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Bruck-Ryser-Chowlaの定理

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$$\newcommand{design}[4]{#1\text{-}(#2,#3,#4)} $$

本記事では、特定のパラメタにおける対称2-デザインの非存在性を主張するBruck-Ryser-Chowlaの定理を紹介する。デザイン論に馴染みのない読者も理解できるよう、デザインの定義から説明する。

断りがなければ、出てくる変数は全て自然数であるとする。

デザインの定義

$v\geq k\geq t$とする。$\design{t}{v}{k}{\lambda}$デザインとは、集合$\mathcal{P}$$\mathcal{P}$の部分集合族$\mathcal{B}$の組$\mathcal{D}=(\mathcal{P},\mathcal{B})$であって、次の条件を満たすもののことである。

  1. $|\mathcal{P}|=v$である。
  2. $\mathcal{B}$の各要素は$\mathcal{P}$$k$-要素部分集合である。
  3. $\mathcal{P}$の任意の$t$-要素部分集合は$\mathcal{B}$のちょうど$\lambda$個の要素に含まれる。

$\mathcal{D}$がデザインである時、$\mathcal{P}$の要素を点、$\mathcal{B}$の要素をブロックと呼ぶ。さらに、$t=2$のときは単に$(v,k,\lambda)$デザインと呼ぶ。

$0\leq i \leq t$とする。$I$$\mathcal{P}$$i$-要素部分集合とする。このとき、$I$を含むブロックの数を$b_i$とすると、
\begin{equation} b_i = \lambda \frac{\binom{v-i}{t-i}}{\binom{k-i}{t-i}} \end{equation}
である。

$I$を含む$t$-要素部分集合$T$$T$を含むブロック$B$の組$(T,B)$の個数を$c$とする。
$I$を含む$t$-要素部分集合は$\binom{v-i}{t-i}$個ある。各$t$-要素部分集合は$\lambda$個のブロックに含まれるので、$c=\lambda \binom{v-i}{t-i}$である。
一方、$I$を含むブロックは$b_i$個ある。各ブロックは$I$を含む$t$-要素部分集合を$\binom{k-i}{t-i}$個持つので、$c=b_i \binom{k-i}{t-i}$である。
以上より、$b_i = \lambda \frac{\binom{v-i}{t-i}}{\binom{k-i}{t-i}}$が成り立つ。

この補題は、各$b_i$が整数である必要があることからデザインのパラメタに制限を与えるものである。例えば、$\design{3}{v}{6}{1}$が存在するならば$v\equiv 2,6\mod 20$である。実際、
\begin{align*} b_2 ={}& \lambda \frac{\binom{v-2}{3-2}}{\binom{6-2}{3-2}} = \frac{v-2}{4}\\ b_1 ={}& \lambda \frac{\binom{v-1}{3-1}}{\binom{6-1}{3-1}} = \frac{(v-1)(v-2)}{20} \end{align*}
であり、これらが整数であるためには$v\equiv 2,6\mod 20$でなければならない。

$b=b_0$はブロックの数である。$r=b_1$は点を含むブロックの数である。これらは補題より$t,v,k,\lambda$に依存する値であるが、これらは議論に頻繁に登場するために特別な記号で表されることが多い。

どのようなパラメタのデザインが存在するかという問題はデザイン論における中心的な問題の一つであり、本稿の主題であるBruck-Ryser-Chowlaの定理は、特定のパラメタにおいてデザインが存在しないことを主張するものである。

結合行列

$\design{t}{v}{k}{\lambda}$デザイン$\mathcal{D}=(\mathcal{P},\mathcal{B})$の結合行列とは、点の集合$\mathcal{P}$とブロックの集合$\mathcal{B}$の間に定義される$v\times b$行列$A$であって、
\begin{equation} \begin{array}{ll} A_{ij}= 1 & (\text{点$i$がブロック$j$に含まれるとき})\\ A_{ij}= 0 & (\text{そうでないとき}) \end{array} \end{equation}
という条件を満たすものである。

対称デザイン

$v=b$である$(v,k,\lambda)$デザインを対称デザインと呼ぶ。

対称デザインにおいて、$r=k$$k(k-1)=\lambda(v-1)$が成り立つ。

証明手法(任意)

$p\in B$となるような点$p$とブロック$B$の組$(p,B)$の個数を$c$とする。先の補題と同様の議論より、
$c=vb=rk$
が成立し、対称デザインの定義から$b=v$であるため、$r=k$が成り立つ。
また、補題1より、$r=\lambda\frac{v-1}{k-1}$であるためこれと$r=k$をあわせて、$k(k-1)=\lambda(v-1)$が成り立つ。

$N$が対称デザイン$(v,k,\lambda)$の接続行列ならば、$N^T$もある対称デザイン$(v,k,\lambda)$の接続行列である。

ブロック$B$を任意にとる。$0\leq i \leq k$について、ブロック$B$と共通する点の数が$i$個であるようなブロック$B'(\neq B)$の個数を$a_i$とする。このとき、$B$以外のブロックの個数を考えて、
\begin{equation} \sum_{i=0}^ka_i=b-1=v-1 \tag{1} \end{equation}
である。また、$p\in B\cap B'$なる点$p$とブロック$B'(\neq B)$の組$(p,B')$の個数を考えて、
\begin{equation} \sum_{i=0}^kia_i=k(r-1)=k(k-1) \tag{2} \end{equation}
さらに、$p\in B\cap B'$なる点$p,q\,(p\neq q)$とブロック$B'(\neq B)$の組$(p,q,B')$の個数を考えて、
\begin{equation} \sum_{i=0}^ki(i-1)a_i=(\lambda-1) k(k-1) \tag{3} \end{equation}
$\lambda^2\times(1)\times+(1-2\lambda)\times(2)+(3)$より、
\begin{equation} \sum_{i=0}^k(i-\lambda)^2a_i=\lambda^2(v-1)+(1-2\lambda)k(k-1)+(\lambda-1) k(k-1)=\lambda k(k-1)+(1-2\lambda)k(k-1)+(\lambda-1) k(k-1)=0 \end{equation}

$N^T$が表すデザインは具体的に構成することができる。元のデザインの点集合を$\mathcal{P}$、ブロックの集合を$\mathcal{B}$とする。ここで、ブロックが$\mathcal{P}$の部分集合であったことを一旦忘れよう。
新しいデザインの点集合を$\mathcal{P}'=\mathcal{B}$、ブロック集合を$\mathcal{B}'=\mathcal{P}$とする。
新しいデザインの点$p'$が新しいデザインのブロック$b'$に含まれることを$b'$に対応する元のデザインの点$p$$p'$に対応する元のデザインの点$b$に含まれることと定義する。
このとき、新しいデザインの結合行列が$N^T$であり、新しいデザインは確かにデザインの定義を満たすことが確かめられる。
ここの説明を少々雑に行ってしまったが、気になる人は参考文献を当たってほしい。

Bruck-Ryser-Chowlaの定理

対称デザイン$(v,k,\lambda)$が存在するならば、次の条件を満たす必要がある。

  1. $v$が偶数ならば、$k-\lambda$は平方数である。
  2. $v$が奇数ならば、$n=k-\lambda$として、$x^2=ny^2+(-1)^{\frac{v-1}{2}}\lambda z^2$$x=y=z=0$ではない整数解$(x,y,z)$が存在する。
証明手法(任意)

$A$を結合行列、$I$を単位行列、$J$を全ての要素が1である行列とする。補題3より$A^T$もある対称デザインの接続行列になっているため、任意の2ブロックは$\lambda$個共有点を持つので、$A$は次の等式を満たす。
\begin{equation} A^TA = \begin{pmatrix} r & \lambda & \cdots & \lambda\\ \lambda & r & \cdots & \lambda\\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\ \lambda & \lambda & \cdots & r \end{pmatrix} = (r-\lambda)I + \lambda J= (k-\lambda)I + \lambda J \end{equation}

  1. $v$ が偶数の場合
    $J$$(1,1,\cdots,1)^T$を固有ベクトルとする固有値$v$を持つ。$J$はランク1の行列であるため、$v$の重複度は1であり$v$を除く全ての固有値は0である。そのため、$A$の固有値は1つが$k-\lambda+\lambda v=k^2$であり、他の固有値は全て$k-\lambda$である。
    よって、
    \begin{equation} (\det A)^2 = \det(A^TA) = k^2(k-\lambda)^{v-1} \end{equation}
    である。ここで、$\det A$は整数であり$v-1$は奇数であるため、$k-\lambda$は平方数でなければならない。
  2. $v$ が奇数の場合
    任意の$x\in\mathbb{Q}^v$について、
    \begin{equation} x^TA^TAx=n(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_v^2)+\lambda(x_1+x_2+\cdots+x_v)^2 \tag{4} \label{theidentity} \end{equation}
    が成立する。
    ここで、
    \begin{equation} (L_1,L_2,\dots,L_v)^T=A(x_1,x_2,\dots,x_v)^T \tag{5} \label{defL} \end{equation}
    となるように$L_i$を定める。各$L_i$$x_j$の有理数係数(特に整数係数)の線形結合である。
    また、Lagrangeの四平方和定理より$n$は4つの0以上の整数の2乗和で表せる。つまり、$n_1,n_2,n_3,n_4\in\mathbb{Z}_{\geq0}$として、
    \begin{equation}n=n_1^2+n_2^2+n_3^2+n_4^2\end{equation}
    とかける。ここで、
    \begin{equation}H=\begin{pmatrix} n_1 & n_2 & n_3 & n_4\\ -n_2 & n_1 & -n_4 & n_3\\ -n_3 & n_4 & n_1 & -n_2\\ -n_4 & -n_3 & n_2 & n_1 \end{pmatrix}\end{equation}
    とすると、$H^TH= nI$ が成り立つ。
  1. $v\equiv 1 \pmod{4}$の場合
    ここで、添字を前の方から4つずつ区切って
    \begin{equation}(y_i,y_{i+1},y_{i+2},y_{i+3})^T=H(x_i,x_{i+1},x_{i+2},x_{i+3})^T\end{equation}
    となるように定める。ここで、$H$は可逆なので、各$x_i$$y_i$の有理数係数の線形結合である。
    ここで、$w=x_1+\cdots+x_v$と置く。すると、式\eqref{theidentity}は
    \begin{equation} L_1^2+L_2^2+\cdots+L_v^2=y_1^2+y_2^2+\cdots+y_{v-1}^2+nx_v^2+\lambda w^2 \end{equation}
    とかける。$L_1,\cdots,L_v,w$$y_j,x_v$についての有理数係数の線形結合と見ると全ての$(y_1,\dots,y_{v-1},x_v)^T\in\mathbb{Q}^v$についてこの式は常に成立する。
    ここで、$L_1=c_{11}y_1+\cdots+c_{1v-1}y_{v-1}+c_{1v}x_v$とする。$c_{11}\neq0$のとき、
    \begin{equation}L_1=y_1\Leftrightarrow y_1=\frac{c_{12}}{1-c_{11}}y_2+\cdots+\frac{c_{1v-1}}{1-c_{11}}y_{v-1}+\frac{c_{1v}}{1-c_{11}}x_v\end{equation}
    であり、$A_1=\{(y_1,\dots,y_{v-1},x_v)^T\in\mathbb{Q}^v\mid y_1=\frac{c_{12}}{1-c_{11}}y_2+\cdots+\frac{c_{1v-1}}{1-c_{11}}y_{v-1}+\frac{c_{1v}}{1-c_{11}}x_v\}$と定めると$A_1$
    $\mathbb{Q}^v$$v-1$次元部分空間であり、$A_1$の任意の元について、
    \begin{equation} L_2^2+\cdots+L_v^2=y_2^2+\cdots+y_{v-1}^2+nx_v^2+\lambda w^2 \tag{6} \label{reductidentity} \end{equation}
    が成立する。$c_{11}=0$のとき、
    \begin{equation}L_1=-y_1\Leftrightarrow y_1=\frac{c_{12}}{-1-c_{11}}y_2+\cdots+\frac{c_{1v-1}}{-1-c_{11}}y_{v-1}+\frac{c_{1v}}{-1-c_{11}}x_v\end{equation}
    であり、$A_1=\{(y_1,\dots,y_{v-1},x_v)^T\in\mathbb{Q}^v\mid y_1=\frac{c_{12}}{-1-c_{11}}y_2+\cdots+\frac{c_{1v-1}}{-1-c_{11}}y_{v-1}+\frac{c_{1v}}{-1-c_{11}}x_v\}$と定めると$A_1$$\mathbb{Q}^v$$v-1$次元部分空間であり、$A_1$の任意の元について\eqref{reductidentity}が成立する。
    $A_1$においては、$L_2,\ldots,L_v,w$$y_2,\ldots,y_{v-1},x_v$の有理数係数の線形結合で表せ、この線形結合において$L_2=c_{21}y_1+\cdots+c_{2v-1}y_{v-1}+c_{2v}x_v$とする。$c_{21}\neq1$のとき、
    \begin{equation}L_2=y_2\Leftrightarrow y_2=\frac{c_{21}}{1-c_{22}}y_3+\cdots+\frac{c_{2v-1}}{1-c_{22}}y_{v-1}+\frac{c_{2v}}{1-c_{22}}x_v\end{equation}
    であり、$A_2$$A_1$のうちこの式を満たすもの全体とすると、$A_2$$\mathbb{Q}^v$$v-2$次元部分空間であり、$A_2$の任意の元について、
    \begin{equation} L_3^2+\cdots+L_v^2=y_3^2+\cdots+y_{v-1}^2+nx_v^2+\lambda w^2 \end{equation}
    が成立する。$c_{21}=1$のときについても同様に$A_2$を定める。
    以下、同様にして$A_3,A_4,\ldots$を定めていく。$v-1$回この操作を行うと、$L_v,w$$x_v$の有理数係数の線形結合で表されており$A_{v-1}$$\mathbb{Q}^v$の1次元部分空間であり、$A_{v-1}$の任意の元について、
    \begin{equation} L_v^2=nx_v^2+\lambda w^2 \tag{7} \label{lastidentity} \end{equation}
    が成立する。その線形結合においては$x_v$をどんな有理数に定めても\eqref{lastidentity}が成立するようになっているため、\eqref{lastidentity}に非ゼロな有理数解が存在する。
    非ゼロな有理数解が存在すれば非ゼロな整数解が存在することは明らかである。
  2. $v\equiv 3 \pmod{4}$の場合
    このときは、\eqref{theidentity}の両辺に$nx_{v+1}^2$という新たな項を加えて同様の操作を行うと、
    \begin{equation}nx_v^2=y_{v+1}^2+\lambda w^2\end{equation}
    という方程式の非ゼロな整数解が得られる。

以上より、$v$が奇数のときは、$n=k-\lambda$として、$x^2=ny^2+(-1)^{\frac{v-1}{2}}\lambda z^2$$x=y=z=0$ではない整数解$(x,y,z)$が存在する必要がある。

この定理が置かれている文脈を更に理解するために射影平面と呼ばれるデザインを導入する。射影平面は、対称デザインの中でも特に重要なクラスである。

射影平面

$\lambda=1$となるデザインを射影平面と呼ぶ。

ここで、補題6より、射影平面は$v=k^2-k+1$を満たす。ここで、$n=k-1$を射影平面の指数と呼ぶ。つまり、射影平面は$(n^2+n+1,n+1,1)$デザインである。
$F_q$を有限体とすると、$F_q$の通常の意味での射影平面はデザインの意味での指数$q$の射影平面となっている。
つまり、$n$が素べきとなるとき指数が$n$の射影平面が存在することがわかる。

では、指数がいくつのときに射影平面が存在するのだろうか。Bruck-Ryser-Chowlaの定理は、指数が6のときに射影平面が存在しないことを主張する。

指数が6の射影平面は存在しない。

指数が6の射影平面は、$(43,7,1)$デザインである。$v=43$は奇数であるため、Bruck-Ryser-Chowlaの定理の2番目の条件を満たす必要がある。
$n=k-\lambda=6$であるため、$z^2=6x^2-y^2$$x=y=z=0$ではない整数解$(x,y,z)$が存在する必要がある。
このとき、$x,y,z$が互いに素になるような整数解が存在する。
このとき、$y,z$は基数であり、$y^2,z^2\equiv 1\mod8$である。
しかし、$6x^2\equiv0,6\mod8$であるため、$z^2=6x^2-y^2$$x=y=z=0$ではない整数解$(x,y,z)$が存在しない。

しかし、指数が10の射影平面の存在はBruck-Ryser-Chowlaの定理からは否定できない。しかし、コンピューターによって指数が10の射影平面も存在しないことが示されている。

指数が素べきでない射影平面は存在しないと予想されているが、未解決である。
英語版Wikipediaによれば、Bruck-Ryser-Chowlaの定理はBruck-Ryser-Chowlaの定理より強力な一般的な評価基準は知られていないそうだ。

The theorem, for example, rules out the existence of projective planes of orders 6 and 14 but allows the existence of planes of orders 10 and 12. Since a projective plane of order 10 has been shown not to exist using a combination of coding theory and large-scale computer search,[1] the condition of the theorem is evidently not sufficient for the existence of a design. However, no stronger general non-existence criterion is known.

参考文献

  1. A COURSE IN Combinatorics SECOND EDITION, J.H. van Lint & R.M. Wilson
  2. 英語版Wikipedia
投稿日:16日前
更新日:16日前
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