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相加相乗平均の不等式を使ってはさみうち

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この記事では、下の式を一般化して解きます。
タイトルの通り、上下から不等式評価する際にそれぞれ相加相乗平均の不等式を用います.

具体例1

実数tをパラメータとし、x(0,2π]を定義域とする関数Ft(x)
Ft(x)=1(1t2)cosxxと定義する。

limt0minxFt(x)|t|=2

minxは(tを固定して)xのみを動かした場合の最小値を表します。

ちなみに、今回とほぼ同様のやり方で↓の具体例2も証明できます.
しかし、具体例2も含むように一般化しようとすると流石に煩雑すぎるので、省かれています.

具体例2

Ft(x)=tan(tsinx)tan(tcosx)とする.

limtπ20π2tmaxxFt(x)=π2

まず、Ft(x)の定義などを一般化します。

f1(x),f2(x)0xx0で定義された連続関数.
g1(t),g2(t)R上の連続関数.
mは2以上の整数. A,B,Cは正の実数.
これらは以下の条件を満たすとする.
・任意の0<xx0f1(x)>f2(x)
A=f1(0)=f2(0)
B=limx+0f1(x)f2(x)xm
C=g1(0)=g2(0)
t0g1(t)>g2(t)

nmより小さい正の整数.
Ft(x):=g1(t)f1(x)g2(t)f2(x)xn
h(t):={g1(t)g2(t)}(mn)/m
ただし,Ft(x)tによって定まるxの関数で,定義域は0<xx0.

limt0minxFt(x)h(t)=mAmnBnCnnn(mn)mnm

この命題を示します。(これは例1の一般化になってます)

解答を3ステップに分けます.

  1. minxFt(x)が存在することを示す.
  2. Ft(x)を最小にするxt0で0に収束することを示す.
  3. 極限値を求める.
ステップ1 最小値の存在

t0のとき,xの関数Ft(x)には最小値が存在する.

limx+0Ft(x)= より, ある0<ε<x0が存在して,
x<εFt(x)>Ft(x0)
[ε,x0]は閉区間なので,
minx[ε,x0]Ft(x)は存在する.
よって,minxFt(x)は存在する.

ステップ2 最小値をとるxの極限

sam(t):=sup(arg minx Ft(x))
S(ε):=sup|t|<ε[sam(t)]
sam(t),S(ε)を上のように定義すると、次が成り立つ.
limε+0S(ε)=0
つまり、Ft(x)を最小にするxt0で0に収束する.

補足:arg minxは最小値をとるxの集合を返す関数と定義しているので、supをもちいています.
また、samsupargminの頭文字をとって適当に名付けただけの関数です.

S(ε)は,S(ε)>0かつε+0において単調減少なので収束する.
limε+0S(ε)=S0>0と仮定する.

正の整数Nについて

|tN|<1N かつ (11N)S(1N)<sam(tN)S(1N)

を満たす数列{tN}がとれる.
また、
xNarg minx Ft(x) かつ (11N)S(1N)<xNsam(tN)

を満たす数列{xN}がとれる.

(11N)S(1N)<xNS(1N)より、

NtN0,xNS0 なので

limNFtN(xN)=Cf1(S0)f2(S0)S0n>0

ここで、FtN(xN) の最小性より、

limNFtN(xN)limNFtN(1N)=0

これは矛盾.

よって、limε+0S(ε)=0   

ステップ3 求解

limtt0minxFt(x)h(t)=mAmnBnCnnn(mn)mnm

d(t)=yg1(t)g2(t)m とする.( ただし、yは任意の正の実数)
limt0minxFt(x)h(t)limt0Ft(d(t))h(t)=limt0{g1(t)f1(d(t))f2(d(t))d(t)md(t)mnh(t)+f2(d(t))g1(t)g2(t)d(t)nh(t)}=CBymn+Ayn

ここで相加相乗平均の不等式を用いると
CBymn+AynmAmnBnCnnn(mn)mnm

等号成立条件は、y=nA(mn)CBm

当然このyに対しても、先ほどの不等式は成立するので

limt0minxFt(x)h(t)CBymn+Ayn=mAmnBnCnnn(mn)mnm

任意のtについてr(t)arg minx Ft(x)を満たす関数r(t)をとる.
ステップ2より,limt0r(t)=0である.
以下,簡単のためr=r(t)とする.
limt0minxFt(x)h(t)=limt0Ft(r)h(t)=limt01h(t){g1(t)f1(r)f2(r)rmrmn+f2(r)g1(t)g2(t)rn}=limt01h(t){ng1(t)f1(r)f2(r)nrmrmn+(mn)f2(r)g1(t)g2(t)(mn)rn}limt0mh(t)(g1(t)nf1(r)f2(r)rm)n(f2(r)g1(t)g2(t)mn)mnm=limt0m(g1(t)nf1(r)f2(r)rm)n(f2(r)mng1(t)g2(t){h(t)}m/(mn))mnm=mAmnBnCnnn(mn)mnm

ただし、不等号の部分は相加相乗平均の不等式を用いた.

以上より、limtt0minxF(x;t)h(t)=mAmnBnCnnn(mn)mnm   

最初の例1に戻って解いてみます.

Ft(x)=1(1t2)cosxxとする.

m=2, n=1, A=1, B=12, C=1

limt0minxFt(x)|t|=mAmnBnCnnn(mn)mnm=2

投稿日:19日前
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