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内積と外積はどう"視える"のか ~ガラパゴ数学の視点で読み解く~

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内積と外積はどう"視える"のか
~ガラパゴ数学の視点で読み解く~

今回は、実験的に論文調でお送りします。

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第1章 はじめに

本稿の目的は、ガラパゴ数学で用いられる「視点変換」を既存数学の言葉で記述し、そこから現れる構造を観察することである。特に、既存数学における内積および外積を視点変換によって捉えると何が「視える」のか、何を得られるのか、をテーマとしている。

本稿において、外積とはクロス積(ベクトル積)のことを指す。単に「外積」というとウェッジ積や直積のことを指すこともあるが、本稿ではそれらを扱わないため混同されないよう予めお断りをしておく。

さて、既存の数学では

$$\quad \begin{align} pq=-p\cdot q+p\cross q \end{align}$$

という等式が知られているようだ。しかし、実部に現れる内積が負符号を伴う理由や、その幾何学的意味について説明された文献は、調査した範囲では確認できず、この等式は四元数の積を成分展開した結果として示されるにとどまっていた。

本稿で特に注目していただきたいのは、ガラパゴ数学による「視点変換」からは

$$\quad \begin{align} q\overline{p}=p\cdot q+p\cross q \end{align}$$

という等式が、内積と外積の幾何学的構造を反映する形で自然に導かれる点である。

ただし、本稿は新たな一般定理を主張するものではない。

ガラパゴ数学の視点から既存数学を眺めたときに視えてくる構造を観察し、それを元に考察を深めていった経緯を記録する研究ノートとして位置付けられる。

また、ガラパゴ数学そのものに馴染みのない読者にも、既存数学による具体的な記述や導出の過程を追うことで、本稿の結論を独立に確認できるように構成した。

本稿が内積や外積に対する新たな知見を共有する契機となれば幸いである。

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第2章 ガラパゴ数学における視点

ガラパゴ数学は、数学の一分野としてカテゴライズされるものではなく、既存数学とは異なる視点から数理を捉えるための手法である。その手法について体系的に解説することは本稿の目的ではないが、本稿で用いる「視点」という考え方を理解するために必要な最小限の事項のみは予め説明しておく必要がある。

同じ対象を異なるフィルターを通して視たとき(異なる視点から視たとき)の視え方の違いを、ガラパゴ数学では「視点変換」として扱う。この変換は既存数学でいうところの演算に対応するが、対象そのものに作用させて違いを生じさせるのではなく、同一の対象に対する視点(フィルター)の違いによって視え方が異なるものとして捉える。

捉え方が違うだけ、しかしアプローチの違いが着眼ポイントや見通しのよさに影響を与えることもある。
内積や外積というテーマは、その一端を垣間見るにもちょうどよい題材かもしれない。
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§2.1 基準座標と基準量

異なる視点同士を対応付けるためには、共有される基準が必要となる。

本稿の範囲では、
・基準座標 $O$
・基準量 $P$
を導入する。

なぜこの2つなのか、についてはそれなりの理由があるが、その解説は本題ではないため、詳細については別の機会に譲る。ここでは結論的に

 基準座標 $O$ は既存数学における加法単位元に対応し、
 基準量 $P$ は既存数学における乗法単位元に対応する。

ということさえ押さえていただけば本稿の理解には差し支えない。

例えば実数では、

$$\quad \begin{align} O &= 0, & P &= 1 \end{align}$$

である。また複素数では、

$$\quad \begin{align} O &= 0, & P &= 1+0i \end{align}$$

であり、行列では零行列および単位行列が対応する。

なお、本稿において「座標」および「量」という用語は、ガラパゴ数学の概念を説明するための便宜的な呼称である。座標とは位置情報であり、量とは座標によって示される大きさ(二次元以上においては方向などの情報を含む)のことである。

以後の議論では原則として既存数学の言葉による翻訳説明を重視し、複素数、四元数、ベクトルなど既存数学の用語を主に用いる。
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§2.2 視点変換

ガラパゴ数学では、異なる視点同士の対応付けを考える。
基本的な視点変換として、次の四種類が自然に現れる。

基準量 $P$ が固定される座標変換
$$\quad \begin{cases} \text{座標}A&\text{が}&\text{基準座標}O&\text{に視える視点における}&~~~~~~\text{座標}B \\ \text{座標}A&\text{が}&~~~~~~\text{座標}B&\text{に視える視点における}&\text{基準座標}O \\ \end{cases}$$

基準座標 $O$ が固定される量変換
$$\quad \begin{cases} ~~~\text{量}A&\text{が}&~~~\text{基準量}P&\text{に視える視点における}&~~~~~~~~~~\text{量}B \\ ~~~\text{量}A&\text{が}&~~~~~~~~~\text{量}B&\text{に視える視点における}&~~~~\text{基準量}P \\ \end{cases}$$

ここで重要なのは、視点変換によって違いが生じるのはあくまでも対象の視え方であり、対象そのものが変化した結果ではないという点である。この「○○に視える」というのは「○○として観測される」と言い換えても差支えはない。
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§2.3 既存数学との対応

上記の四種類の視点変換を既存数学の言葉で表現するならば、

$$\quad \begin{cases} \text{加法}\\ \text{減法}\\ \end{cases}$$

$$\quad \begin{cases} \text{乗法}\\ \text{除法}\\ \end{cases}$$

に対応する。

例えば実数では、

$1$ の大きさや方向が同じまま、$0$ の位置が異なって視える視点変換
$$\quad \begin{cases} A&\text{が}&0&\text{に視える視点における}&B \\ A&\text{が}&B&\text{に視える視点における}&0 \\ \end{cases}$$
$0$ の位置が同じまま、$1$ の大きさや方向が異なって視える視点変換
$$\quad \begin{cases} A&\text{が}&1&\text{に視える視点における}&B \\ A&\text{が}&B&\text{に視える視点における}&1 \\ \end{cases}$$

はそれぞれ $A$ を視た視点において

$$\quad \begin{cases} A+B \\ A-B \\ \end{cases}$$

$$\quad \begin{cases} A\times B \\ A\divsymbol B \end{cases}$$

に対応する。すなわち、このような四種類の基本変換は既存数学の四則演算に対応する。

「対応する」という表現を用いているが、「同じ結果を得られる概念」という意味であるため、一見すると同義であるようにも見える。

ただしそれによって既存数学の知識で先読みされ、ペアノの公理から構築される離散数学を連想してそのイメージに引きずられてしまうと「視点」の概念からは遠ざかってしまう恐れがある。
少なくとも視点の捉え方は、既存数学でいうところの「離散」的ではなく「連続」的である。もちろん、その中に離散を見ることも可能だがそれは「視点」という概念においての主眼ではない。

既存の数学とは異なるアプローチの中からたまたま同じ結論を得られる概念が生じ、その概念を説明するために翻訳として「四則演算」や「加法」などの語を充てているにすぎないため、「同義」ではなく「対応」という表現が妥当と思われる。
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§2.4 本稿で扱う範囲

本稿では、上記四種類の視点変換すべてを扱うわけではない。

本稿の主題としては、内積や外積を扱う上で出てくる「量」に関する視点変換によって現れる構造を観察し考察することにある。したがって、以後は「量」に関する視点変換、すなわち既存数学における乗法と除法に対応する視点変換のみをガラパゴ数学の言葉を用いて表現し、それ以外は可能な限り既存数学の言葉で記述するよう心掛ける。

次章では、視点変換を既存数学における複素数平面を用いて記述し、そこから自然に現れる構造を調べる。

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第3章 内積および外積の幾何学的定義に基づく量

§3.1 本稿の出発点

本研究の出発点は、既存数学における内積および外積の幾何学的定義である。
内積および外積の幾何学的定義より、二つのベクトル $\overrightarrow{p},~\overrightarrow{q}$ に対して、$\theta$ を両ベクトルの成す角とするならば

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cdot \overrightarrow{q} &= |\overrightarrow{p}||\overrightarrow{q}| \cos\theta \end{align}$$

および

$$\quad \begin{align} |\overrightarrow{p}\times \overrightarrow{q}| &= |\overrightarrow{p}||\overrightarrow{q}| \sin\theta \end{align}$$

という関係が得られる。

これにより、内積および外積の背後には、

$$\quad \begin{align} |\overrightarrow{p}||\overrightarrow{q}| \left( \cos\theta + \perp\sin\theta \right) \end{align}$$

のような極座標的構造が存在していることが読み取れる。

そこで、この極座標的構造を複素数平面上にて考えてみる。2つのベクトルに対し、
始点が $0$ で、終点が $p$ あるいは $q$ の位置ベクトルとして捉えると、

$$\quad \begin{align} \theta = \arg(q)-\arg(p) \end{align}$$

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cdot \overrightarrow{q} &= |pq| \cos\theta \end{align}$$

$$\quad \begin{align} |\overrightarrow{p}\times \overrightarrow{q}| &= |pq| \sin\theta \end{align}$$

であり、絶対値が $|pq|$ で、偏角が $\theta$ であるような複素数が連想される。
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§3.2 通常の積との比較

まず、複素数の通常の積 $pq$ を考える。これは

$p$$1$ に視える視点における $q$

である。

このとき、絶対値は

$$\quad \begin{align} |pq| = |p||q| \end{align}$$

であり、偏角は

$$\quad \begin{align} \arg(pq) = \arg(p) + \arg(q) \end{align}$$

である。

絶対値は内積および外積の幾何学的定義から連想される複素数に一致しているが、偏角が $\theta=\arg(q)-\arg(p)$ と一致するためにはさらに $\arg(p)=0$ という条件が必要である。

すなわちそれは、$p$$|p|$ に視える視点で偏角を捉えればよいため、そのような視点変換を行ってみる。
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§3.3 視点変換

そのような視点では、複素数平面上の座標の取り方が異なる。

具体的には、$+1$

$$\quad \begin{align} \frac{|p|}{p} \end{align}$$

に視える視点であり、この視点においては全ての座標が $\frac{|p|}{p}$ 倍されたかのように視える。

これにより、$\overrightarrow{p}$$\overrightarrow{q}$、すなわち $p$$q$ のその視点における視え方 $p'$$q'$ はそれぞれ次のようになる。

$$\quad \begin{align} p' &= p~ \frac{|p|}{p} \\ &= |p| \end{align}$$

$$\quad \begin{align} q' &= q~ \frac{|p|}{p} \\ &= |p|q~\frac1{p} \end{align}$$

この視点では $p'$ の偏角は $0$ となり、$p'=|p|$、すなわち実数に視える。

ここで、$\frac1{p}$ というのはガラパゴ数学の視点においては

 「$1$$p$ に視える視点における $1$

である。

これを複素数平面上で表現するならば、「絶対値が $\frac{1}{|p|}$ 倍にスケーリングされ、原点を中心に $p$ の偏角の符号を反転した $-\arg(p)$ ラジアンだけ回転されたように視える視点における $1$」であり、この新しい視点では、$p$ は最初の視点における $1$ として視える。

ここで、$p$ の偏角の符号を反転、すなわち $p$ の複素共役は $\overline{p}$ と表されるが、その絶対値は $|\overline{p}|=|p|$ であり、$\frac1{p}$ の絶対値 $\frac{1}{|p|}$ とはスケーリングが異なるため、両者を比較すると

 「$\frac1{|\overline{p}|}$$|\overline{p}|$ に視える視点における $1$

つまり $\frac1{|\overline{p}|}\divsymbol|\overline{p}|=\frac1{|p|^2}$ 倍に視える視点で $\overline{p}$ の絶対値を補正すれば、$\frac1{p}$ と絶対値と偏角を一致させられるため

$$\quad \begin{align} \frac1{p}=\frac{\overline{p}}{|p|^2} \end{align}$$

であることが分かる。

よって、$q'$ は複素共役を用いて

$$\quad \begin{align} q' &= |p|q~\frac1{p}\\ &=|p|q~\frac{\overline{p}}{|p|^2}\\ &=\frac{q\overline{p}}{|p|} \end{align}$$

と表せる。
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§3.4 視点変換後の積との比較

改めて、視点変換後の積 $p'q'$ を考える。これは

 「$p'$$1$ に視える視点における $q'$

である。

前節にて

$$\quad \begin{align} p' = |p| ,\qquad q' = \frac{q\overline{p}}{|p|} \end{align}$$

として観測されたため、複素共役を伴う積として

$$\quad \begin{align} p'q' &= |p|~ \frac{q\overline{p}}{|p|} \\ &= q\overline{p} \end{align}$$

と表すことができる。

したがって、§3.1 で連想された「絶対値が $|pq|$、偏角が $\arg(q)-\arg(p)$ である複素数」は

$$\quad \begin{align} p'q' &= q\overline{p} \end{align}$$

であり、

$$\quad \begin{align} |\overrightarrow{p}||\overrightarrow{q}| \left( \cos\theta + \perp\sin\theta \right) &=\operatorname{Re}(q\overline{p} )+\perp\operatorname{Im}(q\overline{p} ) \end{align}$$

という対応で表せることが確認できた。

すなわち

$$\quad \begin{align} p'q'=q\overline{p}=p\cdot q+p\cross q \end{align}$$

である。

この着想は特定の次元における成分計算を出発点としたものではなく、内積および外積の幾何学的定義そのものの観察から生じたものである。そこで、本稿ではまず二次元および三次元でこの考えを具体化し、その後四次元・七次元へ拡張することで、既存数学の定義と一致するか検証してみる。

よって、次章では $q\overline{p}$ を直交座標表示で展開し、既存数学における内積および外積にて定義される各成分との対応を調べる。

以後は、この $p'q'=q\overline{p}$ のことを

 「内積および外積の幾何学的定義に基づく量」

と呼ぶことにする。

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第4章 二次元における検証

§4.1 二次元の直交形式による表現

$\overrightarrow{p}$$\overrightarrow{q}$ を二次元ベクトルとして捉え、その成分を

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}=\begin{pmatrix}a_0\\b_0\end{pmatrix},\quad \overrightarrow{q}=\begin{pmatrix}a_1\\b_1\end{pmatrix} \end{align}$$

とすると、$p$$q$ は次のような直交形式の複素数を用いて表現できる。

$$\quad \begin{align} p &= a_0 +b_0i \\ q &= a_1 +b_1i \end{align}$$

このとき、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_1 +b_1i)(a_0 -b_0i)\\ =&(a_0a_1 +b_0b_1)\\ &+(a_0b_1 -a_1b_0)i \end{align}$$

であり、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=&a_0a_1 +b_0b_1\\ \operatorname{Im}(q\overline{p})=&a_0b_1 -a_1b_0 \end{align}$$

と表せる。
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§4.2 実部と内積

既存数学における二次元ベクトル空間の内積の代数的定義にしたがえば

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q} &= a_0a_1+b_0b_1 \end{align}$$

である。したがって、

$$\quad \boxed{ \operatorname{Re} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p} \cdot \overrightarrow{q} }$$

については一致している。
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§4.3 虚部と外積

既存数学において、二次元の外積は符号付き面積を与えるスカラー値として定義されているため、それにしたがえば

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} &= a_0b_1-a_1b_0 \end{align}$$

である。したがって、

$$\quad \begin{align} \boxed{ \operatorname{Im} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} } \end{align}$$

についても一致している。
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§4.4 本章の結論

以上より、内積および外積の幾何学的定義に基づく量

$$\quad \begin{align} p'q'=q\overline{p} \end{align}$$

に対して、少なくとも二次元ベクトルにおいては

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re} \left( q\overline{p} \right) \end{align}$$

は内積を与え、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Im} \left( q\overline{p} \right) \end{align}$$

は外積を与えることが示された。
次章では、この対応が二次元特有の現象であるかを確かめるため、三次元ベクトルを純虚四元数として表し、同様の計算を行う。

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第5章 三次元における検証

前章では、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$ が実際に二次元の内積および外積の構造を含んでいることを確認した。
しかし、ここまでの議論は複素数平面という二次元の状況に限定されている。

そこで本章では、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$ を四元数に拡張してみる。すなわち、三次元ベクトルを純虚四元数として表し、同様の計算を実際に行うことで前章で得られた対応が三次元においても成立するかを検証する。

ここで注意したい点が一つある。既存の数学における二次元の外積(符号付き面積)と複素数の虚部はスカラーであり、複素数に対する $\operatorname{Im}$ により得られる値には虚数単位が含まれない。三次元以上では外積と多元数の虚部はどちらもベクトルとして定義されており、四元数以上の多元数においては $\operatorname{Im}$ から得られる値に虚数単位を含む。解釈の際には混同しないように注意が必要である。
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§5.1 三次元の直交形式による表現

$\overrightarrow{p}$$\overrightarrow{q}$ を三次元ベクトルとして捉え、その成分を

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}=\begin{pmatrix}a_0\\b_0\\c_0\end{pmatrix},\quad \overrightarrow{q}=\begin{pmatrix}a_1\\b_1\\c_1\end{pmatrix} \end{align}$$

とすると、$p$$q$ は次のような直交形式の純虚四元数を用いて表現できる。

$$\quad \begin{align} p &= a_0i+b_0j+c_0k \\ q &= a_1i+b_1j+c_1k \end{align}$$

このとき、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_1i+b_1j+c_1k)(-a_0i-b_0j-c_0k)\\ =&(a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1)\\ &+( b_0c_1 -c_0b_1 ) i\\ &+ ( c_0a_1 -a_0c_1 ) j\\ &+ ( a_0b_1 -b_0a_1 ) k \end{align}$$

であり、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=&a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1\\ \operatorname{Im}(q\overline{p})= &+( b_0c_1 -c_0b_1 ) i\\ &+( c_0a_1 -a_0c_1 ) j\\ &+( a_0b_1 -b_0a_1 ) k \end{align}$$

と表せる。
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§5.2 実部と内積

既存数学における三次元ベクトル空間の内積の代数的定義にしたがえば

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q} &= a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1 \end{align}$$

である。したがって、

$$\quad \boxed{ \operatorname{Re} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p} \cdot \overrightarrow{q} }$$

については一致している。
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§5.3 虚部と外積

既存数学において、三次元の外積(クロス積)の定義にしたがえば

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} &= \begin{pmatrix}b_0c_1 -c_0b_1 \\c_0a_1 -a_0c_1\\a_0b_1 -b_0a_1\end{pmatrix}\end{align}$$

である。したがって、

$$\quad \begin{align} \boxed{ \operatorname{Im} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} } \end{align}$$

についても一致している。

また、既存の数学では、2つのベクトルと外積のベクトルはいずれも右手系にとるというように説明されることが多い。今回の結果においても、$i,j,k$ の並び順を右手系とするならば期待通りの結果となっているため、三次元ベクトルの外積は $p'q'=q\overline{p}$ の虚部と完全に一致しているといえる。

ただしこの結果をみても分かるように、2つのベクトルを左手系にとった場合であっても外積のベクトルも左手系となるだけであり、2つのベクトルと外積のベクトルにおいてそのオリエンテーションは保持されている。すなわち、右手系の例で説明されることが多いのは説明上の都合によるものと思われる。

また、三次元基底の元、すなわち四元数の虚数単位の選択を変更した場合も検討しておこう。

例えば、三次元目の正負方向を反転させてみる。

$$\quad \begin{align} -k=&-ij=ji\\ \end{align}$$

を用いて

$$\quad \begin{align} {i,j,ji}\\ \end{align}$$

を基底の元として選択する。

$$\quad \begin{align} p &= a_0i+b_0j+c_0ji \end{align}$$

および

$$\quad \begin{align} q &= a_1i+b_1j+c_1ji \end{align}$$

においては

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_1i+b_1j+c_1ji)(-a_0i-b_0j-c_0ji)\\ =&(a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1)\\ &+( c_0b_1 -b_0c_1 ) i\\ &+ ( a_0c_1 -c_0a_1 ) j\\ &+ ( b_0a_1 -a_0b_1 ) ji \end{align}$$

となるため、単純に成分だけを比較するならば全ての成分の符号が反転していて既存の数学の定義とは一致していない。

しかし、ここでは三次元目の正負方向を反転させており、$c_0$ も正負符号が反転した値をとることになる。すなわち、三次元基底に四元数の虚数単位をどのように割り当てたとしても、成分表示上はこの例のように正負符号が異なるが、結果的に得られる幾何学的なベクトルは同一である。
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§5.4 三次元ベクトル内の二次元

ここで、前章にて検証した二次元ベクトルを三次元内で考えるとどうなるのかもみておくことにする。

$\overrightarrow{p}$$\overrightarrow{q}$ を二次元ベクトルとして捉え、その成分を

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}=\begin{pmatrix}a_0\\b_0\\0\end{pmatrix},\quad \overrightarrow{q}=\begin{pmatrix}a_1\\b_1\\0\end{pmatrix} \end{align}$$

とする。

三次元の直交形式で表すには、四元数の虚数単位三元のうちどの二元を選択するのが適切かという問題がある。少なくとも比較する上では座標のオリエンテーションが同じになるようにとる必要があるため、ここでは、次のように定めてみた。

虚数単位三元から1つを任意に選んで $r$ とし、残る二元からもう1つをオリエンテーションに従って選択する。すなわち、$(r,s)$$(i,j)$$(j,k)$$(k,i)$ の三組のうちいずれかとする。
すると、$p$$q$ は次のような直交形式の四元数を用いて表現できる。

$$\quad \begin{align} p &= a_0r +b_0s \\ q &= a_1r +b_1s \end{align}$$

このとき、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_1r+b_1s)(-a_0r -b_0s)\\ =&(a_0a_1 +b_0b_1)\\ &+(a_0b_1 -a_1b_0)rs \end{align}$$

であり、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=&a_0a_1 +b_0b_1\\ \operatorname{Im}(q\overline{p})=&(a_0b_1 -a_1b_0)rs \end{align}$$

と表せる。

この結果は、前章にて行った二次元のケースと比較すると、虚部がベクトルになるという違いはあるものの係数成分については完全に一致している。したがって、二次元ベクトルの内積や外積(符号付き面積)は三次元から捉えたときの内積と外積を二次元に落とし込んだものという見方もできる。
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§5.5 本章の結論

以上より、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$ は三次元ベクトルにおいても

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re} \left( q\overline{p} \right) \end{align}$$

が内積を与え、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Im} \left( q\overline{p} \right) \end{align}$$

が外積を与えることが示された。

このことは、前章で得られた結果が複素数平面特有の偶然ではなく、より高次の代数系においても現れる可能性を示している。

次章では、四次元の場合について四元数や八元数を用いて検証し、この対応がどのように現れるかを調べる。

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第6章 四次元への拡張

前章では、三次元ベクトルを純虚四元数として表すことで内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$ より内積および外積の構造が同時に現れることを確認した。

しかし、純虚四元数は四元数全体の部分空間に過ぎない。
そこで本章では、一般の四元数に対して同様の計算を行い、さらに八元数へ拡張することで、この構造がどのように現れるかを調べる。
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§6.1 四次元の直交形式による表現(四元数編)

$\overrightarrow{p}$$\overrightarrow{q}$ を四次元ベクトルとして捉え、その成分を

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}=\begin{pmatrix}a_0\\b_0\\c_0\\d_0\end{pmatrix},\quad \overrightarrow{q}=\begin{pmatrix}a_1\\b_1\\c_1\\d_1\end{pmatrix} \end{align}$$

とすると、$p$$q$ は次のような直交形式の四元数を用いて表現できる。

$$\quad \begin{align} p &= a_0 +b_0i +c_0j +d_0k \\ q &= a_1 +b_1i +c_1j +d_1k \end{align}$$

このとき、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$ を四元数に拡張して捉えると

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_1 +b_1i +c_1j +d_1k)(a_0 -b_0i -c_0j -d_0k)\\ =&( a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1 +d_0d_1 )\\ &+( a_0b_1 -b_0a_1 +c_0d_1 -d_0c_1 ) i\\ &+( a_0c_1 -c_0a_1 +d_0b_1 -b_0d_1 ) j\\ &+( a_0d_1 -d_0a_1 +b_0c_1 -c_0b_1 ) k\\ \end{align}$$

であり、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=&a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1 +d_0d_1\\ \operatorname{Im}(q\overline{p})= &+( a_0b_1 -b_0a_1 +c_0d_1 -d_0c_1) i\\ &+( a_0c_1 -c_0a_1 +d_0b_1 -b_0d_1 ) j\\ &+( a_0d_1 -d_0a_1 +b_0c_1 -c_0b_1 ) k \end{align}$$

と表せる。
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§6.2 実部と内積

既存数学における四次元ベクトル空間の内積の代数的定義にしたがえば

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q} &= a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1 +d_0d_1 \end{align}$$

である。したがって、

$$\quad \boxed{ \operatorname{Re} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p} \cdot \overrightarrow{q} }$$

については一致している。
$ $

§6.3 虚部と外積

既存数学において、四次元の外積(クロス積)は定義されておらず、一般にユークリッド空間で定義されるのは三次元と七次元のみとされている。

では、この虚部には一体どういう意味があるのだろうか。この結果は、§5.4 の場合と同様に四次元ベクトルをより高次元から捉えたときの内積と外積を四次元に落とし込んだものという見方ができるかも知れない。

そこで、次の章ではここに出てきた虚部が七次元の外積となんらかの関係があるのか調査する。

$ $

第7章 四次元以上への拡張

前章の結果を受けて、$p$$q$ の四次元の直交形式を純虚八元数を用いて改めて観察し直すことにする。
八元数の虚数単位は七つあるが、ここでは四元数基底 $\{1,i,j,k\}$ に新しい単位 $l$ を付加したケーリー・ディクソン型の表記

$$\quad \begin{align} \{i,~j,~k,~l,~il,~jl,~kl\} \end{align}$$

を用いることとし、ケーリー・ディクソン構成に準拠した乗積として図1の乗積表を用いる。



図1 八元数乗積表

$ $
§7.1 四次元の直交形式による表現(八元数編)

これまで、二次元と三次元について「内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $p'q'=q\overline{p}$ の実部と虚部の中に内積と外積の構造が現れる」ことを検証してきたが、四次元に拡張するにあたっては八元数の虚数単位七元のうちどの四元を選択するのが適切かという問題がある。二次元においても四元数にて同様の考察をしたが、八元数の構造はより複雑である。

オリエンテーションを含めた幾何学的な対称性に着目し、四元数基底 $(1,i,j,k)$ と類似した対称性を持つ候補を探索するため、以下の条件を採用した。

四元数基底との対応をできるだけ保ったまま四次元へ拡張することを目的として、虚数単位七元から1つを任意に選んで $r$ とし、残る六元から虚数単位 $(i,j,k)$ と同型の乗積構造を持つ三元集合を図1の乗積表より選んで $(s,t,u)$ とする。

さらに、八元数全体の乗積構造を保つため、$\{r,s,t,u,st,tu,us\}$ が符号を無視して虚数単位七元全体と一致し、かつ、符号を無視して $\{st,tu,us\}=\{ru,rs,rt\}$ が成り立つときの $(r,s,t,u)$ を採用した上で、$st=ru$$tu=rs$$us=rt$ となる順序で $(s,t,u)$ を定める。

実際に図1の乗積表を用いて探索したところ、この条件を満たす四元組は各虚数単位を $r$ とする場合にそれぞれ1組ずつ、次の七組が得られる。

$$\quad \begin{align} &(i,j,l,kl)\\ &(j,k,l,il)\\ &(k,i,l,jl)\\ &(l,jl,il,kl)\\ &(il,k,i,kl)\\ &(jl,i,j,il)\\ &(kl,j,k,jl)\\ \end{align}$$

これら7組はいずれも

$$\quad \{st,tu,us\}=\{ru,rs,rt\} $$

を満たしており、三元集合 $(s,t,u)$ の元同士の積が $r$ を掛けることで別の三元集合へ写るという共通した構造を持つ。そのことを確認できるよう、図2を用意した。



図2 条件を満たす七組の乗積表

$ $
そこで、この $(r,s,t,u)$ を八元数における四次元の虚数単位として採用し、$p$$q$ を次のような直交形式の純虚八元数を用いて

$$\quad \begin{align} p &= a_0r +b_0s +c_0t +d_0u \\ q &= a_1r +b_1s +c_1t +d_1u \end{align}$$

と表すことにする。

このとき、内積および外積の幾何学的定義から連想される複素数 $q\overline{p}$ を八元数に拡張して捉えると、$r$ に関わらず

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_1r +b_1s +c_1t +d_1u)(-a_0r -b_0s -c_0t -d_0u)\\ =&( a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1 +d_0d_1 )\\ &+( a_0b_1 -b_0a_1 +c_0d_1 -d_0c_1 ) rs\\ &+( a_0c_1 -c_0a_1 +d_0b_1 -b_0d_1 ) rt\\ &+( a_0d_1 -d_0a_1 +b_0c_1 -c_0b_1 ) ru\\ \end{align}$$

が導出され、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=&a_0a_1 +b_0b_1 +c_0c_1 +d_0d_1\\ \operatorname{Im}(q\overline{p})= &+( a_0b_1 -b_0a_1 +c_0d_1 -d_0c_1 ) rs\\ &+( a_0c_1 -c_0a_1 +d_0b_1 -b_0d_1 ) rt\\ &+( a_0d_1 -d_0a_1 +b_0c_1 -c_0b_1 ) ru\\ \end{align}$$

と表せる。

ここで現れる係数は、前章で四元数から得られた係数と一致している。

したがって、もし七次元外積も $\operatorname{Im}\left(q\overline{p}\right)=\overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q}$ の形で与えられるならば、少なくとも前章にて四元数より得られた係数は八元数虚部空間の外積成分として現れる係数と一致しているため、予想通り四次元ベクトルを八次元から捉えたときの内積と外積を四次元に落とし込んだものという見方ができることになる。

そこで次節では、七次元に対して八元数を用いて同様の計算を行い、その振る舞いを調べることでこの一致がどのような意味を持つかについて考察する。
$ $

§7.2 七次元の直交形式による表現

$\overrightarrow{p}$$\overrightarrow{q}$ を七次元ベクトルとして捉え、その成分を

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}=\begin{pmatrix}a_0\\b_0\\c_0\\d_0\\e_0\\f_0\\g_0\end{pmatrix},\quad \overrightarrow{q}=\begin{pmatrix}a_1\\b_1\\c_1\\d_1\\e_1\\f_1\\g_1\end{pmatrix} \end{align}$$

とすると、$p$$q$ は次のような直交形式の八元数として表現できる。

$$\quad \begin{align} p &= a_0i+b_0j+c_0k+d_0l+e_0il+f_0jl+g_0kl \end{align}$$

および

$$\quad \begin{align} q &= a_1i+b_1j+c_1k+d_1l+e_1il+f_1jl+g_1kl \end{align}$$

このとき、内積および外積の幾何学的定義に基づく量 $q\overline{p}$

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_0 a_1 +b_0 b_1 +c_0 c_1 +d_0 d_1 +e_0 e_1 +f_0 f_1 +g_0 g_1 )\\ &+(b_0c_1-b_1c_0+g_0f_1-g_1f_0+d_0e_1-d_1e_0)i\\ &+(e_0g_1-e_1g_0+c_0a_1-c_1a_0+d_0f_1-d_1f_0)j\\ &+(f_0e_1-f_1e_0+a_0b_1-a_1b_0+d_0g_1-d_1g_0)k\\ &+(e_0a_1-e_1a_0+f_0b_1-f_1b_0+g_0c_1-g_1c_0)l\\ &+(g_0b_1-g_1b_0+c_0f_1-c_1f_0+a_0d_1-a_1d_0)il\\ &+(a_0g_1-a_1g_0+e_0c_1-e_1c_0+b_0d_1-b_1d_0)jl\\ &+(f_0a_1-f_1a_0+b_0e_1-b_1e_0+c_0d_1-c_1d_0)kl \end{align}$$

であり、

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=&a_0 a_1 +b_0 b_1 +c_0 c_1 +d_0 d_1 +e_0 e_1 +f_0 f_1 +g_0 g_1\\ \operatorname{Im}(q\overline{p})= &(b_0c_1-b_1c_0+g_0f_1-g_1f_0+d_0e_1-d_1e_0)i\\ &+(e_0g_1-e_1g_0+c_0a_1-c_1a_0+d_0f_1-d_1f_0)j\\ &+(f_0e_1-f_1e_0+a_0b_1-a_1b_0+d_0g_1-d_1g_0)k\\ &+(e_0a_1-e_1a_0+f_0b_1-f_1b_0+g_0c_1-g_1c_0)l\\ &+(g_0b_1-g_1b_0+c_0f_1-c_1f_0+a_0d_1-a_1d_0)il\\ &+(a_0g_1-a_1g_0+e_0c_1-e_1c_0+b_0d_1-b_1d_0)jl\\ &+(f_0a_1-f_1a_0+b_0e_1-b_1e_0+c_0d_1-c_1d_0)kl \end{align}$$

と表せる。
$ $

§7.3 実部と内積

既存数学における七次元ベクトル空間の内積の代数的定義にしたがえば

$$\quad \begin{align} a_0 a_1 +b_0 b_1 +c_0 c_1 +d_0 d_1 +e_0 e_1 +f_0 f_1 +g_0 g_1 \end{align}$$

である。したがって、

$$\quad \boxed{ \operatorname{Re} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p} \cdot \overrightarrow{q} }$$

については一致している。
$ $

§7.4 虚部と外積

既存数学において、図1の乗積表を双線形性によって一般ベクトルへ拡張すると、七次元外積は

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} &= \begin{pmatrix} b_0c_1-b_1c_0+g_0f_1-g_1f_0+d_0e_1-d_1e_0\\ e_0g_1-e_1g_0+c_0a_1-c_1a_0+d_0f_1-d_1f_0\\ f_0e_1-f_1e_0+a_0b_1-a_1b_0+d_0g_1-d_1g_0\\ e_0a_1-e_1a_0+f_0b_1-f_1b_0+g_0c_1-g_1c_0\\ g_0b_1-g_1b_0+c_0f_1-c_1f_0+a_0d_1-a_1d_0\\ a_0g_1-a_1g_0+e_0c_1-e_1c_0+b_0d_1-b_1d_0\\ f_0a_1-f_1a_0+b_0e_1-b_1e_0+c_0d_1-c_1d_0 \end{pmatrix} \end{align}$$

となる。したがって、

$$\quad \begin{align} \boxed{ \operatorname{Im} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p}~\cross_7~\overrightarrow{q} } \end{align}$$

についても一致している。

ただし、 Wikipedia の クロス積#多元数を使った拡張 に掲載されている七次元外積の成分表示を、本稿の記法に合わせて並び替えると

$$\quad \begin{align} \overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} &= \begin{pmatrix} b_0c_1-b_1c_0+g_0f_1-g_1f_0+e_0d_1-e_1d_0\\ e_0g_1-e_1g_0+c_0a_1-c_1a_0+f_0d_1-f_1d_0\\ f_0e_1-f_1e_0+a_0b_1-a_1b_0+g_0d_1-g_1d_0\\ a_0e_1-a_1e_0+b_0f_1-b_1f_0+c_0g_1-c_1g_0\\ g_0b_1-g_1b_0+c_0f_1-c_1f_0+d_0a_1-d_1a_0\\ a_0g_1-a_1g_0+e_0c_1-e_1c_0+d_0b_1-d_1b_0\\ f_0a_1-f_1a_0+b_0e_1-b_1e_0+d_0c_1-d_1c_0\\ \end{pmatrix} \end{align}$$

となっており、係数成分の符号が一部異なっていることに疑問を覚えた。

Wikipedia 掲載の導出手順を追ってみたところ $\operatorname{Im}(pq)$ より求めているようなので、最初はそれが理由かとも考えたが、$p$$q$ を純虚八元数として表した場合、実部については

$$\quad \begin{align} \operatorname{Re}(q\overline{p})=-\operatorname{Re}(pq) \end{align}$$

ではあるものの、虚部については

$$\quad \begin{align} \operatorname{Im}(pq)=\operatorname{Im}(q\overline{p}) \end{align}$$

であり、差異の原因はそこではない。

そこで、これは §5.3 にて触れた通り、八元数における正負符号の規約の違いかもしれないと予想し、検証してみることにした。

例えば、五次元目、六次元目、七次元目の正負方向を反転させた

$$\quad \begin{align} li=-il,~lj=-jl,lk=-kl\\ \end{align}$$

を用いて

$$\quad \begin{align} {i,j,k,l,li,lj,lk}\\ \end{align}$$

を基底の元として選択していたならばどうだろう。

$$\quad \begin{align} p &= a_0i+b_0j+c_0k+d_0l+e_0li+f_0lj+g_0lk \end{align}$$

および

$$\quad \begin{align} q &= a_1i+b_1j+c_1k+d_1l+e_1li+f_1lj+g_1lk \end{align}$$

においては

$$\quad \begin{align} q\overline{p} =&(a_0 a_1 +b_0 b_1 +c_0 c_1 +d_0 d_1 +e_0 e_1 +f_0 f_1 +g_0 g_1 )\\ &+(b_0c_1-b_1c_0+g_0f_1-g_1f_0+e_0d_1-e_1d_0)i\\ &+(e_0g_1-e_1g_0+c_0a_1-c_1a_0+f_0d_1-f_1d_0)j\\ &+(f_0e_1-f_1e_0+a_0b_1-a_1b_0+g_0d_1-g_1d_0)k\\ &+(a_0e_1-a_1e_0+b_0f_1-b_1f_0+c_0g_1-c_1g_0)l\\ &+(g_0b_1-g_1b_0+c_0f_1-c_1f_0+d_0a_1-d_1a_0)li\\ &+(a_0g_1-a_1g_0+e_0c_1-e_1c_0+d_0b_1-d_1b_0)lj\\ &+(f_0a_1-f_1a_0+b_0e_1-b_1e_0+d_0c_1-d_1c_0)lk \end{align}$$

となり、Wikipedia 掲載の内容と一致した。やはりこれは最初に取り決めた正負符号の規約による差異にすぎず、結果として得られる幾何学的ベクトルは同一である。七次元の外積においては、符号違いの成分表示が複数通り考えられる。

したがって、Wikipedia 掲載の成分表示においても

$$\quad \begin{align} \boxed{ \operatorname{Im} \left( q\overline{p} \right) = \overrightarrow{p}~\cross_7~\overrightarrow{q} } \end{align}$$

と一致した。
$ $

§7.5 本章の結論

これまでの検証によって、内積と外積が同時に現れる

$$\quad \begin{align} q\overline{p} &= \operatorname{Re}(q\overline{p}) + \operatorname{Im}(q\overline{p})= \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} \end{align}$$

という構造は三次元に特有なものではなく、少なくとも本稿において検証した範囲では、七次元においても同様に現れることが示された。なお、この構造が八元数までに特有の現象なのか、あるいはさらに高次の代数系においても現れるのかについては、現時点では判断できない。

ただし、本稿で用いた議論については、第三章にて確認した

$$\quad \begin{align} |pq|=|p||q|\\ \end{align}$$

という積のノルムに関する乗法性を前提としており、この乗法性は少なくとも十六元数では成り立たない。

前章にて扱った八元数基底 $\{1,i,j,k,l\}$ に新しい単位 $m$ を付加したケーリー・ディクソン型の表記

$$\quad \begin{align} \{i,~j,~k,~l,~il,~jl,~kl,m,im,~jm,~km,~lm,~ilm,~jlm,~klm\} \end{align}$$

を用いたケーリー・ディクソン構成準拠の乗積において、例えば

$$\quad \begin{align} p=&i+jm\\ q=&l+klm\\ \end{align}$$

とすると、

$$\quad \begin{align} pq =&(i+jm)(l+klm)\\ =&il+i(klm)+(jm)l+(jm)(klm)\\ =&il-klmi-jlm-(klm)(jm)\\ =&il+klim-jlm+(klm)jm\\ =&il-kilm-jlm-kljm^2\\ =&il-jlm-jlm-kjl\\ =&il-jlm-jlm+il\\ =&2il-2jlm\\ \end{align}$$

$$\quad \begin{align} |pq|^2=&|2il-2jlm|^2=8\\ |p|^2|q|^2=&|i+jm|^2|l+klm|^2=2\cdot2=4\\ \end{align}$$

であり、少なくとも十六元数では $|pq|=|p||q|$ の成り立たないケースが存在する。
よって、本稿の議論を十六元数以降へ拡張することはできない。

このことは、既存の数学において外積が七次元までしか定義されないこととの関連を示唆するが、本稿の範囲を超えるため、検討については今後の課題とする。

$ $

第8章 まとめ

本稿では、ガラパゴ数学における量の視点変換を既存数学の言葉で記述し、そこから現れる構造について調査した。

内積と外積がそれぞれ独立に定義された別々の演算としてではなく、

$$\quad \begin{align} q\overline{p} &= \operatorname{Re}(q\overline{p}) + \operatorname{Im}(q\overline{p})= \overrightarrow{p}\cdot\overrightarrow{q}+\overrightarrow{p}\cross\overrightarrow{q} \end{align}$$

によって統一的に記述できる構造を持つこと、また、その幾何学的な解釈は、今回の検証範囲以外にも類似した構造がみられる可能性が示唆された。

第一章にも書いた通り、本稿における最も重要な意義は、ガラパゴ数学の視点を用いて

 「共役付き積 $q\overline{p}$ より、内積と外積の和が自然に現れる」

という幾何学的な解釈を与えた点である。

本稿で示した構造がどこまで一般化できるかは今後の課題である。

投稿日:2日前
更新日:1日前
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https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 CCO / ガラパゴ数学 開拓者 / 猫舌・甘党・薄味派

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