今回は距離は実数値をとるとします.
前回まで内在的距離の具体例や性質をみてきました.今回は長さ空間の性質の一つとして局所リプシッツ写像に関連するものをみてみましょう.
局所リプシッツ写像
を距離空間とする.写像は任意のに対してあるの近傍が存在してがリプシッツ写像となるとき,局所リプシッツ写像という.
局所リプシッツであってリプシッツでない写像として上のがあります.しかし定義域がコンパクトであればこの二つは一致することがわかります.
を距離空間,はコンパクト,が局所リプシッツ写像であるとする.このときはリプシッツ写像である.
局所リプシッツ性から任意のに対し,ある開球と正の数が存在して任意のに対しを満たす.はコンパクトだから有限部分被覆を取り出すことができる.ここで,は局所リプシッツ性から連続だから,,も連続である.はコンパクトだから最大値が存在し,それをとおきとする.とおく.
のときとして
.よってであり
.
のとき.
さて,は上でリプシッツ連続ではありませんでした.これは局所リプシッツ写像ではありましたがリプシッツ定数全体が有界になるようにはとることができないので仕方がないと思われます.では,各点の近傍ごとに存在するリプシッツ定数全体が上に有界な場合はどうでしょう.
をに制限したものを考える.の近傍でリプシッツ定数としてをとることができる.しかし全体ではリプシッツ写像ではない.
しかし,次の命題が成り立ちます.
を長さ空間,を距離空間とし,を定数とする.写像を,任意の点に対してある近傍が存在して,への制限がリプシッツ定数としてをとることができる局所リプシッツ写像とする.このときはリプシッツ写像である.
簡単のための距離が狭義内在的であるとして示す.内在的な場合も同様である.
とするとからへの道であってとなるものが存在する.各点に対して,あるが存在してはリプシッツ写像となる.コンパクト性から有限部分被覆がとれる.とする.に対し,とし,をとの中点とする.すると,に対しなのでであり,なので.よって
.
参考文献:
if-f-is-locally-lipschitz-on-x-and-x-is-compact-then-f-is-lipschitz