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東大数理院試2025年度専門B問10解答

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東大数理の院試(2025年度専門B問10)の解答です.
自分が作った解答は ここ に置いてあります.

(東大数理2025年専門B問10)

Δ={zC;|z|<1}を複素平面C内の単位円板とする.fΔ上正則かつ単射であるとする.各r(0,1)に対しΔr={zC;|z|<r}とおく.以下の問に答えよ.

  1. fz=0を中心とするテイラー展開をn=0anznとする.このときf(Δr)の面積をan(n=0,1,2,)rを用いて表せ.
  2. f(Δ)が凸集合ならば,各r(0,1)に対しf(Δr)も凸集合であることを示せ.

(1)
f(reiθ)=u+iv,z=x+iyとすると,2005年度専門B問9と同様にして答えは
f(Δr)dudv=Δr|(u,v)(x,y)|dxdy=Δr|f(z)|2dxdy=πn1n|an|2r2n.

(2)
r(0,1)を任意に固定する.w1,w2f(Δr)と,線分w1w2上の点w0=tw1+(1t)w2(t(0,1))を任意に取る.fの凸性からw0f(Δ)である.これとfの単射性から,wj=f(zj)(j=0,1,2)なるz1,z2Δr,z0Δが一意に存在する.|z0|<rとなることを示せば良い.一般性を失わず|z1||z2|として良い.
g(z)=f1(tf(z1z2z)+(1t)f(z))
とおく.f1のカッコ内はf(Δ)の凸性からf(Δ)の元であり,またfの単射性からgは well-defined である.gΔからΔへの正則関数であってg(0)=f1(f(0))=0を満たすから,Schwarzの補題よりΔ上で|g(z)||z|が成り立つ.よって
|z0|=|f1(w0)|=|g(z2)||z2|<r.

(補足)
(2) の証明は P.L.Duren, Univalent Functions, Springer の Theorem 2.11による.

投稿日:9日前
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delta
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