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大学数学基礎解説
文献あり

p進距離を入れた有理数体はコンパクトでない

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はじめに

通常の距離が入ったQRがコンパクトでないことはよく知られていると思うのですが,さて,別の距離が入ったものについてはどうなのだろうか,というのが気になったので記事になりました.よろしくお願いします.

コンパクトではないことの証明

前提知識1

まず,p進距離って何ぞやっていう話ですよね.
有理数体上に次のように距離を定めます.

p進距離

pを素数とする.Q×=Q{0}の任意の元xx=pαabという形にかける.ただし,αは整数,a,bpで割れない整数である.αxによって一意に定まるので,
|x|p=pαとおく.また,|0|p=0と定めておく.このとき,Q上の距離をdp(x,y)=|xy|pと定める.

これが距離であることは練習問題としておきます.『代数函数論』入門のシリーズを見てくだされば,どこかでνp(x)=αとしたものが加法付値になっていることを言っていたと思うので,加法付値の性質を思い出していただければ証明できるはずです.

p進距離が入った有理数体は結構面白くて,次のような等式が成り立ちます.
ただし,limnan=alimndp(ana)=0です.

  1. limnpn=0
  2. 1+p+p2++pn+=11p
  1. |pn|p=pnより明らか.
  2. an=1+p++pn1としたとき,an(1p)=1pnで,
    limn(1pn)=1が(1)より分かるから.

ちなみに,(Q,||p)は完備ではありません.例えば,an=k=0npk2はコーシー列ですが,Qの元に収束しません(参考文献[1]182ページ).

前提知識2

位相空間論の前提知識です.

距離空間がコンパクトならば,完備かつ有界である.(参考文献[1],173ページ)

参考文献にはもっと強い主張が載っていますが,ここではこれで十分なので.(というより,全有界の定義が少し面倒だったので.)

本題

p進距離を入れた有理数体はコンパクトではない.

完備でも有界でもないので当たり前ですね.有界でないのは,dp(0,pn)=pnより分かります.

おわりに

p進距離をいれた有理数体がコンパクトではないことが言えたからなんだという話ではありますが,位相を考えているのだから,コンパクト性というのは重要な性質なはずです.というのもあり,きちんと証明してみました.QpQp進距離で完備化したもの)も有界でないので,コンパクトではないです.
[タイトルの命題は命題1を知っていれば明らかでしたね.この命題を知らなかったがために最初のver.では回りくどいやり方をしてしまっていました.ごめんなさい.気が向いたら命題1の証明の記事も上げると思います(追記)]それでは,ここまで見ていただきありがとうございました.

参考文献

[1]
齋藤正彦, 数学の基礎
投稿日:20241026
更新日:20241026
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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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  2. コンパクトではないことの証明
  3. 前提知識1
  4. 前提知識2
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