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距離空間6 局所リプシッツ写像

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今回は距離は実数値をとるとします.
前回まで内在的距離の具体例や性質をみてきました.今回は長さ空間の性質の一つとして局所リプシッツ写像に関連するものをみてみましょう.

局所リプシッツ写像

X,Yを距離空間とする.写像f:XYは任意のxXに対してあるxの近傍Uが存在してf|Uがリプシッツ写像となるとき,局所リプシッツ写像という.

局所リプシッツであってリプシッツでない写像としてR上のf(x)=x2があります.しかし定義域がコンパクトであればこの二つは一致することがわかります.

X,Yを距離空間,Xはコンパクト,f:XYが局所リプシッツ写像であるとする.このときfはリプシッツ写像である.

局所リプシッツ性から任意のxXに対し,ある開球B(x,rx)と正の数Mx>0が存在して任意のy,zB(x,rx)に対しd(f(y),f(z))Mxd(y,z)を満たす.Xはコンパクトだから有限部分被覆B(x1,rx1),,B(xn,rxn)を取り出すことができる.ここで,fは局所リプシッツ性から連続だから,d(f(),f()):X×XR,(x,y)d(f(x),f(y))も連続である.X×Xはコンパクトだから最大値が存在し,それをMとおきδ=miniri2とする.C=max{Mδ,Mx1,,Mxn}とおく.
d(x,y)<δのときxB(xi,ri)として
d(y,xi)d(x,y)+d(x,xi)δ+ri2ri.よってx,yB(xi,ri)であり
d(f(x),f(y))Mid(x,y)Cd(x,y).
d(x,y)δのときd(f(x),f(y))MδδCd(x,y).

さて,f(x)=x2R上でリプシッツ連続ではありませんでした.これは局所リプシッツ写像ではありましたがリプシッツ定数全体が有界になるようにはとることができないので仕方がないと思われます.では,各点の近傍ごとに存在するリプシッツ定数全体が上に有界な場合はどうでしょう.

f(x)=x2Zに制限したものを考える.nZの近傍{n}でリプシッツ定数として0をとることができる.しかし全体ではリプシッツ写像ではない.

しかし,次の命題が成り立ちます.

Xを長さ空間,Yを距離空間とし,C0を定数とする.写像f:XYを,任意の点xXに対してある近傍Uxが存在して,Uxへの制限がリプシッツ定数としてCをとることができる局所リプシッツ写像とする.このときfはリプシッツ写像である.

簡単のためYの距離が狭義内在的であるとして示す.内在的な場合も同様である.
x,yXとするとxからyへの道γ:[a,b]Xであってd(x,y)=L(γ)となるものが存在する.各点xγ([a,b])に対して,あるrx>0が存在してf|B(x,rx)はリプシッツ写像となる.コンパクト性から有限部分被覆B(x1,rx1),,B(xn,rxn)がとれる.x0=x,xn+1=yとする.i=0,1,,nに対し,y2i=xiとし,y2i+1xixi+1の中点とする.すると,i=0,1,,nに対しd(y2i,y2i+1)=ri2なのでy2i+1B(xi,ri)であり,d(y2i+1,y2i+2)=ri+12なのでy2i+1B(xi+1,yi+1).よって
d(f(x),f(y))id(f(y2i,y2i+1))+id(f(y2i+1),f(y2i+2))
iCd(y2i,y2i+1)+iCd(y2i+1,y2i+2)=Cd(x,y).

参考文献: if-f-is-locally-lipschitz-on-x-and-x-is-compact-then-f-is-lipschitz

投稿日:20241220
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