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Henselの補題とNewton法

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$$\newcommand{Ast}[0]{\operatorname{Ast}} \newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{floor}[1]{\lfloor #1 \rfloor} \newcommand{Hom}[0]{\operatorname{Hom}} \newcommand{Im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{Max}[0]{\operatorname{Max}} \newcommand{Spec}[0]{\operatorname{Spec}} $$

Henselの補題

Henselの補題

$f(X)$を整数係数の多項式,$p$を素数とする.このとき,もしある整数$x_1$が存在して
$$ f(x_1) \equiv 0, f'(x_1) \not\equiv 0 \pmod{p} $$
となるならば,任意の正の整数$n$に対してある整数$x_n$が存在して
$$ f(x_{n + 1}) \equiv 0 \pmod{p^{n + 1}}, x_{n + 1} \equiv x_n \pmod{p^n} $$
が成り立つ.

$n$に関する数学的帰納法.$n > 1$とし,定理の条件を満たすような$x_{n - 1}$が存在すると仮定する.このとき,$f(X) = \sum_{i = 0}^r a_i X^i$とおけば,$\symbb{Z} / p^n \symbb{Z}$
\begin{align} &f(x_{n - 1} - f(x_{n - 1}) f'(x_{n - 1})^{-1})\\ &= \sum_{i = 0}^r a_i (x_{n - 1} - f(x_{n - 1}) f'(x_{n - 1})^{-1})^i \text{(仮定$f'(x_1) \not\equiv 0 \pmod{p}$により,$f'(x_{n - 1})$は$\symbb{Z} / p^{n}\symbb{Z}$で逆元を持つ.)}\\ &= \sum_{i = 0}^r a_i \sum_{j = 0}^i \binom{i}{j} x_{n - 1}^{j} f(x_{n - 1})^{i - j} f'(x_{n - 1})^{j - i}\\ &= \sum_{i = 0}^r a_i(x_{n - 1}^i - i x_{n - 1}^{i - 1} f(x_{n - 1}) f'(x_{n - 1})^{-1}) \text{ ($f(x_{n - 1})$は$p^{n - 1}$で割り切れるから,$e \ge 2$のとき$f(x_{n - 1})^e$は$p^n$で割り切れる.)}\\ &= f(x_{n - 1}) - f(x_{n - 1}) f'(x_{n - 1}) f'(x_{n - 1})^{-1}\\ &= 0 \end{align}
が成り立つ.そして,$f(x_{n - 1}) \equiv 0 \pmod{p^{n - 1}}$だから,$x_n = x_{n - 1} - f(x_{n - 1}) f'(x_{n - 1})^{-1}$$\symbb{Z} / p^n \symbb{Z}$における逆元の$\symbb{Z}$における原像を任意に選ぶ)とすれば$x_n \equiv x_{n - 1} \pmod{p^{n - 1}}$.ゆえに定理は示された.

Newton法との関連

方程式の解をコンピュータで効率的に求める方法の1つに,Newton法と呼ばれるものがあります( Wikipedia ).これでは,最初に適当な実数$x_1$が与えられたとき,実数$x_n$$n > 1$)を漸化式
$$ x_n = x_{n - 1} - \frac{f(x_{n - 1})}{f'(x_{n - 1})} \tag{$\ast$} $$
によって定めることで,方程式$f(X) = 0$に解が存在するならば
$$ f\Bigl(\lim_{n \to \infty} x_n\Bigr) = 0 $$
となるため,適当な$n$で計算を打ち切ることにより,方程式$f(X) = 0$の解の近似値を求めることができます.
この方法において,解の近似値を求める漸化式 ($\ast$) が,Henselの補題の証明における$x_n$を定める漸化式と非常に類似していることがわかるかと思います.つまり,Henselの補題において,$\bmod p$における「荒い」解を,$p^2, p^3, \dotsc$という風に「正確に」していくことができる,とHenselの補題の主張を言い換えることができます.
そこで,Henselの補題において,$n \to \infty$とすることができれば,Newton法のように「限りなく近い」解が得られそうです.そして,そのようにして「限りなく近い」解が得られるような空間が$p$進整数環$\symbb{Z}_p$です.つまり,Henselの補題は$\symbb{Z}_p$におけるNewton法のようなものであるということができます.

投稿日:16日前
更新日:16日前
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Anko7919
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