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黄金数と双曲線関数【黄金数の性質#1】

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概要

友人に紹介されて興味を持った黄金数について丸一年研究して得られたものを、いくつか証明とともに書き残したいと思います。今回は黄金数と双曲線関数編です。

定義1

以下
φ=1+52
ω=1+3i2
とする。
定義2

n番目の貴金属数Mnおよびn番目の卑金属数Bn(独自用語)を以下のように定義する。
Mn:=n+n2+42
Bn:=n+n242
ひとまずnNとしておきましょう。
黄金数の性質
式1

φ=earsinh12=earcosh52
ω=earcosh12
一般に、
Mn=earsinhn2=earcoshn2+42
Bn=earcoshn2
補題1

二次方程式ax2+bx+c(a0)の解A±BのうちA+Bについて、
A+B=earsinhA=earcoshB
が成り立つためには、
A2B2=1A0
または、同値の表現だが、
ca=1b0
であればよい。
また、
A+B=earsinhB=earcoshA
が成り立つためには、
A2B2=1A0
または、同値の表現だが、
ca=1b0
であればよい。

arsinh(x)=log(x+x2+1)およびarcosh(x)=log(x+x21)より、
A+B=earsinhA
A+B=A+A2+1
B=A2+1
A2B2=1(A0)
A+B=earcoshBは、A2B2=1を変形すれば同時に満たすことがわかるが、A=B21を満たす必要があるため、A0という条件が必要になる。)

ax2+bx+c=0(a0)の解をA±Bとすると、
A=b2a,B=b24ac2a
なので、A2B2=1より、
b24a2b24ac4a2=4ac4a2=ca=1
また、A0より、b0
ca=1b0

補題の後半の証明についても、同様に証明が可能なので省略します。補題により、Mn(n>0)A=n2,B=n2+42なので、A2B2=1(A0)を満たし、公式1が成り立つことがわかりました。一方で、Bn(n>0)A=n2,B=n242であり、A2B2=1を満たすもののA0を満たさないため、Bnearsinhn242となります。

式1 系

φarcosh12=ωarsinh12(=e)
φ1arsinh12=ω1arcosh12
sinhlogφ=coshlogω
一般に、
Mnarcoshn2=Bnarsinhn2(=e)
Mn1arsinhn2=Bn1arcoshn2
sinhlogMn=coshlogBn

黄金数と1の虚立方根はx2±x±1=0という似た方程式の根であるのにもかかわらず、片方は美しい実数、片方は3乗すると1になる複素数、さらにはφ=eπi5+eπi5,ω=e23πiであり、対称性はあまり無いのだと思っていましたが、双曲線関数を媒介することでちゃんと対称性があったのだと気づいたときは心が躍りました。美しい式です。

式2

φ=cosh(log12)+earcosh(52)2
ω=sinh(log12)earsinh(32i)2
一般に、
Mn=ncosh(logn2)+earcosh(1nn2+42)2
Bn=nsinh(logn2)earsinh(1nn242)2
(変数定数法)

x=n2,y=n2+42とする。
x2y2=1より、
x22nxy2=1も成り立つ。これをy>0について解くと、
y2=nx+1x2
y=nx+1x2
y=ncoshlogx

次に、x22nxy2=1x>0について解くと、
x=y2ny4n21
x=earcoshy2n

よって、
Mn=x+y=ncoshlogx+earcoshy2n
=ncosh(logn2)+earcosh(1nn2+42)2

Bnも同様に導出することができます。見事な対称性(左右では指数/対数(双曲線関数/逆双曲線関数)、平方根/平方、上下では双曲線正弦余弦/双曲線正弦、正/負)が美しく、個人的には一番好きな式です。
変数定数法(独自用語)は、ある数x+yについての式を求めたいとき、まずある一つの関係式f(x,y)=0を求めます。次にx=a,y=bとして、f(x,y)の各項にamxm,bmymを乗算すると、当然その関係式もg(x,y)=0を満たします。この関係式について、x,yについてそれぞれ解くことで、x,yy,xの初等関数等で表せる場合があり、最後にx+yを求めることで新たな式を作ることができるという単純な方法です。

補足

黄金数(x=12,y=52)および1の虚立方根(x=12,y=3i2)に対して変数定数法を用いることで、他にもいくつかの式を導出することができます。
x24x2y2=1φ=earcsch1212
x2y2=2xφ=earsinh521
(この式はφ2=earsinh52を意味する。)
x24x2y2=1ω=12i2(earsech12+2)
x2y2=2xω=earsinh3i21
(この式はω=earsinh3i2を意味する。)
式3

φ=cosh(12arsinh2)=cosh(12logM4)
ω=icosh(12arcosh3i)
一般に、
Mn=ncosh(12arsinh2n)=ncosh(12logM4n)
Bn=incosh(12arcosh14n2)

Mn=n+n2+42,Bn=n+n242
と、三角関数の半角の公式より、
Mn=ncos(12arccos1+4n2)
Bn=incos(12arccos14n2)
Mn=ncosh(12log(1+4n2+2n))
Bn=incosh(12log(14n2i2n))
Mn=ncosh(12arsinh2n)
Bn=incosh(12arcosh14n2)=incosh(12arcosh14n2)
Mnは、n=1,2,4のときに限りarsinh2nの部分も貴金属数であるため、次のように書き換えられる。
Mn=ncosh(12logM4n)

n=1,2,4のときに限りますが、貴金属数の平方根に貴金属数が出てくるのが面白いです。もちろん、一般の二次方程式の解の平方根も同様に求められますが、両辺に貴金属数が出てくる場合を紹介したかったというわけです。

補足

x3x21=0の解をSupergolden nunmberψx32x21=0の解をSupersilver numberςx3x1=0の解をプラスチック数pと言います。これらは、双曲線関数と逆双曲線関数を使って次のように表すことができるようです。双曲線関数の中身が12ではなく13になっています。どうやって導出できるんでしょう。(プラスチック数 - WikipediaSupergolden ratio - WikipediaSupersilver ratio - Wikipedia)
1ψ=23sinh(13arsinh332)
1ς=223sinh(13arsinh3432)
p=23cosh(13arcosh332)
そこで、先程の方法でφ1φτ1ττは白銀数と呼ばれ、τ=M2)を求めてみると、
φ=3cosh(12arcosh53)
1φ=3cosh(12arcosh53)
τ=6cosh(12arcosh223)
1τ=6cosh(12arcosh223)
となり、どこか似ているような似ていないような感じです。
式4

arsinhφ=arcoshφ
arcoshω=arsinhω
一般に、
arsinhnMn=arcoshMn
arcoshnBn=arsinhBn

Mn2=nMn+1,Bn2=nBn1
と、双曲線関数と逆双曲線関数の合成関数の公式
sinh(arcoshx)=x21(|x|>1)
cosh(arsinhx)=x2+1
より、
sinh(arcoshMn)=nMn
cosh(arsinhBn)=nBn
同値変形に注意して、
arsinhnMn=arcoshMn
arsinhBn=arcoshnBn
以下は少し回りくどい手順になってしまうが、
log(Bn+Bn2+1)=log(nBn+nBn1)
log(Bn+Bn2+1)=log(nBnnBn1)
log(Bn+nBn)=log(nBnBn)
arcoshnBn=arsinhBn

この関係式もまた、正負、正弦余弦という対称性が見られて好きです。

式3式4 系

φ=cosh(arsinh(cosh(12arsinh2)))
ω=sinh(arcosh(cosh(12arcosh3i)))
式5

φ=earcothM4
一般に、
Mn=earcothM4n

arcothx=12logx+1x1Mn2=nMn+1より、
arcothMn=12logMn+1Mn1
=12log(Mn+1)2Mn21=12log(Mn+1)2nMn
=12log1n(Mn+2+1Mn)
=12log(12+1+4n22+2n12+1+4n22)
=12log(2n+1+4n2)
=12logM4n
よって、earcothMn=M4nより、
Mn=earcothM4n

式1の双曲線関数の指数関数や、式3の貴金属比の平方根に関連する式です。4nで表される、白銀数M2=τどうし、または黄金数M1=φM4どうしの関係が面白いです。

後書き

次回:なぜ√e≒φか【黄金数の性質#2】

投稿日:27日前
更新日:4日前
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