ここでは京大数学教室・RIMSの修士課程の院試の2022専門02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
$K=\mathbb{C}(t)$とおく。 $K$係数多項式$f(X)=X^4+2utX^2+t$の$K$上の最小分解体を$L$とおく。
初めに
$$
a=\sqrt{u^2t^2-t}
$$
$$
b=\sqrt{-ut+a}
$$
$$
c=\sqrt{-ut-a}
$$
とおく。このときアイゼンシュタインの既約法より$f$は既約であるから、$[K(b):K]=4$である。ここで$M=K(b)$が$K$上ガロアであるとする。このとき$\sqrt{t},c\in M$であるから、拡大次数を考えると
$$
M=K\qty(a,\sqrt{t})=K\qty(\sqrt{1-u^2t},\sqrt{t})
$$
$$
H=\mathrm{Gal}(M/K)=(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2
$$
である。このとき$H$の元は
$$
\sigma_0(b)=b,\sigma_0(c)=c
$$
$$
\sigma_1(b)=-b,\sigma(c)=-c
$$
$$
\sigma_2(b)=c,\sigma_2(c)=b
$$
$$
\sigma_3(b)=-c,\sigma_3(c)=-b
$$
であるような$\sigma_i$全体であるが、このとき$\sqrt{t}$が任意の$\sigma_i$で固定されるから、$\sqrt{t}\in K$になり矛盾する。よって$M/K$はガロア拡大ではない。よって$L=K(b,c)$は$K$上${\color{red}8}$次拡大である。
(2) まず(1)から$G=\mathrm{Gal}(L/K)$は
$$
\sigma_{ij}(b)=(-1)^ib, \sigma_{ij}(c)=(-1)^jc
$$
$$
\tau_{ij}(b)=(-1)^ic, \sigma_{ij}(c)=(-1)^jb
$$
で定義される$\sigma_{ij}$ないし$\tau_{ij}$全体である。ここで
$$
\tau_{10}\sigma_{10}(b)=c, \tau_{10}\sigma_{10}(c)=b
$$
$$
\sigma_{10}\tau_{10}(b)=-c, \sigma_{10}\tau_{10}(c)=-b
$$
であるから、$G$はアーベルでない。
$\sigma_{10}$及び$\tau_{10}$を$\sigma,\tau$とおきます。簡単に確認できる通り
$$
G=\langle\tau,\sigma|\tau^4=1,\sigma^2=1,\sigma\tau\sigma=\tau^{-1}\rangle
$$
であり、これは位数$8$の二面体群$D_8$と同型になります。