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東大数理院試過去問解答例(2021B03)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2021B04の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

今回の解答例、特に(1)の解答に関しては、わたしの文章力の不足のせいで説明の日本語がかなり不親切になっているので、実際に解答として提出するには不適切かもしれません。読まれる際はその点をご了承ください。

2021B03

$K=\mathbb{F}_9$をとり、線型空間$K^2$を考える。このとき$\mathrm{GL}_2(K)$の元及び
$$ \theta\begin{pmatrix} x\\ y \end{pmatrix}\mapsto\begin{pmatrix} x^3\\ y^3 \end{pmatrix} $$
で定義される写像はいずれも$K^2$の全単射を定めている。ここで$K^2$の全単射全体の為す群のうち、$\mathrm{GL}_2(K)$$\theta$で生成される部分群を$G$とおく。
(1) $G$の共役類のうち、$\mathrm{GL}_2(K)$に含まれるものは、何個の元からなるものがそれぞれ何個あるか求めなさい。
(2) $G$に於いて$\theta$と可換な元の個数を求めなさい。またその中で$\theta$と共役な元の個数も求めなさい。

  1. まず$\mathrm{GL}_2(K)$の共役類は、その固有値と対角化可能かどうかで分類される。また$\theta$によって固有値$\alpha,\beta$を持つ線型同型と$\alpha^3,\beta^3$を持つ線型同型が共役になっている。
    まず固有値が$1,1$であるような対角化可能な同型の集合と$2,2$であるような対角化可能な同型の集合は$1$元集合である。
    次に固有値が$1,2$であるような集合は$\frac{80\times 72}{64}=90$個の元からなる。
    次に相異なる固有値$\alpha,\beta$を持ち、一方の$\alpha$だけが$\mathbb{F}_3$の元であるようなものの$\mathrm{GL}_2(K)$に於ける同型の集合は$90$個であり、これは$\theta$によって固有値$\alpha,\beta^3$を持つ同型の集合とも共役になっているから、この$G$に於ける共役類は$90\times2=180$個の元から成る。このような$(\alpha,\beta)$の組は$12$通りある。よってこのような共役類は$\frac{12}{2}=6$個である。
    次に固有値に$\alpha\in\mathbb{F}_9\backslash\mathbb{F}_3$のみを持つ対角化可能な同型の共役類は$2$個の元から成る。このような$\alpha$の取り方は$6$通りあるから、このタイプの共役類は$\frac{6}{2}=3$個である。
    次に相異なる固有値$\alpha,\beta\in\mathbb{F}_9\backslash\mathbb{F}_3$をもち、$\alpha^3\neq\beta$であるような同型の共役類は$180$個の元から成る。このような$(\alpha,\beta)$の取り方は$6^2-6\times2=24$通りあるから、このタイプの共役類は$\frac{24}{4}=6$個である。
    次に相異なる固有値$\alpha,\beta\in\mathbb{F}_9\backslash\mathbb{F}_3$をもち、$\alpha^3=\beta$であるような同型の共役類は$90$個の元から成る。このような$(\alpha,\beta)$の取り方は$6$通りあるから、このタイプの共役類の個数は$\frac{6}{2}=3$個である。
    最後に固有値を$\mathbb{F}_{81}\backslash\mathbb{F}_9$にもつ場合を考える。まずモニックな$\mathbb{F}_9$-係数既約$2$次多項式の一つをとり、それを$f$とおく。$f$を特性多項式にもつ$\mathrm{GL}_2(K)$の元は$72$個ある。ここで$\theta$による共役を$2$回施したものは固有値を入れ替えただけになるから、このような行列の$G$に於ける共役類は$144$個である。モニックな$\mathbb{F}_9$-係数既約$2$次多項式の個数は$9^2-45=36$個であるから、このような共役類の個数は$\frac{36}{2}=18$個である。
    次に対角化不可能な場合を考える。まず固有値に$\alpha\in\mathbb{F}_3$を持つ場合、このようなものの共役類は$\frac{80\times 72}{9\times 8}=80$個の元からなり、$\alpha^3=\alpha$であるから$G$に於ける共役類も$80$個の元からなる。このような$\alpha$$1,2$しかないから、このタイプの共役類も$2$つである。
    最後に固有値に$\alpha\in\mathbb{F}_9\backslash\mathbb{F}_3$を持つ場合、$G$に於ける共役類は$80\times2=160$個の元から成る。このような$\alpha$の取り方は$6$通りあるから、このタイプの共役類は$\frac{6}{2}=3$個ある。以上をまとめると、共役類の元の個数としてあり得る値とそれを満たす共役類の個数は

    元の個数共役類の個数
    $1$$2$
    $2$$3$
    $80$$2$
    $90$$4$
    $144$$18$
    $160$$3$
    $180$$12$

    になっている。

  2. まず$G$の群構造は$G\simeq \mathrm{GL}_2(K)\rtimes\langle\theta\rangle$である。ここで群
    $$ C=\{g\in G|g\theta=\theta g\} $$
    を考える。この群は$\theta$を含んでいるから、$\mathrm{GL}_2(K)$の部分群$N$を用いて$C\simeq N\rtimes \langle\theta\rangle$の形でかける。まず$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$$C$に含まれているから、$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)\subseteq N$である。一方$\mathrm{GL}_2(K)\backslash\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$の元は$\theta$と可換でないから$N=\mathrm{GL}_3(\mathbb{F}_3)$である、以上から
    $$ C=\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)\times \langle\theta\rangle $$
    が分かり、特に$\theta$と可換な$G$の元は${\color{red}96}$個である。
    次に$\theta$と共役な元は位数が$2$である。ここで$C$に於ける位数$2$の元は、$P^2=1$なる$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$を用いて$P\theta $ないし$P$と書けるもので尽くされる。このような$P$は対角行列及び
    $$ \begin{pmatrix} 1&0\\ 0&2 \end{pmatrix} $$
    に共役なものに限られる。そして実際$x\in\mathbb{F}_9$$x^2=2$を満たすように取ったとき、
    $$ \begin{pmatrix} x&0\\ 0&x \end{pmatrix}^{-1}\theta\begin{pmatrix} x&0\\ 0&x \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&2 \end{pmatrix}\theta $$
    $$ \begin{pmatrix} x&0\\ 0&1 \end{pmatrix}^{-1}\theta\begin{pmatrix} x&0\\ 0&1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&1 \end{pmatrix}\theta$$
    であるから、$\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&2 \end{pmatrix}\theta$及び$\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&1 \end{pmatrix}\theta$$\theta$の共役類に含まれる。次に$P=g^{-1}\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&1 \end{pmatrix}g\in\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$としたとき、
    $$ \begin{split} P\theta&=g^{-1}\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&1 \end{pmatrix}g\theta\\ &=g^{-1}\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&1 \end{pmatrix}\theta g\\ &=g^{-1}\begin{pmatrix} x&0\\ 0&1 \end{pmatrix}^{-1}\theta\begin{pmatrix} x&0\\ 0&1 \end{pmatrix} g\end{split} $$
    であるから、$P\theta$$\theta$の共役類に含まれる。ここで$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$に於ける行列$\begin{pmatrix} 2&0\\ 0&1 \end{pmatrix}$の共役類は$\frac{48}{4}=12$個である。一方$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_9)$の元は$\theta$と共役になり得ない。以上から$C$に含まれる$\theta$と共役な元の個数は$12+1+1={\color{red}14}$個である。

投稿日:20231025

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佐々木藍(Ai Sasaki)です。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。X(旧Twitter)→@sasaki_aiiro

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