この記事では、次の問題を通して、複素対数関数について理解を深めたいと思います。
実軸上の有界閉区間をとする。一次変換をとする。このとき、対数関数
が領域上の正則関数として定義できることを示せ。
よく知られているように、単連結領域上で定義されたを値に取らない正則関数に対し、その上正則な対数関数は、に対しなるを取ると、と定義できますね。ただしここで積分は、内でをにつなぐ曲線に沿った積分です。この積分値がそのような曲線の取り方に依って変わらないためには、が単連結であるという仮定が重要で、ホモトピー型のコーシーの積分定理から成り立つのでした。つまり、単連結領域上の正則関数は原始関数を持つという重要な事実を用いていることに注意しましょう。
一方で、上の問題で考える領域は単連結ではないので、この結果をそのまま適用することは出来ません。
そこで、まずは単純にとを合成できないか考えてみます。
をリーマン球面上の関数と考えると、であることを示せ。
一次変換は、相異なる三点の行き先を決めれば一意に決まり、さらにリーマン球面内の円を円にうつすことを使うと簡単である。
であるから、である。したがって、であるから、となる。(証明終)
以上より、負の実軸を除いた複素平面上で定義される正則な対数の主値をと合成することで、を定めることが出来ます。
しかし、単連結領域上のに対してを定めるとき、一般にの像が上のような都合の良い領域になるとは限らないので、とを合成して定義したわけではないのでした。
そこで、今度は原始関数を積分を用いて定める方針でやってみましょう。
問題1再考
実軸上の有界閉区間をとする。一次変換をとする。このとき、対数関数
が領域上の正則関数として定義できる。
内の閉曲線に対し、が成り立つことが最大のポイントである。
回転数の定義より上の積分は、となる。ここで、はのまわりの回転数である。
いま、はの閉曲線であるから、は線分を横切ることはない。したがって、線分上での回転数は変化しないから、上の積分はになる。
よって、ホモトピー型のコーシーの積分定理より、は、上で正則な原始関数をもつ。
あとは、を示せばよい。より、
である。よって、定数により、となる。そこで、なるを取り、をと取り直せば、が成り立つ。したがって、であり、これは上の正則な関数である。(証明終)
なお、上の結果を使うと次のことも簡単に分かります。
実軸上の有界閉区間をとする。このとき、が領域上の正則関数として定義できる。
定理1の証明のを用いる!
とおくと、これは上の正則関数であり、である。よって、である。(証明終)
今回はこれで終わりたいと思います。お疲れ様でした。