今回も引き続き複素関数の積分について復習していきます。
前回、正則な複素関数は次のようにTaylor展開できることを議論しました。
Dを複素平面上の単連結領域、CをD内の区分的に滑らかな閉曲線、
今回は、正則でない場合の展開方法に拡張できないか考えてみましょう。
正則でない関数は、発散したりして特異点を持ちます。特異点では微分係数が存在しなくなるので、正の次数の多項式の足しあわせでは表現できません。そこで、負の次数の多項式まで用いて元の関数を展開することを考えます。この展開方法をローラン展開といいます。この時の展開係数は、テイラー展開の時と同様に特異点を囲む線積分で決定できますが、この時線積分の経路が特異点を踏まないように設定しないといけません。以上から、次のように展開が定義できます。
f(z)が
とすれば、
となります。Laurent展開の定理では線積分の形で係数を決定したがもとまればなんでもいいので何も毎回線積分を計算する必要があるわけではないです。
さて、特異点を含んだ閉曲線の線積分の値によって特異点での複素関数の振る舞いが決まることがわかりました。逆に言えば、特異点での複素関数の振る舞いから、線積分を計算することができます。これが、留数定理です。
Dを複素数平面上の単連結領域とする。f(z)は有限個の特異点
となる。ただし、
留数は特異点なので、k位の極であることが多いです。そこで、次のような計算方法があります。
なので、
具体例を見てみましょう。
複素積分
を求めよ。ここでCは
ヒント:
まず、ヒントに従い
次に、
そこで、逆に円周の内側に集まった留数を円の外側に出せないか考える。つまり、円のうちと外をひっくり返すような変換を考える。
になり、
公式2に代入すれば、
最後までお読みくださりありがとうございました。次回はJordanの補題と、それを応用した演習問題を扱っていきたいと思います。