ここでは東大数理の修士課程の院試の2022B05の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
集合
$$
M:=\left\{\begin{pmatrix}
x&z\\
y&w
\end{pmatrix}\in M_2(\mathbb{R})\middle| xz+yw=1\right\}
$$
$$
N:=\left\{Y\in M_2(\mathbb{R})\middle|\mathrm{rank}Y=\mathrm{Tr}Y=1\right\}
$$
をとり、写像
$$
\begin{split}
\pi:M&\to N\\
\begin{pmatrix}
x&z\\
y&w
\end{pmatrix}&\mapsto \begin{pmatrix}
xz&xw\\
yz&yw
\end{pmatrix}
\end{split}
$$
を考える。
(1) $M$及び$N$は$\pi$が$C^\infty$級になるような$C^\infty$級多様体の構造を持つことを示せ。
(2) $M$上の$2$次形式$\eta:=dx\wedge dz+dy\wedge dw$を考える。このとき、$\eta=\pi^\ast\omega$なる$N$上の$2$次形式が一意的に存在することを示せ。
(3) $G=\mathrm{GL}_2(\mathbb{R})$とおく。ここで$g\in G$を
$$
\begin{split}
L_g:N&\to N\\
Y&\mapsto gYg^{-1}
\end{split}
$$
に対応させる作用は推移的であることを示せ。また任意の$g\in G$について$L_g^\ast\omega=\omega$であることを示せ。
(4) $b>0$に対して
$$
S(b):=\{Y\in N|\mathrm{Tr}(Y {}^tY-Y^2)\leq b^2\}
$$
と定義する。このとき積分$\int_{S(b)}\omega$を計算しなさい。