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大学数学基礎解説
文献あり

ランダム強制法はomega^{omega_1} boundingになりえる

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$$\newcommand{forces}[0]{\Vdash} $$

本記事ではランダム強制法が$\omega^{\omega_1}$-boundingになりえることを示す.

ランダム強制法とは,
$$ \mathbb{B} = \{ p \subseteq 2^\omega : p\text{はBorel集合で }\mu(p) > 0 \} $$
で通常の包含関係で順序を入れた強制概念を指す.ここで$\mu$$2^\omega$上の通常の測度.

$\kappa, \lambda$を無限基数とする.強制概念$P$$\kappa^\lambda$-boundingであるとは,
$$\forces_P \forall f \in \kappa^\lambda\ \exists g \in \kappa^\lambda \cap V\ [f \le g]$$
を満たすことを言う.
ここに$\kappa^\lambda$$\lambda$から$\kappa$への関数の全体の集合で,$f \le g$$\forall \alpha \in \lambda\ [f(\alpha) \le g(\alpha)]$を意味する.

ランダム強制法が$\omega^\omega$-boundingなことはよく知られている.証明はKunen [1]のLemma IV.7.34を参照せよ.

この記事では,次を示す.

次のことは無矛盾:ランダム強制法$\mathbb{B}$$\omega^{\omega_1}$-boundingである.

次の定理は本記事では証明しない.証明はBartoszynski-Judahの本 [2]のTheorem 3.2.2に載っている。

$\mathrm{add}(\mathcal{N})$は次の基数に等しい: $\mathbb{B}$の部分代数$\mathbb{B}'$であって次の条件(*)を満たすものの濃度の最小.
(*) $\mathbb{B} \setminus \{ 0\}$の可算部分集合$D$であって,$\mathbb{B}'$$\mathbb{B}$稠密部分集合ではない.

ここで$D$$\mathbb{B}'$$\mathbb{B}$稠密部分集合であるとは,$\forall b \in \mathbb{B}' \setminus \{ 0\} \ \exists d \in D\ [d \le b]$を満たすことを意味する.

ここで,$\mathrm{add}(\mathcal{N})$は通常の測度$\mu$$\kappa$加法的でない最小の基数$\kappa$として定義される基数である.

$\kappa$$\kappa < \mathrm{add}(\mathcal{N})$なる非可算正則基数とする.このとき,$\mathbb{B}$$\kappa$-caliberを持つ.

すなわち,任意のconditionの$\kappa$$(p_\alpha : \alpha < \kappa)$について,濃度$\kappa$を持つ$X \subseteq \kappa$が存在して,$(p_\alpha : \alpha \in X)$は共通下界を持つ.

conditionの$\kappa$$(p_\alpha : \alpha < \kappa)$を任意にとる.
集合$\{ p_\alpha : \alpha < \kappa \}$が生成する部分代数$\mathbb{B}'$を考えると,それは濃度$\kappa$以下である.
仮定$\kappa < \mathrm{add}(\mathcal{N})$と定理2より,$\mathbb{B}'$は定理2の条件(*)を満たなさい.
すなわち,$\mathbb{B} \setminus \{0\}$の可算部分集合$D$が取れて,$\mathbb{B}'$稠密である.
ところが,$D$の濃度が可算なので,鳩の巣原理により,ある$d \in D$と濃度$\kappa$$X \subseteq \kappa$があって,どの$\alpha < \kappa$でも$d \le p_\alpha$である. ■

$P$を強制概念で$\omega^\omega$-boundingかつ,$\omega_1$-caliberを持つものとする.
このとき$P$$\omega^{\omega_1}$-boundingでもある.

$\omega_1$から$\omega$への関数の$P$-nameを任意にとり$\dot{f}$とする.
$\alpha < \omega_1$について関数$\dot{f} \restriction \alpha \colon \alpha \to \omega$$P$$\omega^\omega$-boundingなことよりある条件$p_\alpha$とある関数$g_\alpha \colon \alpha \to \omega$をもってして,$p_\alpha \forces \dot{f} \restriction \alpha \le g_\alpha$とできる.
$(p_\alpha : \alpha < \omega_1)$に対して,$\omega_1$-caliberの定義を使うと濃度$\omega_1$を持つ$X \subseteq \omega_1$が存在して,$(p_\alpha : \alpha \in X)$は共通下界$q$を持つ.
ここで
$$g(\alpha) = g_{\beta_\alpha}(\alpha)$$
と定める.ただし$\beta_\alpha$$\alpha$より大きく$X$に属する最小の順序数である.
すると$q \forces \dot{f} \le g$を得る. ■

以上を総括すると次を得る.

$\mathrm{add}(\mathcal{N}) > \omega_1$とする.
このときランダム強制法$\mathbb{B}$$\omega^{\omega_1}$-boundingである.

命題1,命題3と命題4による. ■

$\mathrm{add}(\mathcal{N}) > \omega_1$はZFCから相対的に無矛盾であるので,結局,「ランダム強制法$\mathbb{B}$$\omega^{\omega_1}$-bounding」という主張はZFCから相対的に無矛盾である.

$\mathrm{add}(\mathcal{N}) > \omega_1$がZFCから相対的に無矛盾である理由は「これがマーティンの公理から従うから」「アメーバ強制法の反復でこれを強制できるから」など.

次は読者への演習とする.

$\mathbb{B}$$\omega^{\mathfrak{c}}$-boundingにはなりえない.ここに$\mathfrak{c}$は連続体濃度.

よって,CHを仮定すると,$\mathbb{B}$$\omega^{\omega_1}$-boundingではない.

参考文献

[1]
Kunen, Set Theory, College Publications, 2011
[2]
Haim Judah, Tomek Bartoszynski, Set Theory: On the Structure of the Real Line, CRC Press, 1995
投稿日:2023516

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でぃぐ
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