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大学数学基礎解説
文献あり

Conway-CoxeterのFrieze PatternとLiouvilleの微分方程式

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はじめに;Frieze Patternとは

この文章ではConway-Coxeterのfrieze patternと, その連続極限であるLiouvilleの偏微分方程式についての事実をまとめる.

1111322253337414911521111
のように, 斜めの格子上に数が並んでいて, 全ての4つ組
badc
に対してadbc=1が成り立つものをConway-Coxeterのfrieze patternと呼ぶ.

Frieze Patternの性質

整数性

ebgadichf
部分的にこういう並び(adbc=1等が成り立つ)のときにa,,h
正整数ならiも整数であることを言いたい。次のような行列の積を考える(上の並びを2×2のブロックで見たときの下×1×上という形をしている);
(cdfh)(abcd)1(bedg)=(cdfh)(dbca)(bedg)=(dghj),
ただしj=fdehcefbg+hagであり、これはa,,hが整数ならばやはり整数.
一方、行列式の性質よりdjgh=1であり、frieze patternのルールによりdigh=1でもあるのでi=j. よって左から右への帰納法が使えるので、パターンに登場する数は全て整数.

周期性

まず便宜上frieze pattern を45度回転して、
a11a12101a21a221010110
というように、パターンに現れる数たちをai,jとする. Frieze pattern のルールに則り、斜めに並んだ1の外側を0、さらにその外側を1で形式的に埋めてある. 各の位置にある2×2小正方行列を
(ai,jai,j+1ai+1,jai+1,j+1)Ai,j
とすると、

隣接関係式

Ai,j1Ai,j+1=Ai+1,j1Ai+1,j+1,

がなりたつ. これより、

Ai,j1Ai,j+l=Ai+k,j1Ai+k,j+l.

上の図より
A1+k,1=(0110),A1,1+l=(0110)
となるk,lが存在するので、
A1+k,1+l=A1+k,1A1,11A1,1+l=(0110)(a22a12a21a11)(0110)=(a11a21a12a22)(=A1,1T),
がなりたつ(周期性).

連続極限

Frieze pattern のルール

(1)ai,jai+1,j+1ai,j+1ai+1,j=1,

においてai,j=ε1u(x,y),ai+k,j+l=ε1u(x+kε,y+lε)とおいて連続極限ε0をとると,

(2)uuxyuxuy=1.

ただし, uxuxなどの表記を用いる. 変換u=eϕにより, 可積分系におけるLiouvilleの偏微分方程式

ϕxy=e2ϕ,

が現れる.

一般解

変数変換u2=λをおこなったLiouville の偏微分方程式

(logλ)xy2logλxy=2λ,

の一般解を求めたい. 変数変換λ=θxを行い, xで一回積分すると,
θxyθx=2θ+μ(y),
ただしμは任意函数. 分母を払って再びxで積分すると,
(3)θy=θ2+μ(y)θ+C(y).
ただしCも任意函数. これはRiccati型常微分方程式の形をしているので, 特殊解θ0(y)=ϖ(y)が見つかれば一般解を求めることができる; 変数変換
θ(x,y)=ϖ(y)1ζ(x,y),
を(3)に代入し, ϖが特解であることに注意して整理すると,
ζy+(2ϖ+μ)ζ=1.
これは容易に積分ができて,
ψ(y)+φ(x)=ψ(y)ζ.
ただし,
ψ(y)=expy(2ϖ+μ)dy,
により, 任意函数μの自由度をψで置き換えた. またφ(x)は新たな任意函数(yで積分した時の積分定数)である. 結局,

(4)λ=θx=(ϖ(y)1ζ)x=φ(x)ψ(y)[φ(x)+ψ(y)]2,

である(特解ϖに依らない)[1].

Sturm-Liouville系との関係

差分方程式(1)を"元祖" Frieze pattern の境界条件ai,i=0,ai+1,i=1のもとで解くと

(5)ai,j=ai,1aj,0ai,0aj,1,(ai,1ai+1,0ai,0ai+1,1=1),

という解が得られる. これをヒントに非線形方程式(2)を境界条件
(6)u(x,x)=0,uy(x,x)=1,
のもとで解きたい. 離散版の解(5)に倣ってu(x,y)=f(x)g(y)f(y)g(x)というansatzをおくと, (6)よりf(x)g(x)f(x)g(x)=1. このとき(2)も満たされる. よってf(x),g(x)は適当な重み函数w(x)に対してSturm-Liouville型微分方程式
[d2dx2+w(x)]ψ(x)=0,
の線型独立な解になっている. なお、境界条件はf(0)=g(0)=1,f(0)=g(0)=0u(0,y)=g(y),ux(0,y)=f(y)に対応する.

周期解

Liouville方程式(を変数変換したもの)
uuxyuxuy=1,
の解, 特に離散版の"元祖" frieze pattern のような周期的な解を求めたい. 一般解(4)においてφ(x)=f(x)1,ψ(y)=g(y)とおくと(2)の一般解は

u(x,y)=(λ)1/2=1+f(x)g(y)f(x)g(y),

である. しかし、実周期解u(x,y)を作ろうと思ってfgを実周期函数にすると不都合が生じる;つまり、実周期函数f(x)はどこかでf(x)=0となるのでuが特異点を持ってしまうのである.
これを解決するにはfgを複素周期函数にすればよい. つまり, uが実になるようにf(x)=ie2iϕ(x),g(y)=ie2iψ(y)とおくと,
u(x,y)=sin(ϕ(x)ψ(y))ϕ(x)ψ(y).
今度はϕψに課される条件がより緩やかな"準周期性"
ϕ(x+2π)ϕ(x)2πN,ψ(y+2π)ψ(y)2πN,
になるので, これと分母が消えない条件ϕ,ψ0をみたすようなϕ,ψをとればよい. たとえばϕ(x)=ψ(x)=(3+2sinx)2>0とすると,
u(x,y)=sin(11(xy)12(cosxcosy)sin2x+sin2y)(3+2sinx)(3+2siny),
という解が得られる. なお, 条件ϕ(x)ψ(x)2πNを課すと, 境界条件u(x,x)=0,uy(x,x)=1がみたされる.

参考文献

[1]
Liouville, J., Sur l’équation aux différences partielles, Math. Pures Appl.
投稿日:202375
更新日:2024617
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  1. はじめに;Frieze Patternとは
  2. Frieze Patternの性質
  3. 整数性
  4. 周期性
  5. 連続極限
  6. 一般解
  7. Sturm-Liouville系との関係
  8. 周期解
  9. 参考文献