通常の距離が入った$\mathbb{Q}$や$\mathbb{R}$がコンパクトでないことはよく知られていると思うのですが,さて,別の距離が入ったものについてはどうなのだろうか,というのが気になったので記事になりました.よろしくお願いします.
まず,$p$進距離って何ぞやっていう話ですよね.
有理数体上に次のように距離を定めます.
$p$を素数とする.$\mathbb{Q}^\times=\mathbb{Q}\backslash\{0\}$の任意の元$x$は$x=p^\alpha\dfrac{a}{b}$という形にかける.ただし,$\alpha$は整数,$a,b$は$p$で割れない整数である.$\alpha$は$x$によって一意に定まるので,
$|x|_p=p^{-\alpha}$とおく.また,$|0|_p=0$と定めておく.このとき,$\mathbb{Q}$上の距離を$d_p(x,y)=|x-y|_p$と定める.
これが距離であることは練習問題としておきます.『代数函数論』入門のシリーズを見てくだされば,どこかで$\nu_p(x)=\alpha$としたものが加法付値になっていることを言っていたと思うので,加法付値の性質を思い出していただければ証明できるはずです.
$p$進距離が入った有理数体は結構面白くて,次のような等式が成り立ちます.
ただし,$\lim_{n\to\infty} a_n=a\Leftrightarrow\lim_{n\to\infty} d_p(a_n-a)=0$です.
ちなみに,$(\mathbb{Q},|・|_p)$は完備ではありません.例えば,$a_n=\sum_{k=0}^n p^{k^2}$はコーシー列ですが,$\mathbb{Q}$の元に収束しません(参考文献[1]182ページ).
位相空間論の前提知識です.
距離空間がコンパクトならば,完備かつ有界である.(参考文献[1],173ページ)
参考文献にはもっと強い主張が載っていますが,ここではこれで十分なので.(というより,全有界の定義が少し面倒だったので.)
$p$進距離を入れた有理数体はコンパクトではない.
完備でも有界でもないので当たり前ですね.有界でないのは,$d_p(0,p^{-n})=p^n$より分かります.
$p$進距離をいれた有理数体がコンパクトではないことが言えたからなんだという話ではありますが,位相を考えているのだから,コンパクト性というのは重要な性質なはずです.というのもあり,きちんと証明してみました.$\mathbb{Q}_p$($\mathbb{Q}$を$p$進距離で完備化したもの)も有界でないので,コンパクトではないです.
[タイトルの命題は命題1を知っていれば明らかでしたね.この命題を知らなかったがために最初のver.では回りくどいやり方をしてしまっていました.ごめんなさい.気が向いたら命題1の証明の記事も上げると思います(追記)]それでは,ここまで見ていただきありがとうございました.