超対称性について述べます。非常に広範な話題を含むトピックですが、ここでは
の3つに限定して述べます。
基本的なことをいくつか記しておきます:
以下notationは基本的にRef.Bertolini2015に習います。Appendixに使用したnotationを記しておきます。また超対称性をSUSYと表記する場合があります。
本記事はRef.Bertolini2015と、部分的にBilal2001に基づきます。超対称性の入門書・入門的レクチャーノートは無数に存在しますが、Bertolini2015Bilal2001はよいと思います。教科書ではRef.Wess1992とRef.Labelle2010はよいかなと思います。前者は大学院で超対称性を学ぶ際真っ先に勧められる教科書かと思います(※古の話。今はどうか知りません)。超対称理論、超重力理論に関する基礎的な話題が網羅されているように思います。ただ(私のような)"Pedestrian"にはちょっと重い内容です。一方Labelle2010は説明が非常に丁寧で行間が埋まった教科書であり、計算も含め「手取り足取り」SUSYを教えてくれます。
超対称変換とは、物理っぽく言えば、ボソンとフェルミオンを入れ替える変換です。超対称性とは、この変換で不変な性質のことです。
2成分のWeyl spinor(複素2成分のspinor)に作用する超対称変換の生成子$Q_\alpha,\bar Q_{\dot \alpha}$は以下を満たします:
\begin{align}
\{Q_\alpha,\bar Q_{\dot\beta}\}=2(\sigma^\mu)_{\alpha\dot\beta}P_\mu
\end{align}
$Q,\bar Q$はそれぞれLorentz変換の下でスピン表現$(1/2,0), (0,1/2)$で変換する超対称変換の生成子です。$\bar Q_{\dot\beta}$のようにインデックスにドットがついているのは、$(0,1/2)$表現であることを明示するためです。ここで$\sigma^\mu$($\mu=0,1,2,3$)は単位行列とPauli行列を4つ並べたものです(Appendix参照)。$P_\mu$は4元運動量($=(E,\vec p)$)です。
この生成子はGrassmann oddです。よってこれらがボソン・フェルミオンに作用すると、その統計性が逆転します。また生成子の反交換関係は4元運動量なので、ボソン→フェルミオン→ボソン(またはフェルミオン→ボソン→フェルミオン)と変換すると位置が変化します。
超対称性をもう少し詳しく眺めてみます。
場の量子論では$S$行列という量 −漸近状態間の遷移振幅− を計算します。$S$行列の持ちうる対称性を調べることは、自然が持ちうる対称性を調べることと等価です。特に時空の対称性、すなわちPoincare対称性(時空の並進と回転に関する対称性)と非自明な関係をもつ対称性(Lorentz変換と直積にならない対称性)に着目します。かつてこのような対称性を探す試みが精力的になされたのですが、結局失敗しましたColeman1967。この経験をもとにして、そのような対称性は存在し得ないというno-go theorem(不可能性定理)である「Coleman-Mandulaの定理」が示されました。その後、この定理の前提である「生成子が交換関係を満たす」を外すことで、Poincare対称性と非自明な関係を持つ最も一般的な対称性の形を特定したのが「Haag-Lopuszanski-Sohniusの定理」ですHaag1975。この定理により、超対称性がPoincare対称性と非自明な関係をもつ唯一の対称性であることが示されました。
以下両定理を眺めてみます。
Coleman-Mandulaの定理のステートメントは以下ですColeman1967:
群$\mathcal G$を、$S$行列の連結な対称性の群とする。さらに以下の5つの条件が成立することを仮定する:
このとき、群$\cal G$は内部対称性とPoincare群の直積と局所的に同型である。
具体的な生成子の交換関係は以下のように与えられます:
\begin{align}
[P_\mu,P_\nu]&=0\\
[M_{\mu\nu},M_{\rho\sigma}]
&=-i\eta_{\mu\rho}M_{\nu\rho}
-i\eta_{\nu\sigma}M_{\mu\rho}
+i\eta_{\mu\sigma}M_{\nu\rho}
+i\eta_{\nu\rho}M_{\mu\sigma}\\
[M_{\mu\nu},P_\rho]&=-i\eta_{\rho\mu}P_\nu+i\eta_{\rho\nu}P_\mu\\
[P_\mu,B_l]&=0\\
[M_{\mu\nu},B_l]&=0
\end{align}
ここで$P_\mu$は並進変換、$M_{\mu\nu}$はLorentz変換の生成子。$B_l$は内部対称性の群の生成子でありLorentz scalar。
上記$B$は$M,P$と交換します。つまりPoincare対称性と他の自由度が非自明に絡む対称性は実現しえないことになります。
「Haag-Lopuszanski-Sohniusの定理」では、Coleman-Mandulaの定理の前提「生成子は通常のLie代数であり、交換関係を満たす」を外し、反交換関係も許します。その上で最も一般的な生成子の(反)交換関係は以下のようになりますHaag1975:
Coleman-Mandulaの定理において、生成子が反交換関係を満たすことも許す。すなわちGrassmann oddな生成子も許すことにする。このとき、超対称性だけがPoincare対称性および内部対称性の両方と非自明な関係(=生成子の(反)交換関係がノンゼロ)を持つ。
この条件のもとで最も一般的な生成子の(反)交換関係は以下:
\begin{align}
[P_\mu,Q_\alpha^I]&=0\\
[P_\mu,\bar Q^I_{\dot \alpha}]&=0\\
[M_{\mu\nu},Q_\alpha^I]&=i(\sigma_{\mu\nu})_\alpha{}^\beta Q_\beta^I\\
[M_{\mu\nu},\bar Q_I{}^{\dot \alpha}]&=i(\bar\sigma_{\mu\nu})^{\dot\alpha}{}_{\dot\beta} \bar Q^I{}^{\dot \beta}\\
\{Q^I_\alpha,\bar Q^J_{\dot\beta}\}
&=2\sigma^\mu_{\alpha\dot\beta}P_\mu \delta^{IJ}\\
\{Q_\alpha^I,Q_\beta^J\}&=\epsilon_{\alpha\beta}Z^{IJ}, \ \ Z^{IJ}=-Z^{JI}\\
\{\bar Q^I_{\dot\alpha},\bar Q^J_{\dot\beta}\}&=\epsilon_{\dot\alpha\dot\beta}(Z^{IJ})^*\\
[Q_\alpha^I,B_l]&=(b_l)^I{}_JQ^J_\alpha\\
[\bar Q_{I\dot\alpha},B_l]&=-\bar Q_{J\dot\alpha}(b_l)^J{}_I\\
[B_l,B_m]&=if_{lm}{}^nB_n\\
(I,J&=1,2,\cdots,{\cal N})
\end{align}
$P,M,B$はColeman-Mandulaの定理でも登場した生成子。$Q,\bar Q$は超対称性の生成子。
この定理は超対称性が大変特別な対称性であることを示しています。$\cal N$は超対称性の生成子の数を表します。
上記の代数の意味するところを説明しておきます。
上から3・4番目の式は、$Q,\bar Q$がspinorであることを示します。5番目の式は、超対称変換によりボソンとフェルミオンを入れ替え、さらにフェルミオンをボソンに入れ替える変換は並進を生むことを意味します。この関係式より、超対称性を局所化すると、それは局所的な並進変換に対する不変性を持つことを意味します。これはすなわち一般座標変換に対する不変性を意味します。つまり超対称性を局所化した理論は、自動的に重力を含む理論となります。これは超重力理論と呼ばれ、近年では超弦理論の低エネルギー有効理論として非常に重要な役割を果たしています。
$Z_{IJ}$は反対称なので、$Q$の種類が1つ(${\cal N}=1$)の場合は存在しません。${\cal N}\ge 2$のときはノンゼロになり得ます。この$Z_{IJ}$はすべての対称性の生成子と交換する演算子であり、ゆえに中心電荷(central charge)と呼ばれます(すべての生成子と交換する生成子による対称性はcenterと呼ばれる)。そして$Z^{IJ}$は、内部対称性の生成子の線形結合として以下のように書けます:
\begin{align}
Z^{IJ}=a^{l|IJ}B_l
\end{align}
「Poincare代数と非自明な関係をもつ対称性は超対称性が『最後』である」という意味で、超対称性は「最後の対称性」などと呼ばれることもあります(脚注1)。
grade $n$のgraded Lie algeblaとは
\begin{align}
L=\oplus_{i=0}^nL_i
\end{align}
のように直和分解できるベクトル空間です(Ref.Bertolini2015P33-)。ここで$L_i \ (i=1,2,\ldots,n)$はすべてベクトル空間であり、以下の積
\begin{align}
&[ \ ,\ \}: L\times L\to L\\
&\hspace{1cm} [L_i,L_j\}\in L_{i+j} \ \text{ mod }n+1\\
&\hspace{1cm} [L_i,L_j\}=-(-1)^{ij}[L_j,L_i\}\\
&\hspace{1cm} [L_i,[L_j,L_k\}\}(-1)^{ik}
+[L_j,[L_k,L_i\}\}(-1)^{ij}
+[L_k,[L_i,L_j\}\}(-1)^{jk}=0
\end{align}
が定義されているものです。$L_0$は通常のLie algebraですが、$L_i \ (i\ge 1)$はそうではないです。$[\ ,\ \}$の2番目の性質は"supersymmetrization"と呼ばれます。3番目の性質はJacobi idenitityです。
超対称代数はgrade oneのgraded Lie algebraです:
\begin{align}
L=L_0\oplus L_1
\end{align}
ここで$L_0$はPoincare algebra、そして$L_1=(Q^I_\alpha,\bar Q^I_{\dot\alpha}) \ \ (I=1,\ldots,{\cal N})$は、Lorentz群の表現$(1/2,0)$および$(0,1/2)$で変換する$2N$コの反可換なfermion的(=Grassmann oddの)生成子です。上記したHaag-Lopuszanski-Sohniusの定理は、その定理の前提・条件の下、これがPoincare代数の唯一の整合的な拡張であることを示します。
超対称性は実に様々な理由で重要です。物理のことなので詳しくは書きませんが、場の量子論におけるゼロ点エネルギーの相殺、Higgs粒子の質量に関する自然性、大統一理論におけるゲージ結合定数のunification、ダークマター、超弦理論等、様々な文脈で登場します。その重要性から、超対称粒子は様々な実験により直接・間接的な形で探索されています。LHCによる高エネルギー散乱実験、素粒子・原子核のelectric dipole momentの測定、陽子崩壊の測定、宇宙線の観測等はその例です。このあたりのことに関しては様々な文献に記載がありますが、例えばRef.Bertolini2015の"1.2 What is supersymmetry useful for?"をご参照ください。
ただ残念なことに、現在まで時空の対称性としての超対称性、すなわち超対称粒子の存在の実験的証拠は得られていません(脚注2)。
一方で、時空の対称性としてではなく、数学的構造・動的な理由により超対称性が現れることがあります。例えば円周上の自由粒子には超対称性が現れますSakamoto2018。物性系でも超対称性が現れる系がいくつか知られています(Supersymmetry-Wikipediaの"Supersymmetry in condensed matter physics"の項参照)。また原子核の構造にも超対称性が現れますIachello1999。ランダム磁場のあるスピン系にもemergentな隠れた超対称性が生じますParisi1979。
さらに、超対称性が存在すると理論の解析が容易になる場合があるのも重要です。その代表例が${\cal N}=2$の超対称性を持つYang-Mills(YM)理論です。超対称性を持たない通常のYM理論は強い相互作用 −陽子・中性子・中間子等を支配する力− を記述する理論です。ところがその強結合性・非摂動論的性質により、YM理論の低エネルギー現象を解析することは著しく困難です。一方超対称性を持つYM理論では、いくつかの自然な仮定のもとで、その低エネルギーにおける有効理論を厳密に導くことが可能です。これはSeiberg-Witten理論と呼ばれ、物理学はもちろん、数学的にも重要な進展をもたらしましたSeiberg1994。
これらのことから、たとえ時空の対称性としてのSUSYが人間の能力で発見できるエネルギー領域に存在しなくても、更にはそれが全く存在しなくても、SUSYは大変重要な対称性であると言えます。
超対称性を持つ理論を構築するのに便利なのが超場形式です。この形式では、時空$x^\mu$の他に複素Grassmann数の座標$\theta_\alpha$を導入し(これはWeyl spinorであり、Lorentz変換に対してspinorとしての変換を受ける)、超空間$(x^\mu,\theta_\alpha)$に依存する場を構成します。すると超対称変換は超空間における超場の並進変換、超対称変換の生成子は超空間における微分演算子で表されることを以下確認します。
以下を満たすWeyl spinor $\theta_\alpha \ \ (\alpha=1,2)$を導入します:
\begin{align}
\theta_\alpha\theta_\beta+\theta_\beta\theta_\alpha = 0
\end{align}
Weyl spinorなので、$\bar\theta$も独立に存在します。
通常の時空$x^\mu$に$\theta_\alpha,\bar\theta_\alpha$を加えて超空間の座標とします:
\begin{align}
(x^\mu,\theta_\alpha,\bar\theta_\alpha)
\end{align}
超空間に依存する超場
\begin{align}
\Phi(x,\theta,\bar\theta)
\end{align}
を導入します。本記事ではこれはLorentz scalarとし、スカラー超場と呼ぶことにします。このように、場を超空間の座標に依存させて扱う方法を超場形式と呼びます。
ここでGrassmann数による積分に言及しておきます。Grassmann数による積分は、以下で定義されます:
\begin{align}
\int d\theta=0, \
\int d\theta\ \theta =1
\end{align}
${\cal N}=1$の超空間の場合、measureを次のように定義します:
\begin{align}
d^2\theta:=\frac{1}{2}d\theta^1 d\theta^2, \ \ d^2\bar\theta:=\frac{1}{2}d\bar\theta^{\dot 2}d\bar\theta^{\dot 1}
\end{align}
このとき以下が成立します:
\begin{align}
&\int d^2\theta \ \theta\theta =\int d^2\bar\theta\ \bar\theta\bar\theta =1,\\
&\int d^2\theta d^2\bar\theta \ \theta\theta \ \bar\theta\bar\theta=1
\end{align}
これらから、Grasmann数では積分と微分が等価であることがわかります:
\begin{align}
\int d\theta \leftrightarrow \frac{\partial}{\partial \theta}
\end{align}
よって以下が成立します:
\begin{align}
\int d^2\theta=\frac{1}{4}\epsilon^{\alpha\beta}\partial_\alpha\partial_\beta, \ \ \int d^2\bar\theta=-\frac{1}{4}\epsilon^{\dot\alpha\dot\beta}
\bar\partial_{\dot\alpha}\partial_{\dot\beta}
\end{align}
${\cal N}\ge 2$の場合にも同様に拡張します。
超場形式において、超対称変換は「超空間における並行移動」として表現できます。以下超対称代数の微分による表現を探します。
まず、超空間における超場に関する並進が超対称変換であることを要請します。すなわち以下を要請します(ここではスカラー超場を$Y$で表します):
\begin{align}
&Y(x+\delta x,\theta+\delta\theta,
\bar\theta+\delta\bar\theta)
=
e^{-i(\epsilon \hat Q+\bar\epsilon\hat{\bar Q})}Y(x,\theta,\bar\theta)
e^{i(\epsilon \hat Q+\bar\epsilon\hat{\bar Q})},\\
&\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}Y(x,\theta,\bar\theta):=Y(x+\delta x,\theta+\delta\theta,
\bar\theta+\delta\bar\theta)-Y(x,\theta,\bar\theta)
\end{align}
ただし$\epsilon,\bar\epsilon$はWeyl spinorです。これは運動量演算子${\hat P}_\mu$による場$\phi(x)$の通常の並進変換:
\begin{align}
\phi(x+a)=e^{-ia{\hat P}}\phi(x)
e^{ia{\hat P}}
\end{align}
の超空間における類似式です。この式では、$\hat Q,\hat{\bar Q}$を、$x,\theta,\bar\theta$の並進の生成子とみなしています。$\hat Q,\hat{\bar Q}$が$\theta,\bar\theta$だけでなく$x$の並進も生成するのは、$\{Q,\bar Q\}$が$P_\mu$に比例するからです。
この式を$Y(0,0,0)$で書き直せば以下を得ます:
\begin{align}
&Y(x+\delta x,\theta+\delta\theta,
\bar\theta+\delta\bar\theta)
=
e^{-i(\epsilon \hat Q+\bar\epsilon\hat{\bar Q})}
e^{-i(x{\hat P}+\theta \hat Q+\bar\theta\hat{\bar Q})}
Y(0,0,0)
e^{i(x{\cal P}+\theta Q+\bar\theta\bar Q)}
e^{i(\epsilon Q+\bar\epsilon\bar Q)},\\
&\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}Y(x,\theta,\bar\theta):=Y(x+\delta x,\theta+\delta\theta,
\bar\theta+\delta\bar\theta)-Y(x,\theta,\bar\theta)
\end{align}
Baker-Campbell-Housdorffの定理を用いると、右辺の$\exp$の部分は以下のようにまとめられます:
\begin{align}
\exp\{i(x{\hat P}+\theta \hat Q+\bar\theta\hat {\bar Q})\}
\exp\{i(\epsilon \hat Q+\bar\epsilon\hat{\bar Q})\}
=
\exp\{i(x^\mu+i\theta\sigma^\mu\bar\epsilon-i\epsilon\sigma^\mu\bar\theta){\hat P_\mu}+i(\epsilon+\theta)\hat Q+i(\bar\epsilon+\bar\theta)\hat{\bar Q}\}\tag{1}
\end{align}
これから直ちに
\begin{align}
\begin{cases}
\delta x^\mu=i\theta\sigma^\mu\bar\epsilon-i\epsilon\sigma^\mu\bar\theta\\
\delta\theta^\alpha=\epsilon^\alpha\\
\delta\bar\theta^{\dot\alpha}=\bar\epsilon^{\dot\alpha}
\end{cases}
\end{align}
を得ます。
これらを用いると、演算子$Q$の場に対する作用を微分で表現することができます。まず演算子の場に対する作用を以下のように定めます:
\begin{align}
[Y,\hat Q_\alpha]:=Q_\alpha Y, \ \ [Y,\hat{ \bar Q}_{\dot\alpha}]=\bar Q_{\dot\alpha}Y
\end{align}
$\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}Y(x,\theta,\bar\theta)$を演算子による場の変換で書くと
\begin{align}
\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}Y(x,\theta,\bar\theta)&=e^{-i(\epsilon\hat Q+\bar\epsilon\hat{\bar Q})}Y(x,\theta,\bar\theta)e^{i(\epsilon\hat Q+\bar\epsilon\hat{\bar Q})}\\
&\simeq-i\epsilon^\alpha[\hat Q_\alpha,Y(x,\theta,\bar\theta)]+i\bar\epsilon^{\dot\alpha}[\hat{\bar Q}_{\dot\alpha}],Y(x,\theta,\bar\theta)\\
&=i\epsilon^\alpha Q_\alpha Y+i\bar\epsilon^{\dot\alpha}\bar Q_{\dot\alpha}Y
\end{align}
一方、Eq.(1)を用いれば
\begin{align}
\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}Y(x,\theta,\bar\theta)
\simeq(\epsilon^\alpha\partial_\alpha
+\bar\epsilon^{\dot\alpha}\bar\partial_{\dot\alpha}+i(\theta\sigma^\mu\bar\epsilon-\epsilon\sigma^\mu\bar\theta)\partial_\mu)Y(x,\theta,\bar\theta)
\end{align}
これらを比較すれば、最終的に$\hat Q,\hat{\bar Q}$の微分表現を得ます:
\begin{align}
Q_\alpha&=-i\partial_\alpha-\sigma^\mu_{\alpha\dot\beta}
\bar\theta^{\dot\beta}\partial_\mu\\
\bar Q_{\dot\alpha}&=i\bar\partial_{\dot\alpha}+\theta^\beta\sigma^\mu_{\beta\dot\alpha}\partial_\mu
\end{align}
この演算子が、超対称代数の反交換関係式
\begin{align}
&\{Q_\alpha,Q_\beta\}=\{\bar Q_{\dot\alpha},\bar Q_{\dot\beta}\}=0\\
&\{Q_\alpha,\bar Q_{\dot\beta}\}=2\sigma^\mu_{\alpha\dot\beta}P_\mu
\end{align}
を満たすことはすぐに確かめられます。
これで超対称代数の超空間における微分表現を得ることができました。
一般的なスカラー超場は以下のような展開を持ちます:
\begin{align} Y(x,\theta,\bar\theta)=f(x)+\theta\psi(x)+\bar\theta\bar\chi(x)+\theta\theta m(x)+\bar\theta\bar\theta(x)+\theta\sigma^\mu\bar\theta v_\mu(x)+\theta\theta\bar\theta\bar\lambda(x)+\theta\theta\bar\theta\bar\theta d(x) \end{align}
ところがこれは既約表現ではなく、余計な場を含んでいます。そこで拘束を課すことで既約な表現を得ることを考えます。
自由度勘定から言えば、$\theta$のみに依存する超場$F(x,\theta)=f(x)+\theta\psi(x)+\theta\theta m(x)$は既約な場の表現と同じ自由度を持ちます。しかしこの場を超対称変換すると$\bar\theta$が現れてしまい、閉じた表現になりません。同じことですが、超場に対する以下の拘束条件
\begin{align} \frac{\partial}{\partial \bar\theta^{\dot\alpha}}Y(x,\theta,\bar\theta)=0 \end{align}
は超対称変換に対し不変でないため、拘束条件が超対称性とincompatibleです。
適切に自由度を削減するため、以下の超共変微分を導入します:
\begin{align}
D_\alpha=\partial_\alpha+i\sigma^\mu_{\alpha\dot\beta}\bar\theta^{\dot\beta}\partial_\mu\\
\bar D_{\dot\alpha}=\bar\partial_{\dot\alpha}+i\theta^\beta\sigma^\mu_{\beta\dot\alpha}\partial_\mu
\end{align}
これを用い、超場に対して
$$ \bar D_{\dot\alpha}Y(x,\theta,\bar\theta)=0 \tag{2} $$
の拘束条件を課します。これをカイラル超場と呼びます。ここで重要なのは、$D$と$Q$が反可換であることです:
\begin{align}
&\{D_\alpha,Q_\beta\}=\{D_\alpha,\bar Q_{\dot\beta}\}=0\\
&\{D_\alpha,\bar D_{\dot\beta}\}=2i\sigma^\mu_{\alpha\dot\beta}=-2\sigma^\mu_{\alpha\dot\beta}P_\mu
\end{align}
これにより、Eq.(2)の拘束条件は超対称変換とconsistentな拘束であることがわかります。すなわち$\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}(\bar D_\alpha Y)=\bar D_\alpha(\delta_{\epsilon,\bar\epsilon}Y)$なので、$\bar D_{\dot\alpha}Y=0$は超対称変換に対して不変です。
Eq.(2)の一般解は以下のように書けます(解を$\Phi$で表します):
$$ \Phi(y,\theta)=\phi(y)+\sqrt{2}\theta\psi(y)-\theta\theta F(y),\ \ y^\mu=x^\mu+i\theta\sigma^\mu\bar\theta $$
$y^\mu$は以下を満たします:
$$ \bar D_{\dot\alpha}y^\mu=\bar D_{\dot\alpha}\theta_\beta=0 $$
$\Phi(y(x),\theta)$を$x$のまわりで展開すれば以下を得ます:
$$ \Phi(x,\theta,\bar\theta)=\phi(x)+\sqrt{2}\theta\psi(x) +i\theta\sigma^\mu\bar\theta\partial_\mu\phi(x)-\theta\theta F(x)-\frac{i}{\sqrt{2}}\theta\theta\partial_\mu\psi(x)\sigma^\mu\bar\theta-\frac{1}{4}\theta\theta\bar\theta\bar\theta\square\phi(x) $$
これは場$\phi,\psi,F$に依存しており、既約表現です。各componentの超対称変換による変換性は以下のようになります:
\begin{align} \begin{cases} \delta\phi=\sqrt{2}\epsilon\psi\\ \delta\psi_\alpha=\sqrt{2}i(\sigma^\mu\bar\epsilon)_\alpha\partial_\mu \phi-\sqrt{2}\epsilon_\alpha F\\ \delta F=i\sqrt{2}\partial_\mu\psi\sigma^\mu\bar\epsilon \end{cases} \end{align}
一方反カイラル超場$\bar\Phi$は以下を満たす超場です:
$$ D_\alpha \bar\Phi=0 $$
$\Phi, \bar\Phi$は適切に自由度が制限されており、既約な場です。
超場形式を導入するひとつの大きな動機は、超対称性を持つ理論を系統的に、簡単に構成できることです。ここで重要なのは、スカラー超場の$D$成分(=$\bar\theta\bar\theta\theta\theta$に比例する項)や、カイラル超場の$F$成分($\theta\theta$に比例する項)は、超対称変換の下で全微分で書けることです。よってこれらの項をとってきて時空で積分したものを作用にすれば、超対称変換をしても変化はtotal derivativeであり、 超対称変換に対し不変な作用積分を得ることができます。
以下超対称変換に対して不変であることを"SUSY inv."と表記します。本章はRef.Bilal2001に基づきます。
先に結論を言っておきます。一般的なSUSY inv.の作用積分は、$F$を一般の超場、$W(\Phi), \bar W(\bar\Phi)$をカイラル超場$\Phi$・反カイラル超場$\bar\Phi$のみの関数として
\begin{align}
\int d^2\theta d^2\bar\theta\ F(x,\theta,\bar\theta)+\int d^2\theta\ W(\Phi)+\int d^2\bar\theta \ \bar W(\bar\Phi) \tag{3}
\end{align}
と書けます。(後ほどこの作用積分に物理的な条件を課します)
まず初項がSUSY inv.であることを説明します。一般のスカラー超場$Y$に対する超対称変換は以下のようになります:
\begin{align}
\delta Y=\frac{\partial}{\partial\theta^\alpha}(-\epsilon^\alpha Y)
+\frac{\partial}{\partial\bar\theta^{\dot\alpha}}(-\bar\eta^{\dot\alpha}Y)
+\frac{\partial}{\partial x^\mu}
[-i(\epsilon\sigma^\mu\bar\theta-\theta\sigma^\mu\bar\eta)Y]
\end{align}
ここで$Y$の$\theta$に関する最高次の項は4次($\theta\theta\bar\theta\bar\theta$)だから、初項・第2項は3次以下。ゆえにこれを$d^2\theta d^2\bar\theta$で積分すれば最終項のみが残ります。これは$x$に関して全微分なので、$\int d^4x$により(境界でLagrangianが消えれば)ゼロになります。ゆえにスカラー超場を$\int d^4x\int d^2\theta d^2\bar\theta$で積分した量はSUSY inv.です。
そして、スカラー超場の積はまたスカラー超場になり、超対称変換に対する変換則も同じなので、任意の超場の積を$F$として、その$d^4xd^2\theta d^2\bar\theta$での積分はSUSY inv.です。ここで、カイラル超場$\Phi$と反カイラル超場$\bar\Phi$の積はカイラルではなくスカラー超場になることに注意してください。
第2,3項がSUSY inv.なのも簡単にわかります。カイラル超場$\Phi$の超対称変換による変化は以下です:
\begin{align}
\delta \Phi=\frac{\partial}{\partial\theta^\alpha}(-\epsilon^\alpha\Phi(y,\theta))
+\frac{\partial}{\partial y^\mu}[-i(\epsilon\sigma^\mu\bar\theta-\theta\sigma^\mu\bar\epsilon)\Phi(y,\theta)]
\end{align}
$\Phi$に関して、$\theta\theta$が$\theta$に関する最高の次数なので、$d^2\theta$で積分すれば第2項しか残らず、そして第2項の微分はこの積分を行うと$\frac{\partial}{\partial x^\mu}$での全微分になります。ということで、これを$d^4 x$で積分すればSUSY inv.になります。
さらに、カイラル超場の積はやはりカイラル超場であり、そして変換則も同じなので、任意のカイラル超場の積の$d^2\theta$積分は超対称変換で不変です。よってカイラル超場のみの関数$W(\Phi)$の$d^2\theta$積分はSUSY inv.です。同様に反カイラル超場のみの関数$\bar W(\bar\Phi)$の$d^2\bar\theta$による積分も同様にSUSY inv.です。
$W$が$\Phi$のみの関数であり、$\bar\Phi$に依存しないというのは、つまり$W$が$\Phi$に関して正則(holomorphic)な関数であるということです($\partial W/\bar\Phi=0$)。このようなポテンシャルの正則性は、超対称理論の強い制約になります。
Eq.(3)に物理的に必要な条件を付け加えます。まず初項の$\int d^2\theta d^2\bar\theta \ F(x,\theta,\bar\theta)$を
\begin{align}
\int d^2\theta d^2\bar\theta\ K(\Phi,\bar\Phi)
\end{align}
と書き直し、これに制限をつけます。まず$K$はスカラー超場とします。これは上にも述べたように作用積分をSUSY inv.にするため、またLorentz inv.にするために必要です。また$K$は質量次元2です。これは作用積分が質量次元4を持つために必要です。さらに$K$は$D_\alpha\Phi$と$\bar D_{\dot \alpha}\bar\Phi$には依存しません。なぜならこれらが存在してしまうと、時空の3階微分以上が含まれてしまい、これは局所場の理論にならないからです。これらの条件の下最も一般的な$K$は
\begin{align}
K(\Phi,\bar\Phi)=\sum_{m,n=1}^\infty c_{mn}\bar\Phi^m\Phi^n,\ \ \ c_{mn}=c_{nm}^*
\end{align}
と書けます。ここで$c_{mn}$の質量次元は$2-(m+n)$です。$K$はKählerポテンシャルと呼ばれます。
$W(\Phi),\ W(\bar\Phi)$に関しても制限をつけます。まず$W$は$\Phi$のholomorphicな関数です。また超共変微分を含んではいけません($D_\alpha\Phi$はカイラルではないから)。さらに$W$の質量次元は3です。これらより
\begin{align}
W(\Phi)=\sum_{n=1}^\infty a_n \Phi^n
\end{align}
が一般的な形です。ここで$a_n$の質量次元は$3-n$です。$W$は超ポテンシャルと呼ばれます。実は$W$にはもうひとつ条件があります。LagrangianのR-chargeと呼ばれる量が0であるために、$W$のR-chargeは2でなければなりません。これに関しては、例えばRef.Bertolini2015のP87をご参照ください。
以上から、改めてSUSY inv.をもつ一般的なLagrangianを書くと
\begin{align}
\int d^2\theta d^2\bar\theta \ K(\Phi,\bar\Phi)+\int d^2\theta W(\Phi)+\int d^2\bar\theta \bar W(\bar \Phi)
\end{align}
となります。これらの項は上記した条件を満たします。
SUSY inv.な作用積分の具体例を2つほど。
以上の議論から、以下の作用はSUSY inv.です(${\cal N}=1$の物質場の作用)
\begin{align}
\int d^2\theta d^2\bar\theta \ \bar\Phi\Phi
\end{align}
これをcomponent fieldで書くと以下を得ます:
\begin{align}
{\cal L}=\int d^2\theta d^2\bar\theta\bar\Phi\Phi
=\partial_\mu\bar\phi\partial^\mu\phi
+\frac{i}{2}(\partial_\mu\psi\sigma^\mu\bar\psi-\psi\sigma^\mu\partial_\mu\bar\psi)
+\bar FF+\text{(total derivative)}
\end{align}
これはSUSY inv.な${\cal N}=1$の自由場のLagrangianです。
もうひとつ、今後の記事のために、1+1次元の${\cal N}=1$超対称非線形シグマ模型を導入しておきますAlvarez-Gaume1983。
1+1dの$\gamma$ matrices等を以下で定義します:
\begin{align}
\gamma_\mu^2&=1\ \ (\mu=1,2), \ \gamma_\mu=\gamma_\mu^\dagger\\
\gamma_5^2&=1, \gamma_5=\gamma_5^\dagger\\
[\gamma^\mu,\gamma^\nu]&=2i\epsilon^{\mu\nu}\gamma_5\\
\epsilon^{12}&=\epsilon_{12}=1, \ \bar\theta=-i\theta^+\gamma_2, \ \theta=C\bar\theta^T\\
C\gamma_\mu C^{-1}&=-\gamma_\mu^T,\ C\gamma_5C^{-1}=-\gamma_5^T, \ C^{-1}=C^T, \ C^2=1
\end{align}
この定義のもとで、1+1d超対称シグマ模型のLagrangianは以下です:
\begin{align}
S=\frac{1}{4i}\int d^2x d^2\theta \ g_{ij}(\Phi^k)\bar D\Phi^i D\Phi^j
\end{align}
ここで$g_{ij}$は$\Phi^i$を座標とするリーマン多様体${\cal M}$の計量です。$\Phi$はカイラル超場であり
\begin{align}
\Phi^i(x,\theta)=\phi^i(x)+\bar\theta\psi^i(x)+\frac{1}{2}\bar\theta\theta F^i(x)
\end{align}
作用を成分場で書くと以下のようになります:
\begin{align}
S=\frac{1}{2}\int d^2 x
\left[
g_{ij}(\phi)\partial_\mu\phi^i\partial_\mu\phi^j
+ig_{ij}(\phi)\bar\psi^i\gamma^\mu D_\mu \psi^j
+\frac{1}{6}R_{iklj}(\bar\psi^i\psi^l)(\bar\psi^k\psi^j)
\right]
\end{align}
です。この作用に現れる$D_\mu$は${\cal M}$における共変微分であり
\begin{align}
D_\mu \psi^i=\partial_\mu\psi^i+\Gamma^i{}_{jk}\partial_\mu\phi^j\psi^k
\end{align}
この作用は以下の2つ変換に対して不変です:
これら1.2.の変換は可換です。
本記事では超対称性の基本的なことに関して述べました。特に「超対称性の概要」「超場形式」「超対称理論の構築」に関して言及しました。「Coleman-Mandulaの定理」及び「Haag-Lopuszanski-Sohniusの定理」より、超対称性は自然界でPoincare対称性と非自明な関係を持つ唯一の対称性であることが言えます。理論的にも実験的にも非常に興味深い対象であり、精力的な研究がなされていますが、残念ながら現在までに時空の対称性としての超対称性は見つかっていません(脚注2)。
超対称理論は超場形式で記述すると便利です。超場の微分としての超対称性の生成子の表現に関して述べました。超場はそのままだと表現として既約ではないので、超共変微分を導入し、これを用いて超場に拘束を加え、適切に自由度を落とします。このようにして自由度が適切に減った場を(反)カイラル超場と呼びます。カイラル超場を用いると、比較的簡単に超対称理論を構成することができます。一般的なSUSY inv.を満たす作用積分は、Kälerポテンシャルと超ポテンシャルを用いて書けます。そして具体的なSUSY inv.な作用積分の例を2つほど紹介しました。超対称非線形シグマ模型は今後の記事で必要なため導入しておきました。
超対称性に関しては無限に話題があり、ここで話したことは本当に一部のことだけです。勉強したい方は例えばRef.Bertolini2015Bilal2001、またそれらで引用している文献をご参照ください。
おしまい。${}_\blacksquare$
(脚注1)作用積分の段階ではHaag-Lopuszanski-Sohniusの定理を満たさないような対称性も可能であることをコメントしておきます。Ref.Nakanishi1999の[迷信2]にあるように、超対称性ではない別の"超対称性"が作用積分の段階で存在する理論を実際に構成できます。しかし、この対称性は理論の空間を物理的空間に射影する段階で消え、最終的に$S$行列には反映されません。このように、作用積分に存在する対称性・自由度が物理的ではなく、物理空間への射影が必要な例は多く存在します。
(脚注2)実験による超対称性の探求に関してひとつコメントしておきます。現在(2023年)、素粒子標準理論による予言と実験がずれているのではないか?と言われている量が2つあります。ひとつが「ミューオンの異常磁気能率」、もうひとつが「Wボソンの質量」です。これらのずれが本当ならば、それは超対称粒子の存在による可能性もあります。しかしながらどちらのずれもまだ確定したものではありません。「ミューオンの異常磁気能率」に関しては、実験値に関してはかなり信頼のおけるものである一方、理論の不定性のために確定的なことが言えない状態ですEndo2022。ハドロンが関わる計算の困難な部分に関し、従来から使われている実験値を援用した方法と、格子QCDという強い相互作用の第一原理計算による計算が対立しています。格子QCDを信頼するなら、得られた実験データは標準理論と整合的なようですEndo2022。一方で「Wボソンの質量」に関しては実験値自体が不確定です。標準理論と大きくずれた実験値は、2012年に行われたFermilabのTevatronにおけるCDF Run 2のデータの解析により得られました。しかしこれは最新(2023年)のLHCのATLAS実験における実験値と不整合です。ATLAS実験では標準理論と整合的な結果が得られていますars2023。ATLASの最新データだけでなく、CDF Run 2以外の実験値は標準理論と整合的でありars2023、CDF Run 2データの解析の信頼性に関して多くの議論をしなければならない状態かと思います。
ということで、まだまだ標準理論の壁は厚いようです。
以下Ref.Bertolini2015の"2.2 Spinors and representations of the Lorentz group"より。
Minkowski計量:
\begin{align}
\eta_{\mu\nu}&={\rm diag}(1,-1,-1,-1)
\end{align}
Pauli行列:
\begin{align}
\sigma^1&=\begin{pmatrix}0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}, \ \ \sigma^2=\begin{pmatrix}0 & -i \\ i & 0 \end{pmatrix}, \ \ \sigma^3=\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix},\\
\sigma^\mu&=(1,\vec \sigma),\ \ \bar\sigma^\mu:=(1,-\vec \sigma)
\end{align}
$\psi,\bar\psi$ (Weyl spinor, 2成分複素Grassman数)の足の上げ下げ
\begin{align}
&\epsilon_{\alpha\beta}=\epsilon_{\dot\alpha\dot\beta}=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix},\ \
\epsilon^{\alpha\beta}=\epsilon^{\dot\alpha\dot\beta}=\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}\\
&\psi^\alpha=\epsilon^{\alpha\beta}\psi_\beta, \ \psi_\alpha=\epsilon_{\alpha\beta}\psi^\beta, \ \bar\psi_{\dot\alpha}=\epsilon_{\dot\alpha\dot\beta}\bar\psi^{\dot\beta}, \
\bar\psi^{\dot\alpha}=\epsilon^{\dot\alpha\dot\beta}\bar\psi_{\dot\beta},\\
&\psi_\alpha:\text{ spin }(1/2,0) \text{ 表現で変換, }\ \ \bar\psi^{\dot\alpha}: \text{ spin }(0,1/2) \text{ 表現で変換} \ \ \ (\alpha, \dot\alpha=1,2)
\end{align}
SpinorのLorentz スカラー積
\begin{align}
&\psi\chi:=\psi^\alpha\chi_\alpha=\epsilon^{\alpha\beta}\psi_\beta\chi_\alpha
=-\epsilon^{\alpha\beta}\psi_\alpha\chi_\beta=-\psi_\alpha\chi^\alpha=\chi^\alpha\psi_\alpha=\chi\psi\\
&\bar\psi\bar\chi:=\bar\psi_{\dot\alpha}\bar\chi^{\dot\alpha}
=\epsilon_{\dot\alpha\dot\beta}\bar\psi^{\dot\beta}\bar\chi^{\dot\alpha}
=-\epsilon_{\dot\alpha\dot\beta}\bar\psi^{\dot\alpha}\bar\chi^{\dot\beta}
=-\bar\psi^{\dot\alpha}\bar\chi_{\dot\alpha}
=\bar\chi_{\dot\alpha}\bar\psi^{\dot\alpha}
=\bar\chi\bar\psi\\
&(\psi\chi)^\dagger=(\psi^\alpha\chi_\alpha)^\dagger
=\chi_\alpha^\dagger{\psi^\alpha}^\dagger
=\bar\chi_{\dot\alpha}\bar\psi^{\dot\alpha}=\bar\chi\bar\psi
\end{align}
$\sigma^\mu, \bar\sigma^\mu$とspinorとの積
\begin{align}
&\psi\sigma^\mu\bar\chi:=\psi^\alpha\sigma^\mu_{\alpha\dot\alpha}\bar\chi^{\dot\alpha}\\
&\bar\psi\bar\sigma^\mu\chi:=\bar\psi_{\dot\alpha}\bar\sigma^{\mu}{}^{\dot\alpha\beta}\chi_\beta
\end{align}