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大学数学基礎解説
文献あり

特別な級数の計算

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1
目標

n=1ann
のような形の級数の収束値を適切な条件の下、自在に求められるようにする。
例えば、以下の式が成り立つことを示せます。
π5050+105+15log(1+52)=113+1618

本の紹介

級数計算公式の出典

Elias M.Stein,Rami Shakarchi(スタイン、シャカルチ)「フーリエ解析入門」
第8章練習13を証明し、練習14~問題1までを紹介します。
その後、本には載っていない級数を計算します。

練習13

{an}n=を複素数列でn=mmodq に対してan=amであるとする。
このとき級数
n=1ann
が収束するのは
n=1qan=0
のとき、かつそのときに限ることを示せ。
[ヒント:部分和の公式]

本の都合上{an}n=となっていますが、気にしないでください。

また、ヒントは第2章練習7のDirichletの収束判定法を指しています。
十分性の証明で使うので、収束判定法についても載せておきます(証明略)。

Dirichletの収束判定法

複素数列{an}n=1について、
ある実数M>0であって、全ての自然数Nに対して
|n=1Nan|MなるMが存在し、
一方で実数列{bn}n=1は単調減少かつ0に収束するとき、
n=1anbnは収束する。

十分性

n=1qan=0が成り立つとする。この周期性から、M:=max1sq{|n=1san|}と置けば、全ての自然数Nに対し、
|n=1Nan|M
が成り立つので、複素数列{an}n=1と実数列{1n}n=1について、
Dirichletの収束判定法を使えば良い。

必要性

うまい方法がないか考えましたが、計算をごり押しするしかなさそうです。
(追記:2024,2/20 コメントにうまい方法があるのでそちらが参考になります)
n=1ann
が収束するとする。
Q=n=1qan, α=max1Nq|aN|
と置いておく。Q=0を示せば良い。
q項ずつ足していくことを考えれば次の表示を得る。

n=1ann=k=1i=1qa(k1)q+i(k1)q+i
右辺のkについての総和の内部を変形すると、次の表示を得る。

i=1qa(k1)q+i(k1)q+i=i=1qa(k1)q+ikq+i=1q(qi)a(k1)q+i{(k1)q+i}kq=Qkq+i=1q(qi)a(k1)q+i{(k1)q+i}kq
右辺第2項を評価すると次を得る。
|i=1q(qi)a(k1)q+i{(k1)q+i}kq|i=1qqαkqkq=αk2
従って、k=1|i=1q(qi)a(k1)q+i{(k1)q+i}kq|k=1αk2=π26α
が成り立つ。すなわち絶対収束するから、もとの級数も収束する。
L=k=1i=1q(qi)a(k1)q+i{(k1)q+i}kq (<)
と置いておく。

以上のことより、
n=1ann=k=1i=1qa(k1)q+i(k1)q+i=k=1(Qkq+i=1q(qi)a(k1)q+i{(k1)q+i}kq)=Qqk=11k+L
最左辺は有限値で、最右辺の調和級数は発散するから、Q=0である。
(正確には調和級数を左辺、それ以外を右辺とすべきですが、面倒だから許して)

この練習13によって、後述の練習15の級数が収束することが保証されます。その応用として、後述の練習16、問題1で多くの級数の収束値が分かります。

練習14(抜粋)

F(θ)={i(πθ) (πθ<0)0        (θ=0)i(πθ)   (0<θπ)
として、周期2πR上に拡張したものを改めてF(θ)と置く。

θ0mod2πのとき級数
E(θ)=n=1einθn
は収束し、
E(θ)=12log(122cosθ)+12F(θ)
が成り立つ。

練習14について

赤字で書かれた部分は本の誤植を訂正したものです。

なお練習14の証明は、英語で書かれていますが、
https://math.stackexchange.com/questions/2016440/an-exercise-from-stein-and-shakarchis-fourier-analysis-exercise-14-chapter
が参考になります。

練習15(抜粋)

{an}n=を、n=mmodq のときan=amであり、
n=1qan=0をみたすものとする。
(a)
A(m)=n=1qanζmn,  ζ=e2πiq
と置く。このとき、
n=1ann=1qm=1q1A(m)E(2πmq)
が成り立つ。

(b) {an}n=が奇(am=am,mZ)のとき、
A(m)=1n<q2an(ζmnζmn)
が成り立つ。

(c){an}n=が奇のとき、
n=1ann=12qm=1q1A(m)F(2πmq)
が成り立つ。

この練習15(a)及び(c)はもう少し簡略化することができます。
本には載っていないので、証明も書いておきます。

{an}n=を、n=mmodq のときan=amであり、
n=1qan=0をみたすものとする。

(a'){an}n=実数列のとき、
q:oddn=1ann=2qm=1q12Re(A(m)E(2πmq))
q:evenn=1ann=2qm=1q22Re(A(m)E(2πmq))log2qn=1q(1)nan

が成り立つ。

(c'){an}n=が奇のとき、
n=1ann=1qm=1q21A(m)F(2πmq)
が成り立つ。

(a')

まずA(qm)=A(m)を示す。
A(qm)=n=1qanζ(qm)n=n=1qanζmn=n=1qanζmn=n=1qanζmn=A(m)

次に、Eについても同様の式が成り立つことを場合分けして示す。
Eの虚部にあたるFについて考えれば良い。Fの周期性に注意せよ。

0<2πmqπ のとき
F(2π(qm)q)=F(2π(qm)q2π)=i(π(2π(qm)q2π))=i(π2πmq)=F(2πmq)

π2πmq<2π のとき
F(2π(qm)q)=i(π2π(qm)q)=i(π(2πmq2π))=F(2πmq2π)=F(2πmq)
従って、次の式が成り立つ。
A(m)E(2πmq)=A(qm)E(2π(qm)q)
よって、qが奇数のときはOK。
qが偶数の場合は上記に加えて、
A(q2)=n=1q(1)nan, E(2πq2q)=E(π)=log2と計算できるからOK。

(c')

まずA(qm)=A(m)を示す。
A(qm)=n=1qanζ(qm)n=n=1qanζmn=n=0q1aqnζm(qn) (n=qn)=n=0q1anζmn=n=1qanζmn (a0ζm0=aqζmq)=A(m)

従って、次の式が成り立つ。
A(m)F(2πmq)=A(qm)F(2π(qm)q)
よって、qが奇数のときはOK。
qが偶数の場合は上記に加えて、
F(2πq2q)=F(π)=0と計算できるからOK。

(練習16)

{an}n=11,1,0を繰り返す奇な数列(q=3)とすると、
π33=112+1415+1718+

(問題1)

(a){an}n=11,0,0,0,1,0を繰り返す奇な数列(q=6)とすると、π23=115+17111+113

(b){an}n=11,0,1,0,1,0,1,0を繰り返す奇な数列(q=8)とすると、
π22=1+131517+19+111

(c){an}n=11,1,1,1,1,1,0を繰り返す奇な数列(q=7)とすると、
π7=1+1213+141516

(d){an}n=11,0,1,0,1,0,1,0を繰り返す偶な数列(q=8)とすると、
log(1+2)2=11315+17+19111

(e){an}n=11,1,1,1,0を繰り返す偶な数列(q=5)とすると、
25log(1+52)=11213+14+1617

練習14~問題1までの証明は中国語で書かれていますが、
https://zhuanlan.zhihu.com/p/672299242?utm_id=0
が参考になります。

他の級数の計算

以下、数列は特に指定がなければ実数列を考えているものとします。

本で挙げられていた級数は上記の6つでしたが、他にもまだ計算できそうです。
今考えている数列全体がなすR上(q1)次元ベクトル空間の基底を、数列の循環部分の表記が次になるものを取ることにします。
{(1,1,0,,0)    (1,0,,0,1)
(初めのq項の総和を0にしなければならないので次元が分かります)
この基底の収束値を、他の級数の収束値も駆使しながら求めていきます。
q=2,3,4,5,6,8に対し計算します。

今考えている級数全体がなすR上ベクトル空間は当然1次元です。
有理数列による級数全体がなすQ上ベクトル空間としても、(q1)次元になるとは限りません(最小の反例はq=4)。

q=2の場合(メルカトル級数)

{an}n=11,1を繰り返す数列とすると、log2=112+1314+1516+=:s1(2)

数列が奇ではないから練習15の系(a')の
n=1ann=2qm=1q22Re(A(m)E(2πmq))log2qn=1q(1)nan
を使うと、
112+1314+1516+=log22(11)=log2

q=3の場合

{an}n=11,0,1を繰り返す数列とすると、π63+12log3=113+1416+1719=:s2(3)

A(1)=3232i, E(2π13)=12log13+π6i
と計算できるから、
113+1416+1719=23(π4334log13)=π63+12log3

q=3の場合の基底の収束値

命題2及び上記より、
π33=112+1415+1718+=:s1(3)
π63+12log3=113+1416+1719=:s2(3)

使い方

{an}n=11,1,2を繰り返す数列とすると、log3=1+1223+14+1526

これは、2s2(3)s1(3)から従う。

q=4の場合

(a)
{an}n=11,1,0,0を繰り返す数列とすると、π8+14log2=112+1516=:s1(4)
(b)(ライプニッツ級数)
{an}n=11,0,1,0を繰り返す奇な数列とすると、π4=113+1517=:s2(4)

(a)

A(1)=1i, E(2π14)=12log12+π4i
と計算できるから、

112+1516=24(π4+12log12)log24(11)=π8+14log2

(b)

数列が奇であるから練習15の系(c')の
n=1ann=1qm=1q21A(m)F(2πmq)
より、
113+1517=14A(1)F(2π14)=14(ii)(π2i)=π4

q=4の場合の基底の収束値

π8+14log2=112+1516=s1(4)
π4=113+1517=s2(4)
π8+34log2=114+1518=:s3(4)

最後の式は、
12s1(2)+s1(4)
より従う。

3s1(4)s2(4)s3(4)=0より、{an}n=11,3,1,1を繰り返す数列とすれば、
0=132+13+14+

q=4のとき、有理数列による級数全体がなすQ上ベクトル空間は2次元である。

上記の例2より、次元は2以下である。生成系としてs1(4),s2(4)を取る。
a,bQが、as1(4)+bs2(4)=0 をみたしているとする。
整理すれば、
(a+2b)π=2alog2
を得る。
a+2b0 とすると、e(a+2b)π=22a
ここで、左辺は超越数であることが知られているが、右辺は超越数でないので矛盾。
故に、a+2b=0であり、a=0,b=0 が得られるから、一次独立である。

さて、q=5の場合で使うので2つの角度の正弦と余弦をメモしておきます。
(こいつらのせいで二重根号地獄)

sin25π=10+254, cos25π=514 
sin45π=10254, cos45π=5+14

まず計算が楽な、奇な数列による級数の収束値を考えます。次に命題3(e)を利用することで指定した基底のうち3つは求まります。これにより上記の二重根号を含む計算を若干工夫することができます。
(Q.残りの1つは?  A.そんなもん力技だよ)

q=5の場合

(a){an}n=11,1,1,1,0を繰り返す奇な数列とすると、π2550+105=1+121314+16+17

(b){an}n=11,1,1,1,0を繰り返す奇な数列とすると、π2550105=112+1314+1617+

(c){an}n=11,0,0,0,1を繰り返す数列とすると、π5025+105+14log5+125log(1+52)=115+16110+=:s4(5)

二重根号同士の和について

a>0及びb>0a2bをみたすとき、
(a+b±ab)2=2a±2a2b
より、
a+b±ab=2a±2a2b
が従います。
この形ではない二重根号同士の和も同様に計算できます。
証明内では詳しく書いていないので、各自で計算してみてください。

(a)

1+121314+16+17=15{A(1)F(2π15)+A(2)F(2π25)}=15{2i(sin25π+sin45π)3π5i+2i(sin25πsin45π)π5i}=2π25{3(10+254+10254)(10+25410254)}=π25{10+25+21025}=π2550+105

(b)

112+1314+1617+=15{A(1)F(2π15)+A(2)F(2π25)}=15{2i(sin25πsin45π)3π5i2i(sin25π+sin45π)π5i}=2π25{3(10+25410254)+(10+254+10254)}=π25{210+251025}=π2550105

(c)

A(1)=1+ζ1, A(2)=1+ζ2 E(2π14)=12log(255)+3π10i, E(2π24)=12log(25+5)+π10i
と計算できるから、

115+16110+=25{(3π10sin25π+558log(255))+(π10sin45π5+58log(25+5))}=25{π40(310+25+1025)58log15+58log(5+555)}=25{π2025+105+58log5+54log(1+52)}=π5025+105+14log5+125log(1+52)

q=5の場合の基底の収束値

π5050105+15log(1+52)=112+1617=:s1(5)
π5050+105+15log(1+52)=113+1618=:s2(5)
π2525+105=114+1619+111114=:s3(5)
π5025+105+14log5+125log(1+52)=115+16110+=s4(5)

s1(5)

(b)と命題3(e)を辺々足して2で割れば良い。

s2(5)

(a)と命題3(e)を辺々足して2で割れば良い。

s3(5)

(a)と(b)を辺々足して2で割れば良い。

q=6の場合

{an}n=11,1,0,0,0,0を繰り返す数列とすると、π63+13log2=112+1718=:s1(6)

A(1)=1, E(2π16)=π3i
A(2)=3i, E(2π26)=12log3+π6i
と計算できるから、
112+1718=26π23log26(11)=π63+13log2

q=6の場合の基底の収束値

π63+13log2=112+1718=s1(6)
π43+14log3=113+1719=:s2(6)
π33+13log2=114+17110=:s3(6)
π23=115+17111=:s4(6)
π43+13log2+14log3=116+17112=:s5(6)

s2(6)

13s1(2)+12s2(3)+s1(6)
より従う。

s3(6)

12s1(3)+s1(6)
より従う。

s5(6)

12s2(3)+s1(6)
より従う。

(a)3s1(6)3s3(6)+s4(6)=0より、{an}n=11,3,0,3,1,0を繰り返す奇な数列とすれば、
0=132+3415

(b)3s2(6)+3s3(6)2s4(6)3s5(6)=0より、{an}n=11,0,3,3,2,3を繰り返す数列とすれば、
0=13334+25+36+

q=7の場合

無理!(特殊な場合として命題3(c)は計算できています)

q=8の場合

(a){an}n=11,1,0,0,0,0,0,0を繰り返す数列とすると、π82+38log2+142log(1+2)=112+19110=:s1(8)

(b){an}n=11,0,0,0,0,0,1,0を繰り返す奇な数列とすると、1+28π=117+19115=:s6(8)

(a)

A(1)=12+(112)i, E(2π18)=12log(122)+3π8i
A(2)=1i, E(2π28)=12log12+π4i
A(3)=12(1+12)i, E(2π38)=12log(12+2)+π8i
と計算できるから、
112+19110=28{(3π8(112)+122log(122))+(π4+12log12)+(π8(1+12)122log(12+2))}log28(11)=π82+18log2+182log(3+22)=π82+18log2+142log(1+2)

(b)

117+19115=18{A(1)F(2π18)+A(2)F(2π28)+A(3)F(2π38)}=18{2i3π4i2iπ2i2iπ4i}=1+28π

q=8の場合の基底の収束値

π82+38log2+142log(1+2)=112+19110=s1(8)
π8+122log(1+2)=113+19111=:s2(8)
1+216π+14log2+142log(1+2)=114+19112=:s3(8)
π42+122log(1+2)=115+19113=:s4(8)
2+216π+18log2+142log(1+2)=116+19114=:s5(8)
1+28π=117+19115=s6(8)
1+216π+12log2+142log(1+2)=118+19116=:s7(8)

命題3(b)の値をA、(d)の値をBとする。

s2(8)

12(BA)+s6(8)
より従う。

s3(8)

12s1(4)+s1(8)
より従う。

s4(8)

12(A+B)
より従う。

s5(8)

12s2(4)+s1(8)
より従う。

s7(8)

12s3(4)+s1(8)
より従う。

まとめ

本当はq=10,12も計算しようと思っていましたが、計算量が多く、またLATEXにも慣れておらず、資格の勉強もしなければならないため今回はここまでとします。いつか誰かの役に立てばいいなぁというレベルの記事でした。おしまい。

参考文献

[1]
Elias M.Stein, Rami Shakarchi, フーリエ解析入門, プリンストン解析学講義, 日本評論社, 2007
投稿日:2024220
更新日:2024220
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投稿者

主にNeukirch「代数的整数論」の記事を書きます。 ちなみにプロフィール画像はコウメ太夫の「チクショー!いっしゅうかん」の一部分の模写です。

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