数学コアラです!初投稿なので,簡単に自己紹介させていただきます
・国立大学の数学科 学部4年 男
・専門は整数論(まだどの分野になるかは分かりません)
・現在はゼミで「数論Ⅰ Fermatの夢と類体論」数論を読んでいます
・雪江先生の整数論1を3年生のときに読んだので,今年の目標は整数論2を読破することです
・数学が得意!というよりは,数学が好き!というタイプです
この記事では,「数論Ⅰ」数論のなかで詳しく説明されなかった,フェルマーの発見と楕円曲線の2倍公式の関係について,できるだけかみ砕いて説明します
難しい大学数学の知識は使わない(写像の話だけ少し出てきます)ので,高校生の方にでも読めると思います!
多くの方に楕円曲線と整数論の繋がりを感じていただけたら幸いです!
※本記事の多くの箇所で,加藤・黒川・斎藤の「数論Ⅰ Fermatの夢と類体論」数論の書き方を参考にします
この記事を読んで興味がわいたら,ぜひ手に取ってみて下さい!
タイトルに「フェルマーの発見」と書きましたが,それは次のことを指しています
三辺の長さが有理数である直角三角形があるとき,それと同じ面積を持つ,三辺の長さが有理数の直角三角形を無限に作り出せる
これは,フェルマーがディオファントスの「数論」の余白に書いた,23番目のコメントらしいです
例えば,辺の長さが
実際に,
さて,ここで次の集合を導入します
これは,面積が
上の命題1が成り立つのは,フェルマーが次の事実を発見したことが由来だとされています
である
よって,一組でも有理数を三辺に持つ直角三角形が見つかれば,あとは上の公式に代入するだけで,
無限に同じ面積をもつ直角三角形を作り出せることになります!(ループして同じ解ばかりになる可能性ってあるのかな)
この公式をフェルマーはどのように思いついたのか、、、、、
この背景に実は,楕円曲線の2倍公式というものが関わっているんです!!!
次の形の方程式で与えられる曲線を,
ただし,
楕円曲線と楕円はまったくの別物ですので,楕円曲線について知らない方はグラフの形を実際に調べてみてから読み進めていただきたいと思います
これ以降,楕円曲線上の有理数点をターゲットにして話を進めるので,そのためにまず,次の集合を導入します
これは,
実は,この集合と
曲線上の点を2倍にする,そんなことができるのか疑問に思うかもしれませんが,
実は,
上の定義はとても雑で,楕円曲線の群構造にでてくる単位元となる無限遠点
しかし,本記事の内容を理解する上では,上の内容だけ理解していただけたら大丈夫です!
詳しく知りたい方は,「数論Ⅰ」数論やシルヴァーマンの「楕円曲線論入門」,少し進んだ内容として「楕円曲線と保型形式」楕円を読んでみて下さい
(私も全部読んだわけではないんですが、、、)
言葉だけみても分からないと思いますが,次の図を見れば,何をしているかが分かるはずです
楕円曲線の和
異なる2点を通る直線(または1点の接線)と,楕円曲線が交わった点を,
さて,上で定義した和について,
本記事では証明しませんが,これから大事になってくる特別な形の楕円曲線の場合について,和の公式を書いておきます
楕円曲線
というように座標を計算することができる
ここで,2の式について,本記事では特に楕円曲線の2倍公式と呼ぶことにします
なお,「数論Ⅰ」数論の定め方と全然違うじゃねーか,と気づかれる人もいるかと思いますが,この公式の言っていることは,実際には本の内容と一致していることが確かめられます
この公式を採用したのは,あとの計算が楽になるからです(参考論文:論文)
上の2倍公式の内容を,先ほど定めた
である
なんだか,命題2と似ていますね、、、
実は,この楕円曲線の2倍公式が,命題2の変換と対応していることがわかるんです!!!
命題2と命題4は,互いに対応した変換になっている
証明は長いので,きつい方は読み飛ばしてもらっても大丈夫です
まだこの主張のすごさにピンと来ていない方は,証明の下にある図を見ていただければ,何かピンとくるものがあるかもしれません!
定理3の証明で使った写像
計算量は多くなりますが,本記事の主定理となるので,頑張って計算します
写像
証明の流れとしては,次の通りです
では,順番に証明していきます.
1.命題4を使うために,先に
(ここで,
これを命題4の式に代入して計算することにより,
となります
2.上で求めた
となります
3.
となるので,
が得られます
これは,命題2のフェルマーが発見した公式と完全に一致していることが分かります
(2の計算は,論文を参考にさせていただきました)
定理5の主張だけでは,一見すごさが感じられないかもしれませんが,
下の図を見ていただけば,この定理が主張するすごさが実感できるかと思います!!!
命題1で面積として表れる数
合同数に関する有名な定理として,Tunnel(タネル)の定理というものがあります
この主張の逆を示すことができれば,合同数問題は解決されるのですが,楕円曲線に関するミレニアム懸賞問題の1つである,Birch-Swinnerton-Dyer(バーチ・スウィンナートン・ダイアー)予想が解決されれば,Tunnelの定理の逆が示されたことになり,合同数問題も解決されることがわかっています
このように,整数論と楕円曲線というのは,本記事のような初等的な内容から未解決問題まで,多岐にわたって関係しているのです
本記事を通して,フェルマーのすごさを感じたり,整数論と楕円曲線との繋がりを少しでも面白いと思っていただけたりしたら幸いです,
ということで私の記事を終わりたいと思います
初投稿でまだまだ未熟なところもあったかと思いますが,最後までお読みいただき本当にありがとうございました!