以下,$E$を$\mathbb{C}$の部分集合とし,$f_n \colon E \to \mathbb{C}$ $(n = 0, 1, 2, \ldots)$を複素関数の列とする。
また,$g \colon E \to \mathbb{C}$を複素関数とする。
関数項級数$\sum_{n=0}^\infty f_n$が$E$上各点で絶対収束するならば,それは$E$上各点で収束する。
$z \in E$とし,$\epsilon > 0$が任意に与えられたとする。
$\sum_{n=0}^\infty |f_n(z)|$が収束することから,ある番号$N$が存在し,$m, n \geq N$かつ$m > n$を満たすような任意の番号$m$, $n$に対して
$$ |f_{n+1}(z)| + |f_{n+2}(z)| + \cdots + |f_m(z)| < \epsilon$$
が成り立つ。(コーシーの収束判定条件)
したがって,このような$m$, $n$に対して
$$
|f_{n+1}(z) + f_{n+2}(z) + \cdots + f_m(z)| \leq
|f_{n+1}(z)| + |f_{n+2}(z)| + \cdots + |f_m(z)| <
\epsilon
$$
が成り立つ。(三角不等式)
これは級数$\sum_{n=0}^\infty f_n(z)$が収束するということに他ならない。(コーシーの収束判定条件)
任意に与えられた$\epsilon > 0$に対して,ある番号$N$が存在して,任意の$z \in E$と$n \geq N$を満たすような任意の番号$n$に対して,
$$ \left| \left( \sum_{k=0}^n f_k(z) \right) - g(z) \right| < \epsilon$$
が成り立つとき,関数項級数$\sum_{n=0}^\infty f_n$は$E$上$g$に一様収束するという。
各$z \in E$について,$|f_n(z)| \leq \sup_{z \in E} |f_n(z)|$ $(n = 0, 1, 2, \ldots)$が成り立つことから従う。
$\sum_{n=0}^\infty \sup_{z \in E} |f_n(z)|$が収束することから,任意の$\epsilon > 0$に対して,ある番号$N$が存在して,$n \geq N$を満たすような任意の番号$n$に対して,
$$ \sum_{k=n+1}^\infty \sup_{z \in E} |f_k(z)| < \epsilon$$
が成り立つ。
このような$n$と任意の$z \in E$に対して,
$$
\left| \sum_{k=n+1}^\infty f_k(z) \right| \leq
\sum_{k=n+1}^\infty |f_k(z)| \leq
\sum_{k=n+1}^\infty \sup_{z \in E} |f_k(z)| <
\epsilon
$$
となるが,これは$\sum_{n=0}^\infty f_n$が$E$上$f$に一様収束するということに他ならない。
$a_n$ $(n = 0, 1, 2, \ldots)$を複素数とし,関数項級数として冪級数$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$を考える。
$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$がある$z_0 \neq 0$で収束したとすると,それは任意の$0 \leq r < |z_0|$に対し,閉円盤$|z| \leq r$上絶対かつ一様に収束する。
$E = \{ z \in \mathbb{C} \mid |z| \leq r \}$と置く。
$\sum_{n=0}^\infty a_n z_0^n$が収束することから,$\lim_{n \to \infty} a_n z_0^n = 0$である。
特に,$a_n z_0^n$は有界で,ある$M > 0$が存在し,すべての番号$n$に対して$|a_n z_0^n| \leq M$が成り立つ。
さて,$z \in E$とすると,$|z| \leq r < |z_0|$より$|z/z_0| \leq r/|z_0| < 1$である。
したがって,任意の$z \in E$と任意の番号$n$に対して,
$$
|a_n z^n| =
|a_n z_0^n| \left| \frac{z}{z_0} \right|^n \leq
M \left( \frac{r}{|z_0|} \right)^n
$$
が成り立つ。
よって,
$$ \sup_{z \in E} |a_n z^n| \leq M \left( \frac{r}{|z_0|} \right)^n$$
である。
これにより級数$\sum_{n=0}^\infty \sup_{z \in E} |a_n z^n|$が収束することが分かり,前命題より$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$は$E$上絶対かつ一様に収束する。
$\lambda = \limsup_{n \to \infty} \sqrt[n]{|a_n|}$ $(0 \leq \lambda \leq +\infty)$と置く。
$|z| < 1/\lambda$とする。
実変数$x$についての関数$\frac{1 - x}{\lambda + x}$は$x = 0$で連続なので,十分小さいある$\delta > 0$に対して
$$ |z| < \frac{1 - \delta}{\lambda + \delta}$$
が成り立つ。
一方,$\lim_{n \to \infty} \sup_{m \geq n} \sqrt[m]{|a_m|} = \lambda$より,十分大きいある番号$N$に対して
$$ \sup_{m \geq N} \sqrt[m]{|a_m|} < \lambda + \delta$$
が成り立つ。
したがって,$m \geq N$のとき,
$$
|a_m z^m| =
|a_m| |z|^m <
(\lambda + \delta)^m \left( \frac{1 - \delta}{\lambda + \delta} \right)^m =
(1 - \delta)^m
$$
である。
これにより,級数$\sum_{n = 0}^\infty |a_n z^n|$が収束することが分かる。
次に,$|z| > 1/\lambda$とする。
実変数$x$についての関数$\frac{1}{\lambda - x}$は$x = 0$で連続なので,十分小さいある$\delta > 0$に対して
$$ |z| > \frac{1}{\lambda - \delta}$$
が成り立つ。
一方,$\lim_{n \to \infty} \sup_{m \geq n} \sqrt[m]{|a_m|} = \lambda$より,無数の番号$m$に対して
$$ \sqrt[m]{|a_m|} > \lambda - \delta$$
が成り立つ。
(なぜなら,もしそのような$m$が有限個しかなく,ほとんどすべての$m$について$\sqrt[m]{|a_m|} \leq \lambda - \delta$であったとすると,十分大きいすべての番号$n$に対して$\sup_{m \geq n} \sqrt[m]{|a_m|} \leq \lambda - \delta$となってしまうからである。)
このような無数の番号$m$に対して
$$
|a_m z^m| =
|a_m| |z|^m >
(\lambda - \delta)^m \left( \frac{1}{\lambda - \delta} \right)^m =
1
$$
となるので,級数$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$は収束しない。
$z \in \mathbb{C}$とする。
アルキメデスの原理より,十分小さいある$\delta > 0$に対して
$$ |z| < 1/\delta - 1 = \frac{1 - \delta}{\delta}$$
が成り立つ。
一方,$\lim_{n \to \infty} \sup_{m \geq n} \sqrt[m]{|a_m|} = 0$より,十分大きいある番号$N$に対して
$$ \sup_{m \geq N} \sqrt[m]{|a_m|} < \delta$$
が成り立つ。
したがって,$m \geq N$のとき,
$$
|a_m z^m| =
|a_m| |z|^m <
\delta^m \left( \frac{1 - \delta}{\delta} \right)^m =
(1 - \delta)^m
$$
である。
これにより,級数$\sum_{n = 0}^\infty |a_n z^n|$が収束することが分かる。
$z \in \mathbb{C}$とする。
アルキメデスの原理より,十分大きいある$M > 0$に対して
$$ |z| > \frac{1}{M}$$
が成り立つ。
一方,$\sqrt[m]{|a_m|}$が非有界なので,無数の番号$m$に対して
$$ \sqrt[m]{|a_m|} > M$$
が成り立つ。
このような無数の番号$m$に対して
$$
|a_m z^m| =
|a_m| |z|^m >
M^m \frac{1}{M^m} =
1
$$
となるので,級数$\sum_{n=0}^\infty a_n z^n$は収束しない。
$z_0$を複素数とし,冪級数$\sum_{n=0}^\infty a_n (z - z_0)^n$を考える。
$\sum_{n=0}^\infty a_n (z - z_0)^n$がある$z_1 \neq z_0$で収束したとすると,それは任意の$0 \leq r < |z_1 - z_0|$に対し,閉円盤$|z - z_0| \leq r$上絶対かつ一様に収束する。
冪級数$\sum_{n=0}^\infty a_n w^n$が$w_0 = z_1 - z_0$で収束するので,任意の$0 \leq r < |w_0|$に対し,級数$\sum_{n=0}^\infty \sup_{|w| \leq r} |a_n w^n|$は収束する。
(原点を中心とした冪級数についての対応する命題の証明部分を参照せよ。)
ここで
$$ \sup_{|z - z_0| \leq r} |a_n (z - z_0)^n| = \sup_{|w| \leq r} |a_n w^n|$$
であることに注意すると,級数$\sum_{n=0}^\infty \sup_{|z - z_0| \leq r} |a_n (z - z_0)^n|$もまた収束することが分かる。
したがって,閉円盤$|z - z_0| \leq r$上で$\sum_{n=0}^\infty a_n (z - z_0)^n$は絶対かつ一様に収束する。
$\lambda = \limsup_{n \to \infty} \sqrt[n]{|a_n|}$ $(0 \leq \lambda \leq + \infty)$と置く。
上の命題における$1/\lambda$のことを冪級数$\sum_{n = 0}^\infty a_n (z - z_0)^n$の収束半径という。
ただし,$\lambda = 0$の場合には収束半径は無限大,$\lambda = + \infty$の場合にはゼロと約束する。