本記事の前提知識
前提知識は特になし.
今回の記事は,非常に基本的なところからスタートするので,練習問題も多めとなっている.不安がある人は確認しながら進めてほしい.
合同式の定義と性質
合同の定義とは,次のようなものである.
整数の合同
つの整数が法()に関して合同とは,がの倍数であることを意味する.
これをと記述する.
「つの整数をで割った余りが等しいとき」という表現の定義もある.この表現は,負の整数の割り算を理解していなければならないので,個人的にはあまり好みではない.
次のうち正しいものを全て選べ.
(1)
(2)
(3)
(4)
(5) ()
解答
(1)(3)(4)は正しい.
(5)はのとき正しく,それ以外のときは正しくない.その証明を考えてみてほしい(答えは次の折り畳み).
(5)について
がの倍数であるかどうかを考えたい.
と変形すると,がの倍数のとき,(5)は正しい式であるとわかる.
つまりのときに限って(5)は正しい.
合同式と加減乗
,であるとき,以下が成り立つ.
(加法)
(減法) とくに
(乗法) とくに
証明略.気になる人は
こちら
をどうぞ.
加減乗のつの演算については,公式1のようによい性質を持っているが,除法については少し面倒である.
合同式と除法
であり,とが互いに素であるとき,が成り立つ.
(問題)「とが互いに素」という条件を取り除いて,となる例を考えよ.
問題の答え
単純な例としては,とが考えられる.(この例を一般化すると,ととも言える.)
次の問いに答えよ.
(1) を示せ.
(2) (1)を用いて,を示せ.
(3) をで割った余りを求めよ.
(4) をで割った余りを求めよ.
(5) をで割った余りはである.これを用いて,をで割った余りを求めよ(わからなければ解答を見てから(6)に取り組むのがよい).
(6) (5)と同様にして,をで割った余りを求めよ.
(1)の解答
である.
(2)の解答
に対して(1)を用いるとである.さらに変形して,に対して(1)を用いるとである.あと何回か同じことをすればよい.
なお,この証明はの倍数判定法の証明にも適用できる.
(3)の解答
と計算するか,と計算するかだろう.
(4)の解答
より,(3)と同じである.
(5)の解答
よりである.両辺で割れば
(6)の解答
からとすれば,で割ることができる.それぞれである.
なお,からスタートする場合,としてからで割る発想も自然である.
この(5)(6)の考え方を発展させると,分数の合同式を考えることができる.
分数の合同式
記法
とが互いに素であるとき,任意の整数に対してが成り立つ自然数が存在する.このようなは以上以下の中にただ一つである(これを「を法としてただ一つ」ともいう).
従ってと書くことが可能であり,実際にこのように書く場合がある.
なお,このような記法をする場合,最初の定義のままでは危うい.最初の定義は,整数に対してのみ定義されていたからである.そこで一応,分数にまで拡張した合同式の定義を記しておく.ただし,この定義をきちんと把握しておくことが役立つかと言うと,そうでもないだろう.
分数の合同式
つの分数が法()に関して合同とは,
以上の両方が成り立つことを意味する.これをと記述する.
がどこから来たのか?という疑問があるかもしれないが,それはを計算してみればわかる.
問題2(5)の補足
問題2(5)は「を法としてと合同な整数は何か」という問いだと考えられる.これは,以下のように計算できる.
(問題)同様にして,問題2(6)を分数の合同式を使って表せ.
問題の答え
もしくは など
もしくは など
練習問題
最後に,練習問題を用意した.
解答
よってがの約数であればよい.に注意して,であり,.
解答
のときはすぐに確かめられる.以下,とする.
である.ここで
より,
OMCの例題
OMC177(B)
OMC025(A)
OMC145(C)
OMC203(G)
←かなり難しめ