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東大数理院試2009年度専門問3解答

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$$\newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{FF}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{NN}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{PP}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{RR}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

東大数理の院試(2009年度専門問3)の解答です.
自分が作った解答は ここ に置いてあり,代数の問題も数問解いてpdfにまとめてはあります.でもまだ公開するつもりはないので,ここで個別に書いておくことにします.

(東大数理2009年専門問3)

整数$\lambda, \mu$に対して,連立漸化式
$$ \left\{ \begin{aligned} &a_{n + 1} = \lambda a_n + b_n \\ &b_{n + 1} = a_n + \mu b_n \\ &a_1 = 0, b_1 = 1 \end{aligned} \right. \qquad n = 1, 2, \dots $$
を考える.$2$ではない素数$p$を固定し,$(\lambda - \mu)^2 + 4$$p$で割り切れないと仮定する.
(1) 全ての正の整数$n$に対して
$$ p \mid a_{n + p^2 - 1} - a_n \quad \text{かつ} \quad p \mid b_{n + p^2 - 1} - b_n $$
が成り立つことを示せ.
(2) $\lambda = 2, \mu = 1$とする.全ての正の整数$n$に対して
$$ p \mid a_{n + p - 1} - a_n \quad \text{かつ} \quad p \mid b_{n + p - 1} - b_n $$
が成り立つような$13$以下の奇素数$p$を全て求めよ.

(1)
自然な射影$\ZZ \to \ZZ / p\ZZ = \FF_p$による$a_n, b_n$の像をそれぞれ$c_n, d_n$とし,以下$\FF_p$の代数閉包$\overline{\FF_p}$上で考える.
$c_{n + p^2 - 1} = c_n, d_{n + p^2 - 1} = d_n$を示せば良い.
$A = \begin{pmatrix} \lambda & 1 \\ 1 & \mu \end{pmatrix} \in M_2(\FF_p)$とおくと
$$ \begin{pmatrix} c_{n + k} \\ d_{n + k} \end{pmatrix} = A \begin{pmatrix} c_{n + k - 1} \\ d_{n + k - 1} \end{pmatrix} = \cdots = A^k \begin{pmatrix} c_n \\ d_n \end{pmatrix} \tag{$\ast$} $$
である.$A$の固有多項式は$t^2 - (\lambda + \mu)t + \lambda \mu - 1$で判別式は$D = (\lambda - \mu)^2 + 4 \not= 0$だから,$A$は相異なる固有値を持つ.よって$A$の Jordan 標準形は対角行列である.また固有値は$\FF_{p^2}$の元だから$A^{p^2} = A.$

$\bullet$ $\lambda \mu \not= 1$の時:
$A$は正則だから$A^{p^2 - 1} = I.$よって$(\ast)$より$c_{n + p^2 - 1} = c_n, d_{n + p^2 - 1} = d_n$となる.

$\bullet$ $\lambda = \mu = 1$の時:
帰納的に$a_n = b_n = 2^{n - 2} \, (n \geq 2)$である.$p \not= 2$だから,$n \geq 2$に対し
$c_{n + p^2 - 1} = 2^{n - 2} \cdot (2^{p - 1})^{p + 1} = 2^{n - 2} = c_n$
となる.$d_n$も同様.

$\bullet$ $\lambda = \mu = -1$の時:
帰納的に $a_n = (-1)^n 2^{n - 2}, b_n = (-1)^{n + 1} 2^{n - 2} \, (n \geq 2)$となる.$p^2 - 1$が偶数であることに注意すると,$\lambda = \mu = 1$の時と同様に$n \geq 2$に対し$c_{n + p^2 - 1} = c_n, d_{n + p^2 - 1} = d_n$となる.

(2)
$\lambda \mu \not= 1$だから,条件を満たすことは$A^p = A,$すなわち$A$の全ての固有値が$\FF_p$の元であることと同値.これは$D = 5$$\bmod p$の平方剰余であることと同値.仮定から$p \not= 5$である.また明らかに$p \not= 3.$$p > 5$の時は Euler の規準と平方剰余の相互法則より
$$ \bigg( \frac{5}{p} \bigg) = (-1)^{\frac{5 - 1}{2} \frac{p - 1}{2}} \bigg( \frac{p}{5} \bigg) = \bigg( \frac{p}{5} \bigg) \equiv p^{(5 - 1) / 2} = p^2 \pmod 5 $$
だから,これが$1$となるのは$p \equiv \pm 1 \bmod 5$の時.よって答えは$p = 11$のみ.

$\lambda = \mu = \pm 1$の時は$a_{p^2} - a_1$$2$のべき乗なので$p$で割り切れない.
これ以前にも以下の類題が出題されており,そこでもパラメータによっては$n = 1$で成り立たない.
誤植だと思うが,似た問題のほぼ同じ箇所に誤植があるとも考えにくいので,自分が間違えてるかもしれない.

(東大数理1996年度専門問2)

整数$\lambda, \mu$に対し数列$\{ a_n\}$を帰納的に
$$ \left\{ \begin{aligned} &a_1 = 1, a_2 = 1, \\ &a_{n + 2} = \lambda a_{n + 1} + \mu a_n \end{aligned} \right. $$
と定める.

(1)素数$p$$\lambda^2 + 4\mu$の約数でないとき,任意の整数$n \geq 1$に対し$p$$a_{n + p^2 - 1} - a_n$の約数であることを示せ.

(2)$\lambda = 2, \mu = -4$とする.$5$以上の素数$p$が,任意の整数$n \geq 1$に対し$a_{n + p - 1} - a_n$の約数であるための必要十分条件を求めよ.($p$ に対する合同式で表わせ.)

$$ \begin{pmatrix} a_{n + 2} \\ a_{n + 1} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \lambda & \mu \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{n + 1} \\ a_n \end{pmatrix} $$
だから,上と同様にできる.($A$が正則にならない$\mu = 0$の時は$n = 1$で成り立たない.)

(2)の答えは$p \equiv 1 \bmod 3.$

投稿日:20231124
更新日:20231124
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delta
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