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ここでは東大数理の修士課程の院試の2014B10の解答例を解説していきます(但し解説の都合で問題を大幅に変更しています)。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2014B10(改)
以下の問いに解答しなさい。
- $\mathbb{R}$の部分集合$U$で、次の条件を全て満たすものを一つ挙げなさい。
(1a)$U$は$\mathbb{R}$の稠密開集合である。
(1b)$U$の測度は$1$以下である。 - $\mathbb{R}$上のルベーグ可測関数$g:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$で、次の条件を満たすものを一つ挙げなさい。
(2a)$\int_\infty^\infty |g(x)|dx<\infty$
(2b)任意の$a< b$に対して$\int_a^b |g(x)|^2dx=\infty$
(2c)集合$\{x\in\mathbb{R}|g(x)\neq0\}$のルベーグ測度は$1$以下
- $\mathbb{Q}$の全ての元をナンバリングしたものを$q_1,q_2,\cdots$とする。ここで集合
$$
\color{red}U=\bigcup_i\left(q_i-\frac{1}{2^{i+1}},q_i+\frac{1}{2^{i+1}}\right)
$$
とおくと、これは$\mathbb{Q}$を含む開集合なので(1a)を満たし、その測度は$\sum_i\frac{1}{2^i}=1$以下なので(1b)を満たす。 - まず$I_i:=\left(q_i-\frac{1}{2^{i+1}},q_i+\frac{1}{2^{i+1}}\right)$と定義し、$\mathbb{R}$上の関数$h_i$を
$$
h_i(x)=\begin{cases}
\frac{a_i}{\sqrt{|x-q_i|}}&(x\in I_i\backslash\{q_i\})\\
0&(\textsf{ if else })
\end{cases}
$$
とおく。但し$a_i>0$は
$$
\int_\mathbb{R}h_i(x)dx=\frac{1}{2^i}
$$
が満たされるようにとる。そして$\mathbb{R}$上の関数を
$$
\color{red}h(x)=\begin{cases}
\sup_ih_i(x)&(|\{i\in \mathbb{N}|x\in I_i\}|<\infty)\\
0&(|\{i\in \mathbb{N}|x\in I_i\}|=\infty)
\end{cases}
$$
で定義する。可測関数列の各点での上限をとる関数も可測関数であることを考慮すると、$h$は可測関数である。また$h$の$0$以外の値をとる点は$U$に含まれる可測集合なので測度$\leq1$であるから(2c)を満たす。また
$$
\int_\mathbb{R}h(x)dx\leq\sum_i\int_\mathbb{R}h_i(x)dx=1
$$
であるから(2a)を満たす。また任意の$a< b$に対して$a< q_i< b$なる$q_i$を取ったとき、
$$
\int_a^bh(x)^2dx\geq\int_{q_i}^bh_i(x)^2dx=\infty
$$
であるから(2b)を満たす。以上から上記で定義した$h$が所望の関数である。