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【Spin幾何】曲率作用素とLichnerowiczの公式

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 リーマンテンソル、リッチテンソル、スカラー曲率などの種々の曲率のスピノルへ作用への作用、およびDirac作用素の2乗、ラプラシアン、曲率の関係を記述するLichnerowiczの公式をまとめます。Lichnerowiczはリヒネロビッチみたいな発音です(ポーランド系なのでたぶん日本語では書けない)。

 (M,g)n次元リーマンspin多様体とします。フレーム場を{ei}とし、Clifford積はで表します。リーマン曲率テンソルをR(X,Y)Zとするとき、曲率形式は
Ω(X,Y)=12i,jg(R(X,Y)ei,ej)eiej
です。同型so(n)spin(n)
eiej12eiej
で与えられるので、スピノルψに対して、
Ω(X,Y)ψ=14i,jg(R(X,Y)ei,ej)eiejψ
と作用します。このΩ(X,Y)ψのことを以下ではR(X,Y)ψと書くことにします。R(X,Y)が曲率テンソルの意味なのか曲率形式のスピノルへの作用の意味なのかは文脈から分かると思うので同じ記号にします。またRicciテンソルのスピノルへの作用を
Ric(X):=iRic(X,ei)ei
と定義します。

 このとき次の式が成り立ちます。

(1)Ric(X)ψ=2ieiR(ei,X)(ψ)
(2)Rψ=ieiRic(ei)ψ=2i,jeiejR(ej,ei)(ψ)

(1)
4ieiR(ei,X)(ψ)=i,k,lg(R(ei,X)ek,el)eiekelψ=i,l,k:differg(R(ei,X)ek,el)eiekelψ  (vanish since 1st Jacobi id)+i,l:differg(R(ei,X)ei,el)eieielψ+i,k:differg(R(ei,X)ek,ei)eiekeiψ=2Ric(X,ek)ekψ=2Ric(X)ψ

(2)
jejRic(ej)ψ=2i,jejeiR(ei,ej)(ψ)=12i,j,k,lg(R(ei,ej)ek,el)ejeiekel
(ij,klのものしか考えなくてよい)
=12i,j,lg(R(ei,ej)ej,el)eiejejel12i,ljkg(R(ei,ej)ek,el)eiejekel
(k=jkjで別けた)
=12i,lRic(ei,el)eiel12i,j,lg(R(ei,ej)ei,el)eiejeiel12li,j,k:differg(R(Ei,Ej)ek,el)eiejekel
(第二項目をk=ikiで別けた)
=12R12i,jg(R(ei,ej)ei,ej)eiejeiej12i,j,l:differg(R(ei,ej)ei,el)eiejeiel
(第二項目をl=jljで別けた)
=12R12R=R

 この二つの公式は、曲率形式にeiをClifford積して縮約したらRicciテンソルになり、RicciテンソルにeiをClifford積して縮約すればスカラー曲率になるという感じでだいたい覚えておけると思います。

 さらにRicciテンソルの作用をもう少し具体的に計算することができます。

1/2Ricci-公式

12Ric(X)ψ=D(Xψ)X(Dψ)ieieiXψ=[D,X]ψieieiXψ

公式1(1)より
12Ric(X)ψ=ieiR(ei,X)(ψ)=iei(eiXψXeiψ[ei,X]ψ)=D(Xψ)X(Dψ)+Xeieiψei[ei,X]ψ=D(Xψ)X(Dψ)+XeieiψeieiXψ+eiXeiψ=D(Xψ)X(Dψ)+ω ij(X)ejeiψeieiXψ+eiXeiψ=D(Xψ)X(Dψ)ejω ji(X)eiψeieiXψ+eiXeiψ=D(Xψ)X(Dψ)ejXejψeieiXψ+eiXeiψ=D(Xψ)X(Dψ)eieiXψ
である。(を書くの面倒なので省略)

 この公式はRicciテンソルの作用はDirac作用素と共変微分の交換子とおつりという感じになっていると覚えておけます。

 これらの公式を使うとLichnerowiczの公式を導くことができます。より直接的に導くこともできるのですが、上の曲率作用素に関する3つの公式自体も有用なのでこのような導出にしました。

Lichnerowiczの公式

D2ψ=Δψ+14Rψ
ただし、Δ=i(eieieiei)

1/2Ricci公式にeiをかけてX=eiとして縮約すると
iei12Ric(ei)ψ=ieiD(eiψ)ieiei(Dψ)i,jeiejejeiψ12Rψ=i,jeiejejeiψD2ψi,jeiejejeiψ=i(eieiψ+eieiψ)D2ψ+ijeiej(ejeiψejeiψ)
となる。ここで
ijeiej(ejeiψejeiψ)=12ijeiejR(ej,ei)ψ=12i,jeiejR(ej,ei)ψ=14ieiRic(ei)ψ=14Rψ
であるから、
12Rψ=ΔψD2ψ14Rψ D2ψ=Δψ+14Rψ
である。

 これらの公式の応用はかなりありますがここでは述べません。簡単に言うとある性質を持つスピノルが存在するための曲率に関する必要条件を得ることに役立ちます。

Kim, Eui Chul, and Thomas Friedrich. "The Einstein-Dirac equation on Riemannian spin manifolds." Journal of Geometry and Physics 33.1-2 (2000): 128-172.

投稿日:202355
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Submersion
Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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