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東大数理院試過去問解答例(2017B03)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2017B03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2017B03

$\mathbb{C}$代数の準同型
$$ \begin{split} \varphi:\mathbb{C}[X,Y,Z]&\to\mathbb{C}[S,T]\\ f(X,Y,Z)&\mapsto f(S,ST,T^2) \end{split} $$
とおく。$R=\mathrm{Im}\varphi$とする。

  1. $\mathrm{Ker}\varphi$の生成系のうち、個数が最小になるものを一つ挙げなさい。
  2. $\mathfrak{m}=(S-a,ST-b,T^2-c)$$R$の極大イデアルになり、局所化$R_{\mathfrak{m}}$の極大イデアル$\mathfrak{m}R_{\mathfrak{m}}$$2$元生成されないような組$(a,b,c)\in \mathbb{C}^3$を全て挙げなさい。
証明手法(任意)
  1. 初めに$\mathbb{C}[X,Y,Z]$の元$f$
    $$ f=(X^2Z-Y^2)+g(X,Z)Y+h(X,Z) $$
    と分解する。ここに$(X,Y,Z)=(S,ST,T^2)$を代入すると$\varphi f=g(S,T^2)ST+h(S,T^2)$になる。ここで右辺第一項は$T$に関して奇数次の項、右辺第二項は$T$に関して偶数次の項しかないから、$\varphi f=0$のとき$g=h=0$である。よって$\mathrm{Ker}\varphi={\color{red}(X^2Z-Y^2)}$である。
  2. 以上から$R=\mathbb{C}[X,Y,Z]/(X^2Z-Y^2)$である。一般に$A=\mathbb{C}[X_1,X_2,\cdots,X_m]/(f_1,\cdots,f_n)$の極大イデアル$(X_1-a_1,\cdots,X_m-a_m)$による局所化が正則局所環であるためには
    $$ \rank\left(\frac{\partial f_i}{\partial X_j}(a_1,\cdots,a_m)\right)=m-\dim A $$
    であることが必要充分である。いま$R$のクルル次元は$2$である。よって$\mathfrak{m}$に於けるヤコビアンは
    $$ (2ac,-2b,a^2) $$
    であり、これがランク$1$になるには$a=b=0$であることが必要充分である。以上から所望の$(a,b,c)\in\mathbb{C}^3$${\color{red}(a,b,c)=(0,0,c)}$の形の組で尽くされている。
投稿日:202489
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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