ゲッセルとヴィアンノの補題について
今回は参考文献tenshoを元にして、格子の道と行列式との関係について手短に見て行きます。
まず次の事を認めましょう。
を行列とする。この時、の行列式は次の様な重み付きの有効2部グラフを用いて表すことができる。
すなわち、頂点を行列Mのそれぞれの行に対応させ、頂点を行列Mのそれぞれの列に対応する様にし、図の様にからへの矢印を描き、重みを与えた2部グラフを考えると次のように書ける。
ただし、この式の意味は次の様だ。
を固定した時のからへの頂点分離系の道を、または道の重みを表している。
の場合
以下ゲッセルとヴィアンノの補題を証明するにあたって必要なものを定義します。
重み
重み付き有効グラフの頂点と頂点を結ぶ道が与えられているとき、道の重みを次の様に定義する。
行列
重み付き有向グラフについて、頂点の部分集合に対して、行列を次のように定義する。
記号
重み付き有向グラフについて、頂点の部分集合に対して、からへの道の系はとからなるもので、と書く。また、道の系の重みを次のように書く。
頂点分離
サイクルの無い重み付き有向グラフについて、頂点の部分集合に対して、からへの道の系が頂点分離であるとは、この道の系の任意の異なる二つの道を選んでも、それらの道が共通の頂点を持たない事である。
ゲッセルとヴィアンノの補題
サイクルの無い重み付き有向グラフを考える。頂点の部分集合に対して、をからへの道の行列とする。この時以下の式が成り立つ。
まず定義より、次の式が成り立つ。
示すべきことは以下の事である。それはからへの道の系のうち頂点分離でない道の系をとすると、次の事が成り立つことである。
実際、を道を持つものとする。すると道の定義より、少なくとも一つ道が存在して共通の頂点を持つ。
その共通の頂点でから出発して一番最初にとの最初に共有する頂点をとする。
次に、をの様に定める。ただし、は次の様な道をなす。
すると、以下の事が分かる。
まず、。これは明らか。また、とは同じ辺を使用しているのでとなる。
また、新しい置換は置換にをかけたものなので、となる。ゆえに、補題は示された。
ゲッセル・ヴィアンノの補題参考画像
応用1.ビネ-コーシーの公式の証明
ビネ-コーシーの公式
行列、を行列であれば以下の式が成り立つ。
ただし、なる もの全体とし、はの列を抜き出して作った行列。また、はの行を抜き出した行列とした。
グラフをとし、
とする。また、との部分を見ると2部グラフ、またとの部分を見たときも同様に2部グラフになる様に辺の集合を構成する。
また、各辺の重みはとなる様にとると、からへの道の行列の成分はグラフの構成の仕方から。
また、繋いだグラフにおけるからへの頂点分離の道の系はそれぞれからへの頂点分離の道の系とからへの頂点分離の道の系の対なので、下記の式が導かれるので証明が完了する。
ビネ-コーシの公式
応用2.行列式の計算
とを自然数の作る2つの集合とする。今が2項係数である様な行列の行列式を計算せよ。
下記図の様な格子を考える。
また点の座標を、点の座標をの様に設定する。
この格子上で点からまで最短で移動する(上あるいは右に移動するのみが許される)道の数は簡単な考察から.ゆえに与えられた行列はすべての辺の重みが1であり、すべての辺の向きが右向きあるいは上向きの有向グラフで、からへの道の行列になる。
また、からへの任意の頂点分離の道の系はすべてのに対して、である道からなっていないといけないことが分かる。
ゆえに、以下の結論を得る。
ゲッセルとヴィアンノの補題応用