概要友人に紹介されて興味を持った黄金数について丸一年研究して得られたものを、いくつか証明とともに書き残したいと思います。今回は黄金数と双曲線関数編です。
◆定義1
以下
とする。
◆定義2
番目の貴金属数および番目の卑金属数(独自用語)を以下のように定義する。
ひとまずとしておきましょう。
黄金数の性質◆式1
一般に、
◆補題1
二次方程式の解のうちについて、
が成り立つためには、
または、同値の表現だが、
であればよい。
また、
が成り立つためには、
または、同値の表現だが、
であればよい。
およびより、
(は、を変形すれば同時に満たすことがわかるが、を満たす必要があるため、という条件が必要になる。)
の解をとすると、
なので、より、
また、より、
補題の後半の証明についても、同様に証明が可能なので省略します。補題により、はなので、を満たし、公式1が成り立つことがわかりました。一方で、はであり、を満たすもののを満たさないため、となります。
◆式1 系
一般に、
黄金数と1の虚立方根はという似た方程式の根であるのにもかかわらず、片方は美しい実数、片方は3乗すると1になる複素数、さらにはであり、対称性はあまり無いのだと思っていましたが、双曲線関数を媒介することでちゃんと対称性があったのだと気づいたときは心が躍りました。美しい式です。
◆式2
一般に、
(変数定数法)
とする。
より、
も成り立つ。これをについて解くと、
次に、をについて解くと、
よって、
も同様に導出することができます。見事な対称性(左右では指数/対数(双曲線関数/逆双曲線関数)、平方根/平方、上下では双曲線正弦余弦/双曲線正弦、正/負)が美しく、個人的には一番好きな式です。
変数定数法(独自用語)は、ある数についての式を求めたいとき、まずある一つの関係式を求めます。次にとして、の各項にを乗算すると、当然その関係式もを満たします。この関係式について、についてそれぞれ解くことで、をの初等関数等で表せる場合があり、最後にを求めることで新たな式を作ることができるという単純な方法です。
◆補足
黄金数()および1の虚立方根()に対して変数定数法を用いることで、他にもいくつかの式を導出することができます。
(この式はを意味する。)
(この式はを意味する。)
◆式3
一般に、
と、三角関数の半角の公式より、
は、のときに限りの部分も貴金属数であるため、次のように書き換えられる。
のときに限りますが、貴金属数の平方根に貴金属数が出てくるのが面白いです。もちろん、一般の二次方程式の解の平方根も同様に求められますが、両辺に貴金属数が出てくる場合を紹介したかったというわけです。
◆式4
一般に、
と、双曲線関数と逆双曲線関数の合成関数の公式
より、
同値変形に注意して、
以下は少し回りくどい手順になってしまうが、
この関係式もまた、正負、正弦余弦という対称性が見られて好きです。
◆式3式4 系
◆式5
一般に、
式1の双曲線関数の指数関数や、式3の貴金属比の平方根に関連する式です。で表される、白銀数どうし、または黄金数とどうしの関係が面白いです。
後書き次回:なぜ√e≒φか【黄金数の性質#2】