ここでは東大数理の修士課程の院試の2020B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2020B05
を実定数とする。上のベクトル場を
で定義する。またとする。ここで実線型空間
を考える。
- とする。線型同型を一つ構成しなさい。
- とする。このときの元は定数関数のみであることを示しなさい。
- とする。このときは有限次元でないことを示しなさい。
- を定義する。関数をで定める。この関数は任意の点で微分が正なので逆関数定理により、を定める。ここでに対して
とおく。次に関数をで定める。この関数は任意の点で微分が負なので逆関数定理により、を定める。ここでに対して
とおく。あとは上でと定義し、上ではと定義する。以上で定めたたちは共通部分で一致するから上の関数を定め、しかも所望の微分方程式を満たしているからが従う。以上から線型写像が定義できた。まずより単射性が従う。次に任意のは与えられたベクトル場のフロー上で不変であるから、任意のについてであるから全射である。以上から線型同型が構成できた。 - まずの関数が全体に延長されるためには、では連続でなければならない。よって任意のについては
を満たす。以上からこのときは定数であり、も定数である。 - のとき、はを含むから無限次元である。