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複素関数の微分

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はじめに

今回の記事では複素関数の微分を考えます.

目次

1.複素関数の連続性
2.複素関数の微分
3.コーシー・リーマンの関係式

用語

複素数$α $について、$|z-α| \ltε $を満たす点$z$全体の集まりを$α$$ε$近傍という.また、連結な開集合を領域という.

複素関数の連続性

実関数の場合を参考にして、複素関数の連続性を定義する.

$ \Omega \in \mathbb{C} $を領域とし、$f: \Omega→ \mathbb{C} $を関数とする。$α \in \Omega$において、$\lim_{z \to α}f(z)=f(α)$が成立するとき、$f(z)$$ z=α$で連続であるという.

$z=x+iy,α=a+bi$とすると、$z→α$とは
$|z-α|= \sqrt{(x-a)^{2}+ (y-b)^{2} }→0 $
すなわち、$x→a,y→b$を意味している.

ここでの$z→α$とは$|z-α|→0$を指している.
そのために、近づき方は無数にあり、あらゆる近づき方を考慮しなければならない.

$\lim_{z \to α}f(z)=β_1, \lim_{z \to α}g(z)=β_2 $のとき、以下が成立する.
$\lim_{z \to α}${$f(z)±g(z)$}$=β_1+β_2$ (複合同順)
$\lim_{z \to α}kf(z)=kβ_1 (k \in \mathbb{C} )$
$\lim_{z \to α}f(z)g(z)=β_1β_2$
$\lim_{z \to α} \frac{f(z)}{g(z)} = \frac{β_1}{β_2} $ $(β_2≠0)$

実関数のときと同様の性質が成り立つ.
証明は$εδ$論法を用いて容易に示せるので省略する.

複素関数の微分

連続性と同様に、実関数をもとに複素関数の微分を定義する.

$ \Omega \in \mathbb{C} $を領域とし、$f: \Omega→ \mathbb{C} $を関数とする。$α \in \Omega$において、
$\lim_{z \to α}$$\frac{f(z)-f(α)}{z-α}= \lim_{h \to 0} \frac{f(z+h)-f(z)}{h} $が存在するとき、$f(z)$$z=α $で微分可能であるといい、その極限を$z=α $の微分係数といい、$ f'(α)$と表記する.

関数$f$$z=α $で微分可能なら、その点で連続である.

一般に逆は成り立たない.すなわち、$z=α$で連続であっても微分可能ではない例が存在する.具体的には$f(z)=|z|$などが例として挙げられる.

$\lim_{z \to α}f(z)$
$=\lim_{z\to α}${$ \frac{f(z)-f(α)}{z-α}(z-α)+f(α)$}
$=f'(α)・0+f(α)$
$=f(α)$
これは$f(z)$$z=α$で連続であることを示している.

続いて、複素関数では1点のみではなく、領域全体での微分可能性を考えることが多いため、それを指す用語である正則を定義する.

$ \Omega \in \mathbb{C} $を領域とし、$f: \Omega→ \mathbb{C} $を関数とする。$z=α ∈ \Omega$のある近傍の全ての点で微分可能なとき、$f$$z=α $で正則であるという.
また、ある領域$\Omega$の全ての点で微分可能なとき、$f $は領域$\Omega$で正則であるという.(領域$\Omega$を単に$\Omega$とよぶこともある.)

変数$z $にその微分係数を対応させる関数を$f(z) $の導関数といい、$f'(z), \frac{df}{dz} $などと表記する.

$\Omega$を領域とし、$f,g:\Omega→ \mathbb{C} $を正則関数とするとき、以下が成立する.
①{$f(z)±g(z)$}$'=f'(z)±g'(z)$ (複合同順)
②{$kf(z)$}$'=kf'(z)$ $(k \in \mathbb{C} ) $
③{$f(z)g(z)$}$'=f'(z)g(z)+f(z)g'(z) $
④{$\frac{f(z)}{g(z)}$}$'= \frac{f'(z)g(z)-f(z)g'(z)}{ g(z)^{2} } $ $(g(z)≠0)$

実関数における微分と同様であり、証明は省略する.

コーシー・リーマンの関係式

複素関数における微分は実関数の場合よりも制約が強く、以下でその判別を与える.

$ \Omega \in \mathbb{C} $を領域とし、$f: \Omega→ \mathbb{C} $を関数とする。実2変数関数$u,v: \mathbb{R}^2→ \mathbb{R}$
$z=x+iy$ $(x,y∈ \mathbb{R} )$を用いて、$f(z)=u(x,y)+iv(x,y)$と表示するとき、$u,v$ が領域$ \Omega $でともに$C^1$級関数ならば、以下が成り立つ.
$f$が正則$\Longleftrightarrow$Cauchy-Riemannの方程式:$\frac{ \partial u}{\partial x} =\frac{ \partial v}{ \partial y},\frac{ \partial v}{ \partial x}=- \frac{ \partial u }{ \partial y } $を満たす

$u(x,y),v(x,y)$$\Omega$で全微分可能だから、複素数$h$において $h=h_1+ih_2(h_1,h_2 \in \mathbb{R})$とすると$f(z+h)$
$=u(x+h_1,y+h_2)+iv(x+h_1,y+h_2)$
$=u(x,y)+\frac{ \partial u }{ \partial x }h_1+\frac{ \partial u }{ \partial y}h_2+iv(x,y)+i\frac{ \partial v }{ \partial x }h_1+i\frac{ \partial v }{ \partial y}h_2+o(h)$ $(h→0)$
よって
$\lim_{h \to 0}$$\frac{f(z+h)-f(z)}{h}$
$=\lim_{h \to 0} \frac{\frac{ \partial u }{ \partial x }h_1+\frac{ \partial u }{ \partial y}h_2+i\frac{ \partial v }{ \partial x }h_1+i\frac{ \partial v }{ \partial y}h_2}{h}$
$=\lim_{h \to 0} \frac{αh_1+βh_2}{h} $
$α=\frac{ \partial u }{ \partial x }+ i\frac{ \partial v }{ \partial x },β=\frac{ \partial u }{ \partial y }+ i\frac{ \partial v }{ \partial y } $とおいた)
ここで$h_1= \frac{h+ \overline{h} }{2},h_2= \frac{h-\overline{h}}{2i}$を用いて整理すると
$=\lim_{h \to 0} (\frac{α+β}{2i}+ \frac{αi-β}{2i} \frac{\overline{h}}{h} ) $
$h=re^{iθ} (r,θ \in \mathbb{R} ,r \geq 0,2π \gt θ \geq 0)$と表示すると、$h→0 $$r→0 $に相当するから、ある$θ_0∈ \mathbb{R} $$(2π \gt θ_0 \geq 0)$が存在して
$=\lim_{r\to 0} (\frac{α+β}{2i}+ \frac{αi-β}{2i} e^{-2iθ_0}) $
$=\frac{α+β}{2i}+ \frac{αi-β}{2i} e^{-2iθ_0}$
このとき$θ_0$$h$の挙動に依存するので、この極限値を一意に定めるには
$\frac{αi-β}{2i}=0$の成立が必要十分条件となる。
$\frac{αi-β}{2i}=0 \Longleftrightarrowαi=β \Longleftrightarrow i\frac{ \partial u }{ \partial x }-\frac{ \partial v }{ \partial x } =\frac{ \partial u }{ \partial y }+ i\frac{ \partial v }{ \partial y } \Longleftrightarrow\frac{ \partial u}{\partial x} =\frac{ \partial v}{ \partial y},\frac{ \partial v}{ \partial x}=- \frac{ \partial u }{ \partial y } $
これにより、同値性が示された.

$h→0$とする際に$h$の挙動にはあらゆる場合が考えられるため、$θ$$h$の関数であることに気をつけよ.
また、$θ_0$$h$$0$に飛ばした際の$h$の偏角である.

$h(=re^{iθ})$$0$に近づける際、$r→0$とすることのみを要求するため、$θ$が自由に動けてしまうことが微分に対する制約が強い原因となっている.
よって、極限に$θ$が表れない形となることが微分するための鍵であり、コーシー・リーマンの関係式が必要十分条件を与える.

関数$f(z)=u(x,y)+iv(x,y)$について、
$f'(z)= \frac{ \partial u}{ \partial x }+i \frac{ \partial v }{ \partial x }$

前の証明より、$f'(z)= \frac{α+β}{2i} $であり、$α=\frac{ \partial u }{ \partial x }+ i\frac{ \partial v }{ \partial x },β=\frac{ \partial u }{ \partial y }+ i\frac{ \partial v }{ \partial y } $を用いて整理すると$f'(z)= \frac{ \partial u}{ \partial x }+i \frac{ \partial v }{ \partial x }$となる.

この系により、複素関数の微分は実部$x$による$u,v$の偏微分を行えばよいとわかる.

投稿日:1027
更新日:1030
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高3 整数論が好きです

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