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東大数理院試過去問解答例(2020B05)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2020B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2020B05

$\alpha$を実定数とする。$\mathbb{R}^2$上のベクトル場$X_\alpha$
$$ X_\alpha=x\frac{\partial}{\partial x}+\alpha y\frac{\partial}{\partial y} $$
で定義する。また$S^1=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2|x^2+y^2=1\}$とする。ここで実線型空間
$$ V_\alpha:=\{f:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}|f \textsf{ は }C^\infty\textsf{ 級かつ }X_\alpha f=0\} $$
$$ W_\alpha:=\{f:\mathbb{R}^2\backslash\{(0,0)\}\to\mathbb{R}|f \textsf{ は }C^\infty\textsf{ 級かつ }X_\alpha f=0\} $$
$$ Z:=\{f:S^1\to\mathbb{R}|g\textsf{ は }C^\infty\textsf{ 級}\} $$
を考える。

  1. $\alpha>0$とする。線型同型$W_\alpha\simeq Z$を一つ構成しなさい。
  2. $\alpha>0$とする。このとき$V_\alpha$の元は定数関数のみであることを示しなさい。
  3. $\alpha<0$とする。このとき$V_\alpha$は有限次元でないことを示しなさい。
  1. $F:Z\to V_\alpha$を定義する。関数$a^{-1}:(-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2})\to(-\infty,\infty)$$a^{-1}(\theta)=\frac{\sin\theta}{\cos^\alpha \theta}$で定める。この関数は任意の点で微分が正なので逆関数定理により、$a:(-\infty,\infty)\to(-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2})$を定める。ここで$f\in Z$に対して
    $$ \begin{split} F(f):(0,\infty)\times\mathbb{R}&\to{W_\alpha}\\ (x,y)&\mapsto f\circ a\left(\frac{y}{x^\alpha}\right) \end{split} $$
    とおく。次に関数$b^{-1}:(0,{\pi})\to(-\infty,\infty)$$b^{-1}(\theta)=\frac{\cos\theta}{\sin^{\frac{1}{\alpha}} \theta}$で定める。この関数は任意の点で微分が負なので逆関数定理により、$b:(-\infty,\infty)\to(0,{\pi})$を定める。ここで$f\in Z$に対して
    $$ \begin{split} F(f):\mathbb{R}\times(0,\infty)&\to{W_\alpha}\\ (x,y)&\mapsto f\circ b\left(\frac{x}{y^{\frac{1}{\alpha}}}\right) \end{split} $$
    とおく。あとは$(-\infty,0)\times\mathbb{R}$上で$F(f)(x,y)=f\left(\pi-a\left(\frac{y}{(-x)^{\alpha}}\right)\right)$と定義し、$\mathbb{R}\times(-\infty,0)$上では$F(f)(x,y)=f\left(-b\left(\frac{x}{(-y)^{\frac{1}{\alpha}}}\right)\right)$と定義する。以上で定めた$F(f)$たちは共通部分で一致するから$\mathbb{R}^2\backslash\{(0,0)\}$上の関数を定め、しかも所望の微分方程式を満たしているから$F(f)\in V_\alpha$が従う。以上から線型写像$F:Z\to V_\alpha$が定義できた。まず$F(f)|_{S^1}=f$より単射性が従う。次に任意の$g\in W_\alpha$は与えられたベクトル場のフロー上で不変であるから、任意の$g\in W_\alpha$について$F(g|_{S^1})=g$であるから全射である。以上から線型同型$F$が構成できた。
  2. まず$W_\alpha$の関数$F$$\mathbb{R}^2$全体に延長されるためには、$(0,0)$では連続でなければならない。よって任意の$(\cos\theta_1,\sin\theta_1),(\cos\theta_2,\sin\theta_2)$について$f=F|_{S^1}$
    $$ \begin{split} f(\cos\theta_1,\sin\theta_1)&=\lim_{t\to-\infty}f( e^t\cos\theta_1,e^{\alpha t}\sin\theta_1)\\ &=f(0,0)\\ &=\lim_{t\to-\infty}f(e^t\cos\theta_2,e^{\alpha t}\sin\theta_2)\\ &=f(\cos\theta_2,\sin\theta_2) \end{split} $$
    を満たす。以上からこのとき$f$は定数であり、$F=F(f)$も定数である。
  3. $\alpha<0$のとき、$V_\alpha$$\exp(-\frac{1}{|x|^{\alpha}|y|}),\exp(-\frac{2}{|x|^{\alpha}|y|}),\exp(-\frac{3}{|x|^{\alpha}|y|}),\exp(-\frac{4}{|x|^{\alpha}|y|}),\cdots$を含むから無限次元である。
投稿日:313

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佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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