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東大数理院試過去問解答例(2019A05)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2019A05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2019A05

方程式z6+6z+20=0の解のうち、第一象限
D={zC|Re(z)>0,Im(z)>0}
上にあるものの個数を求めなさい。

f=z6+6z+20と置いたとき、これは実数根を持たない。また根全体の集合は共役で閉じている。よってfの第一象限に於ける根の個数は0,1,2,3のいずれかである。

ここでC上の閉路C1(L)
C11=[0,L]
C12={Leiθ|0θπ3}
C13={reiθ|0rL}
の和集合に反時計回りに向きを入れた閉路とする。このときまず
C11dzf=0Ldzf
Lである正の値に収束する。次にLを十分に大きくしたとき不等式
|C12dzf|0π3|iLeiθL6ei6θ+6Leiθ+20|dθ0π3|LL66L20|dθ
が成り立つから、この式の右辺は(従って左辺も)L0に収束する。次に
C13dzf=0Leiπ3r6+6reiπ3+20dr=0Leiπ3(r6+6reiπ3+20)(r6+6reiπ3+20)(r6+6reiπ3+20)dr=0L6r|(r6+6reiπ3+20)(r6+6reiπ3+20)|2+r6+20|(r6+6reiπ3+20)(r6+6reiπ3+20)|2eiπ3dr
であり、このLに於ける極限の虚部は負である。以上をまとめると
Im(limLC1(L)dzf)<0
がわかるから、特にfは、充分大きなLに対して、C1(L)で囲まれた領域に少なくとも1つ根を持つ。

次にC2(L)
C21:={ir|0rL}
C22:={reiθ|π2θ2π3}
C23:={rei2π3|0rL}
の和集合に反時計回りの向きを入れた閉路とすると、
C21idrr6+6ir+20=0Lr66ir+20|(r6+6ir+20)(r66ir+20)|idr=0L6r|r6+6ir+20|2ir620|r6+6ir+20|2dr
|C22dzf|π22π3|iLeiθL6ei6θ+6Leiθ+20|dθπ22π3|LL66L20|dθL0
C23dzf=0Lei2π3r6+6rei2π3+20dr=0Lei2π3(r6+6rei2π3+20)(r6+6rei2π3+20)(r6+6rei2π3+20)dr=0Lr626r+10|(r6+6reiπ3+20)(r6+6reiπ3+20)|2i32(r6+20)|(r6+6reiπ3+20)(r6+6reiπ3+20)|2dr
であることから
Re(limLC2(L)dzf)>0
がわかり、特にfは、充分大きなLに対して、C2(L)で囲まれた領域に少なくとも1つ根を持つ。

次に
C31=C23
C32:={reiθ|2π3θπ}
C33:=[L,0]
の和集合に反時計回りの向きを入れた閉路C3(L)に上の2つと同様の計算を行うことにより
Im(limLC1(L)dzf)>0
であること、特にfは、充分大きなLに対して、C3(L)で囲まれた領域に少なくとも1つ根を持つ。

以上からD内にあるfの根は1個である。

投稿日:213
更新日:217
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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