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大学数学基礎解説
文献あり

幾何で代数を使う話

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目次

・はじめに
・準備
・実際に使ってみる
・最後に

はじめに

どうも、色々やる数学徒です。
今回は僕が代数をやっていて1番感動した話について書きます。
最近初等幾何がTwitterで流行っていたので代数でやってみたくなりました。
ちなみにこの記事の参考文献となっている「代数学教本」は恩師とも言える先生に貸していただいた本なのですが、初心者でもわかりやすく、とても面白い本となっています。代数学教本と赤雪江があれば強くなれますね。

準備

少し定義が続きます。
体に関する基礎事項なので飛ばしてOKです。

体の定義

単位元$1$を持つ可換環$K$の零元でない元がすべて可逆元であるとき$K$を体という

部分体

$K$の部分集合も$K$と同じ演算で体となるとき、その部分集合を部分体という

体の拡大

$F$が体$E$の部分体であるとき、体$E$は体$F$の拡大体である、という

$F$上線形空間としての$E$の基底を$E$$F$上の基底を$E$$F$上基底といい、その次元を拡大次数とよび$[E:F]$で表す。

どうやってこんなものが幾何に繋がるのか不思議ですね。

$\alpha$を正の実数とする。
与えられた長さの$\alpha$倍が作図可能なら、体の$2$次拡大列
$\mathbb Q=K_0\subset K_1\subset\cdots\subset K_n$
が存在して、$\alpha\in K_n$が成り立つ。

何やら作図に繋がるような話が出てきましたね。
「作図が可能」のルールは次の章で詳しく説明します。

実際に使ってみる

$\color{blue}{作図ルール+基本事項}$
・作図はコンパスと定規だけを用いる
・定規は長さを測る用途では用いない
・長さ$1$が与えられたとき、コンパスと定規を用いた作図で与えられた長さの四則演算や平方根をとる操作が可能

与えられた長さ$1$$a,b$倍が作図されたとき次の図において$\displaystyle x=a+b,y=a-b,z=ab,u=\frac{b}{a},v=\sqrt{a}$が作図できる。
!FORMULA[26][1876401893][0] $\sqrt{a}$ !FORMULA[27][36182802][0] $a-b$ !FORMULA[28][1168767][0] $ab$ !FORMULA[29][-759933646][0] $\displaystyle \frac{b}{a}$ !FORMULA[30][36180880][0] $a+b$
つまりは、長さ$1$が与えられたときにはコンパスと定規を用いた作図によって与えられた長さの四則演算と平方根をとる操作が可能であることがわかります。
今回は具体的に次のような問題を考えてみます。

デロスの問題

与えられた立方体の体積が$2$倍となる図形を作図できるか

言い換えたら

与えられた長さ(ここでは$1$として)の$\sqrt[3]{2}$倍の長さを作図できるか

となりますね
直感的にわかるようにこの作図はあなたが神でない限りは不可能です。
では実際に示しましょう。

$\sqrt[3]{2}$が作図可能とする。
定理1より
$\mathbb Q=K_0\subset\cdots\subset K_n$
が存在し、$\sqrt[3]{2}\in K_n$となる。
次のようなものを考える。
$[E:F]=[E:K][K:F]$が成り立つ。
ここで$m,n$$E\subset K\subset F$において$[E:K]=m,[K:F]=n$とし、$E$$K$上の基底を$\{x_1,…,x_m\}$$K$$F$上の基底を$\{y_1,…,y_n\}$とする。
$c_{ij}\in F$
$\displaystyle \sum_{i=1}^{m}\sum_{j=1}^{n}c_{ij}x_iy_j=0$を満たすとする。
$\displaystyle a_i=\sum_{j=1}^{n}c_{ij}y_j\in K$とおくと、$\displaystyle \sum_{i=1}^{m}a_ix_i=0$が成り立つ。
仮定より$\{x_i,…,x_m\}$$K$上線形独立であるため$\displaystyle \sum_{j=1}^nc_{ij}y_j=0$が成り立つ。
また、$\{y_1,…,y_n\}$$F$上線形独立であるため$c_{ij}=0$が成り立つ。
したがって、$\{x_iy_j|1≦i≦m,1≦j≦n\}$$F$上線形独立である。
$E$$K$上基底が$\mathbf x$であるため任意の$z\in E$に対し
$\displaystyle z=\sum_{i=1}^m\alpha_ix_i$
を満たす$\alpha_i$が存在する
同様にして
$\displaystyle \alpha_i=\sum_{j=1}^n\beta _{i,j}y_j$を満たす$\beta_{i,j}$が存在する。
以上より
$\displaystyle z=\sum_{i=1}^m\sum_{j=1}^n\beta_{i,j}x_iy_j$
が得られる。
よって$E$$F$上の線形空間として$\{x_iy_j|1≦i≦m,1≦j≦n\}$で生成される。
また、$[E:F]=mn$を得る。

これにより$[K_n:\mathbb Q]=[K_n:K_{n-1}]\cdots[K_1:K_0]=2^n$
一方で$\mathbb Q\subset K_n,\sqrt[3]{2}\in K_n$より
$\mathbb Q\subset \mathbb Q(\sqrt[3]{2})\subset K_n$
上で示した命題より
$[K_n:\mathbb Q]=[K_n:\mathbb Q(\sqrt[3]{2})][Q(\sqrt[3]{2}):\mathbb Q]$
$[\mathbb Q(\sqrt[3]{2})]=3$より
$2^n=3[K_n:\mathbb Q(\sqrt[3]{2})]$
となり不合理であるため矛盾。
よって、与えられた長さ(ここでは$1$として)の$\sqrt[3]{2}$倍の長さを作図不可能である

余談

こんな逸話があるそうな

昔々、ギリシャにて疫病が流行りました。
そんなとき!
「神殿の形をそのままに体積を$2$倍にせよ!」というデロス島の神託が下りました。

最後に

お疲れ様でしたー
たまにはこういう基礎的な代数を応用して使ってみると息抜きにもなって楽しいですね。
ここで扱った倍積問題も(個人的に)一般化できそうなので興味のある方は作図可能性の世界を覗いてみるといいかもしれませんね。

余談ですが、借りていた本にコーヒーをぶちまけてしまいました。シミ取りは可能なのでしょうか?

参考文献

[1]
海老原 円, 代数学教本
投稿日:17日前
更新日:17日前

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投稿者

分野の好き嫌いはしないンゴ

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