この記事では, 二つ/三つ/四つの平方数の和で書ける非負整数の特徴付けを行います. 記事内でする証明自体はよく知られたものですが,
ことを意識して個人的にまとめました. 誤りや簡略化などありましたらコメントにてお願いします.
書き終わったあとに気づいたんですが,
英語記事
で本質的に同じ内容が上がってますね... まあ上の記事を和訳+行間埋めしたものだと思ってもらえれば幸いです
25/8/18に余談3($m$個の正の平方数の和)を追記しました.
$\N$は非負整数全体の集合を表し, $\P$は素数全体の集合を表す. また$\P_{4,1}=(4\N+1)\cap \P$, $\P_{4,3}=(4\N+3)\cap \P$とする.
$\ord_p(n)$で$n$が$p$で何回割れるかを表す. $\ord_p(0)=\infty$とし, 便宜上$\infty$は偶数とする.
$A,B\subset \Z$に対し, $A+B:=\{a+b|a\in A,b\in B\}$とする.また$\{n\}+A$を$n+A$で表す.
$S=\{n^2|n\in \Z\}$とし, $S_n:=S+S+\cdots+S$($S$が$n$個)と置く. $S_2,S_3,S_4$の決定が今回の目標.
ここで大事になってくる補題が次:
$n$を正の整数,$r$を正の実数, $G$を有限アーベル群とし, $\phi:\Z^n\to G$を群準同型とする.
$Q:\R^n \to \R$を正定値二次形式とする.
$2^n(\#G)<\vol\biggl(Q^{-1}\bigl([0,r)\bigr)\biggr)$を満たすとき, 次の条件をすべてみたす$v \in \Z^n$が存在する. ただし, $\vol$は体積を表す.
格子$\ker(\phi)$と$\{x\in \R^n|Q(x)< r\}$に対してミンコフスキーの定理を用いれば証明が完了するが, 一応, 直接証明を書いておく.
$B:=Q^{-1}([0,\frac{r}{4}))$とし, $T=[0,1)^n$とする. $c:T\to \Z_{\geq 0}\cup \{\infty\}$を, $x\mapsto \sum_{v\in \Z^n} \chi_{B}(x-v)$で定める. 定義より$c$は可測であり,
$\int_{T} c(x) dx=\sum_{v\in \Z^n} \int_{T} \chi_{B}(x-v) dx=\sum_{v\in \Z^n}\vol(B\cap (v+T)) dx=\vol(B)>\#G$.
よって, $c(x)>\#G$となる$x\in T$が取れる.
$X=(x+\Z^n)\cap B$と置き, $\psi:X\to G$を$y\mapsto \phi(x-y)$で定める. $\#X=c(x)>\#G$より, $\psi$は単射でない. よって, ある$y,z\in X$が存在し, $\psi(y)=\psi(z)$となる. $v=y-z$とおき, これが条件を満たすことを確かめる.
まず素数$p$がいつ$S_2$に入るか決定する.
$p\in \P\setminus \P_{4,3}$ならば$p\in S_2$.
$p=2$なら$p=1^2+1^2\in S_2$. 以下$p$は奇素数とする.
平方剰余の第一補充則より, $\jac{-1}{p}=1$. よって, $t^2\equiv -1\pmod{p}$となる$t\in \Z$がとれる. 準同型$\phi:\Z^2\to (\Z/p\Z)$を$\phi(x,y)=\overline{x-ty}$で定める. $r=2p$とし, $Q(x,y)=x^2+y^2$と置くと, $2^2p<2\pi p=\pi r=\vol(Q^{-1}([0,r))$なので, これは補題2の仮定を満たす. よって, $(x,y)\in \Z^2$で, 次の2条件を満たすものがとれる:
条件1より, $x^2+y^2\equiv (t^2+1)y^2\equiv 0\pmod{p}$. これを条件2と合わせ, $x^2+y^2=p$を得る.
$a,b\in S_2$なら$ab\in S_2$. とくに, $S_2\supset \{n\in \N| \forall p \in \P, p\equiv 3 \pmod{4}\implies \ord_p(n)\text{は偶数} \}.$
前半: $(x^2+y^2)(z^2+w^2)=(xz+yw)^2+(xw-yz)^2$より従う.
後半: 上で示したことと, 命題2,および$0,1\in S_2$から従う.
逆の包含を示すために, 次の補題を用意する. あとのために少し一般化した形で書いている.
$p\in \P,x,y,m,e\in \Z$とし, $\ord_p(x^2+my^2)=2e+1$と仮定する. このとき, $p\not \mid m$なら, $\jac{-m}{p}=1$.
$p,x,y,m,e$が条件を満たすと仮定する. このとき$e\geq 0$に注意せよ. もし$x$が$p$の倍数なら, $p\not\mid m$と$p\mid x^2+my^2$より$y$も$p$の倍数となる. よって, $x,y$を$p$で割れるだけ割って$p\not \mid x$と仮定してよい. ($x=0$なら$\ord_p(my^2)=2e+1$から矛盾する)
このとき, $p\mid x^2+my^2$なので, $(x^{-1}y)^2+m= 0$(in $\mathbb{F}_p$)となる. よって, $\jac{-m}{p}=1$を得る.
$S_2= \{n\in \N| \forall p \in \P, p\equiv 3 \pmod{4}\implies \ord_p(n)\text{は偶数} \}$
命題3で$\subset$は示したので, $x,y \in \Z$のとき$x^2+y^2$が右の集合に入ることを示す. 背理法を用いる. つまり, $p\in \P,p\equiv 4\pmod{3}$かつ$\ord_p(x^2+y^2)=2e+1(e\in \N)$と仮定し, 矛盾を導く. このとき, 上の補題より$\jac{-1}{p}=1$だがこれは第一補充則に矛盾する.
次の系は上の定理からただちに従う. この系は$S_3$の決定において役立つ.
$p\in \P\setminus \P_{4,3}$, $n\in \N$, $pn\in S_2$とする. このとき$n\in S_2$.
$S_4$の決定は, 上の$S_2$の決定とほぼパラレルに行える. $S_2$での第一補充則の代わりになるのが, 次の命題.
任意の$p\in \P$に対し, $a,b\in \F_p$が存在し, $a^2+b^2+1=0$を満たす.
$p=2$のときは, $a=1,b=0$とするとよい. 以下$p$は奇素数とする.
$A=\{a^2|a\in \F_p\}$, $B=\{-1-b^2|b\in \F_p\}$とすると, $\#A=\#B=\frac{p+1}{2}$. よって, $\#A+\#B = p+1 > p \geq \#(A\cup B) $となり, $A\cap B \neq \emptyset$. よって, $a^2=-1-b^2$を満たす$a,b\in \F_p$が存在する.
$\P \subset S_4$
$p\in \P$を任意にとる. 以下$\equiv$は$\pmod{p}$で考えるものとする. 上の補題より, $a,b\in \Z$で, $a^2+b^2+1\equiv 0$を満たすものがとれる. $\phi: \Z^4 \to (\Z/p\Z)^2$を, $\phi(x,y,z,w) = (\overline{x-az-bw},\overline{y+bz-aw})$で定め, $r=2p$と置く.$Q:\R^4\to \Z$を$Q(x,y,z,w)=x^2+y^2+z^2+w^2$で定めると, $2^4p^2 < 4\pi^2p^2= \frac{\pi^2}{2}r^2=\vol(Q^{-1}[0,r))$より, $r,\phi,Q$は補題2の条件を満たす. よって, $(x,y,z,w)\in \Z^4$で, 次の3条件を満たすものがとれる:
条件1,2より, $x^2+y^2+z^2+w^2\equiv (az+bw)^2+(aw-bz)^2+z^2+w^2 \equiv (a^2+b^2+1)(z^2+w^2) \equiv 0$. これを条件3と合わせ, $x^2+y^2+z^2+w^2=p$を得る.
$S_4=\N$
\begin{eqnarray} &&(a^2+b^2+c^2+d^2)(x^2+y^2+z^2+w^2) \\
&=& (ax-by-cz-dw)^2 \\
&+& (bx+ay-dz+cw)^2 \\
&+& (cx+dy+az-bw)^2 \\
&+& (dx-cy+bz+aw)^2
\end{eqnarray}
より$S_4$は積について閉じる. これと$\{0,1\} \cup \P \subset S_4 $を合わせればよい.
$3$が奇数であること, $S_3$が積で閉じてないことが効いて, $S_3$の決定は($S_2,S_4$の決定に比べて)難しい. ここでは, 解が欲しい不定方程式を巧妙に変えていくことによって, ミンコフスキーの定理が使える形に持っていく.
以下, $m$は平方因子を持たない正の整数とし,
\begin{equation}
\alpha =
\begin{cases}
2 & \text{$m\equiv 3\pmod{4}$のとき} \\
1 & \text{それ以外} \\
\end{cases}
\end{equation}
とする.
$q\in \P_{4,1}$とする. もし不定方程式$\alpha qx^2+y^2+z^2=\alpha qm$に整数解が存在するなら, $m \in S_3$が成立する.
$\alpha qx^2+y^2+z^2=\alpha qm$のとき, $y^2+z^2= \alpha q(m-x^2) \in \alpha q\Z$. よって, 定理5の系を($\alpha=2$のときは$2$回用いることで) $\displaystyle\frac{y^2+z^2}{\alpha q}\in S_2$となる. よって, $m= x^2+\displaystyle\frac{y^2+z^2}{\alpha q} \in S_3$.
さらに不定方程式を変形していく. そのためには, $q$により強い条件が必要となる:(この用語は一般的ではない)
素数$q$が$m$-補助素数であるとは, 次の$3$条件をともに満たすことを指す:
$m$は平方因子を持たないとしているので, $2$で高々$1$回しか割り切れない.また定義より,$\alpha$と$m$は同時に偶数にならない. よって, ディリクレの算術級数定理より,$m$-補助素数は無限に存在する.
$q$を$m$-補助素数とする. もし不定方程式$\alpha qx^2+y^2+mz^2=\alpha qm$に整数解が存在するなら, $m \in S_3$が成立する.
補題9より$y^2+mz^2\in S_2$を示せばよい. 定理5より, $p\in \P_{4,3}, \ord_p(y^2+mz^2)=2e+1$を仮定して矛盾を導けばよい. 以下これを示す. $q\equiv 1\pmod{4}$より, $q\neq p$に注意せよ.
この不定方程式の形にしたことでようやくミンコフスキーの定理が使える. しかし, まだ$m\not\equiv 7$の条件を使ってないので, この条件を使う補題が必要となる:
$q$が$m$-補助素数であり, $m\not\equiv 7\pmod{8}$のとき, $\jac{-m}{q}=1$.
$q\equiv 1\pmod{4}$より, $\jac{m}{q}\equiv 1$を示せばよい.
$m$が奇数のとき, $m'=m$, $m$が偶数のとき$m'=\frac{m}{2}$とおく. $m$が平方因子を持たないので, $m'$は奇数である.
$\alpha q\equiv -1 \pmod{m'}$とヤコビ記号の相互法則より, $\jac{m'}{q}=\jac{q}{m'}=\jac{-\alpha}{m'}=\jac{-1}{m'} \jac{\alpha}{m'}$となる. ここで$m$の値に応じて場合分けを行う.
$m\not\equiv 7\pmod{8}$のとき, $m\in S_3$.
$m$-補助素数のすぐあとのremarkより, $m$-補助素数$q$がとれる. 二つ上の補題より, $\alpha qx^2+y^2+mz^2=\alpha qm$に整数解があることを示せばよい. 以下これを示す.
一つ上の補題より, $b^2+m\equiv 0\pmod{q}$となる$b\in \Z$がとれる. 必要なら$b$を$q-b$に置き換えて, $b^2+m\equiv 0\pmod{\alpha q}$としてよい. $\phi:\Z^3\to (\Z/\alpha q\Z \times \Z/m\Z) $を$\phi(x,y,z)=(\overline{y-bz},\overline{y-x})$で定め, $Q:\R^3 \to \R$を$Q(x,y,z)=\alpha qx^2+y^2+mz^2$と定義する. $r=2\alpha qm$と置くと, $2^3\alpha qm<\frac{8\sqrt{2}\pi}{3}\alpha qm=\sqrt{\alpha qm}^{-1} \frac{4\pi}{3}(\sqrt{r})^3$より, $\phi,r,Q$は補題1の条件を満たす. よって, 次の条件を満たす$(x,y,z)\in \Z^3$がとれる:
条件1より, $\alpha qx^2+y^2+mz^2\equiv (b^2+m)z^2\equiv 0\pmod{\alpha q}$であり, 条件2より, $\alpha qx^2+y^2+mz^2\equiv (\alpha q+1)x^2 \equiv 0\pmod{m}$である. よって, 条件3と合わせて$\alpha qx^2+y^2+mz^2=\alpha qm$を得る. ($\alpha$と$m$は同時に偶数にならないことに注意せよ)
上の命題があれば, $S_3$の決定は容易にできる. $m$は平方因子を持たない正の整数としていたことに注意せよ.
$ \{2^{2k+1}l|k\in \N, l\text{は正の奇数}\}$$\cup\{2^{2k}l|k\in \N l\text{は正の奇数},l\not\equiv 7\pmod{8} \}\cup \{0\} \subset S_3$.
$l$を任意の正の奇数とし, $l=n^2m,n\in \Z$, $m$は平方因子を持たない, となるように$n,m$を定める. $k\in \N$を任意にとる.
まず, $2^{2k+1}l\in S_3$を示す. $2m$は平方因子を持たない偶数なので, 上の命題より$2m\in S_3$. よって, $2^{2k+1}l=(2^kn)^2m\in S_3$.
次に, $l\not \equiv 7\pmod{8}$と仮定し, $2^{2k}l \in S_3$を示す. $n^2\equiv 1\pmod{8}$なので, $m\not \equiv 7\pmod{8}$. よって, 上の命題より$m\in S_3$となり, $2^{2k}l=(2^kn)^2m\in S_3$.
$0\in S_3$は明らかなので, これで$\subset$が示された.
逆の包含を示していく.
$n\in \Z, 4n\in S_3\implies n\in S_3$.
$4n=a^2+b^2+c^2$とし, $n\in S_3$を示す. 平方数は$\mod{4}$で$0,1$のみをとるので, $a,b,c$は全て偶数. よって, $n=\displaystyle{(\frac{a}{2})^2+(\frac{b}{2})^2+(\frac{c}{2})^2}\in S_3$
$S_3 = \{2^{2k+1}l|k\in \N, l\text{は正の奇数}\} $$\cup\{2^{2k}l|k\in \N ,l\text{は正の奇数},l\not\equiv 7\pmod{8} \}\cup \{0\}$ $=\N\setminus \{4^k(8u+7)|k,u\in \N\}$.
二つ目の$=$は容易に確かめられる. 一つ目の$\supset$側もすでに示した. よって, $4^k(8u+7)\not\in S_3$を示せばよい. 上の補題(の対偶)を繰り返し用い, $8u+7\not \in S_3$を示せばよい. これは, 平方数は$\mod{8}$で$0,1,4$のみをとることから従う.
ガウス・ルジャンドルの三平方の定理の下で, ラグランジュの四平方和定理は容易に示せる. 実際, 定理15より$4^k(8u+7)\in S_4$を示せばよいが, これは$4^{k+1}\in S$および定理15から$4^k(8u+3)\in S_3$なことからわかる.
$T$を三角数全体の集合, すなわち$T=\{\displaystyle\frac{n(n+1)}{2}| n \in \Z\}$とします.
このとき, 次の定理が成立します.
$T+T+T=\N$
$\subset$は自明なので, $\supset$を示せばよい. $n\in \N$を任意にとる. ガウス・ルジャンドルの三平方の定理より, $8n+3=a^2+b^2+c^2$と書ける. $\mod{4}$を考えることで, $a,b,c$はすべて奇数. $a=2x+1,b=2y+1,c=2z+1$と置く.
すると, 代入し, 式を整理することで, $n=\frac{x(x+1)}{2}+\frac{y(y+1)}{2}+\frac{z(z+1)}{2}$を得る.
よって, 任意の非負整数は$3$つの三角数の和で書けることがわかります. また, $S_4=\N$は, 任意の非負整数が$4$つの四角数の和で書けることを示してます. 実は, より一般に次の定理が成立します:
$k$を$3$以上の整数とし, $k$角数全体の集合$X_k$を, $X_k:=\{(k-2)\frac{n(n-1)}{2}+n|n\in \Z_{\geq 0}\}$で定める. このとき, $X_k+X_k+\cdots X_k=\N$($X_k$が$k$個)となる.
この定理も, ガウス・ルジャンドルの三平方の定理をうまく使うことで初等的に示せます. 詳細は, 例えば この日本語記事 を参照してください. (直pdfリンクにつき注意. 気が向いたらmathlogに記事を書くかも)
余談1にあるような議論をうまく用いることで, 「$m$($m\geq 4$)つの正の平方数の和で書ける整数の集合」を決定することができる.
$S'=S\setminus \{0\}$とし, $S'_n$を$S_n$と同様に定義する.
定義より, $S_3\setminus S_2 \subset S'_3$,$S_4\setminus S_3 \subset S'_4$であることに注意せよ. 次の補題は以下, 断りなく用いる.
$k,l\in \N$ならば$2^{2k}(8l+3),2^{2k}(8l+6)\in S_3\setminus S_2\subset S_3'$
定理5($S_2$の具体的記述), および定理15(ガウス・ルジャンドルの三平方の定理)から従う.
$n\in \N$, $8\not\mid n$とする. このとき,
$n\in S'_4\iff n\not\in X$.
ただし, $X:=\{1,2,3,5,6,9,11,14,17,29,41\}$.
$\implies$:$14$以下の$S'_4$の元を列挙すると, $1+1+1+1=4,1+1+1+4=7,1+1+4+4=10,1+4+4+4=13,1+1+1+9=12$の$5$つとなる.よって,$17,29,41$が$S'_4$に入らないことを見ればよい.
これらはすべて$\mod{4}$で$1$なので, 和因子に$4$の倍数は$3$つとなる. 一方, $\mod{3}$で$2$でもあるので, 和因子に$9$の倍数は$2$つ. ゆえに和因子に$36$の倍数がある. しかし, この和因子以外にも$9$の倍数があるので, 計$45$以上となり破綻.
$\impliedby$:$n\mod{8}$によって場合分けを行う($4,2,6,3,7,1,5$の順に示す)
$n\in \N$のとき, $2n\not\in S'_4\implies 8n\not\in S'_4$
対偶を示す. つまり, $8n=a^2+b^2+c^2+d^2$($a,b,c,d\in \Z_{>0}$)と仮定し, $2n\in S'_4$を示す.
平方数は$\mod{8}$で$0,1,4$しかとりえない. $0,1,4$を$4$つ足して$8$の倍数を作る際, $1$は和因子になりえないので, $a,b,c,d$は全て偶数.
よって, $2n=\displaystyle{(\frac{a}{2})^2+(\frac{b}{2})^2+(\frac{c}{2})^2+(\frac{d}{2})^2}\in S'_4$となる.
$S'_4=\N\setminus\bigl( \{0\}\cup X_1\cup \{4^ku|k\in \N,u\in X_0\}\bigr)$
ただし, $X_0=X\cap 2\Z=\{2,6,14\}$,$X_1=X\cap (2\Z+1)=\{1,3,5,9,11,17,29,41\}$.
$\supset$ : 右側の集合から非負整数$n$を任意にとり, $n\in S_4$を示す. $n\neq 0$より, $n=4^kl$($k,l\in \N,4\not\mid l$)と書ける. このとき, $l\not\in X_0$.
$l\in X_1$かどうかで場合分けを行う:
$\subset$ : $n\in \{0\}\cup X_1\cup \{4^ku|u\in X_0,k\in \N\}$と仮定し, $n\not\in S'_4$を示せばよい.
とくに, $41$より大きい奇数は$S'_4$に属することに注意せよ.
この命題の下で,$S'_m(m\geq 5)$の決定は容易にできる.
$m\geq 5$のとき, $S'_m=m+(\N\setminus Y_m)$.
ただし, $Y_m=\{1,2,4,5,7,10,13\}(m\geq 6), Y_5=Y_6\cup \{28\}$.
$m$の帰納法で示す.
| $n$ | $6$ | $7$ | $9$ | $10$ | $12$ | $15$ | $18$ | $25$ | $30$ | $33$ | $42$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $n-1$ | $5$ | $6$ | $8$ | $9$ | $11$ | $14$ | $17$ | $24$ | $29$ | $32$ | $41$ |
| $n-4$ | x | x | $5$ | $6$ | $8$ | $11$ | $14$ | $21$ | $26$ | $29$ | $38$ |
| $n-9$ | x | x | x | x | x | $6$ | $9$ | $24$ | |||
| $n-16$ | x | x | x | x | x | x | x | $17$ | |||
| $n-25$ | x | x | x | x | x | x | x | $8$ |
| $n$ | $m+2$ | $m+3$ | $m+5$ | $m+6$ | $m+8$ | $m+11$ | $m+14$ | $m+29$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $n-1$ | $m+1$ | $m+2$ | $m+4$ | $m+5$ | $m+7$ | $m+10$ | $m+13$ | $m+28$ |
| $n-4$ | x | x | $m+1$ | $m+2$ | $m+4$ | $m+7$ | $m+10$ | $m+25$ |
| $n-9$ | x | x | x | x | x | $m+2$ | $m+5$ |
また, 補題4と同様の議論をすることで, $S'_2$の決定ができる(詳細略)
$S_2\setminus S'_2=\{0\}\cup \{n^2| n\text{の素因数は全て}\{2\}\cup\P_{4,3}\text{に属する}\}$
一方で, $S'_3$の決定は(例えば
この論文
の4章1節によると)open. 虚二次体の類数群についての情報が必要で, 本質的に難しいらしい.
現在知られている結果は以下の通り:
$4\not \mid n$のとき, 高々一つの例外を除いて$n\in S_3\setminus S'_3\iff n\in \{1, 2, 5, 10, 13, 25, 37, 58, 85, 130\}$. この例外は(存在するとしたら)$5\times 10^10$より大きい.
(補題14の証明と同様の議論をおこなうことで, $4\not\mid n$の場合が本質であることに注意せよ)
ここであげてるガウス・ルジャンドルの三平方の定理の証明は,
https://www.ams.org/journals/proc/1957-008-02/S0002-9939-1957-0085275-8/S0002-9939-1957-0085275-8.pdf
を基にした.
余談3については,
https://arxiv.org/abs/2404.08193
の4.1節を参考とした. この論文では, 正の$k$乗数の和として書ける整数について考えている.
$S'_3$周りについては,
http://matwbn.icm.edu.pl/ksiazki/aa/aa42/aa4212.pdf
の1章を参考にした. この論文では, 種々の設定のもとで, 整数が平方数の$k$個の和で書ける条件についてまとめられている.
$S'_3$周りについて知りたい場合は, この論文を読んだ後にそこのリファレンスから探すのが良さそう(自分は証明を追ったわけではないですが...)
この論文はドイツ語で書かれているので注意.