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現代数学解説
文献あり

多様体シリーズ1-導入と可微分写像-

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この記事は書きかけです.

はじめに

皆さんこんにちは.本稿では多様体シリーズ第一として,多様体の導入から可微分写像について論じていきたいと思います.それでは早速始めていきましょう.
このシリーズについての注意はここに置いておきますので必要のある方は参照してください.→ https://mathlog.info/articles/mauFwciS6U8dOayZDo1C

多様体の導入

位相多様体の定義

位相多様体

Hausdorff空間$M$の各点$p$が,$\mathbb{R}^n$の開集合と同相な近傍をもつとき,$M$$n$次元位相多様体とよぶ.
いま,位相多様体$M$の開集合$U$$\mathbb{R}^n$の開集合$O$と同相であるとする.このとき,$U$と同相写像$\varphi$との組$(U,\varphi)$$M$の座標近傍という.
次に,$\lbrace U_\alpha \rbrace_{\alpha \in A}$$M$の開被覆であるとき,その座標近傍の族$ \lbrace(U_\alpha,\varphi_\alpha) \rbrace_{\alpha \in A}$$\mathcal{S}$とかき,アトラスまたは座標近傍系と呼ぶ.

まず,多様体とは何なのでしょうか.恐らく皆さんの中には数学の歴史によく精通されている方がいらっしゃって,多様体はRiemannがゲッティンゲン大学の教授就任演説で初めて導入され,Whitneyらによる仕事で発展したものだと知っている方も多いことでしょう.
多様体の構想はGauss曲面論にまで遡ります.曲面論および微分幾何学で最も重要な定理の一つにGauss-Bonnetの定理があります.ここでは主張を述べることは致しませんが,これは端的に言えば,3角形の内角の和という内在的な量は,本来外在的量として定義されたGauss曲率と呼ばれるものを用いて記述することができるという定理です.そして,この定理とその応用であるGaussの最も素晴らしい定理(驚異の定理とも呼ばれる)から示唆されることとして,曲面の曲がり具合であるGauss曲率はその曲面が属している空間に依らないことです.そこから,主に$\mathbb{R}^3$の内部で考えられていたものを,抽象的な空間,すなわち多様体で考えるというモチベーションが誕生したという流れです.詳しくは,専門の数学史を当たってください.
さあ,歴史的な話をしたところでそれでは多様体をどのように考えていくかについて考えていきましょう.多様体をどう構成していくか,これの答えは「$\mathbb{R}^n$から必要な部分を切り離し,その曲面片を張り合わせることによって構成する」です.このように行えば,局所的には我々の慣れ親しんだ空間で一般的な曲面を考えることができるわけです.また,ここで注意として,$\mathbb{R}^n$から切り貼りしてと言いましたが,この曲面片は1度切ったら元に戻らないわけではなく,制限なく何度も使用できます.
このプロセスにより,位相多様体が考えられることになります.しかしながら,私はあまり知らないのですが,多様体の条件にHausdorff性を課さない,non-Hausdorff manifold と呼ばれるものも存在し研究されているそうです.詳しいことを知りたい人は検索してください.本シリーズでは一貫して多様体はHausdorff性を満たすものとします.

変換写像

前節までで,多様体の構成方法について議論してきました.多様体は$\mathbb{R}^n$をうまく切り貼りして構成するということでしたが,当然,場合によってはその曲面片が重なることもあるでしょう.いま,多様体$M$のアトラスに属する2つの座標近傍$(U,\varphi),(V,\psi)$について,$U,V$が交わるとしましょう.このとき,$\varphi|_{U \cap V} : U \cap V \to \mathbb{R}^n,\psi|_{U\cap V}: U\cap V \to \mathbb{R^n}$ですから,同相写像による逆写像の存在から,$(\varphi|_{U \cap V})^{-1} : \varphi (U \cap V) \to U \cap V$を得て,多様体の重なった部分の変換写像$f=\psi \circ \varphi^{-1} $を定義します.これは同相写像と同相写像の合成ですから同相写像となりますので,我々はその重なった部分で位相的性質が同様であることを望むと思いますが,これは変換写像の定義から自動的に満たしてしまうこととなり,あまり面白い結果は得られなさそうです.また,我々が曲面を考える一つの目的として,曲面上で微積分をしたいというものがありますから,我々はさらに,この重なった部分に「微分構造が保たれる」ことを要求して以下を考えることとします.これが可微分多様体へつながっていきます.

可微分多様体

ということで,これらの議論をもとに定義しましょう.一部天下り的なところがあります.

可微分多様体,$C^\infty$構造

$\mathcal{S}=\lbrace(U_\alpha,\varphi_\alpha) \rbrace_{\alpha \in A}$$M$のアトラスとする.アトラス$\mathcal{S}$の任意の変換写像$f$$C^\infty$であるとき,これを$C^\infty$アトラスと呼ぶ.また,これは$C^\infty$構造を定めると呼ぶ.また,$C^\infty$構造が定まった多様体を可微分多様体と呼ぶ.

このとき,実は$M$が可微分多様体であることと以下の性質を満たすことは同値です.

可微分多様体と同値な命題

$M$が可微分多様体であるとする.このとき,以下はすべて同値
$\cdot$ $M$は第2可算である.
$\cdot$ $M$は可分であり,距離付け可能である.
$\cdot$ $M$はパラコンパクトである.

さて,可微分多様体が第2可算でなければならない理由について説明しましょう.これは,現状ではあまり実感がわきませんが,多様体論の1つの目標である$1$の分割でその効力を発揮します.詳しいことはまた以降に解説しますが,簡単に言えば,多様体の中で定義されるRiemann計量と呼ばれるものの存在を保証するものが$1$の分割であって,その$1$の分割には第2可算性が不可欠だからです.ちなみに,多様体の条件のうち第2可算性のみ満たさないものに「長い直線」があります.位相幾何で出てくるらしいですが,私は慣れてないのであまりわかりませんでした.
また次に,変換写像の話に戻ります.可微分多様体の定義には変換写像$f$がなめらかであるという条件が必要でした.このとき,$\varphi,\psi$$C^{\infty}$であれば$f=\psi \circ \varphi^{-1}$は必ず$C^{\infty}$となるでしょうか?これはつまり,関数$\varphi$が微分同相写像であるとき,$\varphi^{-1}$もまた$C^{\infty}$かという問題に帰着されますが,これは微積分学で学習した逆関数定理を用いればそれが正しいと保証されます.

同相写像であることは重要

同相写像でないとき,逆関数定理は使えません.実際,$y=x^3$$C^{\infty}$ですが,その逆関数$y=\sqrt[3]{x}$$x=0$で微分不能です.

可微分関数

それでは本稿の後半として,可微分関数に関して論じていこうと思います.先ずそのために座標関数を定義しましょう.
前半の議論では,多様体は適当な同相写像により局所的に$\mathbb{R^n}$と同一視することができるものと述べました.そうすれば,いま座標近傍$\lbrace (U,\varphi) \rbrace$に対し任意の$p \in U$について,$\varphi(p)=(x^1,..,x^n)$と書くことができます.因みに,本シリーズでは一貫して添え字は上付きとします.このとき,この$(x^1,...,x^n)$について,各$x^i$$p$を引数とする関数ですが,座標関数と呼ぶこととします.次に,曲面片が交わっているときについて考えてみて,座標関数が$(U,\varphi)$では$(x^1(p),...,x^n(p))$ $(V,\psi)$では $(y^1(p),...,y^n(p))$で表されていることとします.すると,先ほど定義した変換写像$f$によって,$U\cap V$上では$y^i =f^i(x^1,...,x^n)$とあらわすことができます.
それでは,多様体上の可微分写像を定義しましょう.

多様体上の可微分写像

参考文献

[1]
森田茂之, 微分形式の幾何学1, 岩波講座 現代数学の基礎, 岩波書店, 1976
[2]
松島与三, 多様体入門(新装版), 数学選書, 裳華房, 1965
投稿日:1024
更新日:1025
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投稿者

数学科B2/微分幾何や統計周辺に興味があります。

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