ここでは東大数理の修士課程の院試の2023B03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2023B03
とし、多項式
の解の一つをとおく。更にとおき、のGalois閉包をとおく。
(1) 拡大次数及びを求めよ。
(2) の中間体で、が巡回次拡大であるようなものの個数を求めよ。
(3) の中間体で、上アーベルであるようなもののうち最大のものをとおく。及びを求めよ。
- まず多項式がの範囲で因数分解できたとすると、係数多項式を用いて
と分解できることがわかる。しかしはに及びを代入した及びのいずれも割り切らないといけないから定数になるしかない。以上からの既約性が従う。特にの取り方に関わらずである。次に
である。以上の因数分解及び既約多項式の根を一つ添加した体のガロア閉包は既約多項式の最小分解体なことを考慮すると、
なことがわかる。とおく。このとき
は上次拡大であり、は上次拡大である。よってである。 - まず体
を考えたとき、である。これは巡回次部分拡大を持たないから、はを含まない。よって位数の巡回群の生成元を取ったとき、これはを満たしている。このような元は
を満たすもので尽くされるが、この中で位数の元は個ある。よっての個数は個である。 - まずを
で定まる元とし、その生成する部分群をとする。次にを
で定義されるものとする。これら全体はを生成する。このとき
である。いまの交換子部分群は任意のに対して
を含むので、交換子部分群は少なくともつの元を持つ。よってである。実際
はの次アーベル拡大になっている。以上から
であり、である。
上記の議論に於いてのへの共役を直接計算することで、の群構造は
の誘導する半直積
として実現されることがわかります。しかしこの問題に於いては(2)では位数の元の個数を、(3)では交換子部分群が位数以上なことを見れば充分であり、いずれも群構造を求めてからこれらを見るよりガロア群の元として直接計算する方が早く確実と判断し、その方針で議論を進めました。