関数は任意の点で微分が正なので逆関数定理により、a:(,)(π2,π2)を定める。ここでfZに対して
    F(f):(0,)×RWα(x,y)fa(yxα)
    とおく。次に関数b1:(0,π)(,)b1(θ)=cosθsin1αθで定める。この関数は任意の点で微分が負なので逆関数定理により、b:(,)(0,π)を定める。ここでfZに対して
    F(f):R×(0,)Wα(x,y)fb(xy1α)
    とおく。あとは(,0)×R上でF(f)(x,y)=f(πa(y(x)α))と定義し、R×(,0)上ではF(f)(x,y)=f(b(x(y)1α))と定義する。以上で定めたF(f)たちは共通部分で一致するからR2{(0,0)}上の関数を定め、しかも所望の微分方程式を満たしているからF(f)Vαが従う。以上から線型写像F:ZVαが定義できた。まずF(f)|S1=fより単射性が従う。次に任意のgWαは与えられたベクトル場のフロー上で不変であるから、任意のgWαについてF(g|S1)=gであるから全射である。以上から線型同型Fが構成できた。
  2. まずWαの関数FR2全体に延長されるためには、(0,0)では連続でなければならない。よって任意の(cosθ1,sinθ1),(cosθ2,sinθ2)についてf=F|S1
    f(cosθ1,sinθ1)=limtf(etcosθ1,eαtsinθ1)=f(0,0)=limtf(etcosθ2,eαtsinθ2)=f(cosθ2,sinθ2)
    を満たす。以上からこのときfは定数であり、F=F(f)も定数である。
  3. α<0のとき、Vαexp(1|x|α|y|),exp(2|x|α|y|),exp(3|x|α|y|),exp(4|x|α|y|),を含むから無限次元である。
投稿日:2024313
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中