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多重ゼータ値の双対性1

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0.目次

1.はじめに
2.多重ゼータ値
3.多重ゼータ値の双対性
4.終わりに

1.はじめに

多重ゼータ値の双対性について書きます。
ぷえ~(>_<)

2.多重ゼータ値

インデックス
  • 正の整数k1,k2,krの組k=(k1,k2,kr)を「インデックス」と呼ぶ。インデックスの内、2krを満たすものを特に「許容インデックス」呼ぶ。
  • k1+k2++krをインデックスkの「重さ」と言い、wt(k)|k|と書く。

  • rをインデックスの「深さ」と言い、dep(k)で表す。

  • 同一の数が繰り返されるインデックスについて、例えば(a,a,,an)({a}n)と書くことにする。

多重ゼータ値

インデックスk=(k1,k2,kr)に対して、多重ゼータ値を次のように定める。

ζ(k)=0<n1<n2<<nr1n1k1n2k2nrkr

kが許容インデックスの時、右辺の級数は収束する。

多重ゼータ値の反復積分表示

ω0(t)=dtt,ω1(t)=dt1t
ϵi{0,1},i,kZ>0に対して、次のような積分を定める。

I(ϵ1,ϵ2,,ϵk)=0<t1<t2<<tk<1ωϵ1(t1)ωϵ2(t2)ωϵk(tk)

このとき、次の等式が成立する。
ζ(k)=I(1,{0}k11,1,{0}k21,,1,{0}kr1)

例えば、
I(1,0)=0<t1<t2<1ω1(t1)ω0(t2)=0<t1<t2<1dt11t1dt2t2=01dt2t20t2dt11t1=01dt2t20t2n=1t1n1dt1=n=101dt2t20t2t1n1dt1=n=11n01t2n1dt2=n=11n2=ζ(2)

となるのでI(1,0)=ζ(2)が成り立ちます。また、

I(1,1,0)=0<t1<t2<t3<1ω1(t1)ω1(t2)ω0(t3)=0<t1<t2<t3<1dt11t1dt21t2dt3t3=01dt3t30t3dt21t20t2dt11t1=01dt3t30t3dt21t20t2n=1t1n1dt1=n=101dt3t30t3dt21t20t2t1n1dt1=n=11n01dt3t30t3t2n1t2dt2=n=11n01dt3t30t3m=1t2n+m1dt2=n=1m=11n01dt3t30t3t2n+m1dt2=n=1m=11n(n+m)01t3n+m1dt3=n=1m=11n(n+m)2=0<n1<n21n1n22=ζ(1,2)
となるのでI(1,1,0)=ζ(1,2)が成り立ちます。

上の2つの例のように、無限等比級数の和の公式を用いながら順に積分を実行していけば、定理1が成り立つことを確認できます。

3.多重ゼータ値の双対性

双対インデックス

許容インデックスkは正整数a1,a2,,am,b1,b2,,bmを用いて
k=({1}a11,b1+1,,{1}am1,bm+1)
と一意的に書ける。このとき、kの「双対インデックス」kを次で定める。
k=({1}bm1,am+1,,{1}b11,a1+1)

多重ゼータ値の双対性

許容インデックスkと、その双対インデックスkに対して
ζ(k)=ζ(k)

k=({1}a11,b1+1,,{1}am1,bm+1)とおくと、定理1により
ζ(k)=I({1}a1,{0}b1,,{1}am,{0}bm)
ζ(k)=I({1}bm,{0}am,,{1}b1,{0}a1)
がそれぞれ成り立つ。したがって
I({1}a1,{0}b1,,{1}am,{0}bm)=I({1}bm,{0}am,,{1}b1,{0}a1)
を示せばよい。

(以下|k|kの重さを表すことに注意)

I({1}a1,{0}b1,,{1}am,{0}bm)=0<t1<t2<<t|k|<1ωϵ1(t1)ωϵ2(t2)ωϵ|k|(t|k|)
ここで変数変換ti=1xi (i=1,2,,|k|)を行う。
Jをヤコビアンとし、ϵiを次で定める。
{ϵi=0ϵi=1ϵi=1ϵi=0

J=|t1x1t2x1t|k|x1t1x2t2x2t|k|x2t1x|k|t2x|k|t|k|x|k||=|100010001|=(1)|k|
となるので
I({1}a1,{0}b1,,{1}am,{0}bm)=0<1x1<1x2<<1x|k|<1ωϵ1(1x1)ωϵ2(1x2)ωϵ|k|(1x|k|)|J|=0<x|k|<x|k|1<<x1<1ωϵ|k|(x|k|)ωϵ|k|1(x|k|1)ωϵ1(x1) 
ϵの性質と積分の順序に注意すると、最後の積分は
I({1}bm,{0}am,,{1}b1,{0}a1)
に等しいことが分かる。したがって
I({1}a1,{0}b1,,{1}am,{0}bm)=I({1}bm,{0}am,,{1}b1,{0}a1) 

4.終わりに

少し前に学校で「自分が学んできた数学について自由に書く」という課題が出て、そこに書いた内容の一部を今回の記事にまとめました。続編も書く予定です。。。
ぷえ~(>_<)この顔かわいくて気に入りました。

参考文献

  1. https://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~mkaneko/papers/MZV_LectureNotes.pdf
投稿日:2023820
更新日:2024111
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