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現代数学解説
文献あり

Sonineの公式

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今回は, 次の公式を示す.

Sonineの公式

a,b,cがある三角形の三辺の長さとして, Δ(a,b,c)をその面積とすると,
0Jν(ax)Jν(bx)Jν(cx)x1νdx=2ν1Δ(a,b,c)2ν1πΓ(ν+12)(abc)ν
が成り立つ. また, a,b,cが三角形の三辺にならないとき, 上の積分の値は0である.

三角形の面積がこのような積分の値に現れるというのはかなり不思議である. Heronの公式から, 三角形の三辺の長さがa,b,cのとき, その面積Δ
Δ(a,b,c)=14(a+b+c)(a+b+c)(ab+c)(a+bc)
で与えられる. 以下はHsüの1949年の論文において与えられている証明である.

前の記事 で示したBessel関数に関するGegenbauerの加法定理の系
11Jν(β2+γ22βγx)(β2+γ22βγx)ν(1x2)ν12dx=πΓ(ν+12)(2βγ)νJν(β)Jν(γ)
を考える. 二辺β,γとその間の角がϕである三角形のもう一つの辺の長さをαとすると, それは余弦定理より,
α2=β2+γ22βγcosϕ
で与えられる. よって, x=cosϕとして, 先ほどの公式は
11Jν(α)ανsin2νϕdϕ=πΓ(ν+12)(2βγ)νJν(β)Jν(γ)
と表される. ここで, 正弦定理から
βγsinϕ=2Δ(α,β,γ)
である. βγsinϕdϕ=αdαであるから,
11Jν(α)ανsin2νϕdϕ=22ν1(βγ)2ν|βγ|β+γJν(α)ανΔ(α,β,γ)2ν1αdα
である. よって,
2ν1πΓ(ν+12)|βγ|β+γJν(α)(αβγ)νΔ(α,β,γ)2ν1αdα=Jν(β)Jν(γ)
を得る. α=rx,β=bx,γ=cxとすると, これは
2ν1πΓ(ν+12)|bc|b+cJν(rx)(rbc)νΔ(r,b,c)2ν1rdr=xνJν(bx)Jν(cx)
と書き換えられる.
f(r)={2ν1Δ(r,b,c)2ν1πΓ(ν+12)(rbc)ν,|bc|rb+c0,otherwise
とすると,
0Jν(rx)f(r)rdr=xνJν(bx)Jν(cx)
とHankel変換として書ける. よってHankel逆変換公式より
0x1νJν(ax)Jν(bx)Jν(cx)dx=f(a)=2ν1Δ(a,b,c)2ν1πΓ(ν+12)(abc)ν
となって示すべきことが得られた.

Sonineの公式はHsüによってさらに次のように一般化されている.

Hsü(1949)

abcd,cdabのとき,
0Jν(ax)Jν(bx)Jν(cx)Jν(dx)x12νdx=22ν2πΓ(ν+12)2(abcd)νabc+d(rΔ(a,b,r)Δ(c,d,r))12νdr
が成り立つ.

定理1の証明において用いた式より
xνJν(cx)Jν(dx)=2ν1πΓ(ν+12)dcc+dJν(rx)(rcd)νΔ(r,c,d)2ν1rdr
であるから, Sonineの公式を用いて,
0Jν(ax)Jν(bx)Jν(cx)Jν(dx)x12νdx=2ν1πΓ(ν+12)cdc+dΔ(r,c,d)2ν1r(rcd)ν0Jν(rx)Jν(ax)Jν(bx)x1νdxdr=2ν1πΓ(ν+12)abc+dΔ(r,c,d)2ν1r(rcd)ν2ν1Δ(a,b,r)2ν1πΓ(ν+12)(abr)νdr=2ν1πΓ(ν+12)2(abcd)νabc+d(rΔ(a,b,r)Δ(c,d,r))12νdr
となって示すべきことが得られた.

参考文献

[1]
Hsien-Yü Hsü, On Sonine's integral formula and its generalization., Bull. Amer. Math. Soc., 1949, 370-378
投稿日:19日前
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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