$$$$
ここでは東大数理の修士課程の院試の2025B02の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2025B02
可換環
$$
A=\mathbb{Z}[x]/(x^3+4x)
$$
$$
B=\mathbb{R}[x]/(x^3+4x)
$$
を取る。
- $B$を体の直積$\prod_{i}K_i$として表しなさい。
- $p_i:B\twoheadrightarrow K_i$を自然な射影とする。そして$\mathbb{Z}$上$p_i(\frac{x}{2})$で生成される$K_i$の部分代数を$C_i$とおき、$C=\prod_iC_i$とおく。$A\subseteq B\simeq \prod_iK_i$の像は$C$に含まれていることを示し、$\mathbb{Z}$加群としての剰余$C/A$を巡回群の積として表しなさい。
- 単数群$A^\times$を巡回群の積として表しなさい。
- $B=\mathbb{R}[x]/(x(x^2+4))=\mathbb{R}[x]/x\times\mathbb{R}[x]/(x^2+4)={\color{red}\mathbb{R\times\mathbb{C}}}$
- まず$\frac{x}{2}$の$\mathbb{R}\times\mathbb{C}$の像は$(0,i)$である。よって$C=\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}[i]$である。ここで$f\in\mathbb{Z}[x]$に対して
$$
f(0)-\mathrm{Re}f(2i)\in4\mathbb{Z}
$$
$$
\mathrm{Im}f(2i)\in2\mathbb{Z}
$$
を満たす一方、$a-b\in4\mathbb{Z}$かつ$c\in4\mathbb{Z}$を満たす整数$a,b,c$を任意に取ったとき、
$$
f(x)=a+\frac{c}{2}x-\frac{b-a}{4}x^2
$$
と置けば、これは$f(0)=a$かつ$f(2i)=b+ic$を満たす。以上から$A$の$C$に於ける像は
$$
\{(a,b+ic)\in\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}[i]|a-b\in4\mathbb{Z}, c\in2\mathbb{Z}\}
$$
である。いま自然な同一視$\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}[i]\simeq\mathbb{Z}^3$を考え、同型
$$
\begin{split}
\mathbb{Z}^3&\to\mathbb{Z}^3\\
(a,b,c)&\mapsto(a,b-a,c)
\end{split}
$$
を取ったとき、この同型による$A$の像は
$$
\mathbb{Z}\times4\mathbb{Z}\times2\mathbb{Z}
$$
に移される。よって
$$
C/A\simeq\mathbb{Z}^3/(\mathbb{Z}\times4\mathbb{Z}\times2\mathbb{Z})\simeq{\color{red}\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}}
$$
が従う。 - $A\subseteq B\to\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}[i]$は環の単射であるから、$A^\times$は$\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}[i]$の単数群、つまり$\{\pm1\}\times\{\pm1,\pm i\}$に含まれる。(2)で求めた$A$の像の元のみたす条件から、$A^\times$の像としてあり得るのは$(1,1),(-1,-1)$のみである。これらは実際$1,-1\in A$の像になっている。よって
$$
A^\times=\{\pm1\}
$$
であるから、$A^\times\simeq{\color{red}\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}}$