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大学数学基礎解説
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ベッセル関数の仲間たち

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ベッセル関数の分類

関数名ベッセル関数変形ベッセル関数球ベッセル関数変形球ベッセル関数
座標系円筒座標(動径)円筒座標(動径)球座標(動径)球座標(動径)
状態散乱状態$E>V_0$束縛状態$E< V_0$散乱状態$E>V_0$束縛状態$E< V_0$
第1種$J_l(\rho)$$I_l(\rho)$$j_l(\rho)$$i_l(\rho)$
第2種$N_l(\rho)$$K_l(\rho)$$n_l(\rho)$$k_l(\rho)$
Hankel型$H_l(\rho)=J_l(\rho)+iN_l(\rho)$-$h_l(\rho)=j_l(\rho)+in_l(\rho)$-
Hankel型*$H^{*}_l(\rho)=J_l(\rho)-iN_l(\rho)$-$h^{*}_l(\rho)=j_l(\rho)-in_l(\rho)$-

 ラプラシアンを含む偏微分方程式の角度成分を変数分離すると、動径成分にベッセル関数が登場します。ベッセル関数の種類は多岐に及びますが、

  1. 円筒座標はベッセル関数、球座標は球ベッセル関数
  2. 散乱状態はベッセル関数、束縛状態は変形ベッセル関数

と覚えておくと良いでしょう。テストに出てくるので覚えましょう。

本当にテストに登場するので、覚えておきましょう。

ベッセルの微分方程式一覧

ベッセルの微分方程式

$$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{1}{z}\frac{du}{dz}-\left[ -1+\frac{l^2}{z^2}\right]u=0$$

散乱状態を円筒座標で変数分離すると登場します。

変形ベッセルの微分方程式

$$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{1}{z}\frac{du}{dz}-\left[ 1+\frac{l^2}{z^2}\right]u=0$$

束縛状態を円筒座標で変数分離すると登場します。

球ベッセルの微分方程式

$$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{2}{z}\frac{du}{dz}-\left[ -1+\frac{l(l+1)}{z^2}\right]u=0$$

散乱状態を球座標で変数分離すると登場します。

変形球ベッセルの微分方程式

$$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{2}{z}\frac{du}{dz}-\left[ 1+\frac{l(l+1)}{z^2}\right]u=0$$

束縛状態を球座標で変数分離すると登場します。

ベッセル関数

第1種ベッセル関数

$$J_l(z)=\left(\frac{z}{2}\right)^l\sum_{n=0}^{\infty}{\frac{(-1)^n}{n!\Gamma(l+n+1)}}\left(\frac{z}{2}\right)^{2n}\tag{1}$$

原点付近で$~z^l$ 程度に収束します

第2種ベッセル関数(Neumann関数)

$$N_l(z)=\frac{1}{\sin (l\pi)}[\cos (l\pi) J_l(z)-J_{-l}(z)] \ \ \ (l \neq \mathbb{Z}) \tag{2}$$

原点付近で発散します

$$N_n(z)=\frac{1}{\pi}\left[\frac{\partial J_l(z)}{\partial l}-(-1)^n\frac{\partial J_{-l}(z)}{\partial l}\right]_{l=n} \ \ \ (n = \mathbb{Z}) \tag{3}$$

原点で対数分岐します

第1種Hankel関数

$$H_l(z)=J_l(z)+iN_l(z)\tag{4}$$

$J_l$$\sin z/z$$N_l$$\cos z/z$らしく振る舞うので、重ね合わせたら$e^{iz}/z$になるだろうという発想です。結構有用な関数です。

第2種Hankel関数

$$H^{*}_l(z)=J_l(z)-iN_l(z)\tag{5}$$

第2種と呼び分けられますが、ただの複素共役です

変形ベッセル関数

第1種変形ベッセル関数

$$I_l(z)=e^{-l\pi i/2}J_{l}(iz) =\left(\frac{z}{2}\right)^l\sum_{n=0}^{\infty}{\frac{1}{n!\Gamma(l+n+1)}}\left(\frac{z}{2}\right)^{2n} \ \ \ (実軸の負の部分は除く) \tag{6}$$

J_l(z)の変数を$z\rightarrow iz$にすると、$(z/2)^l$の因子が$e^{l\pi i/2}$倍されます。虚数部分を打ち消す因子をかけることで、変形ベッセル関数は実関数になります。

第2種変形ベッセル関数

$$K_l(z)=\frac{\pi}{2\sin(l\pi)}\left[I_{-l}(z)-I_{l}(z)\right] \ \ \ (l \neq \mathbb{Z}) \tag{7}$$

定義がNeumann関数と若干違うのが腹立ちます

$$K_n(z)=\frac{(-1)^n}{2}\left[\frac{\partial I_{-l}(z)}{\partial l}-\frac{\partial I_{l}(z)}{\partial l}\right]_{l=n} \ \ \ (n = \mathbb{Z}) \tag{8}$$

同じく原点で対数分岐します

また、Hankel関数との関数等式は特に重要です。

$$K_l(z)=\frac{\pi i}{2}e^{l\pi i/2}H_l(iz) \ \ \ (l\neq \mathbb{Z})$$

球ベッセル関数

第1種球ベッセル関数

$$j_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} J_{l+1/2}(z)=(2z)^l\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n(n+l)!}{n!(2n+2l+1)!}z^{2n}\tag{9}$$

漸近形は以下の通りです。原点で収束しています。

$$ j_l(z) =\frac{z^l}{(2l+1)!!}\ \ \ (z\rightarrow 0)$$
$$ j_l(z) =\frac{\sin(z-\frac{l\pi}{2})}{z}\ \ \ (z\rightarrow \infty)$$

無限遠方では$l\pi/2$分だけphase-shiftしているのが非常に重要です。

第2種球ベッセル関数(球Neumann関数)

$$n_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} N_{l+1/2}(z)=-\frac{1}{2^lz^{l+1}}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{\Gamma(2l-2n+l)}{n!\Gamma(l-n+1)}z^{2n}\tag{10}$$

漸近形は以下の通りです。原点で発散しています。

$$ n_l(z) =-\frac{(2l-1)!!}{z^{l+1}}\ \ \ (z\rightarrow 0)$$
$$ n_l(z) =-\frac{\cos(z-\frac{l\pi}{2})}{z}\ \ \ (z\rightarrow \infty)$$

無限遠方ではphase-shiftが起きてるのが非常に重要です。

第1種球Hankel関数

$$h_l(z)=j_l(z)+in_l(z)\tag{11}$$

量子力学において、外向きに散乱される波を表したりします。

第2種Hankel関数

$$h^{*}_l(z)=j_l(z)-in_l(z)\tag{12}$$

量子力学において、内向きに進行する波を表したりします。

変形球ベッセル関数

第1種変形球ベッセル関数

$$i_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}}I_{l+1/2}(z) \tag{13}$$

第2種変形球ベッセル関数

$$k_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}}K_{l+1/2}(z) \tag{14}$$

あくまで類似物を書くことができるだけで、実用上そこまで登場しません。

まとめ

関数名ベッセル関数変形ベッセル関数
座標系円筒座標(動径)円筒座標(動径)
状態散乱状態$E>V_0$束縛状態$E< V_0$
第1種$J_l(z)$$I_l(z)=e^{-l\pi i/2}J_{l}(iz)$
第2種$N_l(z)=\frac{1}{\sin (l\pi)}[\cos (l\pi) J_l(z)-J_{-l}(z)]\ \ \ \ $$K_l(z)=\frac{\pi}{2\sin(l\pi)}\left[I_{-l}(z)-I_{l}(z)\right] \ \ $
Hankel型$H_l(z)=J_l(z)+iN_l(z)$-
Hankel型*$H^{*}_l(z)=J_l(z)-iN_l(z)$-
微分方程式$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{1}{z}\frac{du}{dz}-\left[ -1+\frac{l^2}{z^2}\right]u=0$$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{1}{z}\frac{du}{dz}-\left[ 1+\frac{l^2}{z^2}\right]u=0$
関数名球ベッセル関数変形球ベッセル関数
座標系球座標(動径)球座標(動径)
状態散乱状態$E>V_0$束縛状態$E< V_0$
第1種$j_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} J_{l+1/2}(z)$$i_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} I_{l+1/2}(z)$
第2種$n_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} N_{l+1/2}(z)$$k_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} K_{l+1/2}(z)$
Hankel型$h_l(z)=j_l(z)+in_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} H_{l+1/2}(z)$-
Hankel型*$h^{*}_l(z)=j_l(z)-in_l(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}} H^{*}_{l+1/2}(z)$-
微分方程式$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{2}{z}\frac{du}{dz}-\left[ -1+\frac{l(l+1)}{z^2}\right]u=0$$\frac{d^2u}{dz^2}+\frac{2}{z}\frac{du}{dz}-\left[ 1+\frac{l(l+1)}{z^2}\right]u=0$

ゲシュタルト崩壊しそうでめっちゃ怖い。タイポや計算ミスなどありましたらご指摘いただけると嬉しいです。

参考文献

[1]
森口繁一・宇田川銈久・一松信 著, 岩波数学公式Ⅲ 特殊函数, 岩波書店
投稿日:20231031
更新日:718
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noho1024
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専攻は物理学です。 有機化学、物性理論、確率数理、場の量子論の勉強を経て、科学の面白さを世に広める活動をしていきたいと思っています。

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