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外冪加群による行列式の構成

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行列式の導出

基底変換の行列式表現

任意の線形写像 ϕ:VV に対し,外冪加群の誘導写像
nϕ:nVnV
はスカラー倍写像となる.具体的に基底 {ei} と行列表示 ϕ(ej)=i=1naijei に対して
nϕ(e1en)=det(aij)e1en
このスカラー係数 det(aij) が行列式の定義となる.

生成元の一意性

テンソル積空間 Vn の元は一般に
i1,,inai1inei1ein
と表される.このテンソルに反対称化演算子
Alt(v1vn)=1n!σSnsgn(σ)vσ(1)vσ(n)
を適用することで,交代テンソルを生成する.特に基底元に対しては:
ei1ein=σSnsgn(σ)eiσ(1)eiσ(n)
が成り立つ.ここで {i1,,in}={1,,n} の場合,任意の σ に対して:
eσ(1)eσ(n)=sgn(σ)e1en
が得られる.したがって任意の ωnV
ω=(σSnaσsgn(σ))e1en=ce1en(ck)
と一意に表現される.ここで係数 c
c=σSnaσsgn(σ)
で与えられ,基底の選択に依存しない量となる.

自由性

生成元 e1en が自由生成元であることを示すため,環 k の任意の元 ak に対して:
a(e1en)=0a=0
を証明する.外積代数の普遍性より,線形写像 f:nVk が存在し:
f(e1en)=1
を満たす.a(e1en)=0f を適用すると:
f(a(e1en))=af(e1en)=a1=a=0
が得られる.

行列式の基本性質

乗法性

任意の線形写像 ϕ,ψ:VV に対し,テンソル積写像 ϕψ:VnVn
(ϕψ)(v1vn)=ϕ(v1)ϕ(vn)
と作用する.外積代数の普遍性により,
n(ϕψ)=nϕnψ
が得られる.ここで基底 e1en への作用は
n(ϕψ)(e1en)=det(ϕψ)e1en
一方,右辺の合成写像は
nϕ(det(ψ)e1en)=det(ϕ)det(ψ)e1en
となる.両辺を比較して det(ϕψ)=det(ϕ)det(ψ) が導かれる.

体積形式との対応

ユークリッド空間 Rn において,外積 e1en は自然に有向体積要素と同一視され
vol(ϕ(e1),,ϕ(en))=|det(ϕ)|vol(e1,,en)
という幾何学的解釈を許す.

向きの保存性

基底変換の行列式の符号が向きの保存性を決定する.例えば3次元空間で,
det(ϕ)>0右手系を保存
det(ϕ)<0左手系へ反転
この性質は外積の反対称性 eiej=ejei に根ざしている.

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  1. 行列式の導出
  2. 基底変換の行列式表現
  3. 生成元の一意性
  4. 自由性
  5. 行列式の基本性質
  6. 乗法性
  7. 体積形式との対応
  8. 向きの保存性