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東大院試04-A2

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問題

領域$\{(x,y)\in\mathbb{R^2}|x>y>0\}$で定義された実数値関数$f(x,y)$は全微分可能で,次の条件(a),(b)を満たすとする.
(a) $f(\lambda x,\lambda y)=f(x,y),\quad\forall\lambda>0$
(b) $\displaystyle\frac{1}{x}\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{1}{y}\frac{\partial f}{\partial y}=\frac{1}{x^2+y^2}$

このとき,以下の問いに答えよ.

  1. 条件(a)より,$$x\frac{\partial f}{\partial x}+y\frac{\partial f}{\partial y}=0$$が導かれることを示せ.
  2. 全微分$df$を極座標を用いて表せ.
  3. $f(x,y)$を求めよ.

復習

全微分可能の定義を思い出しておきましょう.

全微分

$D\subset\mathbb{R^2}$を開集合とする.$f:D\rightarrow\mathbb{R}$$(a,b)\in D$で全微分可能であるとは,$f(a+h,b+k)=f(a,b)+Ah+Bk+o(\sqrt{h^2+k^2})$となるような実数$A,B$が存在することである.

次のことが成り立ちます.

$f:D\rightarrow\mathbb{R}$$(a,b)\in D$で全微分可能であるとき,以下が成り立つ.

  1. $f$$(a,b)$で連続.
  2. $f$$(a,b)$で偏微分可能で,$A=\dfrac{\partial f}{\partial x}(a,b),B=\dfrac{\partial f}{\partial y}(a,b)$が成り立つ.
  1. $R(h,k)=f(a+h,b+k)-(f(a,b)+Ah+Bk)$とおく.すると,全微分の定義より,
    $$\lim_{(h,k)\to(0,0)}\frac{R(h,k)}{\sqrt{h^2+k^2}}=0$$が成り立つ.特に
    $$\lim_{(h,k)\to(0,0)}R(h,k)=0$$
    である.よって
    $$\lim_{(h,k)\to(0,0)}f(a+h,b+k)=\lim_{(h,k)\to(0,0)}f(a,b)+Ah+Bk=f(a,b) $$
    ゆえに連続.
  2. $$\frac{\partial f}{\partial x}(a,b)=\lim_{h\to0}\frac{f(a+h,b)-f(a,b)}{h}=\lim_{h\to 0}\frac{Ah+o(|h|)}{h}=A$$
    より分かる.

$f:D\rightarrow\mathbb{R}$$(a,b)\in D$で全微分可能の時,形式的に
$$df_{(a,b)}=\frac{\partial f}{\partial x}(a,b)\,dx+\frac{\partial f}{\partial y}(a,b)\,dy$$

解答

  1. $f(\lambda x,\lambda y)=f(x,y)$$\lambda$で微分すると,連鎖律より答えの式を得ることができる.
  2. 計算すれば,
    $$\frac{\partial f}{\partial x}=-\frac{xy^2}{(x^2+y^2)(x^2-y^2)},\quad \frac{\partial f}{\partial y}=\frac{x^2 y}{(x^2 + y^2)(x^2-y^2)}$$
    が分かる.これを極座標に変換すると,
    $$df=\frac{1}{2}\tan2\theta \,d\theta$$
    が分かる.
  3. 積分すれば,
    $$f(x,y)=\frac{1}{4}\log\frac{x^2+y^2}{x^2-y^2}+C$$
    が分かる.ここで,$C$は定数.
投稿日:2日前

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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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