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東大数理院試過去問解答例(2026B01)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2026B01の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2026B01

正整数$r,n$を固定する。$M_2(\mathbb{Z})$の部分$\mathbb{Z}$代数
$$ A=\left\{\begin{pmatrix} a&b\\ c&d \end{pmatrix}\middle|c\in n\mathbb{Z}\right\} $$
をとる。そして$X$は左$A$加群で、$\mathbb{Z}$加群としてはランク$r$の自由$\mathbb{Z}$加群であるようなものとする。

このとき以下の問いに解答しなさい。

  1. 条件を満たす$X$が存在するためには$r$が偶数であることが必要充分であることを示しなさい。
  2. 条件を満たす$X$は同型を除いて有限個しかないことを示しなさい。
  1. まず条件を満たす$X$が存在するなら$r$が偶数であることを示す。この存在によって環準同型$F:M_2(\mathbb{Q})\simeq A\otimes\mathbb{Q}\to\mathrm{End}(\mathbb{Q}^r)\simeq M_{r}(\mathbb{Q})$が誘導されるから、$F$の存在を仮定して結論を導く。まず
    $$ a=\begin{pmatrix} 1&0\\ 0&0 \end{pmatrix} $$
    $$ p=\begin{pmatrix} 0&1\\ 1&0 \end{pmatrix} $$
    とおく。このとき$a^2-a=0$であるから$F(a)^2-F(a)=0$である。$F(a)=0$であるとすると、
    $$ 1=F(1)=F(a)+F(pap)=0 $$
    になり矛盾する。$F(a)-1=0$であるとすると、これは$F(1-a)=0$を意味するから、
    $$ 1=F(1)=F(1-a)+F(p(1-a)p)=0 $$
    になり矛盾する。よって$F(a)$の最小多項式は$x^2-x$である。よって$F(a)$は固有値$0,1$を持ち、対角化可能である。ここで$F(a)$の固有値$0$に関する固有ベクトル$v$を取ったとき
    $$ F(a)F(p)v=F(p)F(b)v=F(p)(1-F(a))v=F(p)v $$
    であるから、$F(p)$$F(a)$$0$に関する固有ベクトルを$1$に関する固有ベクトルに移す線型同型になっている。よって$F(a)$の固有値$0$の固有次元と固有値$1$の固有次元が等しいことが従い、特に$2|r$であることがわかる。
     一方$r=2m$とすると、環準同型
    $$ \begin{array}{cccc} F:&A&\to&M_{2m}(\mathbb{Z})\\ &x&\mapsto&\begin{pmatrix} x&0&0&\cdots&0\\ 0&x&0&\cdots&0\\ 0&0&x&\cdots&0\\ \vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\ 0&0&0&\cdots&x \end{pmatrix} \end{array} $$
    によって条件を満たす$A$加群$X$が定義できる。
     以上から$X$の存在と$2|r$は同値である。
  2. まず$r$は偶数とし、$r=2m$とする。(1)で示した通り$F(a)$は最小多項式$x(x-1)$、固有多項式$x^m(x-1)^m$$2m$次行列である。このとき直和分解
    $$ X=\mathrm{Ker}F(a)\oplus\mathrm{Ker}(1-F(a)) $$
    が取れる。この直和分解の存在によって、$F(a)$$\mathrm{GL}_{2m}(\mathbb{Z})$に於いて行列
    $$ E:=\begin{pmatrix} 1_m&0\\ 0&0 \end{pmatrix}\in\mathrm{GL}_{2m}(\mathbb{Z}) $$
    に共役であることが従う。よって$F(a)=E$なる$F$が同型を除いて有限個であることを示せば良い。そのためには行列
    $$ N:=\begin{pmatrix} 0&1\\ n&0 \end{pmatrix}\in\mathrm{GL}_{2}(\mathbb{Z}) $$
    の行き先$F(N)$
    同型を除いて有限個であることを示す。$N^2=n$であること、$N$$E$の固有値$0,1$の固有空間$X_0,X_1$$X_1,X_0$に移すことを考慮すると、$X_0$$F(N)$のよる像であるような$X_1$の格子$Y$への同型$X_0\simeq Y$を定めれば$F$が定まる。ここで$Y$$X_1$の指数$|n^2$の格子であることからその取り方は有限であり、$Y$を固定するような$Y':=Y\otimes \mathbb{Q}$の同型による$X_1$の像としてあり得る$Y'$の格子も有限であるから、これにより$Y$及び同型$X_0\simeq Y$$X_1$の同型の合成を除いた組は有限個しかないことが分かる。これにより所望の条件を満たす$A$加群$X$は同型を除いて有限個しかないことが従う。
投稿日:10日前
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藍色日和
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