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大学数学基礎解説
文献あり

微分代数

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 これは、Introduction to Lie Algebras and Representation Theoryの
1.3. Lie algebras of derivations の部分をまとめたものです。
 以下、$\mathbb{F}$は体とする。

$\mathbb{F}\,\text{-}$代数)

 ${V}$は体$\mathbb{F}$上の線型空間とし、$f:{V}\times{V}\to{V}$を双線型写像とする。
 このとき、組$({V},f)$$\mathbb{F}\,\text{-}$代数という。

例1 ($\frak{g}$,[$\cdot,\cdot$])を体$\mathbb{F}$上の$\rm{Lie}$代数とすると、($\frak{g}$,[$\cdot,\cdot$])は$\mathbb{F}\,\text{-}$代数である。
これを単に、$\frak{g}$$\mathbb{F}\,\text{-}$代数とかく。

 $V$には可換とは限らない積が定まっているとする。
 $\rm{Lie}$代数のときは、かっこ積で考えることにする。

(線形空間${V}$上の微分)

 線形写像$\partial: V\to V$$\rm{Leibniz}$則をみたすとき、$\partial:V\to V$$V$上の微分とよぶ。

(微分代数)

 $V$上の微分全体を$\mathrm{Der}\,V$と書いて、$V$の微分代数とよぶ。

 $\mathrm{Der}\,V$$\mathrm{End}\,V$の部分線形空間である。

(証明)$f,g\in\mathrm{Der}\,V$を任意にとると、$x,y\in V$に対し、
$\begin{align}\hspace{90pt}(f+g)(xy)&=f(xy)+g(xy) \\&=f(x)y+xf(y)+g(x)y+xg(y) \\&=(f+g)(x)y+x(f+g)(y)\end{align}$
 $\therefore f+g\in \mathrm{Der}\,V$
$k\in \mathbb{F},f\in \mathrm{Der}\,$を任意にとると、$x,y\in V$に対し、
$\begin{align}\hspace{100pt}(kf)(xy)&=kf(xy) \\&=k(f(x)y+xf(y)) \\&=kf(x)y+kxf(y) \\&=(kf)(x)y+x(kf)(y)\end{align}$
 $\therefore kf\in \mathrm{Der}\,V$ したがって、$\mathrm{Der}\,V$$\mathrm{End}\,V$の部分線形空間である。$\Box$

 $\mathrm{Der}\,V$$\mathfrak{gl}(V)$の部分$\rm{Lie}$代数である。

 (証明)$f,g\in\mathrm{Der}\,V$を任意にとると、$x,y\in V$に対し、
$\begin{align}\hspace{70pt}[f,g](xy)&=(f\circ g-g\circ f)(xy) \\&=f(g(xy))-g(f(xy)) \\ &=f(g(x)y+xg(y))-g(f(x)y+xf(y)) \\&=f(g(x)y)+f(xg(y))-g(f(x)y)-g(xf(y)) \\&=f(g(x))y+g(x)f(y)+f(x)g(y)+xf(g(y))\end{align}$
$ \hspace{130pt}-g(f(x))y-f(x)g(y)-g(x)f(y)-xg(f(y))$
$\begin{align}\hspace{110pt} &=f\circ g(x)y+xf\circ g(y)-g\circ f(x)y-xg\circ f(y) \\&=(f\circ g-g\circ f)(x)y+x(f\circ g-g\circ f)(y) \\&=[f,g](x)y+x[f,g](y)\end{align}$
$\therefore [f,g]\in \mathrm{Der}\,V$ したがって、$\mathrm{Der}\,V$$\mathfrak{gl}(V)$の部分$\rm{Lie}$代数である。$\Box$

$\rm{Lie}$代数において、微分は自然に表れる。

(随伴表現)

 $x\in V$に対し、$ad(x)\in \mathfrak{gl}(V)$$ad(x)(y):=[x,y]$で定める。
 この写像$ad:V\to \mathfrak{gl}(V)$$V$の随伴表現という。

 $x\in V$に対し、$ad(x)\in \mathrm{Der}\,V$ すなわち、$\Im(ad) \subset \mathrm{Der}\,V$

 (証明)$y,z\in V$を任意にとると、
 $\hspace{70pt}\begin{align}ad(x)([y,z])&=[x,[y,z]] \\ &=-[y,[z,x]]-[z,[x,y]] \\ &=[y,[x,z]]+[[x,y],z] \\ &=[y,ad(x)(z)]+[ad(x)(y),z]\end{align}$

$f:=ad(x)$と書き直すと、$f([y,z])=[y,f(z)]+[f(y),z]$
まさに、$ad(x)$$\rm{Leibniz}$則を満たしている。$\therefore ad(x)\in \mathrm{Der}\,V\hspace{20pt}\Box$

(内部微分、外部微分)

$\Im(ad)$の元を内部微分といい、$\mathrm{Der}\,V\setminus\Im(ad)$の元を外部微分という。

$W$$V$の部分線型空間とする。このとき、$ad(x)$と単に書くと、$ad(x)\in\mathfrak{gl}(V)$
なのか$ad(x)\in \mathfrak{gl}(W)$なのか分からないので区別するために、
$ad(x)\in\mathfrak{gl}(W)$$ad_{W}(x)$と書くことにする。

参考文献

[1]
James E. Humphreys , Introduction to Lie Algebras and Representation Theory
投稿日:27日前
OptHub AI Competition

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