前提知識は特になし.
今回の記事は,非常に基本的なところからスタートするので,練習問題も多めとなっている.不安がある人は確認しながら進めてほしい.
合同の定義とは,次のようなものである.
$2$つの整数$a,b$が法$n$($≧2$)に関して合同とは,$a-b$が$n$の倍数であることを意味する.
これを$a \equiv b \mod n$と記述する.
「$2$つの整数$a,b$を$n$で割った余りが等しいとき」という表現の定義もある.この表現は,負の整数の割り算を理解していなければならないので,個人的にはあまり好みではない.
次のうち正しいものを全て選べ.
(1) $13 \equiv 1 \mod 6$
(2) $42 \equiv 7 \mod 12$
(3) $-10 \equiv 8 \mod 9$
(4) $3^4 \equiv 1 \mod 20$
(5) $n^2 \equiv -1 \mod n+1 $($n ≧ 1$)
$a \equiv b \mod n$,$c \equiv d \mod n$であるとき,以下が成り立つ.
(加法)$a+c \equiv b+d \mod n$
(減法)$a-c \equiv b-d \mod n$ とくに $a-b \equiv 0 \mod n$
(乗法)$ac \equiv bd \mod n$ とくに $a^k \equiv b^k \mod n$
証明略.気になる人は こちら をどうぞ.
加減乗の$3$つの演算については,公式1のようによい性質を持っているが,除法については少し面倒である.
$ak \equiv bk \mod n$であり,$n$と$k$が互いに素であるとき,$a \equiv b \mod n$が成り立つ.
(問題)「$n$と$k$が互いに素」という条件を取り除いて,$a \not\equiv b \mod n$となる例を考えよ.
次の問いに答えよ.
(1) $10a+b \equiv -a+b \mod 11$を示せ.
(2) (1)を用いて,$10000a+1000b+100c+10d+e \equiv a-b+c-d+e \mod 11$を示せ.
(3) $2^{34}$を$5$で割った余りを求めよ.
(4) $12^{34}$を$5$で割った余りを求めよ.
(5) $2^{100}$を$101$で割った余りは$1$である.これを用いて,$2^{99}$を$101$で割った余りを求めよ(わからなければ解答を見てから(6)に取り組むのがよい).
(6) (5)と同様にして,$2^{98},2^{97}$を$101$で割った余りを求めよ.
この(5)(6)の考え方を発展させると,分数の合同式を考えることができる.
$n$と$k$が互いに素であるとき,任意の整数$a$に対して$a \equiv bk \mod n$が成り立つ自然数$b$が存在する.このような$b$は$0$以上$n-1$以下の中にただ一つである(これを「$n$を法としてただ一つ」ともいう).
従って$\dfrac{a}{k} \equiv b \mod n$と書くことが可能であり,実際にこのように書く場合がある.
なお,このような記法をする場合,最初の定義のままでは危うい.最初の定義は,整数に対してのみ定義されていたからである.そこで一応,分数にまで拡張した合同式の定義を記しておく.ただし,この定義をきちんと把握しておくことが役立つかと言うと,そうでもないだろう.
$2$つの分数$\dfrac{a}{b},\dfrac{c}{d}$が法$n$($≧2$)に関して合同とは,
以上の両方が成り立つことを意味する.これを$\dfrac{a}{b} \equiv \dfrac{c}{d} \mod n$と記述する.
$ad-bc$がどこから来たのか?という疑問があるかもしれないが,それは$\dfrac{a}{b}-\dfrac{c}{d}$を計算してみればわかる.
問題2(5)は「$101$を法として$\dfrac{1}{2}$と合同な整数は何か」という問いだと考えられる.これは,以下のように計算できる.
$\dfrac{1}{2} \equiv \dfrac{1+101}{2}=51$
(問題)同様にして,問題2(6)を分数の合同式を使って表せ.
最後に,練習問題を用意した.
$n^2$が$n+10$で割り切れるような正整数$n$を全て求めよ.
${}_{p-1}\mathrm{C}_{2k} \equiv 1 \mod p$を示せ.ただし$2k < p-1$である.